姉妹で経営する神奈川クラウンGC 地域住民憩いの場で施設内に理髪店も ~シリーズゴルフ練習場ビジネス48~ 嶋崎平人

姉妹で経営する神奈川クラウンGC 地域住民憩いの場で施設内に理髪店も ~シリーズゴルフ練習場ビジネス48~ 嶋崎平人
クラウンゴルフクラブは神奈川県小田原市久野にある220ヤード2階48打席のゴルフ練習場だ。 小田原駅から車で8分、都内からも小田原厚木道路・荻窪インターから10分。順調にいけば80分でアクセスできる。小田原市役所や市内の中心部に近く、傍を流れる山王川からもすぐのロケーション。 取材時間の前に到着したのでフロントの女性に来意を告げると、明るく丁寧な対応で、気持よくロビーで待たせてもらった。この練習場の成り立ちやコンセプトについて、株式会社クラウンゴルフクラブ取締役・山口尚子さんに取材した。 1973年、山口さんの父親・志村精一氏が創業した。志村氏は小田原で飲食業などを幅広く事業展開していたが、別の事業者が経営していた小田原ゴルフガーデン(1972年開業)が売りに出され、これを買収したことに始まる。 売却の理由は不明だが、競売にかけられて志村氏が落札した。名称を「クラウンゴルフクラブ」に変更して、今日に至っている。 名称について、 「父がどんな理由でこの名前にしたのか、残念ながら聞いていません。名称に『ゴルフクラブ』が付いているので、ゴルフ場と間違ってよく電話がかかってきます。父はゴルフをしていましたが、それほど上手いわけではなく、ゴルフが好きで練習場を始めたというよりも、将来伸びると判断して決めたそうです」 山口さんが経営を引き継いだのは2011年から。その年、父親の志村氏が病で倒れ、復活できないまま3年後に他界された。 山口さんは学生時代からフロント業務のアルバイトで練習場には慣れ親しんでいたが、経営についてはほぼ白紙。そこで母親が社長となり、山口さんの姉と3人で経営を引き継いだが、経営は山口さんと姉の安藤貴子さんの姉妹が中心になった。 姉は東京住まいで、地元在住の山口さんが深く経営に携わってきた。 クラブハウスや打席が古くなり、2階へは急階段で安全上の問題もあったことから、2015年に半年かけてリニューアルを行った。改装中はフィールドが使えたので、無料開放し、マットをひいてボールを打ってもらい常連客を繋ぎとめた。 同時に工房スペースを大きく確保したが、工房店主の予定者が病で断念したため、今はマッサージの「からだメンテナンス」と理髪店の「カットサロン PIPPO」、ゴルフ工房の「ゴルジョイ」が入っている。 「皆さん個人事業主で私と同世代。仲間で一緒に頑張ってる感じが相乗効果を生んでいるのか、ゴルファーだけでなく、地元の方が多くいらっしゃいます」 筆者は、ゴルフ練習場に理髪店がある光景を初めて見た。65台の駐車スペースもあり、小田原市内中心部に近いロケーションも生かされている。 また、全面改装時にバリアフリーを設け、車いすでも練習場にアクセスできる構造にしたが、ゴルフでの利用者は少なく、マッサージや理髪店の来場時に使うケースがあるという。 現在、ゴルファーの多様性に対する取り組みを進めているので、車いすゴルファーへの認知が広がれば来場者も増えそうだ。 三觜プロのレッスンに 遠方から FWは220ヤードで開業時から変わらないが、打席は最初2階58打席だったものが、クラブの長尺化で打席間隔を広げ、54打席→52打席となり、コロナ禍で打席間隔を広げたため現在は48打席。打席間隔は275㎝と広々している。 これはオートティーアップでないため、打席間隔を自由に広げられた。 商圏は半径5㎞で、小田原市内と隣接する南足柄市も対象になる。地方や海外からの来場者もいるそうだが、それは5名のプロにレッスンの場所貸しをしていることが大きい。 YouTubeで有名な三觜喜一プロのレッスンが月1回あり、それを目当てに遠方から来場するとのこと。 三觜プロはYouTubeで有名になる前からクラウンゴルフクラブでレッスンしており、 「実は、三觜プロのYouTubeチャンネル登録者が多くて、凄いことになっていると知ったのは後のことなんです。YouTubeを始める前から20年以上、ここでレッスンを続けていて、先月は岡山、名古屋、岐阜から受けに来ていました」 レッスン名は「三觜喜一小田原レッスン会」で、午前・午後各20名がすぐに埋まる。 参加者の声は、 「初参加でしたが、内容がとても濃く充実した4時間でした。三觜先生の個別レッスンも、一人一人しっかり時間をとって悩みを聞いていただき大満足です」 と、高評価。 三觜プロはこの練習場を利用して、女子プロのレッスンなども実施している。 昨年の能登半島地震の後も、ゴルフ練習場として何かできないかと、三觜プロの企画で女子プロも参加する能登半島応援チャリティーゴルフレッスン会を実施、150万円を寄贈した。 練習場のコンセプトについて、山口さんはこう話す。 「ゴルフ上達のための場所であると同時に、お客様の笑顔があふれる地域のコミュニケーションの場を目指しています。気楽に地元の人に利用してもらいたいですね」 現在の課題は、 「来場者は男性比率が9割近くで、女性が少ないのです。女性目線で設備を整えているので、もっと増やす施策に注力していきます」 クラウンゴルフクラブの従業員は役員を含めて13名。支配人は先代から務めており、20年以上勤務する従業員も多い。 姉妹で経営するアットホームな雰囲気だけに、地元に愛される練習場として継続してほしい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら