連載SDGs 第48回地域ぐるみのゴルフ振興 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

連載SDGs 第48回地域ぐるみのゴルフ振興 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

多彩なゴルフ振興策

私が住む千葉県市原市にはゴルフ場が33か所あります。一つの市では全国で最高の数です。市原市の全面積の約10%がゴルフ場で、合計37万平方kmもあります。 小出譲治・市原市長は「これだけのゴルフ場を抱えていることは、地域の有益な資産です」と話します。 [caption id="attachment_89385" align="aligncenter" width="788"] 小出譲治・市原市長[/caption] 一時は「ゴルフ場ばかりで困る」という声も聴かれましたが、小出市長は逆に「地域の資産」として活用しようというのです。 「市内に33ものゴルフ場があるのは市原市だけ。それを前向きにとらえ、地域振興の柱の一つにゴルフ場を組み込んだほうが良い。ゆくゆくは、日本のゴルフの聖地と呼ばれるようにしたい」と意気軒高です。 ゴルフ振興事業のため、市は市原市観光協会、商工会、市内のゴルフ場などで構成される「市原ゴルフ場連絡協議会」と連携しました。 市と協議会が一緒になって「ゴルフの街いちはら」推進プロジェクトを実施。初心者が手ぶらでゴルフ場を訪れ、ゴルフ場のスタッフに基本的なルールやマナーを学び、ショットやパッティングの練習をした後、実際のゴルフ体験をするという「手ぶらdeゴルフ」などを実施しています。 ゴルフボールやゴルフプレー券をふるさと納税の返礼品としたり、「いちはらゴルフ場巡り33スタンプラリー」を設定。市内のゴルフ場を5か所、11か所、22か所回るごとに市の特産品などを贈呈する。33か所すべてプレーした人には養老渓谷温泉旅館のペア宿泊補助券などが贈呈されるなど、多彩な活動を展開しています。 [caption id="attachment_89388" align="aligncenter" width="788"] ゴルフ場支配人から市の地方創生部観光・国際交流課に転職した稲田康男さん[/caption] 極めつけは、鶴舞カントリー倶楽部の総支配人を務めていた稲田康男さんを、市の地方創生部観光・国際交流課の主幹(ゴルフの街いちはら推進担当)に迎えたことです。

ジュニアゴルフを育てる

[caption id="attachment_89386" align="aligncenter" width="788"] がんばる4年生[/caption] 稲田さんは「市が率先してゴルフ振興の旗を振ってくれているので何とか力になりたいと思って」と転身を決意。市に入ったことで、ゴルフ場と役所との距離が近くなり、協力体制が進みました。 「お互いに長所を認め合って、議論できるようになり、新しい試みがどんどん出てきています」と稲田さんは手ごたえを語ります。 令和6年4月1日、市原市の源氏山ゴルフクラブで「第2回市原市ジュニアゴルフオープン」が開催され、全国から112人の小・中・高校生が集まり熱戦を繰り広げました。 高校女子の部で優勝したのは3年の鈴木能々子さん(1アンダー・71)。中学女子では飯田柚月さん(2アンダー・70)、男子は大久保友貴君(1アンダー・71)でした。 市のゴルフ振興策で最も力を入れているのがジュニア層の育成です。子どもたちがゴルフを心から楽しめれば将来が楽しみであり、やがてゴルフ振興にも貢献してくれるという期待からです。 稲田さんは「昨年より参加者が増え、成績も向上しています。日本を代表するゴルフ大会になるよう応援したい」と超前向きです。 実際、市原市から2年前、当時中学生の根本悠誠君がアメリカにゴルフ留学。須藤みかなさんがニュージーランドへ、南愛美さん(小4)はアメリカの世界大会で過去連続優勝、今年は3連覇を狙います。

市民ゴルフフェスタで

今年1月から2月の平日に「市原市民ゴルフフェスタ」が開かれました。市原市民であればゴルフフィーが割引され、716人が利用しました。 また、プラスチック製のクラブとテニスの軟球のようなボールで楽しむ「スナッグゴルフ」も実施。市内10の小学校で、校庭や広場でのプレーが行われました。 他の14校では実際のゴルフ場でプレー。ゴルフ場の方も「暇な時期を選んで提供しましたが、喜んでもらえてうれしい」と全面協力です。 これは選手育成だけでなく、もっと幅広くゴルフを広めようという意思の表れであり、「ゴルフは人間教育に適している」という信念からでもあります。 スコアは自分で記録し、嘘はつかない、ズルはしない。初歩からゆっくり練習すれば誰でもうまくなれる。友人を気遣う。広い自然の中で行うスポーツで、身体にも良く、チームワークも学べる——子どもたちが成長する上で大切なことが、ゴルフを通して身につくのです。

地域創生事業

子どもたちだけではありません。市民もゴルフに理解を持ち、ゴルフを始める人が増えました。特に女性ゴルファーが増加。スタンプラリーで33か所制覇した人の29%が女性でした。 市原市を訪れるゴルファーも増えています。一昨年は年間170万人だったのが、昨年は177万人に増加。市民全体で取り組むゴルフ振興策が着実に成果を上げています。 市原市ではSDGsの推進にも力を入れており、ゴルフ場も多数参加。里山保全の主役でもあります。 こうした市原市の試みが全国に広がると良いですね。すでに市原市は、兵庫県三木市(市内に25か所のゴルフ場あり)との交流も始めています。こうした動きが他の自治体にも広がることを願っています。

11. 住み続けられるまちづくりを

都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にすることを目指して、以下のような10のターゲットが掲げられています: 2030年までに包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済・社会・環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する 市原市はゴルフを武器に新しいまちづくりに挑戦しています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら