茨城県笠間市。常磐自動車道岩間ICから車で10分の幹線道路沿いに「ゴルフラボ」はある。一人で切り盛りするのが鈴木達也代表だ。水戸の工房で1年間修業して2019年に独立。20〜70歳代の老若男女、初心者から競技ゴルファーまで幅広い顧客をもち、すぐに対応できるよう、店内には数多くのグリップやシャフト、ヘッドが並んでいる。
そんな鈴木代表に悩みを打ち明けたのが30歳代男性のA氏。ゴルフ歴3年で、スコアは90〜100。パワーがあるため腕力と身体全体でボールを飛ばそうとする。アイアンの飛距離が出ず、時折ひっかける弾道が悩み。薦めたのは、中空マッスルと軽量カーボンシャフト。悩みは解決したのか?
身体を使いすぎるゴルファーが多い
30歳代の男性A氏は、ゴルフに真剣に取り組む熱心なゴルファーだ。パワーがあるがゆえに、腕を振らず身体全体でボールをつかまえて飛ばそうとする。鈴木代表によると、同じようなゴルファーは多いという。
「彼もそうですが、雑誌やユーチューブを熱心に見て勉強するゴルファーが多く、プロにしかできない身体を使うスイングを真似してしまう。腰を切るとか、下半身主導だとかです。それによって、肝心の腕を振れなくなっています」
腕力に頼り、身体を回し過ぎ、「左に振り抜け」という言葉に影響されて、身体が突っ込むスライスなど、飛ばないスイングになっているのだとか。だから、A氏は打ち出し角と落下角、スピン量が足りず、低弾道で飛ばない。
「そのAさんはマッスルバックのヘッドがお気に入り。半中空のヘッドです。今回のフィッティングは、シャフトで打ち出し角、落下角、スピン量を補填することを意識しました」
ヘッドはマスターズの『アストロツアー TH/001』、そして装着したのはコンポジットテクノの『ファイアーエクスプレス スピリッツ i85』。このセッティングにはスイング改造も必要だったという。
腕を振ってパチンと当てるだけ 弾道も改善した組み合わせ
今回の組み合わせについては、こんな経緯があったという。
「Aさんは、このヘッドを『カッコいいから』という理由で選びましたが、どちらかと言えばライナー系弾道のヘッドです。ロフトも7番で32度。そこで打ち出し角、落下角、スピン量をシャフトで補おうと思ったんです」
また、シャフトの『ファイアーエクスプレス スピリッツ i85』は、カーボンシャフト独特のしなりでボールのつかまりと弾道の高さ、飛距離と方向性の安定がウリである。
「身体全体でボールをとらえるのではなく、手打ちでシャフトのしなりを使って球をとらえて飛ばすようにしたかった。腕を振ってパチンと飛ばす。シンプルなスイングにすることも、このシャフトを選んだ理由です」
これによって、飛距離は7番アイアンで140ヤード前後から160ヤードまで伸びた。打ち出し角は減少したが、スピン量が増えたことで、結果的に落下角も45度前後から48度前後まで増加。
「それに加え、当たり負けしないよう、シャフトを逆番手ずらしにしています」
逆番手ずらしとは、7番アイアンのシャフトを8番アイアンに装着することで、これによってシャフトの硬さを調整。腕を振るだけでパチンと当たって飛ぶ。それに対しての細やかな工夫も施した。
ユーチューブを見なくなり考え方も変えた工房の会話
A氏の悩みは、腕力と身体に頼ったスイングで、球が上がらず飛距離が出なかったこと。が、その背景には、雑誌やユーチューブのレッスンが、様々な特徴をもつアマチュアに合わないことがある、という弊害である。
「Aさんへのアドバイスは、昨今のスイング理論とは逆行していると思います。ただ、今回のセッティングでAさんはユーチューブを見なくなり、他人のセッティングやスイング理論に惑わされないようになったとそうです。自分が気に入ったヘッドで距離も出て自信がついた。それが一番嬉しいですね」
鈴木代表が語気を強める。
「確かに教科書的なセッティングも大事ですが、Aさんの場合はそうではなかった。それが分かってもらえたこと大きいと思います」
固定概念に捉われず、ゴルファーの悩みと解決し、望みを叶える。捉われない考え方の広さが、職人の真骨頂なのかもしれない。
メーカー担当者コメント
マスターズ 東京営業所 マネージャー安田晃一氏
「『TH/001』は中空構造なので、飛ばない人にも軟らかいシャフトを装着するのはアリですね。また、見た目は難しいのですが、素材もS400という軟かい素材を使っているので、弾く感じより食いつくフィーリング。見た目よりやさしいアイアンなので、アベレージゴルファーにも使ってもらいたいですね」
ゴルフラボとは
VIDEO
〒319-0204
茨城県笠間市土師1285-19
TEL 0299-56-5500
HP www.golflab.com
なお、この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。