私達はお客様と良好な関係を築くための次世代練習場システムとして『一気通貫CRMシステム』を開発し、2025年4月2日より運用を開始しました。
お客様と良好な関係を築くには、①情報の収集・管理 ②情報の確認・把握 ③情報の活用・展開 ④お客様動向の分析・検証が必要であり、本システムを活用することで、これら4つのCRM(顧客関係管理)機能がどのような役割を果たし、どのような効果が得られたのかを紹介してゆきます。
■収集・管理の機能
新システムへの移行には、お客様情報を円滑に収集する必要があります。また、新たなシステム業者に変えると旧システムからデータ移行できず、旧システムと新システムを並行運用することになります。
並行運用すると旧サーバと新サーバを同時併用するので余計な費用がかかるだけでなく、新カードに切り替えなくても旧カードが使えてしまうので、新システムへの移行が停滞します。
さらには、情報の移行処理がアナログになるので、フロント稼働も膨らみます。
そこで、旧カードをチャージ機に挿入すると自動的に旧カードの情報を解読し、新サーバへデータを移し替える「自動移行機能」を開発することで、旧サーバを併用することなく情報を円滑に収集できるようになりました。
また従来は、フロントで打席指定し打席札を渡してお客様管理をしていました。
新システムでは、打席にセルフチェックイン機を設置、フロントに立ち寄ることなく入退場・打席指定できる「ストレートイン機能」を開発することで、稼働軽減にも繋がりました。
■確認・把握の機能
私達は「リライト式カードリーダの製造中止」により、現行カードからの切り替えに迫られました。
リライト式カードの魅力は、情報をカード券面で確認できることですが、ICカードへ切り替えると、情報を券面で確認できず利便性が低下します。
そこで、QRコードとLINEアプリを活用した「デジタル会員証」を開発することで、お客様はどこでもスマートフォンで情報を確認・把握できるようになりました。
またLINEアプリの活用により、汎用性・安全性・即時性に繋がる機能が拡張しました。
「汎用性」では使用頻度の高いアプリなので情報が埋もれない、「安全性」ではQRコードが自動更新されるので不正利用されない、「即時性」では利用履歴が即時反映するので有効なマーケティングツールとして活用できます。
なお「デジタル会員証」の利用に戸惑うお客様のために、QRコードが印字されたカードも作成しましたが、お客様の利用比率は「デジタル会員証」の85%に対して「QRカード」は15%となり、カードレス化によるコスト削減に繋がりました。
■活用・展開の機能
本システムの根幹は、お客様と良好な関係を築くための4つのCRM機能を一元的に搭載することです。
旧システムでも情報を収集・管理し、分析・検証できましたが、お客様との関係構築に繋がる活用・展開は困難でした。
そこで新システムでは、LTV(顧客生涯価値)を定量化し、高いロイヤリティ(愛着・信頼)を抱くお客様へ上質なサービスを提供する「THGメンバーシッププログラム」を開発しました。
この機能は利用履歴に応じてボール単価が自動的に変化します。
直近3ヶ月の【入金額】と【来場回数】を集計し、7つのランクに分類。ランクに応じて平日と休日の1球単価を自動的に設定します。
従来の会員制度は、会費を支払うと優待サービスが享受できる仕組みのため、一部のお客様だけが対象となり参加率が低かったのですが、本プログラムでは全来場者が無料で参加でき、ランクに応じて優待サービスを享受できるので、プログラム参加率は98%です。
なお、本プログラムの導入と同時にフロントで対応していた優待サービスは全て廃止。客単価向上やフロント省力化にも繋がりました。
■分析・検証の機能
THGメンバーシッププログラムの導入により、購入期間(直近3ヶ月)×購買単価(入金額)×購入頻度(来場回数)で自動算出する「LTV分析」が可能となり、お客様が私達に抱くロイヤリティを定量的に検証できるようになりました。
また、LTVを基準に7つのランクを設定することで、お客様をロイヤリティの高さで分類できます。
ランクは自動的に月次更新されるため、ランク構成比率の月次推移を分析することで、ロイヤリティの変化の様子を分析・検証できます。
さらに、LINEアプリとデータ連携した「カスタマイズ配信」の開発により、個々のお客様に直接LINEでアプローチできるようになりました。
具体的には、ランクの低いお客様のLINEナンバーを抽出し、期間限定で上位ランクに昇格できるクーポンを添付してLINE通知することで、来場誘引やプログラム認知に繋がるアプローチができ、翌月にランク構成比率の推移を分析すれば、当月展開したアプローチの効果検証も可能になります。
■今後の展開・挑戦
一気通貫CRMシステムの導入により、「自動移行機能」や「ストレートイン機能」で情報の円滑な収集・管理、「デジタル会員証」で情報の確認・把握、「THGメンバーシッププログラム」や「カスタマイズ配信」でロイヤリティの醸成、「LTV分析」でロイヤリティの定量検証ができるようになりました。
今後私達が挑戦することは「キャッシュレス化」へのシステム拡張です。
ベンダーやチャージ機にキャッシュレス端末を取り付けて、クレジットカード決済を導入している施設もありますが、キャッシュレス端末の設置費用やカード決済手数料が大きな負担となり、円滑なキャッシュレス化は進んでいません。
そこで私達は、LINEアプリを活用した「モバイル決済機能」を開発することで、キャッシュレス端末なしに遠隔でチャージでき、カード決済時にはチャージ額に応じてポイント提供することなく、代わりに決済手数料に充当させて効率的な「キャッシュレス化」を目指します。
私達の挑戦は続きます。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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