東京の世田谷区喜多見に「ニュー成城ゴルフセンター」はある。世田谷通りに面しており、目の前のバス停は「喜多見駅入口」で、小田急線の喜多見駅まで徒歩6分。隣の成城学園前駅でも徒歩13分の便利な場所だ。駐車場は30台分、世田谷通り沿いなのでアクセス抜群である。
クラブハウスの外観はレンガ風のタイルで、建屋の側面がカーブしていてモダンな高級感を漂わせる。2階30打席85ヤード。フロントは明るくきれいでゆったりしたスペース。クラブハウス同様に高級感があり、フロントの女性が明るく筆者を出迎えてくれた。練習場の成り立ちやコンセプトについて、ニュー成城ゴルフセンター・代表取締役・服部朋春氏に取材した。
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ニュー成城ゴルフセンター 開業画像[/caption]
服部代表の父・武夫氏が1972年6月に開業した。服部家は代々この地で農業を営んでおり、武夫氏で9代目、服部氏で10代目だ。敷地には「火の見櫓」が建っていたとのことで、地域の中心的な存在であったことが想像される。ただ、
「うちの父は10歳のときに父親を亡くし、母親と女兄弟3人と男1人で農業を続けていたと聞いています」
武夫氏は大学卒業後、サラリーマンを6年間ほどしていたが、親戚が近隣の等々力と川崎の宿河原でゴルフ練習場を始めていた。父親のいとこにあたる2人で、等々力は都南ゴルフ倶楽部(2020年に閉場)、宿河原は宿河原ゴルフセンターである。当時は高度成長期で尾崎将司、青木功などの活躍もありゴルフがブームとなっていた。親戚が練習場経営をしていることもあり、親から受け継いだ土地をゴルフ練習場として活用することをきめた。武夫氏が20代での決断だった。
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ニュー成城ゴルフセンター 土打席[/caption]
親戚のゴルフ練習場で経験を積ませてもらい1972年の開業にこぎつけた。開場時には、等々力ゴルフセンターでレッスンをしていた浅見勝一プロ(後のPGA会長)の始球式も行われた。開業当時のスペースは現在と同じで、駐車場も当時からネットの下に設置されている構造。いまから50年以上前で敷地を有効に使っていた。
FWは天然芝で、1階15打席2階5打席。打席は土にマットを置いた。当時は世田谷に30以上の練習場があったが、折からのゴルフブームで経営は順調に推移していった。
「今、世田谷の練習場は8場ですが、当時はそれだけあっても経営が成り立っていたんです」
ニュー成城ゴルフセンターの命名は武夫氏である。
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ニュー成城ゴルフセンター外観[/caption]
「当時は近隣に喜多見ゴルフと成城ゴルフクラブがありました。名前を付ける際、他の練習場と被らないように考え、また住所の喜多見は知名度が低いので〝ニュー成城ゴルフセンター〟としたそうです」
服部代表は1975年生まれだが、家族経営だったので、
「小学生のときはボール拾いを手伝わされました。当時のクラブハウスは煙草を吸うお客さんが多く、その臭いがイヤだった記憶あります」
現在のクラブハウス、打席は1992年に武夫氏が決断し、1年間休業、改装してリニューアルオープンした。FWも天然芝から人工芝に変更している。クラブハウスは30年以上経過したとは思えないほどの綺麗さを維持。トイレは外装内装に大理石が使用され、日頃の清掃、メンテナンスの良さが表れている。
女性来場率3割
服部代表は1997年に大学を卒業し、家業に入っている。大学は日本大学の獣医学部(現在:生物資源科学部)で、大学時代は学部のゴルフ部に所属し、トーナメント運営のバイトを中心に活動していた。入社して練習場の各部門を経験し、2015年に社長に就任、経営を引き継いで10年目だ。子供のころから考えれば、ゴルフ練習場の栄枯盛衰を体感しているといってよいだろう。練習場のコンセプトについて、
「ゴルフを通じて地域貢献ができればよいと考えています。また、ゴルフライフを通して、皆さんの人生が豊かになればいいですね」
元々、敷地に「火の見櫓」があった家で、父親の武夫氏は地域の消防団分団長を務めていた。服部氏も全日本ゴルフ練習場連盟のジュニア委員長を2021年から2023年まで務め、ジュニア活動をサポート。世田谷区ゴルフ連盟の事務局長も務めており、会員は92歳から16歳まで650名在籍。年8回の大会でゴルフ振興に貢献している。施設面では練習場のボールを含めて綺麗さにこだわっており、
「私の代になってから、きちんとローテーションを組んで、ボールは5年サイクルで4万球全部を交換しています。また、ネットは10年、人工芝も10年で交換し、鉄骨の塗装も10年サイクルで塗り替えてメンテナンスしています。マットも手に優しい2重構造で、父親の代からこだわっており、分煙テラスも。とにかく、お客様に気持ちよく練習してもらえる環境を重視しています」
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ニュー成城ゴルフセンター1階打席[/caption]
商圏は世田谷通り沿線で、世田谷、狛江、登戸エリアとのこと。男女比率は女性が3割と多く、
「その理由は、トイレを含め施設の綺麗さにこだわっていることはもちろんですが、コロナ禍で女性が2~3名のグループで来場され、その後1名での来場も定着したこと。練習場連盟、JGA実施の"Women's Golf Now"などに積極的に参加していることも影響してると思います」
練習場の課題については、
「ハード面は、鉄塔が創業時からのものなので、定期的にメンテナンスしていますが、今後どうするかが大きな課題です。ソフト面では、少子高齢化で来場者の減少傾向は続いているので、そこをどう繋ぎ止めるか。いろいろチャレンジし、やってダメであれば変えて、とにかくチャレンジし続けます」
50年以上続いている東京世田谷の練習場が、街のオアシスとして今後も継続、ゴルファーを生み出す拠点であり続けることを期待したい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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