「三本の矢」活かす女性責任者 神奈川・葉山パブリックGC練習場 ~シリーズゴルフ練習場ビジネス50~ 嶋崎平人

「三本の矢」活かす女性責任者 神奈川・葉山パブリックGC練習場 ~シリーズゴルフ練習場ビジネス50~ 嶋崎平人
葉山パブリックゴルフコース・練習場は、神奈川県葉山町にある。葉山町には葉山御用邸があり、碧い海と山々の緑に囲まれた温暖な保養地、別荘地として知られている。葉山パブリックゴルフコース・練習場は山側にあり、車で緑豊かなワインディングロードを登ると、抜群の景色の中に溶け込んでいた。 都内から車で1時間以内のアクセス、逗子駅から1時間ごとにクラブバスが出ている。この練習場の成り立ちやコンセプトについて、同施設を運営する株式会社葉山産業の吉澤亜由美マネージャーに取材した。 [caption id="attachment_90191" align="aligncenter" width="788"] 葉山パブリックゴルフコース・練習場 晴れた日の眺望[/caption] 訪れた時、練習場の入り口にフロントはなく、来場者は直接1Fの打席手前にあるICカードで自動受付を済ませる。練習場入り口の反対側には、葉山パブリックゴルフコースのフロントがあり、その横にはレストランも併設されている。 取材はレストランで行った。そこからの眺望は抜群で、取材当日は生憎小雨の曇天だったが、遠くに江の島を見ることができた。 練習場がオープンしたのは1991年である。それ以前、ゴルフ場は1975年に6ホール、3年後に9ホールへ増設され、現在の葉山産業が設立された。このパブリックコースは創業者・片岡梧郎氏が自分用のプライベートコースとして造成したのが始まりだとか。 創業家の系譜は、今もつづいている。梧郎氏は1950年に株式会社三和を設立し、三浦半島の観光開発に着目して1963年に葉山国際カンツリー倶楽部を開業した。1965年に新葉山カントリークラブを、1967年に両クラブの統合で葉山カントリー倶楽部とし、その後コース改造を経て1977年、葉山国際カンツリー倶楽部に名称変更。風光明媚な36ホールのリゾートコースに仕上げている。 [caption id="attachment_90192" align="aligncenter" width="788"] 葉山パブリックゴルフコース・練習場 全景[/caption] 練習場の開場は、初代・悟郎氏の没後である。2代目の片岡秀子さんが、葉山国際CCの練習施設という役割も含めてオープンしたもの。2011年には3代目・片岡雅敦氏が代表取締役に就任した。 葉山パブリックゴルフコース・練習場は2階48打席200ヤードで、創業時から変わっていない。責任者の吉澤マネージャーは入社14年の経歴だが、最初はパートで入り、2016年からこの施設の責任者を務めている。夫・昌也氏はPGAのティーチングプロで、昌也氏の父親は葉山国際CCの所属プロだった。吉澤マネージャーは学生時代、家族と練習場を経験し、結婚後はコースデビューを果たしたが、子育てもありゴルフから遠ざかっていた。 江の島が見えるレストランで、吉澤マネージャーがこう話す。 「他の練習場と違うのは、葉山国際CCが近接しているので、ラウンド前の朝練をしてからコースに向かわれる方が多いことです。そのため朝6時から営業していますが、プレー後に練習される方も多いため夜は9時30分までの営業です。ミドルコースの葉山パブリックが併設されているので、練習場と合わせてここを利用される方もいます」 「ミドルコース」とは、あまり聞かない呼称である。パー3が6ホール、パー4が3ホールで、長いパー4は349ヤード。計9ホールはトータル1372ヤードあり、ドライバーやFWも使えるコースとして練習場とともに親しまれている。

地域の健康増進に寄与

[caption id="attachment_90193" align="aligncenter" width="788"] 葉山パブリックゴルフコース・練習場自動受付[/caption] 練習場、ミドルコース、36ホールと、3施設あることで、練習場の商圏も広がっているらしい。 「練習場だけの利用者をみると葉山町や逗子市と近隣の方が多いのですが、ミドルコースと本コースを合わせて練習される方も含めると商圏は東京、横浜などに広がります。練習場の2階からは富士山、江の島、相模湾が一望でき、これほど景色に恵まれている練習場はあまりないと思います。様々な練習スタイルを選べる施設として、アスリートからリゾートでカジュアルに楽しみたい方まで幅広く対応しています」 3名のPGAティーチングプロがおり、スクール・プライベート・グループレッスンのほか、ミドルコースを利用したラウンドレッスンなど様々なニーズに対応している。火曜日はレディースデー、金曜日はシニアデーで、ICカードシステムを利用してポイント10倍を付与。DX化も徐々に進めている。 企業理念は、すべての方に愛され信頼される会社を目指す。 [caption id="attachment_90194" align="aligncenter" width="788"] 葉山パブリックゴルフコース・練習場打席[/caption] 行動指針は、お客様にご満足いただける真心のこもったサービスを実現し、笑顔と感謝の心を大切に、スタッフから最高の時間を提供。地域と社会への貢献等を行うことで社会の一員としての責任を果たす。 等を掲げており、接客を含め親しみが感じられる空気感を心掛ける。女性責任者ならではの視点として、 「10時から14時まで女性優先打席を設けています。後ろに立たれたくない、周りに人がいるのもイヤ。そんな女性の気持に寄り添い、3年前からはじめました。女性がお一人で、安心して来ていただける環境を提供しています」 練習場のトイレや施設は綺麗に清掃されており、配慮が行き届いていると感じた。地域貢献についても、葉山町総合型スポーツクラブ『うぇるま』に練習場として唯一参加、地域住民の健康の保持・増進を目的とする活動に取り組んでいる。 [caption id="attachment_90195" align="aligncenter" width="788"] 葉山パブリックゴルフコース・練習場入り口[/caption] 「今後は葉山町の普段使いの練習場としてご来場いただける方、それと女性の割合を増やしたいですね。上手い下手ではなく、楽しむゴルフを推進することが新規ゴルファー創造のカギだと思っています」 練習場、ミドルコース、ゴルフ場が一体となった施設だから、地域貢献活動による地域との繋がり強化、そして多様な顧客層、特に初心者や女性が「上手い下手に関係なく安心して楽しめる」環境を提供できる。新規・女性ゴルファーを生み出す重要な役割を担える施設として、今後の発展を期待したい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら