トランプ氏の減税・歳出法
アメリカの独立記念日の7月4日、トランプ大統領の肝いり法案である減税法案が成立しました。この法律は大型減税が目玉ですが、その反面温暖化をはじめ地球規模の環境問題に対する大幅な予算削減を伴っています。
新しい法律では、温暖化対策関連経費が今後10年間で5000億ドル(約72兆円)削減される見通しです。バイデン前大統領が行っていた環境政策の多くが中断される内容となっているのです。
現在、アメリカでは電気自動車・EVを購入した場合に7500ドルの支援がありますが、これが廃止されます。特にテスラは政府からの支援策が打ち切られると苦しくなりそうです。そのほか太陽光や風力発電、アンモニア燃料への開発支援も縮小される。
CO2の削減どころか「(石油を)掘って、掘って、掘りまくれ」と化石燃料をどんどん使うよう号令をかけています。
トランプ大統領は就任早々、気候変動枠組み条約のパリ協定から脱退するなど環境問題を目の敵にする政策を推し進めています。
しかし、この減税法案を報道する同じ日の日本経済新聞には、「温暖化の影響で乱気流が発生しやすくなるため航空機が大きく揺れたり、大雨や高温が原因で着陸できなくなる支障が生じ始めている」という記事が掲載されています。また、テキサス州で記録的な雨で大きな洪水が発生し、キャンプをしていた子供など23人が亡くなったという記事もありました(その後、死者は200人以上となりました)。フランスの研究機関は気候変動による大雨の可能性を指摘しています。
「気候変動はない」と断言し、パリ協定から脱退した大統領の思惑とは別に、温暖化の影響が自らの足元から起こり始めているようです。
指導者の義務

トランプ大統領は「アメリカ第一主義」を掲げ、アメリカだけが栄えればいいのだ、と旗を振り続けています。
アメリカが世界で最も影響力がある国であるのは間違いありません。そして、力があるものは全体に対し応分の責任を負う、という考えが世界共通の考え方でもあります。
世界中どこでも昔から、裕福な人や社会的地位の高いものは社会に対して普通の人々より大きな義務と責任を持つことは当然のこととされています。
アメリカのような大国の指導者たる者は、自国の立場だけ考えるのではなく、世界全体のことを考えて政策決定をすべきです。
しかし、トランプ大統領にはそのような考え、義務感はさらさらないようです。アメリカ第一主義というスローガンからも他国や世界全体の状況を全く考慮していないことがうかがわれます。
温暖化の危機

ところで、このまま温暖化対策が遅れてしまうようなことがあれば大変です。各国が自分の国の利益を優先し、周囲の国々と摩擦を起こすようになれば、温暖化はどんどん進んでしまいます。
30年以上前から、私は新聞記者として温暖化をはじめとする地球的規模の環境問題について報道し、活動してきました。その間、オゾン層の破壊や酸性雨など一部の危機は回避されるようになりましたが、温暖化と生物多様性の課題は悪くなる一方です。特に温暖化は危険です。
気候が大きく変化し、これまでの人類の活動の基盤である気温が異常に上昇すると、生活基盤、文明の基盤が根底から崩れてきます。
熱帯の病気が日本にはびこるようになり、農作物が変化します。台風や大雪、大雨が猛威を振るうようになるでしょう。海面が上昇すれば、多くの都市が使い物にならなくなります。
スキーもゴルフもできない

私は今でもスキーとゴルフが大好きです。しかし夏のゴルフは自宅近くでは暑くてプレーできません。スキーは雪が年々少なくなり、1月から3月ぐらいまでしかできなくなっています。
これまでは、冬はスキー、その他の季節はゴルフを楽しんでいたのですが、スキーの季節が短くなり、ゴルフも夏はできなくなっています。
そんな個人的なことはともかく、生活の基盤が崩れるようになったら大変です。
では、どうしたらよいでしょう。まず、世界の多くの人々が正確な知識を持つことです。
深刻な地球環境問題に対して無知であるならば、怖くもなんともありません。知識があれば、その恐ろしさに気が付きます。
これまでも何度も申し上げていることですが、あえて繰り返します。ゴルフを楽しむ人々は国や地域のリーダー層が多い。そうした方々こそ率先して、世界や地域の危機に対する責任を強く感じていただきたいのです。
パリ協定

パリ協定は、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。2015年にパリで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議で合意されました。当時の米国・オバマ大統領が中国やインドに批准を働きかけるなどした結果、2016年11月4日に発効しました。
パリ協定では、
1) 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
2) 21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
などが決まっています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
[surfing_other_article id=90871][/surfing_other_article]