連載SDGs 第54回 地域に貢献するゴルフ場 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

連載SDGs 第54回 地域に貢献するゴルフ場 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

全英女子オープン

今年の全英女子オープンでは、山下美夢有選手が優勝しました。2019年の渋野日向子選手以来の快挙でした。しかしなぜか渋野選手が勝った時ほど日本中が沸くことはなかったような気がします。 いろいろ考えてみました。渋野選手の優勝は、1977年の全米女子プロゴルフ選手権を制した樋口久子選手以来42年ぶり2人目の海外メジャー優勝だったことで、ニュースバリューが大きかったことが一番だったと思いますが、それに並んで、いやそれ以上に、日本のテレビ局による朝早くの実況中継の影響が大きかったと思います。 大人気となった渋野選手の「スマイル・シンデレラ」と呼ばれた明るい笑顔、プレー中のキャディとの会話の様子、タラの駄菓子をかじる映像など、彼女の一挙手一投足を国民の多くが見たことです。あのテレビ実況の効果、影響はすごく大きかったのではないかと思います。 それに対し、山下選手の場合は一般テレビの中継が無かった。U-NEXTが独占中継をしたので、多くの人はあのゲームを見なかった。 その結果、朝の一般ニュースで山下選手の快挙が伝わったので「すごい!」とは思ったものの、いまひとつピンとこなかったのではないでしょうか。 渋野選手の場合、一般テレビ局の中継だったため、お父さんやお母さんがテレビをつけていれば、子供たちはそれとなく横目でも見ることになります。臨場感があり、大人が「すごい!」と叫べば子供たちもすごいのかなと思う。加えて渋野選手のものおじしない態度、スマイルなどが重なり、小学生から大人まで、ゴルフに興味がない人にもゴルフの面白さを植え付けることにつながったのではないでしょうか。

WBCの中継

同じような現象が野球の世界でも起きようとしています。第6回ワールド・ベースボール・クラシック(世界野球ソフトボール連盟公認の世界選手権大会)ではNETFLIXが独占中継をすることになりました。前回の決勝戦での大谷投手とアメリカのトラウト選手との対決や、準決勝での村上選手のサヨナラ2塁打などの興奮を全国民が共有できたことも、野球人気の復活に大きな影響を与えたのだと思います。 しかし、次の大会はNETFLIXでしか見られないということになると、どうでしょう。野球がかなり好きな人しかNETFLIXとの契約をしないでしょう。すなわち、どこのご家庭でも職場でも気軽には見ることができない。そしてWBCへの関心は薄れていく、ということになりませんか。 WBCも全英女子オープンと同じような経過をたどっていくのではないか、と不安がよぎります。 誰もがほぼ自由に見る機会があるのと、わざわざ契約手続きをしてお金を払って見るのでは大違いです。そして、あまり関心のない人々をゴルフ好き、野球好きに導く機会がかなり失われます。 全英女子オープンやWBCの主催者たちは、目先のお金につられて、ファン層の拡大や将来への布石といった大事な点を見失っているのではないか。そんな気がしてなりません。 若者層や女性の開拓、ゴルフ場の新たな活用など、ゴルフ界共通の大きな目的を忘れている危険が潜んでいるのではないか、と感じます。

ゴルフ場の多目的活用

この連載でも何回か指摘させていただいたのですが、ゴルフ場は今や地域自然、里山保全の最前線にいます。地域の小動物や昆虫、鳥などがゴルフ場に多く移り住んでいます。ゴルフ場が周囲の自然を少しだけ手入れすれば、かなり豊かな生態系が戻るはずです。会員の寄付やボランティアなどで、地域の自然の宝庫となる可能性があるのです。 行政やNPOなどと連携し、ゴルフ場周辺の野山と豊かな自然を守り育てるという積極的な地域支援ができます。 また、多くのゴルフ場は、観光や文化、芸術にも関与できる施設を抱えています。役所やNPOなどと協力すれば、ゴルフ場は地域になくてはならない存在に変身するでしょう。千葉県市原市のように、市を挙げてゴルフ場を活用しようという自治体も増えるでしょう。 ゴルフ場が元気になれば税金も多く支払えるでしょうし、観光の資源にもなる。何よりもゴルフ人口の増加に寄与します。 ゴルフ場内での絵画展、コンサート、ボールがほとんど飛んでこない場所に小道を作っての半日ハイク、さらにはゴルフ見物しながらのバーベキューなど、ゴルフ場の特性を生かした「別なビジネス」を展開することもできるでしょう。 ITやAIがまだ発達していなかったころと今では、ビジネスの世界は大きく変っています。新しい世の中に挑戦し続けることこそ、ビジネス発展の基本要素です。 大人も子供も家族も障碍者も、誰もが喜んでくれるゴルフ場経営に転換することが、今、最も必要なのではないでしょうか。中年男性中心のゴルフ業界から視野を広げた経営へと脱皮することこそ、今後のゴルフ活性化につながるのだと思います。

15 陸の豊かさも守ろう

豊かな自然を守り育てるための方策として、SDGsでは次のように陸の自然の保護を訴えています。 15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 15.4 2030年までに、持続可能な開発に役に立つ山地の生態系を強化するための保全を確実に行う。 15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、陸域・海洋生態系への影響を大幅に減らす対策をとり、外来種の駆除または根絶を行う。 15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定などについて戦略を作る。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら