連載SDGs 第57回 SDGsの課題がすべてある国 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

連載SDGs 第57回 SDGsの課題がすべてある国 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

ヒマラヤの高峰を背に

12月初旬、ネパールでゴルフをする機会がありました。場所は、首都カトマンズのロイヤル・ネパール・ゴルフクラブです。9ホールのコースですが、案外面白かった。 思い立って急にゴルフ場に行ったため、すでに満員ということであきらめかけたころ、一人でプレーする方が「一緒に回ろう」と言ってくださり、無事プレーができました。彼は弁護士だそうで、遠来の客に非常に親切でした。 土曜日で外国人、ということで特別価格だったようですが、5000円でした。クラブのレンタル代が1500円。そして、キャディのチップが1000円の計7500円。 [caption id="attachment_92667" align="aligncenter" width="788"] ロイヤル・ネパール・ゴルフクラブのレストラン。[/caption] レンタルクラブはしかし、年代物の古さでした。どのクラブも私にはやや重い。 大丈夫かなとドライバーを振り切ると案外うまく飛び、弁護士殿より飛んで拍手でした。続いてのクラブは全てキャディさんが選定し、言われる通りに打ちました。するとどうでしょう、ダフらず、芯に当たるではないですか。このキャディさん、プロ選手のアルバイトでした。彼がボールをセットしてくれてグリーンでも球筋を丁寧に教えてくれる。お陰様で気持ちよくプレーができ、成績も日本より段違いに良かった。 特別に腕が上がったわけでもないのでしょうが、キャディさんが私の年齢を考えて一つ二つ上のクラブを選定してくれたのが良かったのだと思います。

伝統の香り

[caption id="attachment_92668" align="aligncenter" width="788"] コースでは随所に猿が遊ぶ。[/caption] コースには猿が多く出没し、驚きましたが、ボールを持っていくなどの悪さはしないようです。プレーヤーものんびりしたもので、スコアをつけている方はほとんどいないようでした。 「試合以外は楽しめばいいんですよ。ゆっくりいきましょう」 同行の弁護士殿は悠揚迫らぬ態度です。私もすっかりリラックスし、力まずに振れたのでしょうか。おかげで何かがつかめたのかもしれず、日本でのプレーが楽しみです。 プレーを終えてクラブハウスに入ると、とてもシックな造りに気分が良くなりました。このクラブは1917年(大正7年)の設立で伝統があります。国王や外国の首脳がプレーをする写真が多く飾られ、歴史の重みが感じられます。さすがにイギリス仕込みの風格がある。 [caption id="attachment_92669" align="aligncenter" width="788"] 同行の弁護士さん(左)と私[/caption] しかしながら、ギアが古すぎる。皆さん10年も20年も前のギアを使っている。ショップでも古いものしか売ってない。 私はふと自宅にある余分なセットを送りたくなりました。ゴルフ関係の皆さん、日本の物置などに眠っているクラブセットを集めてネパールに送ったらどうでしょう。 ネパールではゴルフはまだお金持ちの遊びです。この楽しい遊びをもっと普及させてあげたい。いや、お手伝いをしたいと強く思いました。 [caption id="attachment_92670" align="aligncenter" width="788"] 古いクラブの展示もありました。[/caption]

生物多様性の危機

[caption id="attachment_92671" align="aligncenter" width="788"] 背後のビルが見える都市型コース[/caption] ネパールはまた、生物多様性に富む国です。南部に行けばゾウやサイなどがいます。北にはユキヒョウがいます。植物も動物もとても多様です。しかしこの多様性が危機に瀕しています。 まず、森林の破壊です。理由は、農地拡大や放牧、薪の過剰使用などです。背景には人口増加と貧困があります。さらには密猟。トラ、サイヒョウなどは、皮や牙などが高く売れるからです。 野生生物の農地への侵入、気候変動による氷河の融解、植物や動物への影響、外来種の侵入など多種多様の形で生態系は狂ってきています。 これに対し、ネパール政府は新しく「Community Forestry」という制度を作りました。「森林を国家が独占管理するのではなく、村人に返す」というような制度です。 地元の人にお金が回る仕組みだったので、うまく回っています。村人は薪や飼料だけでなく、木材販売や観光で収入が増え、違法伐採を村人自身が止めるようになりました。 ネパールの森林面積は緩やかに回復し、緑が戻ってきました。衛星画像でも確認されています。 この制度は結果的に、女性メンバーの活用を通じて社会の公正性・ジェンダー平等につながり、さらに村の収入も増え、学校建設、飲料水の整備、健康サービス、奨学金などに使われています。 ネパールでもようやく改善の動きが出始めています。こちらも応援したくなります。

恩返し

[caption id="attachment_92672" align="aligncenter" width="788"] カトマンズから見えるヒマラヤ。スモッグがひどく、山々がかすんでいる。[/caption] ネパールはほんの一例です。同じ境遇にある国はたくさんあります。そして多くの国々には豊かな生態系があると同時に破壊が広がり、環境全般に悪影響が出ています。まさにSDGsの課題がすべて当てはまります。日本政府の支援はもちろん必要ですが、市民レベルでの交流も大きな力になります。また、支援することを通して、私たちもより多くのことを学ぶことができます。 私自身はネパールに日本語学校を作り、日本への留学を推進する活動を始める予定です。今回はその準備のための旅でした。若い頃ヒマラヤ登山でたくさんお世話になった国へのささやかな恩返しのつもりです。

途上国への支援

SDGsの項目を改めて掲げます。 1・貧困をなくそう 2・飢餓をゼロに 3・すべての人に健康と福祉を 4・質の高い教育をみんなに 5・ジェンダー平等を実現しよう 6・安全な水とトイレを世界中に 7・エネルギーをみんなに そしてクリーンに 8・働きがいも経済成長も 9・産業と技術革新の基盤をつくる 10・人や国の不平等をなくそう 11・住み続けられるまちづくりを 12・つくる責任 つかう責任 13・気候変動に具体的な対策を 14・海の豊かさを守ろう 15・陸の豊かさも守ろう 16・平和と公正をすべての人に 17・パートナーシップで目標を達成しよう
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら