近年相次ぐ「基礎自治体」と「ゴルフ場・ゴルフ練習場」との包括連携協定

近年相次ぐ「基礎自治体」と「ゴルフ場・ゴルフ練習場」との包括連携協定

災害対策を中心とした包括連携協定が急増

近年、自治体と企業等における包括連携協定締結などの連携が全国で急速に増えているとされる(Public dots & Company,2021)。「包括連携協定」とは、広義には自治体と企業等が協力し、地域が抱える課題に取り組むことを指す(石原,2018)が、津久井(2017)によれば「地方自治体と企業とが経済・観光・教育・災害対策・環境保全等幅広い分野で協働することを協議して決定するもの」と定義している。最近では、気候変動や地震活動の活発化により大規模災害が激甚化・頻発化していることから、特に災害対策について行政単独での対応が困難になるケースが増加あるいは想定されており、自治体間や民間企業等との防災に関する連携協定が全国的に急増・高度化している。

「ゴルフ場と自治体の連携協定実態調査」の背景と方法

ゴルフ施設と自治体による直近の事例では、2026年5月25日に、中国5県(岡山、広島、鳥取、島根、山口)と一般財団法人中国ゴルフ連盟の間で「災害時における被災者へのゴルフ場の支援協力に関する協定」が締結されている。調印式では、中国5県の各知事が「被災者のクラブハウスへの受け入れ」、「飲料水の提供」、「浴場や食事場所などの提供」、「臨時ヘリポートの設置」、「自衛隊・警察・消防の一時拠点設置」などに関する調印文書に署名したとされる。 この例のように、近年、ゴルフ場等と自治体の連携協定に関するニュースを目にする機会が多い。しかしながら、どのような目的で、どの程度の連携協定が結ばれているのかを統括し報告した調査は見あたらない。 そこで、本稿では、地域におけるゴルフ施設(ゴルフ場・ゴルフ練習場)との包括連携協定の実態を明らかにすることを目的として調査を実施した。本研究では、特に災害対策意識が高まる契機となったと思われる、東日本大震災(2011年3月11日)以降の調印締結について抽出し情報分析を試みた。その結果、2026年6月11日現在の時点で、自治体ウェブサイト等で確認できるゴルフ施設との連携協定は28件確認された。

ゴルフ場との連携協定の時期

連携協定28件の締結時期は以下であった(表1)。2015年と2019年以外の年度においては連携協定が確認された。

ゴルフ場と連携協定した自治体

28件のうち1度の調印式で複数の自治体がゴルフ施設と連携協定を結んだ例として、2013年8月の関西広域連合(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県、京都市、大阪市、堺市、神戸市)および2026年5月の中国5県(岡山県、広島県、山口県、鳥取県、島根県)等の連携協定が見られた。また、自治体以外の例として警察署(和歌山県和歌山東署)との連携事例もあった。全体的には東日本地域の基礎自治体での包括連携協定が多かった。特に、茨城県、岐阜県、千葉県が多くみられた。 具体的には、【宮城県】大郷町、【茨城県】阿見町、笠間市、つくばみらい市、牛久市、【新潟県】胎内市、【岐阜県】恵那市、御嵩町、御嵩町(2回目)、美濃加茂市、あわら市、【埼玉県】日高市、【千葉県】千葉市、印西市、富津市、市原市、【神奈川県】相模原市(神奈川県と合同)、【東京都】足立区(練習場との連携)、多摩市、【静岡県】小山町、【和歌山県】印南町、【兵庫県】加東市、神戸市、宝塚市、【佐賀県】多久市、であった(表2)。

連携先ゴルフ企業や団体の形態

複数ゴルフ場との連携協定が16件、単体施設との連携協定が12件であった。複数ゴルフ場との連携の具体例としては、関西広域連合と(一社)関西ゴルフ連盟と徳島県ゴルフ協会(関西約250カ所、徳島12カ所)との連携や、あわら市ゴルフ場協議会または市原市ゴルフ場連絡協議会など地域のゴルフ場連合体との連携、同地域で複数のゴルフ場を運営する企業との連携などであった。ユニークな例では、宝塚市と2ゴルフ場間の「ペット避難に関するゴルフ場との災害時協定」がある。ペット及び飼い主のクラブハウスへの収容やペット専用のスペースを設け、避難者全体の安全に配慮しながら保護することなどが盛り込まれている。 ※本研究の詳細は、2026年9月に茨城大学で開催される第18回地域活性学会で発表予定である。 参考文献・参考資料 ・Public dots & Company(2021)自治体と企業の包括連携協定─傾向と課題(前編)https://publab.jp/2021/12/24/3675/(2026年6月11日確認) ・石原 肇(2018)基礎的自治体とコンビニエンスストアとの地域包括連携協定、2018年度日本地理学会秋季学術大会発表要旨集 ・津久井稲緒(2017)自治体と企業との包括連携協定の可能性、日本経営倫理学会誌24巻 p.149-164 ・北 徹朗(2026)自治体とゴルフ場またはゴルフ練習場における災害対策等に関する包括連携協定-東日本大震災以降の調印締結に関する分析-、第18回地域活性学会抄録集(印刷中)
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら