地域住民の「笑顔」を見たい
関西のゴルフショップ「ゴルフギアサージ」は兵庫県に6店舗、大阪府に2店舗を構える老舗。アウトレットやゴルフスクールの併設店もあるなど、地域のゴルファーに親しまれてきた。これを経営するのが1973年創業の西明石ゴルフショップである。
その同社は今年3月、旗艦店となる西神戸店内のスクールの一部を改装して、シニア向けのフィットネスジム「元気創造広場【EMIO】エミオ〜笑みを〜」(エミオ)を開業、このほど本格的に訴求を図る。
「店名の由来は、地域のみなさんに『笑みを』与えたいと考えたからです」
同社の朝日貴信常務はそう前置きして、次のように続けた。
「エミオが入る4階建てのビルは、4階がスクール、3階がアウトレット、2階に専門店のギアサージが併設されており、売り場面積は350坪で当社の旗艦店になっています。ジムは4階にオープンしましたが、これには2つの狙いがあって、具体的には地域貢献と高齢化対策を目指しました」
専門店はネット販売の台頭もあり、総じて苦境に立たされている。このような状況を打開するには、地域密着型の利点を生かして「痒いところに手が届く」サービスを提供しなければならない。いわゆる「利己」より「利他」の精神で、顧客に愛されることが肝心だ。
ところが、同店が過去の営業データを調べた結果、地域住民の90%以上が来店していないことがわかった。来店率を高めるために店舗スペースの一部を「憩いの場」にしようと考え、手軽にフィットネスを楽しめる場を提供することになった。
「そのため敷居をかなり下げています。一般的なフィットネスジムのように入会金やカード発行料、システム料は一切取りません。シンプルに1回500円で、営業時間の10時から19時まで時間無制限で利用できます。
インストラクターはいないので、自分のペースで楽にトレーニングできるのも特徴ですね。着替える必要もなく、そのままの服装と靴で利用できます」
もともと社員の会議室
エミオのスペースは約17坪で、もともと社員の会議室として使っていた場所。そんな話を聞くと、ゆるい感じの施設を想像するが、本格的なマシンが揃っているという。朝日常務の説明によれば、
「万能筋力マシン『キネシス』など、19台のトレーニングマシンが揃っています。これらは東京や大阪といった大都市圏のフィットネスジムも導入しています。
ただし、どれも筋力を本格的に鍛えるのではなく、少しの力で行えます。皆でおしゃべりしながらストレッチ感覚、といった感じでしょうか。疲れたらマッサージ機で休んでもいいし、本格コーヒーで一息ついてもいい。あくまでもくつろいでもらうことを念頭に置いています」
対象年齢は定めていないが、実際の利用者は60歳以上が大半であり、開業当初は一日4人ほどの利用者と、自慢のマシンも手持ち無沙汰の様子だったという。
「具体的な金額を言うのは少々気後れするのですが、将来的には月商40万円程度になれば」
と朝日常務は笑う。
とはいえ、改装費用に加えて、機材関連だけでも相当額の設備投資が必要だったのではなかろうか。また、500円で一日4人とすれば月商6万円ほどだから、目標の達成には7倍の来場者が必要になる。早期に達成できるのか?
「PRと言うほどのものではないのですが、最近では郵便局のタウンプラスを利用して、地域の方に『EMIO』のことをお知らせしています。その効果もあってか、段々と認知されるようになり、最近では一日に10人くらいの日もあります。
利用者の年齢からして、ウェブサイトやSNSなどでの訴求はあまり届かないだろうと思うので、今のところホームページを作る予定はありません。
まあ、スペース的なことを考えると、多くの人が来過ぎて窮屈な思いをさせても申し訳ないですし、リラックスできる雰囲気が半減してしまいます。丁度いい感じがベストですね」
機材の購入は新品と中古をうまく組み合わせたりなど工夫したという。
「もちろんしっかりしたトレーニングマシンなので、1台につき最低でも20万円以上はかかっています。全体の設備投資費ですか?一般的なフィットネスジムに比べて申し訳ないくらいの金額なので、そこはオフレコでお願いします。そもそものコンセプトが長年お世話になっている地域住民への貢献が第一なので、利益は度外視なんですよ(笑)」
現在、ギアサージ西神戸店で商品を購入した方には、初回無料チケットも配布中。今後、機材のメンテナンス費用もかかるだろうから、朝日常務が言うように確かに利益度外視の良心的な価格設定と言える。
「認知症予防」のWAGと連携する?
団塊の世代が主要顧客となるゴルフ界は近い将来、シニア層のゴルフリタイアが大量発生する危機に瀕している。これを食い止めるためにはプレー寿命の延伸策が不可欠で、最大手の住友ゴム工業(ダンロップスポーツ)はフィットネスとゴルフの融合を推進するなど懸命だ。
注目されるのはウィズ・エイジングゴルフ協議会(WAG)の活動である。これはゴルフ関連の5団体が各100万円を出資して立ち上げた機関で、今年3月、ゴルフは「認知症予防に効果がある」ことを発表した。医療機関や東京大学等と共同研究したもので、学術的な裏付けをとっている。
「ゴルフは認知症予防に効果あり 髙橋会長が構想語る」
「認知症の予防にゴルフは役立つ!超高齢化社会の到来に朗報」
WAGは今後、地方自治体を通じて「ゴルフで認知症予防」の活動を広める構想をもつ。具体的には、子供用のプラスチック製ゴルフ用具を使うスナッグゴルフや、地域の練習場に高齢者を招き初心者を指導するプログラム、長続きさせるための「仲間づくり」などソフト面も充実している。WAGの指示を受けた県単位のゴルフ連盟が主導する方針だが、その際の課題はゴルフ未経験者のシニアを如何に巻き込むかに集約される。
カギは、地域のゴルフ関連企業の賛同を得ることだが、創業45年のゴルフギアサージは地元ゴルフ界にカオがきくはず。ここはひとつ、認知症予防の旗振り役として、エミオを拠点にしてもらいたいもの。高齢者に生き甲斐を与えられれば、結果的にゴルフ市場の活性化につながるはずだ。
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こちら
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