サンドブラストで生き返る モノも気持ちもトトノエル

サンドブラストで生き返る モノも気持ちもトトノエル
COMPLEX GOLF 104 豊島大樹氏 高校球児だった豊島大樹氏。3年生の夏が終わり、近隣の練習場・初石サンシャインゴルフでバイトした。卒業後、マルマンで製造に従事。以後、ワールドワン、GMA、クレイジー、都内工房と渡り歩き、今年1月6日、自身の工房を立ち上げた。製造、ツアーサービス、シャフト、工房と業界歴35年。熟練の技は、通常は製造工程で行われるフェースのサンドブラスト。その表面仕上げの技術を一般ゴルファーに行う。

製造技術をゴルファーに「使い続けたい」が起点

豊島大樹氏といえば、業界でも知る人ぞ知る存在。マルマンから始まり、新進気鋭のメーカーにも在籍し、酸いも甘いも経験した。その豊島氏が一念発起。今年1月、千葉県流山市の練習場・初石サンシャインゴルフ内に工房をオープンした。「これまでは雇われで、初めての独立です」―。 そう笑顔で返す豊島氏は、ヘッド7社、シャフト10社以上の試打クラブを揃え、練習場でとにかく体験してもらえる工房を目指すという。 「オープンから日が浅いですが、クラブはいじれるもの、シャフトは変えることができるということを知らないゴルファーは意外に多い。だから、自分の好きな時に打ってもらって、クラブが変わると何かが変わることを体験してもらいたいんです」 その工房メニューにラインアップされているのが、フェースブラスト。通常、ヘッドの仕上げでメッキによる光りすぎを曇らせたり、スピン性能を向上させる加工だ。 「愛着のあるウエッジが古くなっても、スピンが効かなくなっても使い続けたいゴルファーは多いんです。サンドブラスト加工で、溝もスピンも戻ります。そして使い続けてもらえます。製造過程で使う技術ですが、ゴルファーに有益と思い、サービス化しています」 その技を取材した。

肝はマスキング光り具合でムラを判断

ヘッドの仕上げ加工で使われるサンドブラスト。その作業自体を行う機械はサンドブラスタと呼ばれ、中には研磨剤となる砂が入っており、圧縮した空気をぶつけることで、浮遊した砂がフェースなどにぶつかり、微細な研磨ができる仕組みだ。 「大事なのは、ブラスト前のマスキングです。フェースならスコアラインと垂直に砂を当てない部分をマスキングしていきます。これが垂直でなければ、構えた時の違和感が出てきますね」 そして、サンドブラスタに両手を入れて、砂をフェースに当てていく。 「中に電灯があり、その反射でムラがなく砂が当たっているかが分かります。光っていれば研磨できていないですし、火花がでれば本体の素材まで削れていることになります。もちろん、そこまでは砂を当てません(笑)」 マスキングに10分、サンドブラストは1分もかからない。ヘッド単体で工賃1320円、シャフト脱着が必要な場合は4620円で、フェース面が生きかえる。 「あまり工房では行っていないサービスなので、需要はあると思っています」

モノと気持ちが整えばゴルファーは喜んでくれる

豊島氏の考えはこうだ。 「技術の出し惜しみはしません。それでゴルファーが喜んでくれれば良いんです。サンドブラストも同じです。最初に話しましたが、手放せないウエッジ、一本物のウエッジを使い続けたいゴルファーは多い。でも『もう溝がだめですよね』ってあきらめてしまう方がほとんどです。サンドブラストなら、溝も生き返りますし、フェースの錆びも取れる。大きな傷は治りませんが、使い続けることができるんですよ」 そして、次のように続ける。 「ゴルファーの気持ちって大事だと思うんです。もちろん工房ですから、新しいウエッジを買ってもらった方が経営的には楽かもしれません。でも、そうじゃないこともある。そこに私が製造で学んだ加工技術が役に立てるのなら本望ですし、モノも気持ちも調えば、ゴルファーは楽しいですよね」 グリップ交換で、クラブを新調したような気分になる。同様にフェースのサンドブラストでゴルファーの心持ちはリフレッシュする。製造の現場にいたからこそできる技が、ゴルファーのワクワク感を作っていた。 尚、月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド2月号の78頁「技」で、「豊島大樹昭」と記載しておりますが、正しくは「豊島大樹」です。お詫びして訂正致します。 店舗情報 COMPLEX GOLF 104 〒270-0114 千葉県流山市東初石1-74-3 初石サンシャインゴルフ内 TEL:070-3254-5527 この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。