代官山(東京都)に、ゴルフシューズの市場シェア1位となったアディダスゴルフ「コードカオス22」のポップアップストアが8月27日から、期間限定でオープンした。2フロアで構成され、1階では購入や試し履きができ、2階は暗闇の中で視覚、聴覚に訴えかけるインスタレーションを通して、コードカオスの創造ストーリーを体感できる。
ストアは、世界展開するメディアカンパニーHYPEBEAST社と株式会社ジュンが協業。7月16日にオープンしたHYPEGOLFの旗艦店をジャックする形で実現している。「ゴルフ×ストリートカルチャーの新たな提案」というHYPEGOLF旗艦店のテーマと「ゴルフの既成概念を壊す」というコードカオスのコンセプトを掛け合わせて実現した。その経緯を「HYPEGOLF JAPAN」の編集長を務めている笹川陽介氏に聞いた。
「大規模なコラボレーションは初めて。綺麗にゴルフシューズを展示するのが普通ですが、今回はカッコイイことを追求して形にしました。子ども達に多様性のあるゴルフスタイルを提案できたら、小学校や中学校からゴルフを始めてくれて、将来の夢にサッカーや野球に加えて、ゴルフ選手が選択肢の一つとして出てきてもいいんじゃないかな」
また5月5日には「THE FORTY-NINERS CLUB」が世田谷(東京都)にオープンした。駒沢公園を目の前にした緑豊かなエリアに位置し、スポーツバーのようなオープンでカジュアルな空間でウェア選びから食事までを楽しめる。店名は、カリフォルニア州で金鉱脈が発見され始まったゴールドラッシュに由来する。1849年、一攫千金を狙ってカリフォルニア州に集まった人々は年号にちなんで「フォーティナイナーズ」と呼ばれ、同様に大きな夢と希望を持つ人々の刺激的なコミュニティになれば、と名付けられた。運営を担い、取り扱いブランド「TFW49」を手がける、株式会社COMITAS代表取締役の林知宏氏に話を聞いた。
「コロナ禍もあり、物を売るだけではビジネスが成り立たないと感じて、アパレル、雑貨、飲食、体験を軸としたコミュニティ形成を目指して出店に至りました。ゴルフ同様にお酒も好きなので、クラフトビールを中心に、ナチュールワインなどにこだわり、食事だけでも楽しめるセレクトとなっています。今後は地元に根付いたお店にして、イベントなどを開催し、ブランドの価値向上につなげたいです」
9月23日には、こだわりのファッショニスタに向けたゴルフブランド「V12」初のフラッグシップショップが六本木にオープンした。2015年のブランド立ち上げ後、スタイリスト感覚のモノづくりからスポーツブランドへの方向転換を果たし、4年ほど前からビジネスが軌道に乗り始めた。今後の展開にモヤモヤを抱えていた株式会社フォーマット代表取締役の牛田元氏は、相談をした業界の先輩に背中を押されて初の路面店オープンを決意した。
「あらためてお客様ありきだと考え、テナントではなく自分たちでコントロールができる路面店を考えました。2020年頃から探し始めて、今年の8月に物件が見つかり、2カ月弱でオープンにこぎつけました。ありきたりですが、想像でしかなかった実際のお客様とリアルに接する大切さを実感しています。少人数でやってきましたが、これからは徐々に規模を拡大し、ゴルフをブームで終わらせないで、生活に欠かせないものの一つとして確立できるような役割を担いたいです」
筆者は今回の取材で、自分はすでに保守的なゴルフ業界サイドにいるのだと実感。紹介した3店舗は一見派手さが目立つが、実は驚くほど真面目。新しいことにチャレンジして、壁にぶつかりながらも、周囲との融合でトレンドを作る姿は頼もしい。大いに学ぶべきだと感じた。
注目されるニューゴルフアパレルの代表にブランドヒストリーをインタビュー。
笹川陽介氏(HYPEGOLF JAPAN編集長)
HYPEBEASTは、2005年にケビン・マ氏によるスニーカーのウェブサイトから始まりました。2016年に上場し、今では合計4千万人を超えるユーザーにリーチできるメディア企業です。2019年に日本のストリートカルチャーの普及と市場拡大を目的としてHYPEBEAST JAPANを設立。無類のゴルフ好きなケビンのインスタグラム投稿を見て、速攻で「一緒におもしろいことをやろうよ」と、ダイレクトメッセージを送ったのがきっかけです。新しいことにチャレンジして、商業的になりすぎずに、ゴルフが好きで面白いことをやりたいという情熱とピュアな感覚をキープしていきたいですね。
林知宏氏(株式会社COMITAS代表取締役)
TFW49は、ファッションからライフスタイルコンセプトへトレンドが移行する中、2016年にスタートしたブランドです。ちょうどゴルフにハマった時期が重なり、2018年にゴルフラインをつくりました。TFWはTHE FORTY-NINERS WISDOMの略で、ゴルフ、アウトドアなど様々なレジャーシーンを楽しむ中で、得た経験や知識をプロダクトに活かすことをコンセプトにしています。一着に2つの素材を組み合わせる「2in1」とカッティングにこだわっており、着心地の良さには自信があります。2020年以降、コロナ禍によるゴルフブームで多くのファッションブランドが参入し、プロダクトによる差別化は難しくなりました。同年に片岡尚之のサポートを開始し、今後も若手でカッコイイプロゴルファーのサポートに力を入れていきたいと思っています。
牛田元氏(株式会社フォーマット代表取締役)
スノーボードばかりでしたが、8年ほど前にゴルフを始めました。何も知らないからこそ不思議な事が多く、個人的に欲しいものを作り始めたのがきっかけです。スタイリストの感覚で、キャディバッグを5本ほど買って使い分けていましたが、一般常識では難しいとわかり、着せ替えができるキャディバッグを開発して事業をスタート。期待ほど話題にならず、ゴルフで成功するためにはスポーツブランドとしてのモノづくりをする必要があることに気付きました。そこからは、「Play the Fashion」をコンセプトとして、ゴルフに行きたくなって、プレーをしていて楽しくなるようなウェアづくりに徹しています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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