2016年10月、都内世田谷区のオークラランドゴルフ練習場内にオープンした「大蔵ゴルフスタジオ」。開業から8年、フィッティングスタジオという立ち位置で、ツアープロを含め多くのゴルファーが拠り所としている。その常連客である52歳のA氏。公認会計士という職業柄、ゴルフは理論派。練習時間はないが、アイアンのミスをゼロにして、常にスコア90を切りたい。そのA氏に薦めたのが、キャスコの『UFO Speed』とロッディオの『LUNAR』の組み合わせで7本。セッティングからアイアンを抜いた。その効果を検証する。
ゴルフは娯楽だから組み合わせは何でもあり
大蔵ゴルフスタジオがオープンしてから8年。フィッティングスタジオという位置づけで、初心者からツアープロまで幅広いゴルファーが通う。試打できるシャフトは2000本と、ヘッドとシャフトのマッチングも無限に近い。代表の市川雄一郎氏は、
「ゴルフをスポーツとしてはとらえていません。だから、こうでなくてはならないという考えはないんです。極力練習せずにクラブで何とかして、という常連客も多いですが、それもアリですね」
その典型が今回登場するA氏。毎年クラブがセットごと変わり、ミウラもロマロもPXGも一通り使った。そのA氏の悩みはアイアン。公認会計士という仕事柄、合理的に物事を考える。練習に時間がさけず、とはいえ、アイアンのミスをゼロにしたい。探求心が強く、様々なスイング理論が頭に入っていながら、理論通りに身体が実行できない。だからミスがミスとして現場で起きてしまう。
そのA氏は当初、米国メーカーのリーズナブルなUT型アイアンを購入。8本で3万円の初心者用アイアンだった。
「もちろん、シャフトも合いませんし、価格相応なので、A氏が求めるミス軽減の条件を満たしていませんでした」
そこで薦めたのがアイアンの代わりになるキャスコの『UFO Speed』のヘッドとロッディオのしっかり系シャフト『LUNAR』(UT用)だった。
アイアンを抜いて『UFO Speed』7本
A氏が求めたのが、ミスをした時に結果としてミスとならないクラブ。理論派だが、練習をしない。
そこで持ち込んだクラブの代わりに薦めたのがキャスコの『UFO Speed』。「アイアンなしで、もっと楽に飛ぶ」という謳い文句で、立ったロフトのヘッドは FW形状、ロフトが寝るにしたがってUT形状のクラブ。A氏には『33』(ロフト15度)、『44』(同18度)、『55』(同22度)、『66』(26度)、『88』(同34度)、『99』(38度)、『PP』(同42度)を推奨した。採用したのは、ロッディオの『LUNAR』のUT用シャフト。シャフトが必要以上に動くことを嫌い、しっかりとしたフィーリングを求める、比較的上級者のゴルファーに多いニーズに応えたシャフトである。
「A氏はHSがドライバーで40m/s程度ですが、スイングやスコアからいえばしっかり系のシャフトが合います。とはいえ『練習をしないで、ミスを失くす』というリクエストがなければ、『UFO Speed』にロッディオの『LUNAR』をセッティングすることは通常ないですね」
それも7本も投入した。
「特に『LUNAR』は、手元調子で重めのシャフト。ヘッドとのバランスは通常なら良いとは言えません」
メーカー純正の『UFO Speed』は『88』(Sフレックス)の総重量が363g。しかし、ロッディオ『LUNAR』(Sフレックス相当)を装着したクラブの総重量は、同じ『88』で399.5gと30g以上重くなっている。バランスはD2.0だが、純正品ならC9。その組み合わせで、A氏はミスが減ったのか?
年1回買い替えるA氏が今回はエースクラブになった
A氏は年1回、すべてのクラブを買い替えるヘビーゴルファー。それが今回の 『UFO Speed』と『LUNAR』の組み合わせにしたところ、
「半年以上は使い続けていますから、エースのセッティングになっています。いまでも練習する時間はないと聞いていますが、それでもミスが減ったそうですから、レアなセッティングだけど、A氏には大きな効果があったのでしょう」
「練習をしないゴルファー」―。
実は、大蔵ゴルフスタジオの常連客には、
「アンチレッスンのゴルファー、つまり教えられたくないゴルファーは多いんです。クラブで何とかしてくれって。なので、それぞれゴルファーの求める内容に合わせて、振り心地を重視してフィッティングしています」
昭和のモーレツゴルファーと違い、練習場でトラック1台分のボールを打つゴルファーは少なくなった。合理性を求め る中で、通常のクラブセッティングの概念が変わっている。アイアンなしのA氏のセッティングも、目から鱗のマイカスタムといえるだろう。
メーカー担当者コメント
キャスコ 開発・企画部 藤原 雅彦氏
「『UFO Speed』はフェアウェイウッドからアプローチウエッジまでの距離をやさしく打てるアベレージゴルファー向けのモデルですが、標準シャフトでは物足りないという上級者には今回のようなシャフトの装着により、コントロールとやさしさを両立できます」
大蔵ゴルフスタジオとは
〒156-0053
東京都世田谷区桜3丁目24-1
オークラランドゴルフ練習場内
TEL:03-6413-9272 URL:www.ogs-p.jp
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。