既製品のグローブでは、指先が余る。手の幅に合わせると、親指がきつい。そんなサイズ選びの悩みに、手形から仕立てるオーダーメイドで応えてきたのが、川田工業の『ジャストフィットシステム』だ。
同社は9月15日、同システムの30周年を機に、水ヘビ革『カロン』を掌側に採用した新モデルを発売した。価格は税込2万2000円。高価格帯の商品だが、狙いは素材の希少性だけではない。手に合わせる技術と、色やプリントを選べる楽しさを組み合わせた商品となる。
手形から仕立てる、既製サイズでは埋まらない隙間
1920年創業の川田工業は、手袋の産地・香川県東かがわ市で製造技術を培ってきた。現在はゴルフグローブが製造の約9割を占め、日本の従業員20人に加え、自社のインドネシア工場に250人が在籍している。
『ジャストフィットシステム』は、利用者の手形や採寸情報を基にグローブを製作する仕組み。一般的な既製品のサイズ表示だけでは対応しきれない、指の長さや太さ、手の幅などの違いに合わせる。
同社が手掛けてきた利用者には、既製品では収まらない大きな手の人や、仕事柄、親指だけが太い人もいる。逆に、手が小さく、市販品では合うサイズを見つけにくい人からも喜ばれているという。
最初はややきつく感じても、使ううちに革がなじみ、本人の手に合っていく。そのフィット感と品質が、30年間の継続とリピート購入を支えてきたと同社は捉えている。
水ヘビ革の凹凸をグリップに生かす
新モデルは、掌側にカロン革、甲側にシープスキンを組み合わせた。素材を選んだきっかけは、水ヘビ革の表面にある天然の凹凸だった。人工的に型押ししたものとは異なる、ざらつきのある感触に着目し、グリップ部分への採用を決めた。
同社によると、購入者からはグリップ性を評価する声が寄せられているという。
商品化で課題になったのは、異なる革を縫い合わせる工程だ。従来の羊革同士の組み合わせに対し、カロン革は硬さがあり、縫製時に片側へ引っ張られることで破れが生じるケースがあった。
そこで熟練の職人が試作を重ね、縫製強度を調整。素材の違いを踏まえたつくり方を詰めていった。開発担当者自身も練習場で1000球を打ち、摩擦や縫製の状態を確認したところ、支障はなかったという。
色も写真も選べる「自分だけのグローブ」
同システムは約3年前にもリニューアルしており、羊革のモデルで10色から2色を組み合わせられるようにし、サイズだけでなくデザインを選ぶ楽しさを加えた。
さらに、甲側の面ファスナー部分には写真や文字をプリントできる。イニシャルだけでなく、愛犬の写真や、スイング時に意識したい言葉を入れるといった使い方もある。
ゴルフウエアのおしゃれを楽しむ人が増える中、グローブにも個性を持たせたい。こうした発想が、従来の「手に合う」という機能に、新たな価値を加えている。
注文は、まず採寸などに必要なキットを購入するところから始まる。利用者は説明書に沿ってデザインや色などを選び、オーダーシートに必要事項を記入。手形をペンでなぞる方法に加え、目盛り付きのシートに手を置き、スマートフォンで真上から撮影した画像を送る方法も採用した。
斜めから撮影すると指の長さなどが正確に読み取れないため、撮影方向には注意が必要だが、送られた情報を基に社内でサイズを算出し、職人と共有して製作する。
納期の目安は、オーダーシート到着後30〜40日。注文状況によって前後する。
ゴルフ場のコンペ賞品へ販路を広げたい
販売は自社ECのほか、百貨店のゴルフ売り場などで展開。新モデルの発売後には、百貨店から引き合いがあり、外商顧客を持つ販売先への納品にもつながったという。
同社が今後開拓したいのは、ゴルフ場での贈答需要だ。特に売り場を持つ高級ゴルフ場で、コンペ賞品の選択肢として提案したい考え。キットを贈り、受け取った人が自分のサイズや好みを指定できる仕組みは、贈る側が手のサイズを知らなくても選びやすい。
2万2000円のグローブを、消耗品としてどう売るか。川田工業は、手に合う機能に、選ぶ楽しさと贈る価値を重ね、その答えを探っている。
川田工業
https://kawadakk.co.jp/