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  • 連載SDGs 第4回  パラ五輪にゴルフを

    岡島 成行
    学校法人青森山田学園・理事長、(公社)日本環境教育フォーラム・会長、NPO法人自然体験活動推進協議会・会長。1969年読売新聞入社、80年環境庁担当となり環境問題専門記者に。87年東京開催の「環境問題国際ジャー...
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    チョモランマのベースキャンプ

    1988年3月末、時の自民党幹事長代理・橋本龍太郎さんと私は中国のチベット側からチョモランマ(エベレスト、8848m)を見詰めていた。政治家として忙しい日々を送っていた橋本さんは、その合間を縫って東京からはるばる日本・中国・ネパールの三国チョモランマ登山隊のベースキャンプを訪れたのです。 本隊には橋本さんのためのベッドがなく、読売新聞のテントにお泊りいただくことになった。それから3日間、私が橋本さんのために食事を作ることになりました。 橋本さんとはそれ以前にも山を通して仲良くさせていただいていましたが、寝食を共にしたことでずっと親密になりました。相手は偉い政治家です。しかし、私は政治部ではなくて社会部の記者でしたので登山家の先輩といった感じでした。橋本さんも気さくに「岡島君、俺はね‥‥」といった調子でいろいろな話をしてくれました。 橋本さんはその後ネパール側に飛び、南側のベースキャンプも訪れました。山が本当に好きだったんですね。帰国後、橋本さんを囲んで「岳龍会」という会ができ、総理大臣になられても年に一度ぐらい宴会を開いていました。

    障がい者への思い

    橋本さんの御父上は厚生大臣も務められた橋本龍伍さんです。龍伍さんは子供のころ病気で入退院を繰り返し、杖なくして歩けなくなりました。にもかかわらず、自力で一高、東大を卒業、大蔵官僚になり、後に政治家に転身し、大臣にまでなった方です。 龍太郎さんは「子どもの頃は松葉杖をついている父の後を追って歩いた。私が自分の父親を尊敬し今でも誇りに思うのは、そのハンディキャップにもかかわらず自分の人生を自分の力で切り拓いていったその強靭な精神力です。本当に挑戦者という姿勢を生涯とり続けたことです」と述べています。 チョモランマのテントで、龍太郎さんはこんな話もしてくれました。 「父の秘書官として働いていた時、東京駅の階段を登っていたら、後ろから大きな声で、じじい早く歩け、という声が聞こえてきた。障がい者に何ということを言うのか。俺はカッとしてその男に掴みかかろうとしたが、警官に止められた。あれほど腹が立ったことはない」 以来、龍太郎さんは自分も厚生大臣になろうと思った。そして障がい者が住みやすい国を作ろうと誓ったそうです。

    十和田湖高原ゴルフクラブ

    場面は変わって今年6月12日、青森県の八甲田山中腹の十和田湖高原ゴルフクラブで改装オープンのコンペが開かれました。 新緑の高原で、すがすがしいコースでした。それに平地より若干飛ぶようです。縁あって私がこのゴルフ場の理事長となり、そのお祝いを兼ねたコンペでしたが、マレーシア大使をはじめ北海道から沖縄まで197人が参加してくれました。 このコンペに私は障がい者お二人を招待しました。橋本さんの話を思い出し、障がい者にゴルフへの道を開きたいと思ったのです。 聴けば次のパリ・オリンピックではパラリンピックにゴルフを入れようという動きがあると言うではないですか。それならばなおのこと応援しなければなりません。 知人を頼って、下半身不随の齊藤史行さん(46)と片足ながらパラリンピックのスキー日本代表として活躍した田中哲也さん(50)を招待しました。齊藤さんは「車いすではグリーンにあげてくれないコースが多い」と躊躇していましたが、理事長として責任をもってお呼びすることにしました。 ヨーロッパでは障がい者のゴルフが盛んで、齊藤さんが乗っている一人用カートもドイツから輸入したもので、タイヤの幅が20センチ以上あり、グリーンを傷めないように設計されているのです。

    パラリンピックに向けて

    ゴルフをパラリンピックの正式種目とする運動に、日本のゴルフ界もぜひ参加していただきたいと思っています。 パラリンピックの正式種目となれば、障がい者にも大きな目標ができると思います。ゴルフ界にとっても素晴らしいことです。ゴルフの可能性を大きく開いていく力になるはずです。 まず、現在のゴルフ人口が増えるでしょう。家族に障がい者がいて、自分だけゴルフを楽しむことに何となく引け目を感じている人や、障がい者の楽しみを増やしたいと思っている人もいるでしょう。 しかしながら、実際に障がい者にゴルフ場を開放するとなると、グリーンに入る時に特別な補助車などが必要となったり、施設全体をバリアフリーにする必要があるかもしれません。その他、様々な課題があるでしょう。パラリンピックに参加するということはそれらの課題を解決しなければならないのです。 しかし日本でもすでに障がい者、特に車いすを使わなくてはならない方々にコースを開いているゴルフ場が幾つもあります。ゴルフをパラリンピックの正式種目にしようと運動をしている方もたくさんいらっしゃいます。 私がここで言いたいのは、こうした動きをさらに広げ、障がい者にコースを開くことが日本中で当たり前になることなのです。 コースを運営する側も健常者も、そして障がい者も少しずつ負担をして、譲りあって考えれば、折り合いがつくところが見つかるのではないでしょうか。今後さらに障がい者を温かく迎えるゴルフ場が増えるといいと思っています。 ちなみに、齊藤さんのスコアは前半が44、後半が55(バンカーが車いすでうまくゆかずプラス15打)、田中さんは前半が42、後半が46でした。

    障がい者ゴルフとSDGs

    グリーンに乗ってもタイヤが太いためダメージが少ない
    障がい者にゴルフへの道を開くことは、SDGsの面から見ると次の項目が当てはまるでしょう。 ③すべての人に健康と福祉を ⑩人や国の不平等をなくそう ⑯平和と公正をすべての人に ⑰パートナーシップで目標を達成しよう SDGsは、かなり幅の広い概念です。それぞれの目標を自分なりに解釈して良いと思います。様々な業界で自分たちができることを選んで協力しています。ゴルフ業界も自由な発想で協力すれば良いと思います。
    この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
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