自腹を切ってSDGs ゴルフ界団結の狼煙をあげる
『ハドラス』を知っているだろうか?
全国1000店以上のゴルフショップで取り扱われているゴルフ用品専用のガラスコーティング剤で、ショップでの年間施工件数は50万件、年間売上は10億円に及んでいる。
『ハドラス』をコーティングすることで、ゴルフクラブやシューズなどが傷や汚れに強くなり長持ちするため、SDGsが掲げる17項目のひとつ「つくる責任・つかう責任」にも適っている。
展開するのはアドウェルという会社で、5年間で『ハドラス』という新たな市場をゴルフ業界に作った。
そんな同社の社長である富山暁氏から、
「話したいことがある」
と連絡があったのは10月中旬。『ハドラス』に関する新たな取り組みを始めるという。富山社長によると、
「ゴルフ場はCO2の吸収に貢献してますが、一方で森林を伐採して造られました。SDGsが叫ばれている今、業界一丸で環境問題に取り組む必要があると思います」
そこで同氏は「ハドラス for グリーン」という活動を始めるという。内容は『ハドラス』の取扱店が施工1件につき20円をフォレストック協会に寄付するものだ。
同協会は日本の森林保全に取り組んでおり、これまでNTTドコモ、JCOM、大成建設、ゴルフ業界ではキャロウェイゴルフなど、多くの企業とCO2削減活動を行なってきた。
協会は金額に応じたCO2の吸収量を協力企業に提示するが、20円で年間20㎡の森林を守ることになるという。つまり『ハドラス』の施工1件が、年間20㎡の森林保全に貢献する計算。
「世間でSDGsが叫ばれていますが、大半の人は何をすればいいか分からないし、貢献度が具体的に見えないという問題があります。今回の取り組みは数値で『見える化』でき、協力企業もCSRとして謳え、販売店もSDGsへの貢献が見えるのでモチベーションが上がります。ゴルファーにも参加意識が生まれるなど、皆で連携できる」
寄付金は協会を通じて林業従事者に届けられ、自然環境や水が綺麗に保たれる好循環を生み出す。一見、いいことづくめだが、問題は販売店が利益を削って協力するのか、ということだろう。
「施工料金の一部を寄付することに抵抗があるかもしれません。そこで参加店1店舗につき、最初の3か月間は当社が全額負担します。プログラムへの参加は強制ではありませんが、当社も身を切る覚悟で参加を呼び掛けたい」
と、富山社長は前向きだ。取扱店のひとつ、二木ゴルフは『ハドラス』の施工開始から1年ほどで10万件に達したから、月間施工件数は平均8000件となる。3か月分となるとアドウェルの負担は48万円だが、つるやゴルフ、ゴルフ5、ヴィクトリアゴルフなどの大手量販店も扱っており、合計すればかなりの負担となる。それを織り込んでなお進めるのは、
「ゴルフ業界は昔から連携の重要性が叫ばれてきましたが、メーカーも販売店も競合状態にあるため現実的には難しい。だけど、SDGsなら横串を刺せるのではないか。将来的にはゴルフ場、練習場、メディアなどにも協力を呼び掛け、ゴルフはSDGsに取り組んでいると発信したい。当社としては、この活動を通じて『ハドラス』の価値が高まれば満足ですよ」
同じ考えをもつのが日本ゴルフ場経営者協会の大石順一専務理事。
「一枚岩になりにくいゴルフ界が連携するために、は格好のテーマになるはずです」
と語っているが、業界の「同志」に呼びかければ連携の輪は広がりそう。環境保全に業界の団結、市場活性化となれば一石三鳥。