有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では2016年から大学体育ゴルフ授業の「Gちゃれ」を開催している。
これは一般教養科目の体育でゴルフを履修する学生向けの授業で、参加者の大半がゴルフ未経験者もしくは初心者だ。
これまでに武庫川女子大(兵庫県西宮市)、甲南大(兵庫県神戸市)、追手門学院大(大阪府茨木市)、大阪学院大(大阪府(吹田市)、流通科学大(兵庫県神戸市)の5大学におけるゴルフ授業のお手伝いをしてきた。
延べ428人の学生が参加し、そのうち約35%の152人が女子大生だった。当倶楽部では女性比率が約15%なので、「Gちゃれ」の女子率はとても高い。
「女性ゴルファーの創造」はゴルフ界にとって大きな課題だ。「Gちゃれ」では毎回、参加学生全員からアンケートを取るようにしている。ゴルフに対する女子大生の生の声を以下に紹介するので、参考になれば幸いだ。
ゴルフカートは「マリオカート」?

ゴルフ場に初めて来る学生のほとんどは、ゴルフカートに初めて乗る。女子大生にはこれがとても楽しいようだ。
2016年の年末、最初に当倶楽部で行った「武庫女Gちゃれ」。午後から5人乗りカートに乗ってコースへ出て行った。運転を先生やインストラクターが行う中、「マリオカート、ゴー‼」の掛け声とともに学生たちは大騒ぎ。お尻を浮かして半身を乗り出してはしゃぐのを注意しながらのコースデビューだった。プレーに来たのか、ゴーカートに乗りに来たのか分からないくらい。
アンケートで「一番楽しかったシーンは何でしたか?」の問いに、「カートに初めて乗れて楽しかった」「ゴーカートに乗っているとき」「ゴルフカーがすごく気持ちよかった!」などと書かれていた。我々はこれまで、ゴルフカートは単なる移動手段としか見ていなかったが、ゴルフ場の魅力の一つとなり得るかもしれないと強く感じた。
一方で、昨今の「若者の車離れ」や「運転免許保有者数減少」という時代背景から、安全対策として運転を必要とするゴルフカートの運転講習や乗車講習などの重要性を痛感。
そこで2017年以降の「Gちゃれ」においては、取引があるゴルフカート販売会社の協力を得ながら乗車講習を必ず実施するようにしている。講習は駐車場にカラーコーンを立てて、ハンドル操作を学ぶ運転練習を行いながら、同乗者に対しても安全に乗車する方法を教えるようにしている。
2017年の第2回「武庫女Gちゃれ」ではデザインカートを用意してさらに盛り上げた。
チームでラウンドが楽しい!

ゴルフカートの他に多くの女子大生が「楽しかった」と回答したのが「チームでのラウンド」だった。当倶楽部で行う授業では、「チームスクランブルゲーム」でのラウンドプレーを多く行う。
この方式を採用する運営側の理由は、初心者がバラバラで動くと目が届かなくなり危険であることと、プレースピードの問題を解消することの2点だが、初心者プレーヤーの視点はまったく別のところにあることが分かった。
「チームスクランブル」と言っても18ホールの定められた厳密なルールではなく、時間制限(約2時間)の中で、単純にベストボールを使いながら前に進むことだけ。
参加学生数とコーチ、先生の数に合わせてチーム数を決めるので、1チーム5人でも6人でもよい。ただし、スコアを数えて順位は決めるようにしている。「Gちゃれ」では、チーム内全員のプレーをしっかり見ること。その上で良いショットには「ナイスショット!」、ミスショットには「ドンマイ!」の声掛けをして、必ず応援することをルールとしている。
女子大生のアンケートでは、これが「楽しかった!」という声が多い。
「他の人が良いプレーをしたときに、グループ全員で喜びを共有できたことが楽しかった」「みんなでラウンドしたときが一番楽しかった」「みんなで応援しあうのが、とても良い雰囲気で楽しかった」「グループで一人のプレーを見て良いところに打ったときに皆で喜んだこと」「みんなで周りながらプレーをしたのがとても楽しかったです! 上手くいってもいかなくても、全てを肯定していただけて明るい気持ちで取り組むことができました」などなど。
つまりキーワードは「みんな」である。
これらの意見から改めて「チームスクランブル」の良いところを考えてみると、チーム内でのベストな位置にあるボールを使うため、ミスショットに対するプレッシャーがないことはとても大きい。だから自分や他人のショットをすべて肯定できるのだろう。この美点は、他の球技ではなかなか見当たらない。
個人スポーツのイメージが強いゴルフだが、「チームスクランブル」には他の球技にはない魅力がある。それを広く知ってもらうことが女性ゴルファーの創造に一役買うかもしれないと感じている。
カート講習会

カート講習会の初回となった「第2回武庫女Gちゃれ」の前日、偶然にカート事故が起こった。当倶楽部は自走カートのため運転が必要となる。事故は16番ホールから17番ホールへ移動する急カーブで、ハンドル操作を誤りカートが横転、同乗者の一人が軽傷を負った。セルフプレーによるものだった。
翌日の「Gちゃれ」座学講習では、横転したカートの写真を見せながら、守ってくれるドアもシートベルトもないカートの危険性を説いている。さらに運転者はボールを探すなど、絶対に脇見運転をしないこと、同乗者は移動中にスコアを記入したりせずに安全バーから手を離さないなどを徹底して教えている。
たまたま「授業」という機会で「カート講習会」を行ったが、一般のゴルファーにも事故抑制のため必要だと思う。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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