1. ゴルフとSDGs

プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場7―年間146.7トンの削減が可能:廃プラ削減に向けた「ピックタイプ鉛筆」の開発研究―

ゴルフとSDGs 市場考察 北徹朗

SDGsと日本のゴルフ界

プラスチックによる海の汚染をめぐり新たな科学的知見が示され続けている。例えば、Rei Yamashita et al.(2021)によれば、世界の16地域の海鳥分析の結果、研究対象の約半数からプラスチック添加物が検出された。また、Antonio Ragusa et al.(2021)によれば、ヒトの胎盤からマイクロプラスチックが検出された例を報告している。

こうした問題の解決のために、2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」において、持続可能な開発目標(SDGs)が加盟国の全会一致で採択された。既に日本国内でも広く取り組まれているのはご承知の通りだ。

日本のゴルフ関連団体(15団体)で構成される「日本ゴルフサミット会議」も、『ゴルフ界も廃プラ削減に取り組もう!~「地球温暖化防止」に貢献する緑化施設としてのゴルフ場機能を最大限に~』とする趣意書(方針)を示している。

ゴルフサミット会議の「廃プラ削減方針」に不足している視点

この趣意書には【廃プラ削減に向けた具体的活動の4視点】として、以下のように書かれている。

視点1. 過剰サービスの廃止。
宿泊業でもないゴルフ場が提供しているサービスの中で、使い捨て「髭剃り」や「歯ブラシ」の廃止の検討を行う等

視点2. 廃止は困難だが、啓発活動により減少させることが可能なサービスを洗い出す。
レジ袋・お土産等の過剰包装・ペットボトルからステンレス水筒持参等

視点3. 代替品やリユース可能なものへの変更促進。
エコランドリーバッグの導入・ロゴ入りマーカー廃止・エコティーの普及等

視点4. 廃プラの適正回収の徹底。
「リサイクル」を目指した回収

上記の方針に沿うかたちで、各地域の支配人会や連盟、運営会社ごとに、浴場のビニール袋の廃止等が進んでいる。だが、ゴルフ場で使い捨てられるプラスチックとして最も重量があるものは、おそらく「鉛筆」ではないか。前述の4つの視点には鉛筆について言及されていない。そこで、筆者は廃プラ削減に向けたゴルフ用鉛筆の開発研究を開始した。今号ではその一部を紹介したい。

ゴルフ場がルーツ:プラスチック製使い捨て鉛筆

ゴルフ場で使用されている鉛筆は、ゴルフ場以外の場所(公営ギャンブル、宝くじ売り場、アンケート、選挙投票所など)でもよく見かける。この製品は、1970年代前半にゴルフ場での利用を目的に大阪の企業によって開発・製造が始まり、その後、広く利用されるようになっていったとされる。

プラスチック製鉛筆は1本あたり2グラム前後

図1
ゴルフ場で配布される鉛筆には3タイプの形状があり色も様々ある(図1)。クリップ部分が平らな形状のものは長さが2種類あり、長い方(右端)は約10センチある。短い2本はそれよりも1センチ程度短く(約9センチ)なっている。

重さは、左から、2・2グラム、1・8グラム、2・1グラムであり、一番左のタイプ(ストレートタイプ)のものが、最も重い。

ゴルフの「プレー」で消費されるプラスチックの総重量は年間233・1トン

一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会によれば、全国のゴルフ場利用者数(2019年)は8631万9255人であったとされる。1本2・2gとした場合、鉛筆だけで年間189・9トンが消費された計算となる。折れて交換することもあるので、実際はもっと多い(重い)と思われる。

また、グリーンマーカーは、筆者の計測では0・5gであった。これについても来場1回につき1個使用したとすれば、43・2トンとなる。鉛筆とマーカーを総計すると233・1トンものプラスチックが、ゴルフ場のプレー(年間)で使い捨てられていると推計される。プレーを楽しむためにこれほどのプラスチックが排出されるスポーツは、おそらくゴルフ以外には無いだろう。

鉛筆の改良だけで少なくとも146・7トンの削減が可能

図2
ゴルフのスコアカードのような小さな枠内に限られた文字や数字を記入するにあたり、現状の長さである必要はない。人差し指と親指でつまんで使用できるものなら、機能は充分果たされる。例えば、持ち手の軸の部分は2センチ程度あれば充分である。この改良により、残りの7センチ(図2右側)は不要となり、1本あたり1・7gの削減ができる(図2)。単純に計算して、年間146・7トンの削減が可能となる。

「ギターピック」+「芯」= 合理的で使いやすい

図3
人差し指と親指で挟んで使うものに、弦楽器に使用するピックがある。これに「鉛筆の芯」を接続しプロトタイプを作成した(図3)ところ大変書き易いことがわかった。ギターピックには幾つかの厚さがあるが、厚いタイプのもので1・5グラム、薄いタイプのもので0・5グラムであった。現状の鉛筆より重量を約4分の1程度まで削減でき、グリーンマーカーとしても併用できる。

現在、ゴルフ場で配布されているグリーンマーカーには2種類の大きさがある(図3)が、「ピックタイプ鉛筆」の大きさもほぼ同程度であり代用可能であろう。仮に、このアイデアを製品化する場合も、ギターピックの金型をそのまま使用できる可能性がある。

圧力センサー等を用いた最適なゴルフ用鉛筆開発研究が進行中

武蔵野美術大学の北研究室では、圧力センサーを用いて、指先にかかる圧がどの程度かを、様々な厚さや形状のプロトタイプで検証中である(図4=トップ画像)。また、書き易さや疲れ難さについてのデータの収集も行いながら、ゴルフ用鉛筆の最適化のための基礎資料を収集している。

参考文献
1.Rei Yamashita et al.(2021)Plastic additives and legacy persistent organic pollutants in the preen gland oil of seabirds sampled across the globe、Environmental Monitoring and Contaminants Research Vol.1
2.Antonio Ragusa et al.(2021)Plasticenta: First evidence of microplastics in human placenta、Environment International Vol.146
3.ゴルフサミット会議(2020)ゴルフ界も廃プラ削減に取り組もう!趣意書


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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ライター紹介 ライター一覧

北徹朗

北徹朗

<現職>武蔵野美術大学身体運動文化教授・同大学院博士後期課程兼担教授、サイバー大学IT総合学部客員准教授、中央大学保健体育研究所客員研究員、東京大学教養学部非常勤講師

<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程

<主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事

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