連載SDGs 第9回  SDGsにおける教育

連載SDGs 第9回  SDGsにおける教育

ゴルフ部をつくる

私が勤務する青森山田学園は中学高校ともにスポーツが盛んです。古くは卓球。福原愛選手が中学に入学して以来、水谷隼、丹羽孝希選手など多くのオリンピック選手を輩出してきました。 高校サッカー部は全国優勝が2回、準優勝4回を誇り、強豪校として知られています。サッカー部は中学も強く全国優勝の常連です。中高一貫のサッカー部は、雪に覆われた4か月間、グラウンドで思うような練習ができないのですが、トレーニングに工夫をこらし、立派な成績を残しています。 バドミントン女子ダブルスは伝統的に強く、ロンドンオリンピックで卒業生の藤井瑞希選手が銀メダル。東京オリンピック女子ダブルス代表の福島由紀選手、そのほか、代表選で闘った2チームに一人ずつ青森山田の卒業生がいます。 野球も甲子園に春夏13回出場し、卒業生には阪神の木浪、中日の京田、ヤクルトの山崎選手など多くの選手が活躍しています。新体操も全国トップレベル。ラグビーは最近3年連続花園出場、陸上部は駅伝で男女ともに連続出場を続けており、毎年京都の都大路を走っています。 青森山田学園には青森大学があるのですが、中学、高校に比べるとスポーツは強くはありません。新体操部が20年連続大学日本一を達成し飛びぬけた存在ですが、他は野球が北東北で優勝を争い、スキー部が全国で15位といった程度です。 そんな中で、大学にゴルフ部を創ろうという動きが出てきました。22年度の新入学生にゴルフの名門高校からの進学者がいるほか、複数の女子がゴルフをしたい意向があるというのです。

ゼロからの出発

以前、高校にゴルフ部はあったのですが、大学では同好会的なものしかありませんでした。それがいきなりゴルフ部を創ろうというのですからいささか無謀です。 でも、学内のゴルフ好きが集まって「何とか応援しよう」となり、22年4月からゴルフ部が発足することになりました。さあこれからが大変です。コーチはいるのか、監督はどうするなど現在苦闘中です。お金があればいいのですが、私たちのような小さな学園には資金がありません。 中学高校のスポーツは長い間、時間をかけて先生方の涙ぐましい努力の結果、創られてきたものです。 ということで、大学ゴルフ部はゼロからの出発になりますが、中学高校の部活動を見習い、何とか強くしてあげたいと思っています。 なぜゴルフ部創設に熱が入るのかと申しますと、ゴルフというスポーツはフェアープレーを重要視するからです。スコアは自己申告で、プレー中のマナーも問われる。若者の教育にはうってつけだと思うのです。 世の中に出て行って周囲の皆様から信頼を得る人を育てること、そこに大学の重要な使命があるからです。青森大学のゴルフ部は、強くなるのは当然の目的ですが、その前に人間を磨くことに重点を置きます。

SDGsにおける教育

SDGsには「質の高い教育をみんなに」という項目があります。世界の多くの子どもたちは幼児教育や小学校、中学校などの教育を受けていません。このためSDGsでは2030年までに、世界中のすべての子どもが、公平で質の高い教育を無料で受け、小学校と中学校を卒業できるようにする、ということを大きな目標にしています。 また、障がい者、先住民族などあらゆる層の人々が教育や職業訓練を受けること、さらに2020年までに、高等教育を受けるための奨学金の数をたくさん増やし、2030年までに、開発が遅れている国や地域で、経験のある先生を増やすことを目標としています。 世界にはとても貧しい国が多く、幼稚園に通えない子どもたちが1億7500万人います。小学校に通えない子どもは5900万人います。そのうち3200万人はサハラ以南のアフリカに暮らしています。南アジアでは小学校に通えない子どもは1300万人にもなっています。

ゴルフが応援できること

こうした現実を見ると、大学にゴルフ部を創る、ということはいかにも金持ち国の道楽に見えます。そう言って揶揄する人もいるかもしれません。でも筋の違う話を一緒にしてこじらせても意味はないですね。教育は場面や状況に応じてそれぞれ対応していかなければなりません。 貧しい国への支援をしたいし、自国の若者を育てもしたい。ならば、両方とも実現してみるのはどうでしょうか。 そこで、ゴルフ業界にひと肌脱いでいただきたい。ユニセフなど国連機関などとチャリティゴルフ大会をするのはどうか。そんな時に大学ゴルフ部がボランティアを買って出る。一流選手であれば必ず意義を分かってくれるでしょう。 プロでもアマでもゴルファーが参加できることはたくさんあると思います。要は、SDGsといった世界的な課題を自分たちの問題としてとらえるかどうかです。青森大学ゴルフ部では、ゴルフが楽しめる幸せを噛みしめ、世の中の課題に積極的に取り組むよう教えるつもりです。

169の具体的なターゲット

SDGsには17の目標があり、「教育」は4番目になっています。それぞれの目標にはさらに細かくターゲット(実践的目標)が示されています。ターゲットは全部で169あって、時期を区切って具体的な目標が書かれています。 どれもが簡単にはいかないものばかりです。しかし、コロナで分かったように、先進国だけ良くなっても途上国の治療が遅れれば、病原菌はどこからでも出てきてすぐに世界全体に広がります。特定の国だけが頑張ってできるものではありません。世界中が助け合って実践していかなければ意味がないのです。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら