1. ゴルフとSDGs

ゴルフ場、無限に広がる2ホールの使い道

ゴルフとSDGs 小川朗

ゴルフ場を満喫した子供たち

月明かりが、ティーイングエリアを煌々と照らしていた。「月って、こんなに明るいんだね」とのつぶやきが聞こえた。

都会育ちの子どもたちには、月の明かりを感じることすら、非日常の体験なのだ。ここは千葉の山の中。クラブハウスを離れてしまえば周囲には照明がない。

しかし各自が装着している小型ヘッドランプが、必要ないほど。皆既月食は1日違いで見られなかったのが残念だったが、丸い月が子どもたちの頭上に上がっていた。

ティーイングエリアにセットされた大型の天体望遠鏡をのぞき込んだ子どもたちから「土星のわっかが見えたよ!」「月のうさぎさん、大きく見えた」と興奮気味の早口な言葉が聞こえてくる。星にはあまり興味を示さない子、ママに会いたくて寂しがる子もいるが、それが子どものあたりまえ。暗い夜を体験し、保護者と離れたお泊りを体験するだけでも大きな意味がある。

天体観測教室の先生を務めてくれたのは、株式会社ミザールテックの伊藤守取締役技術部長。同社は天体望遠鏡や双眼鏡など、光学レンズの製品メーカーで、伊藤氏は星座早見表を造ったお方でもある。

頭上を見上げて北極星からカシオペヤ座や北斗七星の見つけ方まで解説。子どもたちも周囲の大人と一緒に北極星を探した。

到着時にはクラブハウスでカレーライスの夕食を取っており、天体観測のあとは大浴場で入浴後、隣接したホテルに宿泊。翌日はいよいよ、練習専用ホールでのゴルフ体験だ。

子どもたちはゴルフカートに分乗して練習ホールを目指す。すでにこの時点で遊園地のアトラクション感覚となり、子供たちのテンションは上がっていた。

準備体操の後は各自ボールを持って、グリーンを等間隔で囲みアプローチの練習。講師役の松下健氏(マグレガーゴルフジャパン)はグリップやアドレスなど、細かいことをあえて指導しない。子どもたちは自由な発想でクラブを握り、ボールに当てることを試みる。

最初は苦労するが、見様見真似でやっているうち、みるみるうちに上達していく。各自にボールピッカーが渡されると、これだけでまたテンションが上がり、ボール拾いも遊びの一つになっていく。

次は5人ずつのグループに分かれ、順番に打ってカップインを目指すゲームに挑戦。年齢差もあり、ボールに当たらない子や、どこかに行ってしまう子がいても、チームメイトのプレーを辛抱強く待つ姿勢が素晴らしい。

バンカーからカップインを目指すチームも現れる。子どもたちが砂場からのショットをやりたがるのも意外だった。何度か挑戦するうち、脱出に成功し、歓声が上がった。その上達ぶりは目を見張るばかり。見ていた周囲の大人からは「こりゃ、すぐ追い越される」と嘆息が漏れる。

2時間のゴルフが終了しホテルで朝食後、最後は近くの「大多喜県民の森」で木登りなどワイルドに遊んで昼食。濃密なゴルフ場での2日間を満喫して帰路についた。

今回のイベントを企画したのは「放課後スクールMOCOPLA」の プランナーである小澤珠美さん。同社は東京都内で「学習・英語・プログラミング・美術・運動などあらゆる学びがある放課後スクール」を展開。今回はその四谷校に通う15人が参加した。

自由度の高い2ホール

実際、子どもたちの満足度はどうだったのか。「皆さん帰宅して『また行きたい』と、大喜びで報告したそうです」(小澤さん)。今回サポートした関係者も「今度は3泊4日で来たい!」という子どもの声を聞いている。

2日ではとても足りない。もっともっとうまくなりたい。ゴルフの魅力が、今回の体験でしっかり伝わったことは確かなようだ。

今回は子どもたちがゴルフと初めて触れ合うために、最高の環境が用意された。芝の上やバンカーで2時間、他のゴルファーに気を遣うことなく練習できた。こうした環境というのは、なかなかない。

この2ホールはオープン当初からあったものの、約10年前から整備し直して、プロのレッスン会や初心者ゴルフ体験会などに積極活用されるようになったという。

120ヤードの打ち下ろしと250ヤード、打ち上げの2ホール。「行ってこい」のレイアウトだけに、一人で来て2時間、たっぷりと練習するゴルファーもいるという。

面白いのは料金システム。2時間貸し切りで平日は1人4900円で土日祝日は5900円(いずれも税込み)。2人でも3人でも4人でも、10人でも、1人あたりの料金は同じなのだ。

1人で2ホールを2時間独占できるというのもぜいたくな話。一方でプロが引率してスクールの練習会をここで行うケースもあるという。後ろの組から急かされることなく、芝の上から実戦的なレッスンができるという点で、プロからも好評を博している。

さらに同コースではこれにプラスアルファする形で「クロスカントリー、ナイトゴルフ、探鳥会、テント泊バーベキュー」などを実験的に開催してきている。

クロスカントリーは通常のホールの中からいくつかのホールをピックアップしてオリジナルのコースを使ってチャレンジするイベント。これもまた他のコースにはない試みとして好評を博した。

テント泊バーベキューは本コースのティーイングエリアにテントを張り、天体観測などもできるイベント。アウトドアでのBBQとテント泊はコロナ禍においても、感染リスクの最も低いスタイルとして好評だった。自由な発想でゴルフ場のプラスアルファを提案してきたマグレガーカントリークラブ。1月1日からはレストランを廃止して、全組スループレーのゴルフ場へと大きく舵を切ることが決まっている。

今後このコースからどんな新たなイベントが飛び出してくるのか。目が離せない。

■取材後記

本コースのほかに練習用のエキストラホールを持つゴルフ場は、全国にもいくつかある。マグレガーCCからもほど近い場所にある森永高滝CCは9ホール、長野のサニーCCも6ホールがあり、ゴルファーたちから好評を博している▼今回取り上げたマグレガーCCの持ち味は自分から仕掛けていくのではなく、2ホールの練習ホールに魅力を感じたゴルファーの要求に、柔軟に答えていることだ。今回の星空観測&ゴルフ体験のプランも、小澤さんが共通の知人を通じて松下氏に相談したところ「では、ウチでやりましょう」となったという▼少子高齢化が進んでいる。2025年には団塊の世代が75歳に達する。後期高齢者となるこの年齢以降、老化による体力の低下、ゴルフ仲間の離脱、経済的な問題からゴルファーたちのプレー頻度は下がっていく。減少傾向にあるゴルフ人口が、この2025年問題により、さらにガクンと減ると指摘する声は多い▼この傾向に歯止めをかけるためには、少ない若年層にゴルフへの参入を促す活動をしていくことが重要。今回のような企画が全国各地で実現すれば、ゴルフ業界の未来にも明るい光が差し込んでくる。小澤さんの「ゴルフ人口、増やしましょう!」という言葉が、胸に響いた。

■DATABOX

マグレガーカントリークラブ
▼住所&TEL&FAX
〒298-0205 千葉県夷隅郡大多喜町沢山2-1 TEL 0470-82-3221  FAX 0470-82-3225

▼アクセス(自動車の場合)
 ・東京湾アクアライン・圏央道「市原鶴舞IC」ルート:市原鶴舞ICより13km・約18分
 ・館山自動車道-市原ICルート:市原ICより32km・約45分
 ※カーナビをセットする場合は、電話番号 0470-82-3221 で設定

▼施設案内
18ホール・パー72(ベント2グリーン・ニューベント6527ヤード、オールドベント6406ヤード)
練習専用ホール(120ヤードパー3・250ヤードパー4・パター専用グリーン・バンカー)
アプローチ練習場
パッティング グリーン
ドライビングレンジ(9打席)100ヤード

▼業態
2022年1月1日よりレストラン廃止。スループレー専用コースに変更


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら


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ライター紹介 ライター一覧

小川朗

小川朗

山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。フリージャーナリストとして本誌を始め、日刊ゲンダイで「ホントにゴルフは面白い!」(毎週金曜日)を連載中。

終活ジャーナリストとして「みんなの介護」でも連載中。日本自殺予防学会会員。週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会会長。

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