1. ゴルフとSDGs

「社会構造の変革」を土台に統一目標を設定、それぞれの立場で解決策を!

ゴルフとSDGs 大石順一

Q1 社会構造の変革をゴルフの発展につなげるには?

大石さんはこの連載で前回、2030年までの「ゴルフ普及活動の中長期ビジョン」をつくるべきと書かれていました。ビジョンの視点は3つあって、前回は「新型コロナに起因する視点」がテーマでしたが、それ以外にどのような視点と方法があるのか? 具体的な施策に踏み込んで教えてください。

A1ご質問ありがとうございます。それでは今回は「社会構造の変革に起因する視点」について述べたいと思います。極力わかりやすく、イメージしやすいように努めますので最後までお付き合いください。

私は常々、時代の変化に合わせてゴルフ界の価値観も変わるべきだと考えています。その価値観は「ゴルフ界は、ゴルフの普及を通して様々な社会課題の解決に貢献すること」に尽きます。これをしないと、国民の9割以上を占めるゴルフ未経験者の関心を得られずに、人口減少の流れと共にゴルフ界も衰退するからです。衰退すれば、ゴルフ産業に関わる人々が仕事を失う。それは避けなければいけません。

「社会的課題」は時代によって変わりますが、新型コロナの蔓延によって、従来の価値観では解決しにくい問題が噴出しています。オリパラの開催を巡る議論、帰省の問題、友人との飲食、飲食店の営業は是か非かなど、判断に迷う場面が増えています。このような状況についてドイツ人哲学者のマルクス・ガブリエルは、次のように述べています。

「コロナパンデミックによって倫理的・道徳的な決断を、日々行わなければならなくなった。コロナパンデミック・環境破壊・貧困は、グローバル経済が過剰な競争によって利益を追求し過ぎた結果である」

と倫理的・道徳的な価値観が判断の重要な要素と説き、次のように続けます。

「コロナ禍において倫理的・道徳的な価値観が上昇し、緩やかで持続可能な成長が求められている。倫理的な価値と経済的な価値を同時に引き上げることは可能であり、持続可能性こそが利益を生み出す」

今、話題の渋沢栄一翁も「論語と算盤」のなかで、「論語(道徳)と算盤(経済)は両立する」と言っています。ポストコロナ社会では、強欲資本主義を改めて、寛容や融和の価値観を取り入れ、持続可能な社会を目指す「倫理資本主義」を目指さなければならないということです。

この文脈に「ゴルフ界」を載せてみると、できることが沢山あるにもかかわらず、具体的な行動につながりません。理由は総論賛成・各論反対を生み出す業界体質です。

一口にゴルフ場といっても、設立コンセプト・設立年代・会員構成・経営企業の体質など、千差万別です。さらに視野をゴルフ界全体に広げてみると、プレーヤーの団体、ゴルフ場、練習場、用品、プロゴルフ団体など、活動目的が千差万別で、危機意識の共有が困難です。このような業界体質にあって、私は統一した活動は不可能と考えています。

ただし、やり方はあるのです。まずは全体が目指すべき目標を設定し、その目標を達成するために個々がそれぞれの立場で活動すること。全体の目的は統一しますが、方法と実行は個々に行うという手法です。

ゴルファーの半分が高齢者

その際、第一の課題は、ゴルフ界全体の「統一目標」をどのように設定するかですが、私は今回のテーマ「社会構造の変革」を土台にして、目標を設定すべきと考えます。社会構造の変革は様々な局面に表れていますが、本稿では「人口構造」を取り上げてみましょう。

2020年の人口を100とした場合、世界人口の平均は2050年に159%、2100年には183%になると推計されています。その反面、主要国の中で今後減少する国はドイツ、イタリア、ロシアと日本で、日本は2050年に85%、2100年には66%と類例を見ない減少予測です。また、2020年の65歳以上者の割合は、世界平均で9%ですが、日本は29%で、欧米各国の平均20%に比べて突出している。そのことが、日本のゴルフ産業に強烈なインパクトを与えます。

現状のゴルフ人口は、70歳以上が24%、60歳代が22%で5割近くをシニアが占めています。過去半世紀、ゴルフの発展を支えた「団塊の世代」は2030年に全て80歳を超えてしまい、急速なゴルフリタイアが始まります。このリタイアを少しでも先に延ばし、その間に若いゴルファーを育てることが急務です。

高齢ゴルファーの継続策

そこで私は少子高齢化という「社会構造の変革」を土台に、統一目標の一つを「高齢ゴルファーの継続率アップ」に設定します。継続率を高めるには、体力低下の抑制、飛距離低下を抑制するための用具開発や環境整備、男性が「赤ティー」から打つのが恥ずかしいなら、その恥ずかしさを払拭する工夫など、様々な具体策が見えてきます。

クラブメーカーはレクリエーションゴルファー用のルールに縛られない飛距離の出るクラブを開発する。ティーチングプロは身体に優しいスイングや筋力アップのストレッチを開発して指導する。

ゴルフ場は、ストレッチが可能なエリアをクラブハウス内に設ける。

あるいは、スポーツジムとコラボして、体力維持プログラムを提供することも可能です。既に、ゴルフ場とスポーツジム双方の会員が、双方の施設を利用できるコラボ事業もスタートしています。

自身の飛距離によってティーイングエリアを自由に選べるUSGA方式の「Tee It FORWARD」を推奨・普及する。色による男女別ティー表示の払拭は、ジェンダー問題とも通底しており、その改善にもなります。

高齢ゴルファーのリタイア理由の一つが「ゴルフ仲間の欠落」です。ゴルフ場がゴルフ仲間を作る機会を提供すること、近隣のゴルフ練習場と連携してゴルフサークルを作り、仲間を増やすことも可能でしょう。

要するに、「統一目標」は掲げますが、やり方はそれぞれの団体や企業が自由な発想で実行すればいい。その成果を共有することで、向かう先はひとつに収斂され、ゴルフ界に一体感が生まれます。

今こそ、ゴルフは健康長寿社会の実現に向けて、その力を発揮できます。先述した哲学者のマルクス・ガブリエルは、新たな成長エンジンを倫理・道徳的価値に求めていますが、ゴルフ界も同様なことが言えるかもしれません。


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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大石順一

大石順一

1949年東京都生まれ。1972年年成蹊大学経済学部後、安田生命保険相互会社(現 明治安田生命保険)を経て、1984年八王子カントリークラブに入社し、1997年総支配人に就任。2011年に一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会専務理事就任。1997年以降、日本ゴルフ場経営者協会税労務委員長、東日本ゴルフ場支配人会常任幹事・税対策委員長として固定資産税・ゴルフ場利用税の税制見直し等を総務省と折衝。

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