プロアマ大会に新たな意義 障がい者とプロの交歓で社会貢献

プロアマ大会に新たな意義 障がい者とプロの交歓で社会貢献
男子ツアー新規大会の「ASO飯塚チャレンジドゴルフ」(6月9日~12日)が福岡県飯塚市の麻生飯塚GCで開催、「プロアマ」の新たな試みが注目を集めた。 ゴルフツアーは男女とも、大会前日に参加プロと主催企業の取引先やVIPが一緒にプレーするプロアマ大会が行われる。 昨年まで開催された男子のブリヂストンオープンは「選手には試合に集中してほしい」とプロアマを開催しなかったが、他の大会は主催企業の事業メリットを期待してプロアマは必須。ところが今大会は様子が違っていた。 大会前日の8日、参加プロと障がい者がベストボールを選んでチーム戦を競うスクランブル方式のプロアマを開催。また、市内の小中学校7校の特別支援学級の生徒112名を招き、プラスチック製のクラブで基礎を学ぶスナッグゴルフ大会も開催。誰もが等しくスポーツを楽しめるSDGsの主旨にも沿っている。 その考え方は大会名にも表れている。「チャレンジド」は「障がいを持つ人」の「thechallenged」に由来しており、「挑戦するチャンスや使命を神様から与えられた人」が語源だとか。障がいを「与えられた使命」と前向きに捉え、「何事にも挑戦する人」と気高く位置付ける。 主催者の株式会社麻生は麻生グループの中核企業で、1872年に創業者・麻生太吉が目しゃかのお尾御用炭山を採掘、石炭産業を興したのが発祥だ。石炭からセメント事業に転換しつつ、グループ企業として健康・医療・福祉関連、教育人材関連、人材派遣関連など幅広く展開。グループ102社、関連従業員1万4548人となる。 その同社が今年、新規大会を主催したことについて、麻生グループの麻生塾・麻生健理事長は、「今年で麻生グループは創業150周年を迎えました。これを機に創業の地・飯塚で社会貢献活動をしたいと考え、大会開催を決めました。当グループは飯塚で開催する車いすテニス大会を40年間応援しており、これは世界6大ツアーにも入っています。また、飯塚のタクシーは車いすの対応が整っています」と、障がい者に対して手厚い環境の土地柄だという。 「今回のプロアマにつきましては、日本障害者ゴルフ協会から『一緒にやりたい』との話があり、プロと障がい者の触れ合いで、互いによい刺激が受けられると考えました」その狙いは的中した。 障がい者ゴルフの世界ランクで日本人1位、交通事故で右大腿切断の吉田隼人さんと一緒に回った時松隆光は、 「吉田さんは本当に上手で驚きました。飛距離も負けるし、私のほうがパワーをもらったほど」 比嘉一貴は右手だけでプレーする有坂隆志さんと回り、 「隻腕でも凄く飛ぶ。向上心もあり凄くポジティブで楽しそう。この気持ちを忘れてはいけませんね」 逆に、力をもらったという。市内の特別支援学級の生徒とスナッグゴルフを楽しんだのは石川遼、宮里優作、小田孔明、桂川有人ら8名のプロ。 石川は、「パワーをもらえて楽しかった。このような機会がもっと増えれば、僕らとしてもありがたいです」子供たちから「頑張って」と声を掛けられ笑顔を返した。やってあげる、ではなく共に楽しむ。このような活動の連続が、男子ツアー復興につながると期待したい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら