女性用ティイング・エリア
青森で私がよく行くゴルフ場は、青森市内の東奥カントリークラブです。理事を頼まれていたので特に贔屓(ひいき)にしていました。自然木を活かした作りで、四季折々の花が咲き、とてもきれいです。ゴルフを楽しむと同時に自然の移り変わりも堪能できます。
ある時、レストランでこんな声が聞こえてきました。
「女性用のティグラウンドは何で一つだけなのかしらねぇ。男の人は三つも四つもあるのに。60代の私と20代の女の子がおんなじティじゃ何だかおかしいと思わない?」
私は聞いていて、そうだよな、と思いました。男性は60歳以上、70歳以上などと特別なティイング・エリアがあります。歳をとった方々の力の衰退を考えた措置だと思います。ある種のハンディキャップと考えてもいいでしょう。でもどうして女性には年齢によるハンディキャップがないのでしょうか。
私は、理事長に女性用の前進ティイング・エリアの設置を提案しました。理事会では、場所がないとかティイング・エリアが多くなりすぎて目障りだなどの声が出たようですが議論するうちに、過去の慣例にとらわれずに女性用の前進ティイング・エリアを設置すべきという結論に達したそうで、しばらくして年配の女性用に前進ティイング・エリアが設置されました。ピンクのマークが結構かわいらしく見えました。
女性の理事長は何人いる?
ところでゴルフ場の理事会に女性は何人いるのでしょうか。数は少ないと思います。理事長となると私はあまり聞いたことがありません。
支配人としては、新潟県の櫛形ゴルフ倶楽部の渡辺真美(わたなべ・まみ)さんが知られています。
渡辺さんは28年前、櫛形GCを開発していた建築事務所の総務で働き始め、ヘルメットをかぶり現場に通いました。ゴルフのことは全くわからなかったのですが「ここで働いてみたい」と思ったそうです。
開業してからはゴルフ場の運営会社に移り、広報、営業、ボール拾いと、なんでもこなした。そして2014年に副支配人、2018年1月から支配人となりました。下越地域にはゴルフ場が多く、競争が激しい中、しっかりと経営されてます。
渡辺さんは「マナーや接客などお客様目線を大事にしています。また、女性のお客様の立場に立ってレディースデーを設置して料金を安くしたり、デザートやお花、ティッシュのプレゼントを用意したりしました。皆さんはお喜びです」と細やかな心遣いで女性客を増やしています。
東奥カントリーの竹浪孝之支配人は「ピンクティは、赤ティと比べて1打得した気になると好評です」とピンクティ設置を評価しています。
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東奥カントリー 竹浪孝之支配人[/caption]
女性ゴルファーの開拓が急務
名門ゴルフクラブの中には女性の会員を認めなかったり、プレー禁止などの措置をとっているところがあります。クラブである限り、会員の考え方で女性を締め出すのは自由です。しかし、ゴルフ業界全体を考えると、こんなもったいないことはありません。お客を締め出すというのですから。
また、他のスポーツを見ても女性の参加を認めないスポーツはほとんどありません。昔は女人禁制の山とか、ボクシングやレスリング、柔道などは女性が参加するとは考えられませんでした。でも、時代とともに女性や人種を締め出していたスポーツも参加を認めるようになってきたのです。重ねて言いますが、今どき女性の参加を認めないようなスポーツや職業はありません。
にもかかわらず、ゴルフを楽しむ女性は少ないですね。ゴルフ場、用具開発、練習場、プレーヤーそれぞれが圧倒的に男性社会です。女子プロが人気ですが、アマチュアの女性プレーヤーはまだまだ少ない。女性の参加を促す努力が足りないのではないでしょうか。
ゴルフ・ウイドゥという言葉があります。夫がゴルフばかりしているので、未亡人のようだ、という意味です。しかし、夫婦でゴルフをすればウイドゥではなくなりますね。夫の方も大手を振ってゴルフに行けるでしょう。お嬢さんをゴルフに連れ出せれば、とても楽しいでしょう。
お客は待っているのです。女性が来やすいような空気が必要です。男社会の何気ないふるまいや常識が変わればいいだけなのです。
初心者に優しく
女性ゴルファーに対して、プレーが遅い、文句が多い、キャンセルが多いなどの声が聴かれますが、それらはいずれも女性の問題というよりむしろ初心者ゆえの問題ではないでしょうか。
東京オリンピックを誘致した元首相が「女性はとかく話が長く、自己主張が強い」などと発言してひんしゅくを買いましたが、ことの本質が性差にあることはありません。性差を主張する人の知識、知恵が足りないだけなのです。
以前にも書きましたが、若者を迎え入れる努力と女性プレーヤーを増やす努力はおじさんたちの精神革命を伴う作業だと思います。
「ジェンダー平等を実現しよう」
女性と女児は世界各地で差別と暴力に苦しんでいます。
ジェンダーの平等は基本的人権であるだけでなく、平和かつ豊かで持続可能な世界に必要な基盤です。
しかし、今、15歳から49歳の女性と女児の25%は親密なパートナーから身体的または性的な暴力を受けたと報告しています。39の国では娘と息子の相続権が平等ではありません。女性を家庭内暴力から守る法律がない国は43もあります。
女性に、政治的・経済的意志決定プロセスへの参画を可能にすれば持続可能な経済が促進され、社会と人類全体に利益が生まれます。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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