「ゴルフ産業Q&A」有効回答「2万人調査」と ゴルフ界はどのように向き合うか?

「ゴルフ産業Q&A」有効回答「2万人調査」と ゴルフ界はどのように向き合うか?
Q1  ゴルフ人口「75歳の壁」は、本当なのか? コロナ禍で、特に若い世代のゴルフ人口が増えていると様々な人から聞きますが、信憑性がよくわかりません。そんな中、先日一季出版はスポーツ庁が毎年発表している「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(スポーツ庁世論調査)のローデータを1歳刻みで分析した結果「ゴルファー2025年問題、75歳の壁がデータに出現」と発表しました。具体的には「70~74歳の層で山脈形成、75歳から半減以下の断崖に」というものです。大石さんはどのように考えますか? A1 ご質問ありがとうございます。この記事は、スポーツ庁が毎年11月に「楽天インサイト」パネルの約220万人を対象に、18歳~79歳の男女に対して、人口構成比に準拠した割付で有効回収数2万件になるまでWEBアンケート調査(目標回収数に達するまで回答をWEB受付)したローデータに基づくものですが、まず、ゴルフに関係する内容を見てみましょう。 これによるとゴルフ実施率は、2019年7・1%、2020年6・6%、2021年6・2%と年々減少しています。また、2021年に「ゴルフを新たにあるいは再開した人」は、男性では50歳代4・4%、60歳代6・0%、70歳代4・7%、女性では20歳代1・4%、30歳代1・3%となっています。以上のように「スポーツ庁世論調査」によるゴルフ参加率の減少は、2021年度の延べゴルフ場利用者数が前年度比10%増の8980万人になったこととはやや反するものとなり、多くのゴルフ場関係者が肌感覚として感じている「若年層ゴルファーの増加」とは異なる結果です。 これとは別に、ゴルフ人口については調査対象数や方法が異なる次の三つの数値があります。「レジャー白書2021」520万人、「スポーツ庁世論調査」からの推計数585万人、総務省が5年に一度発表する「社会生活基本調査2016」895万人です。これらのどれを信じるかは、読み手の判断に委ねざるを得ないのが実情です。 ご質問の1歳ごとのゴルフ人口を推計するためには、1歳ごとの人口構成に準拠したサンプル数が必要ですが、スポーツ庁の調査は10歳ごとの人口構成に準拠したものとなっているため、1歳ごとの参加者数を推計するものではありません。私見ですが、「75歳の壁がデータで出現」は、ややミスリード的な表現ではないでしょうか。 ゴルフ業界では「団塊の世代」が全て75歳以上の後期高齢者になる2025年を想定した対応を考えるべきとの意見があります。これは、2005年頃に2015年に「団塊の世代」が満65歳を迎えてゴルフ人口が大幅に減少するとした「2015年問題」の焼き直し的な考え方で、やや「オオカミ少年」的になっているとも思えます。 近年、健康寿命は延伸しており、加えてスウェーデンのカロリンスカ研究所の発表では「ゴルフ実施者の寿命は未実施者よりも5年長寿」とされています。さらに、就労年齢も70歳まで引き上げられるなど、現役年齢が上昇しています。 市場の今後を推測するうえで調査数値はある程度参考になるかもしれませんが、調査内容は様々であり、超高齢社会の到来によりシニアの生活環境も変わっています。そのため筆者は、ゴルフ場利用者の増加原因は、コロナ禍で人々の価値観が「家族や仲間との時間の大切さ」「競争より、助け合って暮らす」等の身近な事象や安全欲求にシフトして「ウェルビーイングな生活」を目指したためと考えます。各種データに一喜一憂することなく、世情を冷静に見つめることが重要でしょう。 急激な人口減少局面を迎え、過度な経済成長を目指すよりも、世界の人々が心身ともに豊かに暮らしていける社会的基盤を作るとする「SDGs」への取り組みこそが最重要課題ですと主張しているのはそのためです。

誰でも出来る「フードロス」への取り組みにトライしよう!

「SDGs」への取り組みは保健・教育・人権・ジェンダー・環境等、多岐にわたりますが、ゴルフ場として取り組み易い目標の一つが「フードロス削減」ではないでしょうか。 超高齢社会の中で少子化による人口減少が進む日本ですが、国連は、2019年に約77億人だった世界人口が2030年に85億人、2050年には97億人に達すると、急激な増加に警鐘を鳴らしています。また、気候変動による干ばつや洪水などによって、現状でも世界で8億人以上もの人が食料不足により慢性的な栄養不足に苦しんでいます。国連世界食料計画が全世界で行っている食料支援量は年間420万トンになります。ロシアによるウクライナ侵攻によって小麦の輸出が滞り、日本国内で様々な食品が値上げされていますが、小麦粉を主食とする国や地域では食糧危機による政情不安が危惧されています。 ところが、消費者庁の発表によれば、2019年の日本の「食品ロス量」は年間570万トン(一人当たり45㎏)で、この内訳は事業系が309万トン、家庭系が261万トンとのこと。実に、国連食料支援量の1・4倍にあたる「まだ食べられる食品」を日本は廃棄しています。 食品ロス削減のために、2019年10月に施行されたのが「食品ロス削減推進法」で、毎年10月に「食品ロス削減月間」として運動が行われています。「フードロス削減」への個人として取り組み例は、食品ロス問題を意識して削減を心がけること、すぐ使う予定の食材は賞味期限までの長さに拘らず購入すること、外食時には食べきれない量をオーダーしない等が求められています。 また、レストラン等の事業者の責務として「お客様に食べきって頂くこと」が一番大切であるとして、小盛を作る等の選択メニューを準備する等が求められています。食品ロスを解消することで食品を無駄なく使うことは、経費を削減できるだけでなく地方自治体や国が廃棄にかける費用の削減にも貢献できます。 近年、学校教育においても、エシカルな消費(倫理的消費)としての食品ロス削減について授業が行われています。「企業は社会の公器」との考え方が、重要になっています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら