GEW読者の皆様なら「ドライブ・チップ&パット」というジュニア競技をご存じの方も多いと思う。その名の通り、ドライバーの飛距離とチップとパットの正確性を点数化して競うゲームである。
7歳から15歳を対象とし、5万人以上の子どもたちがアメリカ全州の予選大会に参加。厳しい予選を勝ち抜いた男女各40名が決勝大会に進出し、決勝会場はあのオーガスタ・ナショナルGCで、マスターズ開幕直前の日曜日に開催される。
「ドライブ・チップ&パット」はマスターズ委員会、USGA(全米ゴルフ協会)、PGA・オブ・アメリカによって2015年に第1回が開催されて以来、新しいエキサイティングなジュニアゴルフ競技として年々参加者が増えているという。
参加者の取りまとめは、全米でジュニアゴルフ育成プログラムを管理運営するFirst Tee(ファースト・ティ)が行っている。
参加する子どもたちの全員がプロゴルファーを目指すわけではない。予選会では、自分のゴルフクラブを持っていない子どもたちでもレンタルして参加できる。人間形成を学ぶことを趣旨とするファースト・ティに沿うよう門戸は広い。
「ドライブ・チップ&パット」と名称は異なるが、その日本版として「DAP(ドライブ・アプローチ・パット)チャレンジ2022 U‐15」が2022年に初めて開催された。競技方式は「ドライブ・チップ&パット」と基本的には同じで、性別と年齢別にカテゴリーを分け、ドライブはティーイングエリアから40ヤード幅での飛距離、アプローチではピンから10~15ヤード地点からの残距離、パットはグリーン上の1・8m、4・5m、9mの3カ所から残距離をそれぞれ点数化し、その合計得点をカテゴリー内で競う。
ZOZOの会場で決勝開催

「DAP チャレンジ2022 U-15」は、ファースト・ティ・プログラムを日本で管理運営するNPO法人ファースト・ティ・ジャパンが主催となって企画がはじまった。
予選会は普段からファースト・ティ教室を開催している有馬カンツリー倶楽部(兵庫県)、真駒内カントリークラブ(北海道)、北谷津ゴルフガーデン(千葉県)、大相模カントリークラブ(神奈川県)の4会場で実施することが決められた。
以前より「日本版DAPがやりたい!」とファースト・ティ本部事務局とは話してきたが、具体的な開催概要を記した企画書をいただいたのは2022年7月のこと。このとき、米国の決勝大会同様に、日本で唯一のPGAツアーであるZOZOチャンピオンシップ直前の10月9日(日)に、同大会会場のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブで決勝大会が行われることが記されており、夢のある大会になるかもしれないと思えることができた。
4つの地区予選会で各カテゴリー1位の選手は習志野CCでの決勝大会への出場資格を得ることも記されていた。
すでに時間的猶予はないが、子どもたちのことを考えると予選会は夏休み中にやるべきと考え、有馬CCでの予選会は2022年8月21日(日)と決めた。
日本ではまったく初めての競技であり、ジュニアに限定されていることもあって競技に対する認知度は低い。約1か月と時間も限られているので参加者募集が大変困難だった。
結果として、有馬CCでの予選会には13名の子供たちが参加。普段行っているファースト・ティ教室からは9名、大会を聞きつけた一般の参加者は4名だった。
しかし、この4名はみんな強者で、世界大会で優勝している選手など日本を代表するジュニアゴルフの選手が参加してくれた。
競技時間は2時間程度。最初は戸惑いからか、感情を表情に出す子は少なかったが、それでも時間が進むにつれてミスショットを悔しがったり、パットでのカップインには小さくガッツポースがでたりという姿が見られるようになった。

そして10月9日の決勝大会では、各地区から総勢30名の選手が年齢カテゴリーごとの日本一を目指して競いあった。
決勝大会の最中、ZOZOチャンピオンシップに出場するC.T.パン選手(台湾)が練習の手を止めて大会に駆けつけ、子どもたちにサインや記念撮影などの交流をしてくれるという思いがけないプレゼントがあった。PGAツアーで1勝しているパン選手については、2021年東京オリンピックで7人のプレーオフを勝ち抜いて銅メダルを獲得したことを覚えている人は多いだろう。
第1回目となるDAPチャレンジは様々な問題を残しつつ、何とか無事に終了することができた。次回開催までに問題解消に向けてしっかり検討し、有馬CCで行う予選会も含め、本部にはしっかりとした大会基盤をつくっていただきたいと願う。
新しいゴルフ大会のひとつとして、本格的にゴルフを始めていない子どもたちにも積極的に門戸を広げていきたい。そうすることで、ゴルフと子どもたちの架け橋になるような大会に成長させていきたいと考えている。
そして将来、日本のDAP決勝で優勝した子どもたちを米国の「ドライブ・チップ&パット」へ参加させ、さらにはオーガスタ・ナショナルGCでの決勝大会へ送り出すことを夢みている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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