2022年7月31日、昭和の森ゴルフコース(東京都)でNPO法人東京こどもホスピスプロジェクト主催のチャリティゴルフコンペが開催された。居場所のない、重い病気を抱える子どもたちをサポートする活動に賛同した若手ツアープロの塩見好輝、中西直人、片岡尚之、平田憲聖が参加して、イベントを大いに盛り上げた。練習グリーンでは、難病と闘う子どもたちとプロゴルファーが交流するパットゲームが行われ、根本和奏ちゃん(9歳)は「入らなかったけどパターがボールに当たって楽しかった。お兄さんがとてもわかりやすく教えてくれた。またゴルフで遊んでみたい」と目を輝かせた。
運営・協力のHonest feeling株式会社、土屋健社長に話を聞いた。
「1ヵ月前に、共通の知り合いから相談を受けました。ちょうど男子ツアーのスケジュールが空いていて、翌週の試合会場への移動も無理がなくいいタイミングでした。チャリティオークションを盛り上げるために集客が必要でしたが、準備期間が短かったので苦労しましたね。今回開催してみて、ドネーション活動に興味のある方が多くいることがわかったので、第2回は早めに告知をして運営に活かしたいです」
参加者は4組12名で、ハーフラウンドコンペでは4名のプロゴルファーが1ホールずつ合計4ホールを帯同。プレー終了後は練習場で直接ワンポイントレッスンを受けられる豪華な内容に全員が大満足。プレー後のチャリティオークションでは、ネーム入りのキャディバッグや実際に使用したパターなどファンにはたまらない豪華な賞品が集まった。
昭和の森ゴルフコースはアクセスがよく、400ヤード240打席を有する広大な練習場があり、イベントの開催場所としては最適。
実施に至った経緯を佐野健作支配人に聞いた。
「主催者のNPO法人が、当社系列の宿泊施設を普段から利用されており、今回のイベントに協力しました。年間を通じて、貸し切りのチャリティコンペや、近隣に住む子どもたちのスナッグゴルフ大会などの貢献活動を積極的に行っています。残念ながら、来年の夏以降に閉場が決まっており、それまでなら喜んで協力をしたいですね」
ゲストプロの塩見好輝は、
「いつも多くの方々に応援をしてもらい、ゴルフしかしてこなかった自分が世の中のために何ができるかを考えるきっかけになりました。自分にも2歳になる子どもがいます。難病の子とパターゲームで交流して、楽しそうな笑顔を見てとても嬉しくなりました。プロゴルファーだからこそもっとできることがあると思うし、周りの後輩を巻き込んで、社会貢献を続けていきたい」
と、語った。
2020年にNPG法人東京こどもホスピスを設立した、佐藤良枝代表理事は、5年前に病気で息子を亡くし、闘病中どこにも行く場所がなく孤立した経験をもとに、日々ホスピスの普及活動を行っている。
「東京都には大変な毎日を過ごす子どもと家族が笑顔でいられる場所がありません。開設場所は決まっていますが、コロナ禍でチャリティなどのプロジェクト活動が中止になり、事業計画が2年遅れになってしまいました。ゴルフ場は初めてですが、健康的にみんなが明るく楽しく過ごせる場所だと感じました。わたしも真剣に始めてみようと思います」
海外では誰もが気軽に参加するチャリティイベントだが、日本ではまだ文化が根付いていない。興味はあるが実際にどのように支援すればいいか戸惑っている人に向けて、ゴルフを通じて楽しみながら気づけば社会に役立つようなスキームを継続的に提案していきたい。
様々な交流が生まれたチャリティイベントの参加者にインタビュー。
根本友美さん(参加者保護者)
今回は、9歳と2歳の子供を連れて、プロゴルファーとの交流イベントに参加しました。ここ、昭和の森ゴルフコースまではクルマで15分ほどの場所に住んでおり、よく近くを通りますが、コースの中に入ったのは初めてです。普段の生活ではゴルフにまったく関わることがないですし、この子がいなかったら一生このような機会は無かったと思います。色々な方にお会いできて貴重な経験につながりました。初めてのゴルフ場は、暑いですが緑が多くて、風を感じることができて気持ちのいい場所だと思いました。
林知宏さん(参加者)
参加した片岡尚之プロと自社で展開するライフスタイルブランド「TFW49」の契約をしていることもあり、イベントを知って参加しました。実は、子供の頃は小児がんだったので、病気の子の気持ちがよくわかりますし、居場所となるホスピスを充実させることは大切。正直に言うとこのようなチャリティに参加するのは初めてでしたが、とても素晴らしい試みなので、今後は積極的に参加をしたいと思います。ツアープロとこんなに近い距離で接することはあまり無い機会なので、貴重な経験ができるし、男子プロも魅力をアピールできて、盛り上げるきっかけになると思います。もっと発信をして多くの方に知ってもらい、イベントの規模が拡大してホスピスプロジェクトの支援の輪が広がるといいですね。
徳永絹江さん(参加者)
塩見好輝プロのSNS投稿でイベントを知り、新潟県から参加しました。男子プロが試合の合間に一生懸命チャリティ活動をしているのは知っており、興味はありましたが参加するのは初めて。ゴルフが大好きで、普段はメンバーコースの月例競技に参加したり、男子ツアーの観戦をしたりして楽しんでいます。
地元新潟の「サトウ食品」がサポートしていることもあり、契約をしている塩見プロ、中西プロ、片岡プロを推しています。男子ゴルフを盛り上げようとするサービス精神とホスピタリティがあって、気軽に接してくれて、ますます大ファンになりました。参加者は貴重な体験ができて、しかもチャリティになるのはとっても嬉しい。暑い中、汗をかきながら一生懸命子どもたちや参加者と交流する姿を見て元気になりました。また機会があればぜひ参加をしたいと思います。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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