人間の責任
地球が誕生して46億年、生命が発生して35億年、現代の私たちに繋がるホモ・サピエンスがアフリカに現れて20万年と言われています。明治時代が始まったのは今から約150年前です。そして戦後の工業化は77年前からです。その後公害、自然破壊がひどくなるのが60年前です。
こうした地球の歴史を一年間に当てはめてみますと、46億年を12か月で割れば、ひと月は約3億8千万年です。すなわち12月1日は3億8千万年前ということになります。それを31日で割りますと約1235万年前、それが12月31日の朝となります。さらに24時間で割ると約51万年前です。それをさらに60分で割ると8600年前、もう一度、60秒で割ると143年前。明治初期あたりが12月31日午後11時59分59秒ということになります。
はなはだ大雑把な計算ですが、私たち人類は1年間の最後の1秒という間に、生命の誕生など地球が営々として築き上げた様々な自然の仕組みを破壊し始めたのです。
脚本家の倉本聰さんを富良野に訪ねた時、倉本さんに施設の中に作った地球の歴史の道を案内していただきました。
400メートルほどの道の途中に年代が描かれています。そして終わりの一歩ほどのところに人類誕生と書かれていました。地球の歴史と人類の歴史が対比され、人類の誕生などついこの間の出来事であることが体感できるようになっていました。
こんなわずかな時間で人類は全てを破壊してしまおうとしている、と倉本さんは警告していました。
工業化の責任
振り返って考えてみますと、人類が急速に自然を破壊し始めたのはヨーロッパに起こった産業革命からです。それまでに農耕牧畜などと比べて比較にならないほどの勢いで自然を破壊し始めました。
そして第二次世界大戦後の人類はかつてない猛スピードで、他を顧みずに暴れまわり始めます。1950年代に始まる公害、続く自然破壊、そして1980年代にはついに地球全体を危機に追い込む温暖化など地球規模の環境破壊が始まってしまいました。そしてそのスピードはますます速くなっています。
考えてみてください。60年前の日本がどうだったか。私の大学生の時代は四谷から新宿までの新宿通りにビルはありませんでした。パチンコ屋も平屋の大きめな家でした。大谷さんというお金持ちの大きな家には堀がありました。その家が東京オリンピックでホテルに変わり、ニューオータニとなりました。高速道路も新幹線もありませんでした。
そのうちワープロができパソコンになり、携帯電話がスマホになり、そのスピードは留まることを知りません。
人間の活動が大きくなる半面自然は徐々に悲鳴をあげ始めています。地球には人類だけが生きているわけではありません。しかし、私たち現代に生きる人間は自己中心的なふるまいをやめません。
地球の逆襲が始まるのはもう間もなくでしょう。異常気象が続き、どこかに大雨が降れば東京でもどこでもあらゆる町が水に浸ります。台風や大雪、干ばつが各地で増えています。そろそろブレーキをかけないと本当に危ないです。
まだ間に合う
この厳然たる事実を正面から見れば、私たち人類は少し生活態度を改めるべきです。地球という大きな船の底に穴が開いているのに船客は食べ物の取り合いをしています。
今回取り上げたSDGsの「つくる責任、つかう責任」という項目は、まさに「企業も消費者も共通の責任がある」ということを自覚しよう、という意味です。
各企業も環境対策や経済格差の解消、途上国の教育支援などに力を入れ始めています。JALは機内用コップを紙コップに変えました。自動車メーカーはEV車、ハイブリッド車などにシフトしています。そうした方が長い目で見ると得であり、社会的信用が増します。10年先20年先を考えれば当然の姿勢です。
行動あるのみ
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私のスマートフォン(2022年)[/caption]
翻ってゴルフ業界を見るとどうでしょうか。私は専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、改良の余地が多いのではないかと思っています。
ゴルフ用品は毎年のように新しい商品が出ていますが、環境保全を打ち出した製品はあまり見当たりません。ドライバーは飛べばよいのでしょうが、再利用などを考慮しているのでしょうか。あらゆる用品に環境対応が求められるはずです。
本誌の520号で、アウトドアメーカーのパタゴニアを紹介しましたが、創業者のイボン・シュイナードさんは昨年「会社の議決権付株式の100%を会社の価値観を守るために設定されたPatagonia Purpose Trustに譲渡し、無議決権株式の100%を環境危機と闘い自然を守る非営利団体Holdfast Collectiveに譲渡する。また毎年、事業に再投資を行った後の剰余利益を配当金として分配する」と発表しました。やりますねえ。
パタゴニアのミッションは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」ことです。
つくる責任、つかう責任
2030年までに1)天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する②小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる③廃棄物の抑制、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する④大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する⑤開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する、など11項目の目標が定められています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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