先日、中日クラウンズ最終日のテレビ中継を見ていましたら、いきなりSDGsの大きな看板が画面に大写しになりました。一瞬目を疑いましたが、間違いありません。
ゴルフの大きな大会にSDGsが登場するなんて想像もしていなかったのでびっくりするやら感激するやらで、しばらく競技を見るのを忘れてしまったくらいでした。
試合はベテラン岩田寛選手の堂々たる優勝に終わりました。これもまた見事な勝ちっぷりで、優勝後のインタビューも良かった。私にとっては久しぶりに楽しい中継となり、気分が良い一日となりました。
この欄で何度もSDGsの重要性やゴルフ業界の参加を呼び掛けてきたのですが、私にはあまり反応が聞こえてきませんでした。
ゴルフ業界に知り合いがあまりいませんので反応が分からなかったのかもしれませんが、自分の至らなさに反省していた矢先でしたので、同志みつけたり、と嬉しくなったのです。
早速、GEW編集長の片山さんに連絡をして大会事務局に問い合わせしていただきました。すぐ返事があって、CBCテレビが大会運営の一環として大きな看板を立てたことが分かりました。
そこで、CBCテレビ・クラウンズ事務局の谷口岳彦さんと連絡が取れ、色々詳しくお話を聞くことができました。電話口でのお話に随分と驚きました。昨年からこのSDGsの取り組みを始めておられ、内容も多岐にわたっているのです。今年の関連企画は表1のとおりです。
スポーツにおけるSDGs
この中日クラウンズのような取り組みは他のスポーツで見たことがありません。野球やサッカー、ラグビー、バスケットなどの大きな大会でこのような試みを聞いたことがありません。おそらくゴルフが初めてなのではないでしょうか。
私の無知により、実践されている例があるのかもしれませんが、オリンピックや野球の日本シリーズ、サッカー、ラグビーのワールドカップなどのような大会でSDGsの重要性を観客などに訴える活動をしている例を知りません。
そう思うと、何やら誇らしい気持ちが沸いてきました。長い間、環境問題の普及、教育に携わってきた身としては、そしてまた、ゴルフ好きの人間としては、強力な援軍を得た感じになったのです。
ゴルフ関連業界の様々な分野で地球の将来を考える活動をさらに展開していただければ、ゴルフ本来のフェアープレーやノブレス・オブリージュといった精神が世に広まっていくのではないかと思います。
第6次IPCC報告書
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温暖化抑制の目標図 赤い帯は現在の状況が続くと気温は上昇し続けることを示し、紫は2030年から上限2度を目指し、緑は今すぐから上限2度を目指し、青が今すぐに上限1.5度に抑える目標を示している。(IOCC報告書より)[/caption]
IPCCとは、以前にも説明しましたが、気候変動に関する政府間パネルのことで、この3月にスイスで開かれた第58回総会で第6次評価報告書が承認されました。
この報告書によりますと、現在、急激な温暖化が進んでおり、大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に大掛かりな変化が起こっています。今のままの対策では、世界の気温は21世紀の間に1・5度上昇し、2℃以下に抑えることすら困難になるとみられます。本来であれば、1・5度の上昇が限界で、それ以上になると大幅な気候変化が発生し、私たちの日常生活は大きく脅かされるようになってしまいます。
21世紀末までに気温の上昇を1・5度以内に抑えるには、図1にあるように、大幅な温室効果ガスの排出削減が必要です。特にCO2は排出量を正味ゼロにしなければなりません。私たちは相当の覚悟をする必要があります。
経済に及ぼす影響
こうした状況を受けて、すでに世界の投資家は動き出しています。
世界で最も影響力がある投資家の1つであるロックフェラー財団は、つい最近、アメリカの石油メジャーであるエクソンモービルの株式を売却すると発表しました。
ロックフェラー財団はもともと石油で財をなしたジョン・ロックフェラーによって設立された団体で、石油関連業とは密接なつながりがあったのですが、時代の流れは石油関連企業を切り捨てるという決断を迫ったのです。
このように世界の大きな財団や投資家は石油離れに動いています。これも、IPCCが指摘する事実に背を向けることができなくなっている証拠です。世界の経済の流れはもう決定的に温暖化防止に向かっています。図1にあるように2030年からは急激で大幅な温暖化ガスの削減が求められるようになるのは明白です。
こうした潮流に鈍いのが今の日本です。20年前には環境技術が世界一と言われていたにも関わらず、今では先進国の中で、脱石油に最も遅れている国になってしまいました。何とかしなくてはいけません。
そんな折に中日クラウンズでの出来事が心に響きました。この流れをもっと加速させたい。様々なスポーツがある中で、先頭を走りだした中日クラウンズに「あっぱれ」です。
温暖化の影響
IPCCの報告書は、地球の気温が今より1・5度以上上昇した場合
1)海水面が2m上昇する地域が出てくる
2)地球上の各地で極端な高温、海洋熱波、大雨、干ばつなどが頻発する
3)北極海の海氷や氷河などの氷が激減する
4)これにより現在の農業生産システム、治水事業、異常気象対策などが役に立たなくなる
など社会生活に計り知れないダメージが発生する可能性が高い、と指摘している。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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