キャロウェイが産学官連携で 地方の森林保護と活性化担う

キャロウェイが産学官連携で 地方の森林保護と活性化担う
「SDGsの具現化に、やっとここまで来ました」 キャロウェイゴルフのアレックス・ボーズマン社長は、感慨深げにそう話す。同社は10月23日、「未来へつなぐ森:共創プロジェクト」の発足式を「キャロウェイの森」(鳥取県)で開催した。 これまでも同社はSDGs活動を実践してきた。 例えば、企業向け貸し農園に開園した「キャロウェイファーム」(埼玉県岩槻市)で障がい者を雇用し、そこで作られた野菜を社員に販売。子供達に給食を届ける活動をする団体にその売上を寄付する取り組みや、大学のゴルフ授業にクラブを寄付するなどが一例だ。 今回のプロジェクトもSDGs活動の一環だが、一体どのような取り組みなのだろうか? 同社SDGsチームリーダーの喜田慎氏が経緯をこう語る。 「そもそもは2021年に8人からなるSDGsチームが発足したのが始まりです。当社は様々なブランドを持っていますが、共通するテーマは『外遊び』。それを未来に繋げていくには、自然環境を守ることが最重要課題だと考えたのです」 そこで同社は関係各社と手を組み「オール・フォー・グリーン」というスローガンを掲げ、森林保全団体のモア・トゥリーズ、鳥取県智頭町、芦津財産区の4者で連携。 智頭町に多様性のある森作りを行う「キャロウェイの森」を創設した。 冒頭の「未来へつなぐ森:共創プロジェクト」は、前出の4者に大学ゴルフ授業研究会を加え、学生が現地で様々な自然環境保護プログラムを体験することで智頭町の課題を見つけ、産学官連携で地域活性化策を作り上げる取り組みだ。 「実は当社は過去9年間、『ワン・フォー・グリーン』(収益の一部でCO2の吸収量を購入)という森林保護活動を行ってきましたが、自社主導で自然保護活動をするべきだと思ってきました。今回のプロジェクトを通して自然を守る若い人材を育成し、地域活性化に彼らの新鮮なアイデアを融合させたいと思ったのです」(ボーズマン社長) 発足式にはボーズマン社長、庄司明久副社長のほか、大学ゴルフ授業研究会・北徹朗代表(武蔵野美術大学教授)、モア・トゥリーズ社事務局長、鳥取県智頭町長、芦津財産区議会議長らが参加。 翌24~25日は武蔵野美大の学生7名を招待し、「キャロウェイの森」での植樹や生物多様性講座、芦津渓谷での森林セラピー、旧山形小学校でのアウトドア、智頭小学校児童41名との「智頭町の未来予想図」をテーマにしたチョークアート、鳥取砂丘訪問など盛り沢山の体験会を実施した。 北代表によると、 「これまで約100大学がキャロウェイからクラブを提供してもらっています。今回のような機会を学生に与えていただきありがたい。体験を通して生まれた学生のアイデアを智頭町の地域活性化に役立てたい」 今回の智頭町の事例が成功すれば、過疎化が進む他の地方にも応用できるかもしれない。 それはゴルフ業界が地方活性化に寄与することを意味し、SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」にも合致する。 今や学生が企業への入社動機としてSDGs活動の内容を重視する時代。各社がSDGsに本腰を入れれば、ゴルフ業界が学生の「憧れの業界」になる可能性もある。新規ゴルファー創出の鍵は、意外とそこに隠れているかも。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら