プラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する新たな報告書

プラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する新たな報告書

国連のプラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する新たな報告書(2024年7月公表)

2024年8月も「観測史上最高」や「猛暑日過去最多」が各地で相次いだ。気象庁が発表している「観測史上最高気温ランキング」(2024年8月18日現在)を見ると、上位21件(41.1℃~40.4℃)のうち14件が2018年以降に観測されている。2000年以前に観測されたものは2件しかなく、この5年程度で地球が急激な気温上昇している状況がわかる(表1)。 表1.日本における最高気温ランキング(2024年8月18日現在 ) 2024年7月15日に国連環境計画(UNEP)と国際科学会議(ISC)は、プラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する報告書(A global foresight report on planetary health and human wellbeing)を発表した。数百件のリファレンスを用いたこの報告書は96ページにも及び、世界の気候変動等に関する新たな課題を予測し示している(図1)。 [caption id="attachment_82754" align="aligncenter" width="424"] 図1.
2024年7月に発表された報告書[/caption]

報告書の内容は2024年9月に開催される国連未来サミットでの議論に反映される

[caption id="attachment_82755" align="aligncenter" width="880"] 図2.
8つの重大な世界的変化・現象(報告書より)[/caption] 報告書では、中長期的な観点から、3つの地球の危機(気候変動、自然と生物多様性の喪失、汚染と廃棄物)を加速させている8つの「大きな変化」について言及(図2)し、18の「変化の兆し(Signal of change1~18)」が強調されている。この報告書は、9月22日~23日にかけてニューヨークで開催される国連未来サミット(Summit of the Future)での議論に反映される予定である。

報告書ではSDGs目標達成の遅れが指摘される

[caption id="attachment_82756" align="aligncenter" width="785"] 図3.
SDGsの17個の目標の進捗状況評価(報告書より)[/caption] 2015年に国連加盟国が採択したSDGsについて、10年が経った現在の状況について、報告書は「成果は期待外れ」としている。項目によっては、2015年以降何の進歩も見られないばかりか、さらに悪化・後退しており、環境関連の項目についても目標から大きく外れている(図3)。

太陽光を宇宙に反射させて地球を冷却する研究

報告書に記載される18 の変化の兆し(Signal of change1~18)のうち、7番目に興味深い研究動向が示されている。(Signal of change 7:Deployment of Solar Radiation Modification,日射調整装置の導入) 具体的には、太陽放射修正:Solar Radiation Modification (SRM)と呼ばれる分野の研究が進んでおり、太陽光を宇宙に反射させて地球を冷却する(温暖化を抑える)ことを目指している。但し、本研究については環境や生物、社会経済への影響などの議論もあることが記されている(図4)。 [caption id="attachment_82757" align="aligncenter" width="776"] 図4.
Signal of change 7:Deployment of Solar Radiation Modification(報告書より)[/caption] 参考文献 1)気象庁(2024)歴代全国ランキング,https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/rankall.php(2024年8月18日確認) 2)United Nations Environment Programme International Science Council(2024)Navigating New Horizons: A global foresight report on planetary health and human wellbeing、https://wedocs.unep.org/handle/20.500.11822/45890(2024年8月18日確認)