ヨウスコウカワイルカ
最近読んだ雑誌『図書』2024年6月号(岩波書店)に、すでに絶滅したとされるヨウスコウカワイルカの話が載っていました。
このイルカは揚子江に生息し、体長は2.5m程度。淡水に棲むイルカとして有名でしたが、1990年代になって急激に減り、2006年の大規模な調査で生息が確認できなかったために絶滅が宣言されました。これは21世紀になって初めて大型動物の絶滅でした。
中国の工業化、魚の乱獲、船舶による水上輸送、ダム建設などの影響により激減し、特に揚子江中流にできた巨大ダム・三峡ダムの建設は、致命的な被害を与えたようです。
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揚子江を堰き止めた巨大な山峡ダム[/caption]
雑誌では2006年の大規模調査に参加した日本人研究者・赤松友成さんの話が紹介されていました。勤務先の水産総合研究センターでクジラの音響調査を続けていた赤石さんは、1996年に中国でまだ生息していたヨウスコウカワイルカの鳴き声を録音していました。
イルカの鳴き声は普通、ソナー音とホイッスル音の2種類あるそうですが、ソナー音は見えない目の代わりの役割で、ホイッスル音は個体同士のコミュニケーションに使われるというのですが、赤松さんはこのイルカ特有のホイッスル音の確認を担当しました。
調査は2006年11月から12月にかけて38日間行われ、揚子江中流、三峡ダムから河口までの1669キロを調査船2隻が時速15キロ程度で往復したということです。船上からの目視と船室からのホイッスル音の調査が並行して行われましたが、ついに確認はできませんでした。
この時、調査船は片道で19830隻の大型船に遭遇しましたが、これは100m当たり1隻を超えている数です。ひっきりなしに大型船が航行していたということです。
生物の絶滅
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絶滅危惧種のオオルリシジミ。九州亜種と本州亜種の2タイプがある。(環境省HPより)[/caption]
この記事を読んで、私は何とも割り切れない気持ちになりました。地球上には人間以外の生き物がたくさんいます。その生きものたちがお互いに影響を受けながら何億年も生き続けてきたわけです。
海に生まれた生命体が次々に広がり、やがて陸上に進出し、多様な生きものが共存するようになった長い歴史があるのです。
しかしながら現在、多くの生き物が絶滅し続けています。天変地異による大量の絶滅もあったのですが、それよりも人間の活動によって絶滅した事例が多い。
46億年といわれる地球の歴史があり、生命は40億年前に生まれたと言われていますが、生きものの大量絶滅のほとんどは近代工業文明が発生してからのことです。特に1950年頃からの絶滅が悲惨です。
地球のバランスが狂ってきた
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絶滅危惧種のヤンバルクイナ。国の天然記念物で、沖縄本島北部の
山原(やんばる)の森に生息。(環境省HPより)[/caption]
そもそも、この地球上に生命が生まれ、そこから次々と新たな生きものが広がってきたわけですので、生きものたちはみんな親戚のようなものです。それを人間たちが絶滅に追い込んでいることは天に唾吐くことに等しいのではないでしょうか。
私たちは今も、薬品のほとんどを野性生物に頼っています。水や食べもの、木材、石油、鉄など生きていく上で必要なものすべてを自然からいただいています。
私たち人類は自然の中で生活し、自然とともに生きているのです。にもかかわらず、私たちは自然を痛めつけています。そして、自然が貧しくなれば私たち人類も貧しくなるのは自明のことなのです。
命の母体とも言うべき自然を痛めつけ、しかも気が付かないままこの消費文明を突き進めているのです。
一方、石油に代表される現代文明はついに私たち人類の生存をも脅かすところまで来てしまいました。地球「温暖化」も今では、温暖化ではなく地球「沸騰化」と言われるようになっています。いずれ平地での夏のゴルフが困難になるでしょう。甲子園の高校野球もどうなるか。
このまま手をこまねいていては手遅れになってしまいます。問題は人間の意識の改革です。それしか方法が見当たりません。
ゴルフのまち
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ゴルフの街市原についての連携
協定を結ぶ小出市長(中央)と
PGA 吉村会長(左)、千葉プロ
会比嘉副会長(右)。(市原市HPより)[/caption]
ところで、私が住んでいる千葉県市原市には日本一の数を誇る33のゴルフ場があり、首都圏からのアクセスの良さから年間168万人がプレーを楽しんでいます。
実際、私の家に隣接して千葉国際があり、車で5分のところに浜野、10分で真名、ミルフィーユなどがあり、ハーフが終わった後、自宅で昼ご飯を食べることもできます。
市原市は子どもたちのゴルフ教室に力をいれており、小出譲二市長は「世界で活躍するゴルファーを育てたい。将来的に市原市が『ゴルフの街いちはら』から『ゴルフの聖地』と呼ばれるようにしたい」と語っています。
そして、紳士のスポーツを楽しむゴルファーにノブレス・オブリージュ(地位の高い人の義務)の精神を語り、各ゴルフ場に呼びかけ、里山の自然保護を進めています。
全国各地にこうした動きが広がるといいと思っています。
「レッドリスト」
世界の野生生物の絶滅の恐れのある種(絶滅危惧種)を選定し、まとめたものです。IUCN(国際自然保護連合)が作成しています。2012年2月に公表されたIUCNのレッドリストでは、ジャイアントパンダ、レッサーパンダ、ジャワサイ、アジアゾウ、チンパンジー、ソデグロヅル、ホッキョクグマなど哺乳類の20%、鳥類の10%、両生類の30%が絶滅危惧種とされています。日本における絶滅危惧種はコジュリン、ヤンバルクイナ、ハヤブサ、ニホンウナギ、オオルリシジミ、ゲンゴロウ、などです。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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