今回は手前味噌で恐縮ですが、筆者が主管するゴルフスクールで実施している「ゴルフ×ヘルスケア」事例を紹介します。
弊社ゴルフスクールでは、毎年9月、スクール会員を対象に「長月会」というゴルフコンペを開催しています。「長月」とは陰暦で9月(現在の9月下旬から11月初旬頃)のこと。秋が深まる時季で日が暮れるのが早くなり、夜が長い月であることから「長月」というそうです。長月は稲を刈り収める時季であるため「毎年、稲が実ることを祝う」との意味があり、スクール会員の充実したゴルフライフが〝稲のように実っていく〟ことを願い「長月会」と名付けました。
長月会は単にスコア順に表彰するだけではなく、毎回健康増進企画をプラスしています。昨年は野菜摂取を促すことをテーマに「野菜摂取量選手権」、今年は食と栄養の観点から猛暑に負けない身体作りをテーマに「猛暑対策食事王決定戦」を企画。共にスポーツ栄養コンディショニングアドバイザー(以下、アドバイザー)の今村一恵先生を招き、パーティの席で食育セミナーを実施しています。(図1)
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(図1)コンペのパーティで実施した食育セミナー[/caption]
昨年の「野菜摂取量選手権」ではカゴメ株式会社の協力で、野菜摂取量を推定する「ベジチェック®」を用いて参加者の野菜摂取レベルを測定。ゴルフの順位とは別に、野菜摂取レベルの高かった人を表彰しました。(図2)「ベジチェック」は、野菜に含まれるカロテノイドという成分が皮膚にどれくらい含まれているかを測定します。測定結果は、ゼロから12・0までの数値で表され、7・0~8・0で350gの野菜摂取量に相当し、これ以上が目標数値です。参加者の中で最も数値が高かった人は6・8で、目標値の7・0に僅か0・2及ばずの好スコア。因みに全国平均は5・6だそうです。
食事で猛暑に負けない身体を
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(図2)野菜摂取量を推定する「ベジチェック」[/caption]
セミナーでは、今村アドバイザーから、野菜の役割や目標とする1日の摂取量(350g)の具体的イメージ、それを達成するポイント「ワン・モア・ディッシュ」(野菜料理をもう一品)を分かりやすく解説。ゴルフのランチで食べたい、スコアが良くなる最強のランチメニューも教えていただきました。
それは豚の生姜焼きです。豚肉には糖質をエネルギーに変えるビタミンB1が多く含まれていて、疲労回復効果が高いとのこと。また生姜には、体を温めたり胃腸の調子を整える作用があり、タマネギに入っているアシリンという成分がビタミンB1の吸収を高めてくれるとか。
そして、このセミナーによって行動変容が起こりました。ゴルフのランチで豚の生姜焼きを注文する人が増えたのです。ラウンドレッスンなどで多くの方がこのメニューを注文され、豚の生姜焼きがない時は豚肉と野菜が摂れるトンカツ定食が人気です。たかがゴルフのランチとはいえ、行動変容につなげられたのは私としてはしてやったりです。
夏の暑さは年々厳しさを増しており、その対策は社会問題といっても過言ではありません。特に屋外スポーツは深刻です。ゴルフの業界団体も、プレー前夜の睡眠や水分補給、冷感グッズの活用など、猛暑対策を促すポスターを作成・啓発していますが、日頃から暑さに負けない身体づくりの情報発信も必要です。
そこで今年の長月会は、食と栄養の観点から夏バテや熱中症を予防し「猛暑に負けない身体をつくろう」をテーマに開催。昨年同様、今村アドバイザーを招き、セミナーを実施しました。企画した「猛暑対策食事王決定戦」は予めコンペ当日のランチメニューを、会場の小田原湯本CC(神奈川)の担当者に確認。その中から夏バテや熱中症の予防に効果的なメニューを「猛暑対策最強ランチメニュー」としてパーティ時に発表、そのメニューを注文した人を表彰するという企画です。
ここで困ったことが起きました。今村アドバイザー曰く、このコースのランチメニューはどれも栄養のバランスがよく甲乙付けがたい。例えばあさり塩ラーメンには鶏の唐揚げが付いていて、ラーメンだけでは不足しているタンパク質が摂れるようになっている、と。(図3)
ゴルフを楽しみながら学べる
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(図3)栄養バランスの良い小田原湯本CCのあさり塩ラーメン(現在は終売)[/caption]
そこで今回は、猛暑対策にフォーカスし、疲労回復に効果的なビタミンB群と、5大栄養素の中で身体の調子を整える役割があるミネラルを多く含むメニューを、猛暑対策最強ランチとし、「うなぎ重」「まぐろしらす丼」、そして「あさり塩ラーメン」を選んでいただきました。
うなぎやまぐろには魚肉特有の良質なたんぱく質に加え、ビタミンB群が豊富で、猛暑対策に優れた健康食品だとか。しらすやあさりには、ビタミンB群の他にマグネシウムや鉄などのミネラルが豊富で、猛暑に負けない体づくりには最強の食材とのことです。因みに開催コースに本企画を伝えると、レストラン部門のスタッフが興味津々だったそう。
我々の身体は食べ物で出来ています。よって食事は健康の維持増進を語る上でとても重要ですが、正しい知識を学んでいる人は少ないと思います。またそのようなセミナーが開かれても、わざわざ足を運ぶ人は少ないでしょう。自治体などで食育セミナーなどを開催しても集まらないと聞きます。それを、ゴルフコンペを通じ、楽しみながら抵抗なく学べれば、行動変容につながり、知らぬ間に健康になっていく。筆者の目的はそこにあります。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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