手軽で簡単なゴルフ環境が欲しい:「ピクニックゴルフ」は素晴らしい 武蔵野美術大学教授 北徹朗

手軽で簡単なゴルフ環境が欲しい:「ピクニックゴルフ」は素晴らしい 武蔵野美術大学教授 北徹朗

「同じスポーツを楽しむ夫婦」は親密度が高く離婚意向のスコアが低い(韓国の研究)

慶熙大学校(Kyung Hee University)のグループが2024年8月に発表したレジャー・スポーツ活動を行う夫婦350名を対象に実施した研究によると「同じスポーツ活動をしている夫婦」と「夫婦ともにスポーツ活動はしない」または「夫婦の一方だけがスポーツ活動している」の各群を比較すると、『同じスポーツ活動をしている夫婦のグループで肯定的要素のスコアが顕著に高かった』としている。具体的には「親密さ」と「満足度」において他の群よりも高いスコアを示し、逆に「離婚意向」は他より最も低かった。 近年、日本国内でも11月22日(いい夫婦の日)にちなんだ夫婦ゴルフ大会が毎年行われ、多くの参加者を集めている。例えば、ゴルフライフ株式会社が主催する「いい夫婦ペアスクランブルゴルフ選手権」は、“夫婦ペア限定参加という唯一無二の名物大会”として2017年にスタートしたとされ、毎年多くの参加者を集めているという。運営会社によれば、2023年度は21試合の予選会が行われ「カットラインが7アンダーというスコアも飛び出すほどハイレベルな戦いとなった」という。スコアメイクを求めるプレー頻度の高い夫婦ゴルファーにとっては、目標となる大会として今後も定着するのではないか。

スポーツエントリー:手軽なマラソンとは対照的なゴルフ

筆者は我が子の体力の保持増進と自らの健康維持のために、数年前からマラソン大会(ランニング)に参加している。様々なジャンルのスポーツイベントを扱う「スポーツエントリー」というポータルサイトから参加申込をしているが、2キロ程度の距離からフルマラソンまで、毎週全国各地で開催されるランニングイベントを検索・エントリーできる。 筆者の場合、子どもと走るため、せいぜい「5kmの部」だが、2019年に初めて参加して以来、時間を見つけてはエントリーを積み重ね、2024年内には出場100回の節目を迎える。 この「スポーツエントリー」ではゴルフイベントを検索することもできるが、その大半は18ホールや数日に渡る競技であり、気軽にエントリーするには少々ハードルが高い。子どもにゴルフ場を体験させたいといつも思っているので、ライトで手軽な企画を探しているが、我が家のレベルに合うゴルフイベントはまず無い。

「子どもにゴルフ場を見せてやりたい」と思うが…

昨年、あるゴルフ場で開催された子ども向けの企画に我が子(男児2人)を連れて参加した。「用具がなくても、初めてでも大丈夫です」と謳われていたが、これを機に「またゴルフをしたい」と言うかもしれないと思い、中古のハーフセットを2つ購入しそれぞれ子どもに持たせた。 当日現場に行ってみたところ、集まっていたのはハイレベルな「仕上がっている」子どもばかりで、皆カッコよくフィニッシュを決めていた。空振りばかりしているのは我が息子たちだけであり、そのあまりにも場違いな雰囲気に耐えられず、打ちっ放しとパターの練習場だけ参加させ、メインイベントであるカートに乗ってのゴルフコース体験は遠慮して逃げるように帰宅した。 要するに、子どもの体験イベントだと思った企画は、競技志向者の練習の場と化していたわけだが、遊びの延長的に軽く申し込んだ筆者とは異なり、他の保護者の表情は厳しく、子どもに熱心にアドバイスをしている親もいた。格安で本コースを回れることから3-4ホールの体験企画であってもこうした状況を生んでいるようだ。

朝日コーポレーションの「ピクニックゴルフ」が素晴らしい

東我孫子カントリークラブ(千葉県)など、ゴルフ場を全国に展開する株式会社朝日コーポレーショングループの各ゴルフ場では、「ピクニックゴルフ」と言う企画が定着している。その名の通り、ピクニック気分でゴルフ場を体験するもので、全くゴルフ経験の無い人や、コースデビューをためらっている層に「ゴルフは本当に楽しい!」という気持ちを実感してもらうための企画であるとされている。 ティーショットからホールアウトまでチャレンジするもよし、グリーンやアプローチのみをプレーするもよし、どんな回り方でも許容される。単にカートに乗ってゴルフ場を回遊したり、芝の上を歩きながらゴルフ場の景色を楽しむなど、楽しみ方は自由で「18ホールの完全ゴルフ」は想定されていない。 前述のエピソードとは対照的に、これこそ「手軽で簡単にゴルフ場を体験してみたい」と言う層にはピッタリな発想でとても魅力的だが、朝日コーポレーション以外にこうした事業を提供しているゴルフ場を見つけることは難しい。

「ピクニックゴルフ」のようなパッケージに簡単にアクセスできる環境が欲しい

年1回の賑やかし的なイベントや、競技を見据えたジュニアが集まるような企画ではなく、ピクニックゴルフのようなパッケージに簡単にアクセスできる環境があればと強く願う。 筆者が参加しているマラソン大会(5キロ程度)の1人あたりのエントリーフィーは概ね2000円~4000円程度であるが、毎週末多くの大会が開かれている。特に東京近郊ではその数が多いため、どれに参加しようかいつも迷いながらエントリーしている。 ピクニックゴルフの費用はマラソン大会の参加フィーと大差ない上に「ゴルフ場での食事とドリンク」、「クラブレンタル」、「シューズレンタル」、「ロッカー、浴室利用」等々も含まれているので、マラソンよりも格安なのかもしれない。

「Gちゃれ」や「ゴルマジ!」後の本格ゴルフへの接続パッケージにもなり得る

現状、初心者や子どもを連れて行こうとした場合、ショートコースでさえ敷居が高い。その要因は、選択の自由性の低さにある。9ホールや18ホールを完全に打ち繋ぐことを必須とするようなパッケージだけではなく、ピクニックゴルフの様な楽しみ方など、選択の自由性の高いプログラムを提供頂けたら、「夫婦でライトにゴルフに取り組もうとする層」、「Gちゃれやゴルマジ!のようなゴルフ経験のみの大学生」、「子どもにゴルフ場を見せてやりたい父親」等々、ニーズはあるはずだ。正規のお客(最終組)が全てスタートした後のため、後続組を気にする必要もないし、打ったり打たなかったりも自由。ピクニックゴルフのような企画や取り組みがもっと多くのゴルフ場で行われると本当に嬉しい。 冒頭に紹介した研究のように、高齢になっても夫婦で楽しめるスポーツの1つとして「ゴルフ」は思い浮かぶが、若いうちからの楽しい経験がその後の継続意欲には重要である。手軽で簡単にゴルフ場を体験できるピクニックゴルフのようなパッケージが広まれば、大学生向けに行われている「Gちゃれ」(大学ゴルフ授業研究会)や「ゴルマジ!」(リクルートホールディングス)を受け入れる環境形成が、日本のゴルフ場でも徐々に構築されて行くのではないか。

参考文献

1)JH Yang et al.(2024)Comparative Analysis of Stroke, Marital Intimacy, Marital Satisfaction and Divorce Intention According to the Type of Participation in Marital Leisure Sports,Behav Sci (Basel)27;14(9):757 2)ゴルフライフ株式会社(2023)激闘の末、夫婦ゴルファー日本一が決定!「2023いい夫婦ペアスクランブルゴルフ選手権」全国決勝開催,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000064888.html(2024年11月6日確認) 3)株式会社朝日コーポレーション:ピクニックゴルフ,https://www.asahi-c.com/picnic/(2024年11月6日確認)
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら