知られざる名コース
7月末、所用があり青森に行くことになりました。青森山田学園を5月に退任した後、初めての青森訪問でした。仕事が終わってから、懐かしい夏泊ゴルフリンクスを訪ねました。時間がなくプレーはできなかったのですが、陸奥湾を背にして広がる緑豊かなコースと深いラフは健在でした。
この夏泊ゴルフリンクスゴルフ場は知る人ぞ知る名コースで、週刊ダイヤモンド24年5月18日号の「ゴルフ場ランキング2024・隠れた名コース」部門で、全国第1位に選ばれています。
支配人の最上悟さんが面白い話をしてくれました。1995年の日本プロゴルフ選手権大会がここ夏泊で開催されたとき、あのジャンボ尾崎選手があまりの強風で試合を諦めて帰ってしまったということです。それほど風が強いコースなのです。
そしてもう一つ名物があります。深いラフです。フェアウエイから外れると、そこはもう高さ1mほどのラフが広がっているので一度入ったらほぼ諦めです。だからボールの用意が半端じゃない。私はいつも1ダース用意します。
階段の壁に最上さんとノーベル賞受賞者の本庶佑先生が一緒に移っている写真が飾ってありました。本庶先生は昔、弘前大学に勤めていたことがあり、夏泊ゴルフリンクスによく来ていたそうです。
本庶先生はノーベル賞受賞が決まった時の記者会見で、これから何をしたいですか、と聞かれ「夢はエージシュートです」と答えたほどのゴルフ好きです。今でもこのリンクスに来られるということでした。
日本経済新聞の「私の履歴書」によりますと、先生は2021年7月にスコア80で、見事エージシュートを達成されています。そして「ノーベル賞は天から降ってくるが、エージシュートは自ら手繰り寄せるものだ」と書いています。
医療支援

本庶先生はがん治療薬・オプジーボの発見者として知られています。
この薬により世界中のがん患者の多くが救われました。
地球上にはさまざまな病気がはびこっており、治癒できる病気は少なく、多くは治療すら未解決のままです。人類を取り囲む病気はまだまだ多いのです。
特に発展途上国では治療薬や治療施設が足りず、先進諸国なら簡単に治せる病気でも途上国では致命傷になることが多いのです。
本庶先生のような方がたくさん増え、新しい薬や治療法が確立されれば、地球上の多くの人たちが救われます。また、今ある薬を途上国に寄贈し、治療できる人々をたくさん送るなどの措置が必要です。
先進国の一人ひとりが、ちょっとだけ寄付するだけでどれだけたくさんの人が救えるか。ゴルフ場にユニセフなどの募金箱を置いてほしい。ロータリークラブやライオンズクラブなどの団体がゴルフ場に途上国の医療支援の募金箱を設置したらどうでしょうか。
一つのゴルフ場で全ての募金をするのではなく、その地域やゴルフ場の性格に合うような部分を支援することを考えたら良いと思います。
大きな企業がSDGsについて何か実践するときにはその企業の性格に合わせた部分を支援します。例えばスーパーなら廃棄物問題に、お酒のメーカーは水問題に、というように自分の会社に関連する課題に支援を贈るのが普通です。そのようにゴルフ業界も自社に合ったSDGs支援を送っていただきたい。途上国の子ども支援、医療支援、教育支援など何でもいいので一つでも気にかけてくれると世の中が動いてくるようになるのではないでしょうか。
私が見ている限り、SDGsに真剣に取り組んでいるスポーツ団体は案外少ないのです。有名スポーツ選手の中でもSDGs関連に気を配っている選手もまだ少ない。
これに対し、ゴルフ業界はかなり取り組んでいると思います。紳士淑女のスポーツであるならば世界全体の課題を気にするのは当然です。ゴルフ業界に胎動しつつあるSDGs関連の動きを加速させ、あらゆるスポーツの先頭を走っていただきたいのです。
途上国に思いやりを

私の友人でゴルフ好きのお医者様がたくさんいます。全国の医療機関では毎年ゴルフコンペを行っているところが多いと思いますが、そのコンペの際、途上国の医療支援の寄付を集められないでしょうか。参加費の10%を寄付するなど方法は問いませんが、何か世界の医療不足を手伝うようなムーブメンントが起こらないだろうかと思います。
医療団体などで途上国支援をしていることも多いと思いますが、それとは別に個人で、SDGsの、特に医療部門への支援を掲げていただけないものか。この夏から秋にかけて、私の友人たちのコンペでそう提案するつもりです。
ゴルフができる境遇は世界の中では富裕層です。多くの人々は治らない病に苦しんでいます。食べ物もない生活を強いられています。ゴルフができることに感謝して、ほんの少しでも途上国の現状を気にかけてみるようにしたら、世の中が少し変わると思います。
SDGsの3番目の項目は健康と福祉で
1)2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を10万人当たり70人未満に削減する2)全ての国で新生児死亡率を少なくとも出生1000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を出生1000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する 3)2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する、など13項目を掲げている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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