健康ゴルフを提唱する私が、うかつにも不健康になってしまいました。階段で重たいロッカーを運んでいるとき、腰をグキッとやってしまったのです。その後も仕事を続けて悪化。発症から5日目で動けなくなり、その後休んで回復しました。やはり休養は大事ですね。元気に歩き回れる身体がいかにありがたいかを改めて実感した次第です。
そこで今回は〝歩行〟について考えてみたいと思います。
ゴルフは沢山歩くから健康的、だから健康の維持増進のためにゴルフをしよう、と業界関係者は口を揃えます。国内のコースは18ホールの平均距離が約6200ヤード(=5.7km)あり、歩数にして約7600歩。アベレージゴルファーの場合、ボールは左右に曲がり、ホール間のジョイントもあるため、多くのゴルファーは18ホールをラウンドすると約10km、歩数にして約1万3000歩は歩くと言われています。
厚労省が健康保持・増進のために推奨している1日の歩数は、男性が9200歩、女性は8300歩なので、18ホールラウンドすると、この歩数はゆうにクリアできます。とはいえ、毎日ラウンドできる人はプロゴルファーを除き少数でしょう。
歩くことの効能を、図1にまとめました。血液循環機能や心肺機能が向上し、デトックスやダイエット、疲労回復、脳の活性化なども期待できますが、注目すべきはコンディショニング効果です。
[caption id="attachment_84643" align="aligncenter" width="960"]

(図1)歩くことの効能[/caption]
コンディショニングとは、身体バランスを整え、機能改善を図ることです。歩行運動は左右の腕と脚を交互に前に出し、身体を捻転させながら行う全身運動です。特に体幹部の筋肉、コアマッスルが鍛えられ、この捻転運動と体幹強化がコンディショニングに効果的なのです。
しかし、歩くことでコンディショニング効果を得るには、7~8kmは歩く必要があると言われています。1分で80m歩く計算だと約90分間。忙しい現代人で、毎日これだけの時間を歩くことに使える人は少ないはず。つまり、歩くことは健康に良いのですが、毎日ラウンドしたり、毎日90分歩くことは現実的ではありません。であれば、より健康効果が高まる歩き方を啓蒙したり、歩行運動に代わる健康増進に役立つエクササイズを指導するなど、ゴルファーの健康寿命の延伸を図る取り組みをすべきです。私が主管するゴルフスクールでそのことに挑戦しました。
コンペ表彰式で「歩行姿勢賞」
[caption id="attachment_84644" align="aligncenter" width="960"]

(図2)健康的な歩き方[/caption]
健康のために万歩計を用いて、毎日の歩数をチェックしている人は少なくないはず。スマホに万歩計を内蔵したアプリもあります。ただ、万歩計がカウントするのは歩数のみで、歩幅やスピード、ピッチなどはカウントしません。健康の維持増進が目的ならば、歩幅やスピードも重要な要素。同じ距離を大股で元気よく歩くよりも、狭い歩幅で歩く方が歩数は増えますが、どちらが健康的かは言わずもがなです。健康的な歩き方を図2に示しました。
歩き方には個人差があります。私のゴルフスクールで行った取り組みは、ゴルフコンペの参加者が歩き方をチェックし、健康的な歩き方を学べるイベントです。コースラウンドのハーフターン時に、NECの歩行姿勢測定システムで全員の歩行動作を測定。このシステムはマーカーなどを装着しなくても、キネクト(3Dセンサー)に向かって約6m歩くだけで歩行動作が測定でき、「歩行速度」「ふらつき」「左右差」「身体の軸」「腕振り」「足の運び」の6カテゴリーから、全36項目の歩行動作のスコアを推定。実年齢と性別から「歩行年齢」「速度年齢」「バランス年齢」「姿勢年齢」を割り出します。(図3)
[caption id="attachment_84645" align="aligncenter" width="1000"]

(図3)3Dセンサーに向かって歩くだけの歩行姿勢測定システム[/caption]
歩行時の運動特性が数値化されることで、歩き方のクセが分かります。例えば、足を前に踏み出した時の角度に左右差があると、股関節の可動域や股関節を屈曲させる筋力に左右差があることになります。そうなるとゴルフスイングにも影響を及ぼすため、改善のための具体的なトレーニング法も指導できます。
コンペでは、ゴルフスコアの順位とは別に、歩行年齢など4つの年齢が、それぞれ実年齢より最も若かった方を「歩行姿勢賞」として表彰。参加40名のうち3名がこの賞を獲得しました。また、表彰式では歩行に関するセミナーも実施。(図4)歩行の運動サイクルや足部の働き、足裏アーチの大切さ、歩行の効能や健康的な歩き方、そして図5のカートに乗らずにラウンドするとスコアが良くなることなどを講義し、ゴルフと絡めて歩行の知識を深めていただきました。毎日忙しく、歩く時間が取れない人のために、手軽にできて歩行運動の約30倍の運動量があり、ゴルフの上達に役立つエクササイズも紹介しました。参考になれば幸いです。
[caption id="attachment_84646" align="aligncenter" width="1000"]

(図4)ゴルフコンペで実施した歩行に関するセミナー[/caption]
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら