連載SDGs 第51回 SDGsの実践 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

連載SDGs 第51回 SDGsの実践 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行
長嶋茂雄さん ミスタープロ野球、長嶋茂雄さんが亡くなった。この衝撃的なニュースが飛び込んできたのは6月3日の朝でした。今年81歳になった私は文字通り長嶋さんの姿にあこがれ、活躍に励まされて育ちました。父親も友達もみんな長嶋ファンでした。 私の小学生時代は横浜の焼け跡でくず鉄拾いの毎日でした。学校は半日で、瓦礫ばかりの地平線に夕陽が沈んでいく景色を眺めて暮らしていました。「戦後は終わった」という言葉が飛び交う頃でした。 中学、高校と育つにつれ、学校も正常化し、白米も食べられるようになり、まさに「三丁目の夕日」の時代でした。 1964年の東京オリンピックの時は大学2年生でした。四谷から新宿まで高層建築物がなく、パチンコ屋も平屋でした。東京オリンピックを機に新幹線や高速道路ができ、日本が先進諸国の仲間入りを果たしつつあった頃です。 長嶋さんは六大学の頃からスターでした。1958年、巨人に入団。その後17年間の現役生活はまさに日本の高度成長にあたります。そんな中で長嶋さんは国民の気持ちを大いに鼓舞してくれた。 長嶋さんの訃報を伝えるテレビニュースを見ていると、私たち世代だけではなくあらゆる世代の方々が弔意を示し、長嶋さんの活躍に励まされた、と話していました。まさに昭和の英雄です。

世界一貧しい大統領

長嶋さんが亡くなる半月ほど前、ウルグアイ大統領だったホセ・ムヒカさんが亡くなりました。長嶋さんと同じく享年89歳でした。 ムヒカさんは「世界一貧しい大統領」として知られています。大統領になっても簡素な自宅からオンボロのフォルクスワーゲンで通い、給与のほとんどを寄付していました。 2002年、ブラジルで開かれた国連環境サミットでの演説は今も語り草になっています。ノーネクタイで壇上に表れたムヒカさんは次のように語ったのです。 「世界一貧しい大統領と呼ばれていますが、自分のことを貧しいとは思いません。貧しい人とは、豪華な暮らしを保つためだけに働き、次から次へと物を欲しがる人のことを言うのです」 「現代の超消費主義のおかげで、私たちは最も肝心なことを忘れてしまいました。人としての能力を、人類の幸福とはほとんど関係がないことに無駄使いしているのです」 「西洋の富裕社会が持つ傲慢な消費を、世界の70億~80億人の人達がみな楽しめるのか。その原料がこの地球にあるのでしょうか」 この演説は広く人々の心を打ち、ノーベル賞の候補にもなりました。 ムヒカさんは貧困家庭に生まれ、極左都市ゲリラ組織に参加。4度の逮捕で計13年収監されるという過酷な経験を糧に2009年、ウルグアイの第40代大統領になっています。

SDGsの申し子

ムヒカさんのこうした経歴や演説はまさにSDGsの本質を実践するものです。環境問題は政治の問題だと看破し、貧困と地球環境についての実践的な政策を実行しました。 ムヒカさんは5年間の大統領在任中に、ウルグアイ経済を毎年7%成長させました。1人あたりのGDPが南米最高を記録し、貧困率を押し下げ国民を豊かにしたのです。 キリスト教的に異端である同性結婚や妊娠初期の妊娠中絶を合法化したほか、不法組織の資金源になっていた大麻を合法化することにより裏取引のうまみをなくし、不法組織を弱体化したのです。 大統領時代の貧困とも見える生活態度を貫いたのは「大統領は平均的な国民の生活と同レベルの生活をすべきだ」という信念からでした。 経済格差と環境破壊という二つの大きな人類の課題の根源には、行き過ぎた消費社会があると考え、大統領として様々な政策を実践したのでした。この態度、信念はSDGsの目標と全く一致しています。 大統領の公務ではネクタイを締めませんでした。政府の会議で他の出席者はスーツにネクタイをしているのに対し、ムヒカさんは常にノーネクタイでした。ムヒカさんは「ネクタイを締めることは政治家の口を締めあげることであり、ネクタイは現代文明の奴隷の道具だ」と考えていたそうです。

スポーツの世界にSDGsを

プロ野球の世界では、大谷翔平選手がアメリカのメジャー・リーグで大活躍しています。鈴木誠也選手も山本由伸投手も活躍している。 プロゴルフの世界でも、ひと昔前のジャンボ尾崎さんや青木功さん、中嶋常幸さんの時代から今は松山英樹選手、また最近の女子プロ選手のアメリカでの大活躍など様々な変化が生じてきています。 日本のスポーツは長嶋さんの頃とは雲泥の差で強くなっています。サッカーも体操も陸上も世界最強のグループに入っています。 次は世界レベルでの社会貢献活動ではないでしょうか。強いスポーツ選手が何かしら社会貢献に踏み出してくれないだろうか、と強く思います。

SDGs1 貧困をなくそう

1)2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する極度の貧困を終わらせる。 2)2030年までに、あらゆる次元の貧困状態にある全ての男性、女性、子供の割合を半分にする。 3)各国において最低限の基準を含む適切な対策を実施し、2030年までに貧困層に対し十分な保護を達成する。 4)2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に強くする。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら