連載SDGs 第58回 温暖化とエネルギー 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

連載SDGs 第58回 温暖化とエネルギー 日本環境教育フォーラム会長 岡島成行

忍び寄る温暖化に

2026年の春が始まりました。おかげさまで千葉の自宅はかなり温かく、1月10日には梅が咲き始めました。例年より2週間ぐらい早い。 中旬に房総半島の南をドライブした時には、車の中が暑くてクーラーをかける状況でした。クーラーといっても22度ぐらいでしたが、この暑さにはいささか驚きました。 和田町の寒桜は2、3週間も早く満開に近い状態でした。日本海側が吹雪に襲われているのに関東では異常といえるほどの温かさが続いています。いずれ気温が落ち、また上がるという三寒四温を繰り返して春になっていくのでしょうが、おかしな温かさが続いています。 18日は82歳の誕生日で、近くのゴルフ場に行きました。この暖かさはありがたい。しかし手放しで喜べない気持ちです。多くの人は温暖化が進んでいる、と感じているのではないでしょうか。 [caption id="attachment_94298" align="aligncenter" width="788"] 1月10日には自宅の梅が咲きはじめ、例年より2週間以上早いのでびっくりでした。[/caption]

トランプ大統領大暴れ

ところで、新年早々アメリカのトランプ大統領の暴走ともいえる政策展開に世界が引きずり回されています。 ベネズエラに軍事侵攻してマドゥロ大統領を拘束し、イランにも手を出す意向を示しています。そのほかコロンビアへの軍事介入、グリーンランドの領有宣言などやりたい放題です。 この原稿が読者の皆様の目に触れる頃にはまた、事態が変わっているかもしれませんが、いずれにしても新たな帝国主義が急に出現したような気がして落ち着きません。 一説には、ベネズエラの問題は圧政に苦しむ国民を開放するためだとかベネズエラの石油資源の確保といわれています。また、イランを標的にしているのも石油確保であり、ベネズエラとイランの石油を支配して中国への石油供給を絶つためだ、とも言われています。中国、ロシア、北朝鮮など日本を取り巻く国々が独裁に近い軍事国家であることを念頭に置けばアメリカの行動は当然で、日本人の甘っちょろい考えは現実の世界情勢に通用しない、などの意見も見られますが、事態はそう単純なものではなく、21世紀のエネルギー事情が大きく関わっています。

次世代エネルギー

トランプ大統領は「地球温暖化は嘘だ」と言っています。温暖化の危機を全く感じていないようです。だから石油をどんどん使え、と言っているのですが、実は今、世界の目は石油や石炭などの化石燃料から二酸化炭素などを出さないエネルギーの研究に向かっています。 世界のエネルギーはまだ化石燃料に大きく依存しています。しかし、地球温暖化防止のため、世界全体のため、21世紀は二酸化炭素をはじめ温室効果を推進する物質を排出しないようなエネルギーの開発に向かわなければならないのは明白です。 例えば、e-メタノールやアンモニアの活用は二酸化炭素を原料にすることに繋がり、将来の主要エネルギー候補だともいわれています。現実に商船三井はe-メタノールにつながるメタン輸送船を運航していますし、日本郵船はアンモニア活用に繋がるメタノール二元燃料船舶を採用しています。 太陽エネルギーの研究は大きく進化し、実用化しています。日本では大規模開発を伴う太陽パネルの建設に問題が出ていますが、ペレブスカイトのような曲がるパネルが開発され、各家庭の屋根やビルの側面、自動車などにも適用できる新型パネルも用意できています。 [caption id="attachment_94301" align="aligncenter" width="788"] ペレブスカイトは薄く曲がる太陽発電です。ビルや住宅、自動車などどこにでも張り付け利用できる画期的な技術です。[/caption] また、NTTのIWON(アイオン)のように、半導体の電気使用量を100分の1にすることを目的にして、実践的な研究が進んでいるのです。 石油に代表される化石燃料を主とするエネルギー事情は今世紀中に大きく変化し、自然エネルギーの活用やエネルギーの効率化を目指す方向に移行していくでしょう。石油などの化石燃料は規制される可能性があります。

時代の変化を読み取る力

[caption id="attachment_94302" align="aligncenter" width="788"] 2025年5月、日本郵船グループのNYKバルク・プロジェクト(株)が定期傭船するメタノール二元燃料ばら積み船「Green Future」が竣工した。将来のアンモニア利用につながる。(日本郵船ホームページより)[/caption] トランプ大統領の言動は、温暖化という世界の危機に対する責任放棄です。また、20世紀型のエネルギー開発から抜け出られない古い考え方とも言えます。 トランプ大統領が重要視しているベネズエラの石油は品質が良くなく生成に経費が掛かるようです。10年かけて運用できるようになるころには価値が落ちる可能性があります。 温暖化の影響がすでに各地で出始めていることを考えると、温暖化はさらに進み、温暖化防止のための新エネルギーの開発が必須であり、そのための技術発展が大きく進むとみられます。すなわち、トランプ大統領が推し進めている政策は役に立たなくなる可能性があります。石油はまだまだあるから大丈夫という次元ではなく、あっても使えない、という状況になりそうです。 一方、温暖化防止についてはアメリカの力が必要です。温暖化分析の多くのデータはアメリカ軍の協力によるものです。資金でもアメリカの協力は欠かせません。 トランプ大統領だけでなく世界の指導者には、これから50年先の世界を構想する力を持ってほしい。新エネルギーの開発はSDGsの大きな課題のひとつなのです。

SDGs7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに

[caption id="attachment_94303" align="aligncenter" width="788"] 商船三井の世界初の大型エタン輸送船「ETHANE CRYSTAL」(商船三井ホームページより)[/caption] 2030年まで安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。そのためには ①世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる ②世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる ③再生可能エネルギー、エネルギー効率化、クリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進する ④各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国の人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給するためのインフラ拡大と技術向上を行う―などの政策を推進する必要がある。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら