ネットで試打クラブをカスタマイズ 「子供新聞」が始めた高齢者向けの新サービス
子供新聞が地クラブに参入? なんともユニークな参入経路を辿ったのが、朝日スポーツネットという会社。同社は埼玉県内の小中学生を対象に「朝日新聞埼玉少年少女スポーツ」という4面の地域情報紙を、毎月第2・第4水曜日に朝日新聞に折り込む形で発行している。一転、2015年11月中旬、地クラブ専門通販サイトの『フューチャーメイドゴルフクラブ(FMG)』を立ち上げたから、その背景に興味がわく。どのような思惑が働いたのか? 「当社は編集プロダクションやWEBデザインも行っています」 と前置きして、編集記者の橋上賢太氏が次のように説明する。
「我々は日々、小中学生を対象に取材活動を行っていますが、その過程で『ジュニアクラブの製造販売をしてみようか』という話が持ち上がったのです。ところが、周囲に相談してみるとジュニアのビジネスは難しいと言われ、軌道修正を図った結果、大人向けのオーダーメイドに近いサービスを始めることになりました」
それが地クラブ専門サイトの『FMG』だ。サイトの監修に、パーツ販売代理店業を営むCMPの中山清代表が選ばれた。同氏は業界歴30年のベテランで、工房を主戦場とする地クラブとネット通販の相性の悪さを熟知している。逆説的にいえば、相性の悪さを解決できればビジネスチャンスが広がると考えたわけだ。
その手法が面白い。購入希望者は入会金3000円を払って会員になり、①スイングに関わる12設問に回答、②診断結果に基づき試打クラブを作製、③1週間レンタル、④試打結果(5項目の問診)を加味してクラブ作製、⑤購入に至るという流れである。採用するヘッドはエムケイトレーディング、ワークス、グレートンの3社で、高反発仕様を中心に取り揃える。ターゲットはHS41m/sまでが中心というから、シニア層を視野に入れている。
シャフトは同社オリジナルで、粘り系と走り系の2種類、各2フレックス(A~L相当)を用意した。ドライバーを製作する場合、シャフトが3万5000円、ヘッドは5万5000~6万5000円で、グリップと組立工賃は無料だが、もっとも高い組み合わせで10万円程度になってしまう。新規参入の『FMG』が『ゼクシオ』を超える価格を納得させられるか。さらには、対象顧客と想定されるシニアがネット上でやり取りできるのかなど、新しい挑戦だけに、いくつかの疑問符がつく。
CMPの中山代表が説明する。「価格的には『ゼクシオ』と比較すれば高いでしょう。ただ、問診フィッティングを介して試打クラブを打ってもらい、効果を実感できれば購入してもらえると思いますし、消費者としては安心してクラブを購入できるメリットがあると思いますね。それとネット上のやり取りについては、シニアとの相性の悪さは懸念されます。それは今後の課題ですね。購入以前の試打クラブは2~3回まで提供できます。1回目は会費の3000円を試打クラブの往復送料に充てますが、2回目は新たに送料を負担してもらう予定です。3回目以降は要望のレベルによって別途料金を頂くことになるでしょう。それでも、3000円で自分に合った試打クラブを実際に試打して、それから購入を判断するには安いと思いますね。試打結果を加味したクラブ購入のサービスは、業界にはないと思います」
従来、地クラブ市場は競技者を中心に広がってきたが、最近では初中級者やシニアの工房利用者も増加中。果たして、ネットで高反発地クラブの『FMG』は成立するのか? 初年度の会員目標は200人、販売目標は30本だ。
尚、1月1日発行の月刊ゴルフ用品界1月号の22ページに、「採用ヘッドは和宏エンタープライズ、ワークスゴルフ、グレートン」と記載していますが、正しくは「エムケイトレーディング、ワークス、グレートン」の間違いです。関係者の皆様へお詫びし、訂正致します。