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    ハッシュタグ「インタビュー」記事一覧

    今年7月、イオンスポーツ代表取締役社長に34歳の東義弘氏が就任した。同時に、ヘルメットなど安全衛生保護具の総合メーカーであるトーヨーセーフティの社長にも就任。すでに昨年、2社を束ねる持ち株会社・TSホールディングスの社長にも就いていた。いずれも父・孝次氏が会長を務める親子鷹経営。自らを「守って攻めるタイプ」と話す三代目社長が、独自の挑戦論を口にした。 <strong>7月に社長就任ですね。おめでとうございます。</strong> 「ありがとうございます」 <strong>重責を背負った感じですか。</strong> 「そうなんです。私、こうして取材を受けるのも初めてで、手汗も凄くて……。今日はよろしくお願いいたします」 <strong>まずは社長の来歴を教えてください。 </strong> 「2016年に大学院を卒業して、人材紹介とコンサルティング会社に計6年勤めました。その後2021年にイオンスポー ツの母体であるトーヨーセーフ ティ(TS)ヘ入社。ほぼ1年後にイオンスポーツに参画したという経緯です」 <strong>今はTSホールディングスとTS、それからイオンスポーツの3社の社長?</strong> 「おっしゃるとおりです。まず、イオンスポーツの歴史を話しますと、最初は東洋物産工業(現TS)のプラスチック射出成型技術を転用して、ゴルフクラブを作りました。創業は1990年。私は翌年の生まれなので、会社と同じ年輪を重ねています(笑)。2000年代は現会長が 『GIGA』を軌道に乗せて、同時に着圧アンダーウエアにも乗り出して、今の礎を築いており ます」 <strong>『ゼロフィット』ですね。</strong> 「はい。先ずはゴルフ専用の着圧ソックスから始まり、着圧アンダー、そして防寒機能をもつ 『ヒートラブ』がヒット商品になるんですが、温暖化で夏場の商材も必要だろうと見込みまして、2010年頃に夏用アンダーウエア『エアロメッシュ』を開発しております」 <strong>先見の明がありましたね。</strong> 「だと思いますが、当時は夏にアンダーウエアを着るゴルファーが少なく、上手くいかなかったんです。初期モデルはメッシュ素材だけど冷却機能がなく、市場性もなかったので、販売店への説明に苦労したそうです。今はこの暑さなので、発売後すぐに売り切れる人気商品に育っています」 <h2>育てるグローブと冷感アンダーウエア 派生品も視野に</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/08/ion-glove.jpg" alt="" width="788" height="525" class="alignnone size-full wp-image-90021" /> <strong>イオンスポーツの年商は?</strong> 「非公開なので、すみません(笑)。ただ、グローブの『インスパイラル』については、2010年に発売され、何年にもかけて口コミで広まり続け、今では年間50万枚以上売れる主力商品となっています。フィット感があってグリップ力が落ちないので、長く使って、ゴルファーに育てて頂けるグローブだと思っています」  <strong>「馴染む」ではなく「育てる」だと。メーカーらしい言語感覚ですね。</strong> 「そうですか、ありがとうございます」  <strong>商品別の構成比は?</strong> 「細かな構成比は明かせませんが、グローブとアンダーウエアを含めたゼロフィットが日本と海外合わせて全体の7割で、あとを地クラブの『ジニコ』や、屋外練習場2か所の売上で構成しています」  <strong>なるほど、多様な会社ですね。</strong> 「だと思います。社員は約30名で、そのうち営業マンは4名ですが、彼らがクラブやグローブ、アンダーウエアの開発も担っているんですね。この30名には出荷、EC、広報、それに練習場の社員も含まれますが、全員が一致団結して、一枚岩の組織だと自負しております」  <strong>気合が入ってますねぇ。</strong> 「いえいえ……(笑)」  <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/08/ion-icemsh.jpg" alt="" width="788" height="525" class="alignnone size-full wp-image-90022" /> <strong>夏のアンダーウエアが完売という話ですが、他社品よりも優れてる?</strong> 「と、自負しております。ゴルフは汗のかき方が他のスポーツとは違いますし、スイングを邪魔せず、背面のメッシュ生地が汗を揮発させストレスを軽減する。前面は冷却プリントで涼感を保てる構造です。弊社には、実は多くの協力者であるアドバイザリープロやモニターとなって頂いているアマチュアゴルファーがいまして、私を含め社員はもちろん、その方達に夏のプレーで体感してもらい意見を頂き、満足できるものだけを製品化します。発売は毎年4月ですが、今年度モデルは、6月にはメインのサイズが店頭から消えました。ほぼ完売に近い状態です。今回のモデルは発売の2年前から素材を選定し、思考錯誤を重ね、商品化にこぎつけました」  <strong>体感でマイナス何度ですか?</strong> 「よく『体感温度』って言い方をしますけど、実は科学的根拠に乏しくて、表現的に厳しいんですよ」  <strong>読者がイメージをつかむために、敢えて体感温度で表現すると?</strong> 「開発担当に確認したところ、マイナス6度の表現でOKだそうです」  <strong>それにしても、夏本番を前に店頭で欠品はもったいない。生産計画が甘いんじゃないですか。</strong> 「そのようなご指摘は……真摯に受け止めますが、販売店さんにご迷惑をかけないよう確実なビジネスを心掛けているんです。無理して増産して売れ残ったり、ワゴンセールになるようなことはしたくない。慎重すぎると思うかもしれませんが、ブランドを壊したくないんです。逆に値上げの可能性ですが、ゴルファーの皆さんにご負担をかけるのも心苦しい。そのあたりのバランスが大事だと思っております」  <strong>販売店数はどれくらいですか。</strong> 「500店舗ほどで、半分が代理店経由になっています」 <strong>直販比率を上げたいでしょう。</strong> 「直販が増えれば増益になるかもしれませんが、一方でこの商品が育ったのは、代理店や小売店の協力があってこそなんですね。店舗数にしましても、増えれば価格競争に巻き込まれやすくなる。先ほどのバランスの話ですが、一時の衝動に駆られることなく、多面的に見ることが大事だと考えております」 <strong>熱血系に見えますが、実はクールヘッドなんですね。</strong> 「ゴルフ業界は3年ほどなので、いろんな方と協働して挑戦はしたいと思ってます。ですがディスブランディングにならないことが前提で、来年の夏物アンダーウエアは2割増を目指します。手堅いと思われるかもしれませんが、その代わり猛暑対策の派生商品として冷感グローブや冷感ハットの可能性も、視野に入れるつもりです。製品化は未定ですが」 <h2>キャディさんが涼しく小顔に見えるようなヘルメット作ります!</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/08/ion-met.jpg" alt="" width="788" height="525" class="alignnone size-full wp-image-90024" /> <strong>夏対策の話を広げると、キャディのヘルメットにもつながります。非常に過酷な状況で、これを何とか救いたい。</strong> 「是非、我々にお任せください!」  <strong>というのも、系列のトーヨーセーフティ(TS社)は工事現場用のヘルメットを作っている。キャディ帽の話の前にヘルメットについて教えてください。</strong> 「ありがとうございます。まず、当社のこだわりは『被り心地』です。長時間被っても首が疲れないよう、内側のハンモックにはフィットする軟らかい素材を使っていて、軽量タイプは300g台と非常に軽量です。次が『通気孔』で、風が通りやすい形状かつ、風を前頭部から後頭部に流す形なんですね。逆も同じで、特にアーチ状の通気孔が特殊です。あとは消臭性も重視しております」  <strong>驚いたのは送風機……ヘルメット用の小型送風機があるんですね。</strong> 「はい。10年前に1号機を製品化しまして、今回が4号機になるんです。ヘルメットの後部にカチッと取り付けるもので、小型のファンがヘルメット内に風を送る。TS社独自の技術が盛り込まれているんですよ。今年6月、事業者に対する熱中症対策義務が強化されて、各社とも多額な予算を投じています。特にヘルメットは蒸れるプラスチック帽を被ってる状態で、ファン付き作業着で上半身は涼しいのに肝心の頭部は熱がこもる。送風機はその解決を目指したものです」 <strong>ヘルメットメーカーは何社くらい?</strong> 「産業用ヘルメットメーカーは約10社ですね」  <strong>TS社は業界何位ですか?</strong> 「業界の上位に位置しています」 <strong>東さんはTS社の社長も務めている。キャディの「頭」を救ってください。</strong> 「非常にやり甲斐のあるテーマですね。TS社の売上はヘルメットが5割を占めるので、その強みを生かして工事現場だけではなく、他業界の人命を守ることにも貢献したいですから」  <strong>知人のキャディいわく、ヘルメットにドリルで穴を空けているそうです。某ゴルフ場経営者も、今のヘルメットだと深部体温、特に頭部が危険なので、どうにかしたいと話してました。</strong> 「そこは、当社がお役に立てると思いますので、早急に話し合いの機会を頂ければ来年の夏に向けて形にしたいです」 <strong>キャディ用ヘルメットとして工夫する部分は思い浮かびますか。</strong> 「実はTS社は20年ほど前、ヘルメットに簡易的なツバを付けるキャディ用の製品を作ったことがあるのですが、当時は被り心地や酷暑対策も施してなく、定着しなかったんですね。でも、あれからかなり進化してますし、ファッション性についてもキャ ディさんが『小顔』に見える形 状とか、現場の声を吸い上げれ ば発想が浮かぶと思います」 <h2>5年は守って攻めるが3年以内に新たな商材を開発したい</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/08/ion-ginnico.jpg" alt="" width="788" height="525" class="alignnone size-full wp-image-90025" /> <strong>今、何歳ですか。</strong> 「34歳です」  <strong>同年代の経営者がゴルフ業界にも増えています。特にインドアは市場自体が若いだけに、若手経営者が凄いスピード感で成長している。</strong> 「だと思いますが、私は性格的に、あるいは前職のコンサル時代にも地道に市場調査をして、情報を精査し、コトを進めるタイプなんですね。そこは自分の弱みでもあり、変化が激しい時代では行動が遅くなることも自覚しています。ですが今は承継者としての責任、これまで社員が築いたブランドを壊さず、守ることが第一だと考えているんです。大胆な挑戦は魅力ですが、もっと経験を積む必要がありますので」  <strong>会長は、大胆に攻めるタイプですね。</strong> 「はい。父は大胆かつ、ダメな時にはすぐに方向転換できる。その連続性からアンダーウエアやグローブなど、ヒット商品を生み出しました。私はゼロから生み出した経験がありませんから、そこは現状、会長には及びません。ただ、会長の時代とは明らかに環境が変わってますし、私と同世代の経営者から刺激を受けることもあります。まずは守って、それから攻める。攻め時もイメージしてるんですが(笑)」  <strong>守りは何年間ですか。</strong>  「今は5年ぐらいの感じで見てますが、その間守りに徹するという意味ではなく、現有のブランド群を軸にした挑戦はしていきます。夏対策の派生商品もそうですし、キャディのヘルメットもそうかもしれません。会長が50にしたものを、40歳の手前までに100にしたい。そのように考えておりますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします」
    (公開)2025年09月02日
    ヨネックス元社長の米山宏作氏が5月4日、永眠された。享年87歳だった。その「お別れの会」が7月24日、都内のホテルで開催され、多くの関係者が別れを惜しんだ。 同氏は新潟県三島郡に6人兄弟の5男として生まれる。長兄の稔氏が1946年、ヨネックスの前身となる米山製作所を創業。宏作氏は1997年、二代目の社長に就任し、中興の祖としてヨネックスを成長させた。 GEWは2001年10月号で宏作氏のインタビュー記事を掲載したが、その内容を改めてウェブに再掲する。 カーボン技術を搭載した『カーボンアイアン』で業界参入を果たしたものの、構造上の問題でルール違反と判定された。その後、適合の新型を発売したが、日本ゴルフ協会(JGA)の関連競技では「紛らわしいから禁止」となる。これを不服としたヨネックスは1985年9月、JGAを相手取り東京地裁へ訴えて和解。前代未聞の闘争だった。 そんな武勇伝を含めて、「国内工場堅持」への強い想いなど、企業経営の本質論が込められている。(聞き手・片山哲郎) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/BP-60C26_20240729_111429.jpg" alt="" width="1000" height="669" class="aligncenter size-full wp-image-82265" /> <h2>2001年『サイバースター』絶好調</h2> <strong>それにしても12万本とは凄いですね。『サイバースター3000』の販売目標は当初7万本だから大幅アップ。秋口に『360』『ツアーモデル』『レフティ』を加えて完全に陣容が整いました。</strong> 「12万本はね、単なる計画ですよ。そこまでいけるかどうかわからんし、ライバルメーカーも強力な商品を出してくる。『調子に乗ってる』なんて書かないで下さいよ(笑)。 だけどまぁ、うちにとって間違いなくNO1ヒットだし、出荷ベースで毎月9000本は出ています。外資メーカーの攻勢に対抗するとまでは言えないけど、土俵に指が掛かるくらいにはなったのかな」 <strong>『サイバースター3000』だけで45億円ですか。</strong> 「もうちょっと少なくて、42億〜43億といったところでしょう。うちのゴルフ事業全体で47億〜48億の計画だから『サイバースター』に一極集中だし、 裏返せばこれしかない(笑)」 <strong>なぜここまでやれたのか、という理由のひとつに、御社のケンカ慣れがあると思うんですが、どうでしょう?</strong> 「ん、どういうこと?」 <strong>御社は1985年、「カーボンアイアン騒動」でJGAを東京地裁に訴えた。そんな武勇伝があるだけに、高反発性能のアピールが他社より頭ひとつ抜けてます。</strong> <strong>テレビCMでも競技委員をからかうみたいなシーンを流してますが、かなり思い切りよくやってますね。</strong> 「別にからかっちゃないですよ(苦笑)。あのCMは飛びの優位性を表現するための手法でね、『反発係数』は作り手の言葉じゃないですか。そうじゃなくて、消費者に広く正しく知らしめるための演出なんです。 まあ、ケンカ慣れという意味じゃそうかもしれません。『カーボンアイアン騒動』は、ゴルフ業界における我々の原体験になっていて、消費者への対応、社員の結束、ゴルフへの取り組み方。そんな諸々を徹底的に鍛えられた。 非常に厳しい環境の中で全員が腹を固めたわけで、当社の歩き方を決した面もありますから」 <strong>腹の固め具合はどの程度でした?</strong> 「徹底的に! ですよ。うちがゴルフ市場に参入したばかりで、ゴルフ事業の売上は当時たったの8億円。にも関わらず『カーボンアイアン』のヘッド交換その他で12億円以上費やした。違反ヘッドの指定を受けてから3か月で97%回収して、間髪入れずに適合の新型ヘッドに切り換えたんです。 なぜそこまでやるんだと、みなさんから聞かれましたがね。だけどやらなきゃ駄目なんです。テニス、バドミントンのユーザーはゴルフへの流動性を持っていて、約3割が重複している。ヨネックスブランドの威信にかけても『俺は知らん』とは言えないでしょ? それ以上にゴルフマーケットへの真剣さをアピールする必要もありまして、逃げるわけにはいかなかった。徹底的に、というのはその意味ですよ」 <strong>当時、ゴルフ事業の販売構成比はどの程度ですか。</strong> 「そうだなぁ、1割未満。たしか7〜 8%だったと思います」 <strong>すると主力のラケット部門から突き上げもあった? 「だから言わんこっちゃない、ゴルフなんかやるべきじゃなかった」とか。</strong> 「そうじゃないッ、そうじゃないんですよ。ゴルフの痛手を全社挙げて取り返すんだと、みんな形相が変わりましたよ。ゴルフの痛手を挽回するために、テニス、 バドミントンのラケット事業も必死にシェアアップを目指したし、ゴルフの老舗メーカーからも『ほら見たことか』って中傷されたじゃないですか」 <strong>ラケット屋がおもちゃのクラブを出したからだ、とか。</strong> 「そうそう(笑)」 <strong>反骨心に火が点いた。</strong> 「そうですよ。その頑張りが報われて、翌期には倍以上売りましたし、翌々期は60億に手が届くまで成長した。ラケットで培ったカーボン技術による飛び性能は、特に年配者に評価されましてね、その意味ではゴルフ振興にも一役買ったと自負している。 まあ、いろんな意味で『カーボンアイアン』は我々の原点です」 <h2>「禁止マーク」900枚を専門店にばら撒いた</h2> <strong>『サイバースター3000』のアイキャッチは道路標識の「侵入禁止」をかたどったデザインですね。社内で「禁止マーク」と呼んでるそうで、主要店に900枚ばら撒いたとか。</strong> 「ほお、よく知ってますなあ。数までは僕も知らなかった(笑)」 <strong>あのマークはかなり刺激的ですね。高反発規制は2008年からだけど、それをわざわざ先取りしている。</strong> 「うん。先ほどもちょっと申し上げたように、わかりやすさが大事なんですよ。わざわざ『禁止』と書かなくても(高反発禁止が先行した)アメリカでは使えない、それがあのマークですぐわかる。 テレビや新聞でアピールしても売り場でやらなきゃ浸透しない。それが『禁止マーク』の配布ですよ」 <strong>「咀嚼する」ということでしょうか。いろいろ言っても仕方ない、噛み砕いて要点だけをポンッと出す。</strong> 「あのお、機能訴求の時代がね、長らく続いたと思うんですよ。これは大事。クラブは機能商品だから、他社と比較した機能の優位性じゃなく、明かに違った物を出すことです。 でも、だとしてもね、それは作り手の事情であってお客さんは違うじゃないですか。冷え切ったゴルフ市場に活力を与えるには話題性が必要で、それはお客さんの感性をつかむこと。 機能説明をダラダラ言っても買いません。感性を刺激した価値観をどのように創造するかが要点なんで、『サイバースター3000』はここに物凄くこだわってます」 <strong>感性って何でしょう。</strong> 「わかりません。僕もわからないで言っている(笑)。だけどその大切さは認識してますよ」 <strong>どのように?</strong> 「うん。例えばうちはウォーキングシューズにも力を入れてますが、これ、スポーツ医学の先生に言わせれば非常に優れた物なんです。スッと足を入れた瞬間に何とも心地良い感触がして、みなさん軽いと言ってくれる。 軽いのは誰でもわかるんです。そうじゃなくて、心地良さを言葉にできないものか。これまではウンチクをごちゃごちゃ並べてましたが、それを止めろと言っている」 <h2>おばあちゃんの涙</h2> <strong>ヒトは他人からごちゃごちゃ言われると耳を塞ぎたくなります。いくら正しいことを言われても拒否反応を示してしまう。</strong> 「そう。僕はそれを、作り手とお客さんの本質的なギャップだと言ってるんですが、作る側はいろんな苦労を重ねてきたから全部言いたくなるんですよ。取捨選択できないんだな。だけど消費者は要点だけを聞きたいんです」 <strong>苦労話なんか聞きたくない。</strong> 「そうですよ。ならば思い切って捨てる作業が必要だし、それを一言に込めるのが表現力じゃないですか。コミュニケーションを図るには咀噌して集中させること。 それで最近、こんな話があったんですよ。 自宅のそばに本屋さんがありましてね、そこのお婆さんが歩けなくなっちゃった。見てて痛々しいんですよ。それでサイズを聞いたら僕の家内と同じだから、すぐに持って行ってあげたわけ。 そしたらみるみる回復して、海外旅行へ行っちゃった。僕の顔見ると嬉しそうに一々報告してくれるんです」 <strong>それを言葉にしたい?</strong> 「そうなんです」 <strong>「涙が出ます!」とか。</strong> 「う〜ん・・・・・」 <strong>センスがない・・・・。</strong> 「一言に込めるって難しいでしょ?(笑)」 <h2>機能訴求から「感性訴求」へ</h2> <strong>最近コカ・コーラが「ノーリーズン」というキャッチフレーズでやってます。何だかわからないけど飲みたい、という心境なんでしょうが、そもそもコーラって健康飲料じゃありませんから感性でやるしかないですよね。</strong> 「なるほど」 <strong>面白いのはテーラーメイドです。新商品の発表を大画面を使ってやりましたが、商品写真が切り替わるたびにブルガリやモンブラン、ジャガーの写真を挿入する。言葉では説明しないけど、自分たちのポジションはここなんだと。</strong> 「それは面白いねえ。従来のテーラーメイドとは全く違うし、おそらく(親会社の)アディダスの影響じゃないですかね。アディダスのにおいがぷんぷんします。 海外メーカーはこれまで、機能訴求を徹底的にやってきたけど、今の話にもあるように、最近はかなり違ってますね。感性に対する取り組みが目立つんですよ。 残念ながら我々は、そこまで行けてない。広告代理店のセンスを含めて遅れてる事実は否めませんなあ」 <strong>だけど、御社にも感性訴求らしき動きはありましたね。去年『サイバースター2000』のコマーシャル映像で、CGを使った竜巻にオペラ歌手の歌声を被せた。大袈裟だし、ゴルファーの感性に訴えた?</strong> 「違います。アレもやっぱり機能訴求ではありましたね。というのも『竜巻』はボールのスピンを連想させる試みで、飛距離へのイメージを狙ったんです。だけど結果的には反省があって、常に議論はしています」 <strong>なるほど、いろいろ難しいんですねぇ。</strong> <h2>ミケルソンと切れたのは悔しかった</h2> <strong>ゴルフ事業の売上は当期47億~48億円ということですが、最盛期はいつですか。</strong> 「8年前に96億(連結)まで行って、その後ズドンと落ちてしまって、前期は44億を切りました。これが最低です。 だけど理由があるんですよ。余分なものを整理するため徹底的に絞り込んだ。散漫にやると売り場もメーカーもお客さんも、みんな混乱するじゃないですか。それを避けるために絞ったわけですが、絞れば売り上げも減りますでしょ。そういったことでした」 <strong>御社は「熟年市場」へのアプローチが中心ですが、これまで看反選手はずーっとフィル・ミケルソンでした。その彼と、絞り込みの過程で契約切れになったことはよかったんですか?</strong> 「いや、傍目にはどう映るかわからんけども、我々の基本線はアスリート志向だし、ミケルソンと切れたことはやっぱり残念ですよ。彼とはアマチュア時代からの付き合いで、世界市場ヘヨネックスを印象付けるのに多大な貢献をしてくれた。でもね、要求額が・・・。 我々の年商が500億クラスならともかく、うち程度じゃ歯が立ちませんよ(苦笑)」 <strong>要求額は複数年で110億超ですか?</strong> 「具体的な額は言えませんが、 以前の3〜4倍に跳ね上がった。この金額をほかのプロモーションに振り向ければ相当なことができますので、結果的には断念せざるを得なかったんです。 もちろん悔しかったですよ。その気持ちをわかってもらえたのか、彼のお父さんからお手紙を頂戴しまてね・・。 ただ、金の切れ目が縁の切れ目ということじゃなく、今でも彼の活躍は楽しみだし、気になる存在ではありますね」 <strong>御社との契約期間は昨年末までありましたが、その前の11月にアクシネットが「ミケルソン獲得」を発表しました。あれは、</strong> 「そう、あれは問題ですよッ。本来なら訴えられても仕方ないぐらいだ。 うちとしては事を荒立ててもしょうがないのでグッと我慢しましたが、非常に残念なやり方でしたな」 <strong>ミケルソンがいなくなってグローバル戦略は小休止ですか?</strong> 「いや、それは全くありません。地道だけどプロ契約も進めてるし、常に世界を意識しないと逆に国内でやられてしまう。そういった感覚を磨くのは非常に大事なことなんです。 国内外の比重の掛け方は経営のバランスだから、臨機応変ではあるけれど、徐々に採算が取れるようにはなってます」 <h2>安易な海外生産は「命」を取られる</h2> <strong>御社は国内生産にこだわってますが、グローバル戦略を考えたときに国内生産のコストは重くないですか?</strong> 「そうねえ・・・まるっきり『NO』とは言えないけど、国内工場を堅持することは必要条件だと思ってます」 <strong>でも中国の労働コストは、日本の20分の1じゃないですか。</strong> 「だから一部中国へ依託もしてますが、国内工場をどうこうするという話にはなりませんし、長い目で見ればコスト差を補って余りあるメリットがある。僕はそう考えてます」 <strong>どういったことでしょう。</strong> 「うん。かつて日本にラケットメーカーは63社ありました。だけどいま何社残ってると思います? うち1社ですよ。 労賃の安い国へ技術移転して、ついでに命まで取られてしまった。つまりメーカーが自社生産を放棄した時、それはメーカーが終わる時なんです」 <strong>倒産して、自殺者も出たんでしょうねぇ。命まで取られた。</strong> 「そりゃね、すぐ隣に安く作れる国があれば、そこを使わない手はないと考えるのが普通ですが、メーカーは自分で物を作るのが基本じゃないですか。それを見失うとまずいということを、我々はラケットで散々経験してるんですよ。 ひとつ例を言いましょうか。例えばウエアの話です。ひとつの商品でS、M、L、Oと4サイズ揃えます。すると経験則的にSが5%になるという。1万枚の生産計画でSを500枚作って、結果100枚しか売れなかった。すると残った400枚は無駄になります。 ゴルフクラブもまったく同じで、経営の最大の圧迫要因は『見込み生産』なんですよ。 でね、これを回避するためにはジャスト・イン・タイムしかありません。いろんな調査データを見たところで意味がないとまでは言わないけど、需要予測をパーセンテージで見るんじゃなくて、日々の本数で追いかけるのが一番大事なことなんです」 <strong>市場予測を机上で議論しているうちに、現実の市場はどんどん変化する。だから机上論ではなく、現実の動きに如何に瞬時に対応できるか。そのほうがよっぽど大事だと。</strong> 「そう。うちもチタンヘッドは中国でやってますが、中国はあくまで材料としてのストックです。材料は1.5か月分、商品は0.7か月分で、これをきっちりと守っていく。 このあたりを全て外注すると、事前に先方の生産ラインを抑えなきゃならないので、日々の現実の動きに対応できなくなる」 <strong>つまり「見込み」をしなきゃいけなくなる。</strong> 「そう。対応できない、ということが命取りになるんですよ」 <strong>低コストへなびくのは近視眼的だと。</strong> 「少なくとも僕は、そう考えます。もちろん中国の技術進歩は素晴らしい。後発が有利なのは、その時代の最先端の技術からスタートできるじゃないですか。新しい技術の吸収が早いから、成長性も見込めます。 だけどそういったことを前提にしても、国内工場は絶対に堅持すべきなんです」 <strong>そこはもう、思想というか哲学ですね。</strong> 「そんな立派なもんじゃありませんが(笑)、うちは『計画と仕入れ』について方程式を持っていて、常に3つの角度から検証してるんですね。常にメールでやり取りして、本数をしっかりと追いかける。 たしかに『サイバースター3000』は猛烈な勢いで売れてますが、せっかく作ったブランドも過剰供給になれば在庫処分で安売りになる。ブランドなんかすぐに崩壊しちゃうし、せっかく買ってくれたお客さんに残念な思いをさせてしまう。 そうさせないのが我々メーカーの責任なんだッ。でしょ?」 <strong>わかります。</strong> 「一見合わない国内生産のコストもね、結局は帳尻が合うようになっている(笑)」
    (公開)2024年07月29日

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