引き続き、インドアゴルフマーケットが活況を呈している。全日本ゴルフ練習場連盟(JGRA)の調査によれば、2021年10月時点の調査では、国内において1265のインドアゴルフ施設があり、前年比241施設増。
2021年10月以降も増加基調にあるものと推察される。矢野経済研究所はその要因を「コロナによる空き物件の増加」と「コロナによる異業種からの参入増」を指摘している。
昨年の12月に一般社団法人日本インドアゴルフ協会主催のバーチャルゴルフトーナメントが「and GOLF」(東京都渋谷区)で開催された。中西直人、塩見好輝、時松隆光、片岡尚之、井上莉花、臼井麗華、金澤志奈、大西葵が出場し、シミュレーションマシンを使ったエキシビションマッチがおこなわれた。
都心エリアで、エンターテインメント性溢れる演出を加えながら、出場プロの人柄、スイングの迫力、技術の高さを感じられるイベントに、一般の来場は受け付けていなかったが、大いに盛り上がった。
シミュレーションゴルフを使用した1チーム男女ペア2名による9ホールのダブルス(2人のベストスコア採用)ストロークマッチで賞金総額は100万円。片岡&井上ペアが31ストロークの5アンダーで優勝を飾り、賞金50万円を獲得。
片岡は「バーチャル特有の難しさはあったが、なんとか最後は粘って優勝できてよかった」、井上は「バーディラッシュでバーチャルゴルフは簡単かな、と思ったけど、後半からミスがリアルに反映されてしまいました。チーム戦で助け合うことができてよかった。とても楽しかったです」とそれぞれ喜びを語った。
イベントに先駆け、代表理事の木下裕介氏は次のように話している。
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「インドアゴルフは施設数が継続的に増加しており、多様なゴルファーを受容できるゴルフ産業の中で数少ない成長市場として大きな可能性があります。協会の母体は会員権売買の住地ゴルフで、既存事業で培ったゴルフ場やゴルファーとのつながりを活かした、より豊かなゴルフライフを提供することがビジョンです。インドアゴルフの魅力を多くの人々に発信するきっかけづくりとして、バーチャルゴルフトーナメントを開催しました」
今後は、インドア施設の経営支援やコーチの活動支援をおこないながら、男女プロゴルフツアーとコースや開催時期を連動したシミュレーションゴルフ大会を開催して、新規ゴルファーの創出に取り組みたいとの意気込みも語っている。
ところが、協会のホームページを調べたところ、全く同名の「一般社団法人日本インドアゴルフ協会」が存在することがわかった。こちらの代表理事は、都内近郊に96店舗のインドアゴルフ施設を出店し、入会者数5万5000人を超えるステップゴルフ代表取締役CEOの榎本考修氏となっている。同名の協会が存在することについて、榎本氏に話を聞いてみた。
「2020年5月に、ゴルフスクール事業のノウハウを共有し100万人の新規ゴルファー創出を目指して『一般社団法人日本ゴルフスクール協会』を立ち上げました。
その後、屋内外のスクールを包括するのは広域に渡ってしまうため、インドアゴルフ事業で培ったゴルファーの裾野を広げるノウハウを社会に還元し、ゴルフ業界の更なる発展に寄与したいとの思いから、2022年6月15日に『一般社団法人日本インドアゴルフ協会』を設立したのです。全く同じ名前で協会が存在することについては、混乱を与えるかもしれませんが、インドアゴルフ業界の発展に注力したいです」
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と今後、話し合いを継続したい旨を語っている。
多くの関連団体が存在するため、横断的な視点で活性化を進めることが困難なゴルフ業界。コロナ禍をきっかけに、インドアゴルフの可能性に期待が寄せられているが、目的や活動内容を同じくする同名の協会が2つあることで、インドアゴルフマーケットの拡大が分散してしまうことへの危惧を感じている。
それぞれの代表理事に経緯と今後について話を聞いた。
<strong>榎本考修氏(ステップゴルフ株式会社・代表取締役CEO)</strong>
2012年に1店舗目を開業し、今年100店舗目をオープンする予定ですが、フランチャイズを含めて10年間で閉店した店舗はありません。お客様にとっては、通っているスクールの継続が一番大切だと考えるからです。日本全国に正しく経営するインドアスタジオを増やすことで、新しいゴルファーの掘り起こしを実現して社会に貢献したい。
企業として培った実績を活用し、協会を立ち上げて活動をすることがあるべき姿だと思っています。今後は、年間スケジュールや加盟メリットなどを発表して、取り組みに賛同、ご協力いただける法人及び団体の方々から入会を受け付ける予定です。ステップゴルフのコーチ研修センターをアカデミーとして活用することで、活動支援も実現したい。
業界で唯一多店舗展開、FC展開をするインドアゴルフスクール企業として、プロアマトーナメントや、思いつくイベントは全部手掛けたいですし、様々な角度からの支援や貢献を目指していきたいです。「ヒト・モノ・カネ」に情報とノウハウをプラスして、マーケットの拡大を目指します。
<strong>木下裕介氏(株式会社住地ゴルフ・COO)</strong>
2021年9月に株式会社フードディスカバリーの福井代表が、日本インドアゴルフ協会を設立したことに遡ります。翌年の2月、会員権事業でお付き合いがあった経緯があり、日本インドアゴルフ協会の運営を住地ゴルフに交代したいという依頼を受け、3月に合意しました。
翌月に、一般社団法人日本ゴルフスクール協会が存在することを知り、目的が同様であれば事業提携の糸口を探りたいという目的で、代表理事の榎本さんとミーティングをしました。その後話し合いを重ねたものの、2つの協会の事業提携についてはまだ実現できていません。住地ゴルフとしては、協会を通じて、インドアゴルフマーケットの拡大に本腰を入れて取り組むつもりです。
リソース的にフルコミットをして、集客や人材に関する課題など、インドアゴルフ施設を経営する中で直面する様々な課題に対して、適切なサポートを行い、ゴルファーに寄り添った施設経営を継続的に支援します。12月のローンチイベントを皮切りに、ゴルフ業界に必要な協会であることを認めてもらうためにやるべきことを粛々とやっていきたい。引き続き、協会を一つにまとめることも目指していきます。
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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