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    ハッシュタグ「ゴルフスタジアム」記事一覧

    <strong>ゴルフスタジアム堀新(ほり・あらた)社長インタビューの後編をお届けする。この記事は「月刊ゴルフ用品界」の7月号に掲載されたもので、取材日は6月15日。</strong> 参考:<a href="https://www.gew.co.jp/attention/1304">ゴルフスタジアム堀社長が「社員ゼロ」の近況を語る 前編</a> ゴルフスタジアムは結局「何屋」なのか? <strong>結局のところ、御社は「何屋」ですか。HP制作と運営にソフト販売、スクール事業。あるいは練習場の看板広告やイベント企画、「ゴルフ三昧」やイー・ゴルフの合併とか、実に幅広い。事業構造を理解するのに骨が折れます。</strong> 「あのぉ、それを聞かれると一番困るのですが、一言で申し上げるとゴルフに関するマッチングサービスだと思っています。レッスンやソフト、イベントのほかに一時は問屋のネットワークも作りまして、これはゴルフ問屋の在庫を皆さんで共有するサービスです。 問屋は消化率を上げるため安く売りたいわけですが、取引先の手前できません。そこで、我々が超激安サイトを立ち上げてマネタイズしようと思ったのです。ゲームソフトの会社が同じことをやっていたので、そのシステムを使って立ち上げましたが、ゲームとゴルフは在庫管理の手間がまったく違うんですね。クラブは1モデルでも仕様が沢山あって、これを登録するシステム業者が音を上げて頓挫したのです。 ただ、当社のECで在庫をもたず販売したり、イベントの景品も安く揃えられるなど副次的なメリットはありました。ですから『何屋なの?』という質問に対しては、ウェブサイトの全国展開が中心で、練習場のソリューションを核にはじめたマッチングビジネスになります」 <strong>多角化経営に邁進したわけですね。ピークの従業員数は?</strong> 「ゴルフスタジアムを引き受けたときは十数名でしたが、社員のレッスンプロを含めるとピークは130名弱になりました。本社機能は約60名、ソフト開発の大部分は専門のシステムハウスに外注する形です」 <strong>現在の従業員数は?</strong> 「ゼロです」 <strong>えっ・・?</strong> 「実は、ゼロになりました。雇用できなくなったのです」 <strong>4月の取材では、新規スポンサーを募ってHP運営に特化して、その収益をローン契約者の債務に充当したいという話だった。そもそも1000人以上のHPをひとつの運営体でまわしているところに事業資産的な価値がある。</strong> 「はい。ですからウェブ事業に特化して再構築し、事業でお返しする青写真でしたが、現状は大変厳しいです。ひとつには銀行の対応で、借入のある全12行にリスケ(弁済計画の見直し)を申し入れたところ、メインの三井住友からは『12行が足並みを揃えることが大前提』と言われましたが、取引先の1社が同行に仮差押えをしたのです。 これは即日解除となったものの、現在(6月15日)は三井住友の権限で凍結状態になっています。そのお金は給料や社会保険料でもあり、お客様に支払いを止めているにも関わらず、なぜ給料を払っているのかを理解してくださいと」 <strong>給料は優先債権になる。</strong> 「はい。ですから一方では信販会社8社と話をして、活動資金を生かそうと思いましたが、それが全部ブロックされた。再度、銀行との話し合いでは『全ての客が二度と請求しないと確約した証明書を出しなさい』と」 <strong>それは無理でしょう。</strong> 「はい。金融庁にも相談しましたが、これは無理です。3月末時点での退職者はゼロだったし、社員には『給料は下がるけど頑張ろう』と、怒涛の時を経るわけですが、4月に様々な報道が出てしまい、三井住友から条件を突き付けられて『申し訳ない、給料が払えない』と。それが5月末の話です。 社員一人ひとりと面談して、本当に申し訳ない、雇用できなくなりましたと・・・・。ですから今、ぼくの仕事は社員の再就職口を探すことでもあるんです」 <strong>5月末まで残った社員は?</strong> 「30名ほどおりまして、自分から『やめる』という社員はほとんどいませんでしたが、テレビ報道やネットですね。特にネットの風評的な批難が激しくて、社員よりもご家族が『あなた、なんて会社に勤めてるの』ということで、従業員には本当に迷惑を掛けました。 わたし一人でも会社を畳まないのは、社員が必死にやってきた仕事をバシャッと閉じたくない、そんな思いも強くあります」 <h2>「詐欺性」が疑われる信販会社との一体性</h2> <strong>ここからが本題です。「被害者の会」の弁護士は、すでに小口リース・ローンやHP詐欺の類型があり、今回の件も詐欺性が疑われると主張しますが、そのような販売マニュアルはあったのか?</strong> 「まず、前提として広告営業の部隊とソフトウエアの販売部隊はまったく別です。広告枠利用料で月々の支払いは賄えますということで頂いて、我々は広告枠利用料より高い収益を得るのが理想です。 以前は社業が好調でイベント収益もあったので、十二分に(広告料を)払える状態でした。で、これらは個々のクライアントに合わせた提案をしていたので、基本的には販売マニュアルではなく、それぞれの提案です」 <strong>HPの広告費で返済を相殺する手法は、堀さんの考案ですか。それとも流れでそうなった?</strong> 「流れですね」 <strong>焦点のひとつはゴルフスタジアムと信販会社の一体性です。債務者はゴルフスタジアムと広告契約を結び、信販会社とソフト購入の契約を結ぶため、双方の契約が分断されている。「被害者の会」の弁護士は、仮にゴルフスタジアムが破綻しても、一体性があれば「抗弁権」を接続できる。つまり、信販会社への返済を免除できると主張します。</strong> 「一体性と言われればそう見えるかもしれませんが、お客様と我々と信販会社の三者が行った商取引で、当社と信販会社だけで何かをできるわけではないし、お客様と信販会社だけでも成り立ちません」 <strong>今回、信販会社の審査が非常に甘かったのではないか。収入が不安定なレッスンプロに対して、簡単に審査を通していることにも疑惑の目が向けられている。</strong> 「信販会社の与信の通過率がなぜそこまで高かったかは、我々のわからないところです」 <strong>本当はわかっていたんじゃないか、これが疑念ですね。</strong> 「たとえば、ある信販会社の担当が(契約者に)確認の電話を入れましたら『広告代をもらえるからいいですよ』との返答があって、『そんなことじゃ困ります』という話がありました。で、『それはダメですよ』と話して、確認の電話が入るときには『広告は広告で、クレジット組んでもらうソフトはソフトです。今回はソフトの確認なのでよろしくお願いします』と話したら『そうですか』となりましてね。もう一度電話をしてもらったら『通りました』ということがあるんですね。 つまり、うちの担当が知っているいないの話ではなく(返答によっては)『ダメなのか』と思うわけですよ」 <strong>整理すると、広告契約とソフト契約は別物で、ゴルフスタジアムと信販会社の一体性は希薄だと。でも、巷間、ゴルフスタジアムの営業が一体的に進めたと見るムキもあります。</strong> 「信販会社と我々が一緒になってと言われても、何を一緒にやるんでしょうか。『被害者の会』の西村弁護士はGEWのネット配信記事で『法的には難しいけど社会問題化していく』と話されてますが、するとぼくは弁護士さんが法的に無理だと言ってるじゃないかと思うわけです。 ぼく自身、騙すぞ、巻き上げるぞ、なんて気は微塵もなかったし、拡大しやすい事業モデルを追求してきました。信販会社にしてみれば『(ゴルフスタジアムは)よく取ってくる会社だなぁ』と。ぼくもこれまで様々なビジネスをやってきて、クレジットの扱いもありました。たしかに中小・個人事業主でここまで通ることはなかったですが、それは彼ら(信販会社)の審査の結果ですから」 <strong>売れば信販会社からゴルフスタジアムへ入金されますが、その金はどこへ行ったのか。</strong> 「その金はどこへ行ったのかと言われましても、商売だから金は回します。入ってきました、それでソフト開発やHPの運営とか、お客様のHPに掲載した広告料もずう~っと払ってきたわけです。 で、大変申し訳ないことに10年間で初めて支払いが遅れた。広告不況などで当社の収益悪化もございますが、『その金どこに行ったんだッ』と言われますと、(契約者への)広告の支払いを含めた事業資金に使っておりますと」 <strong>これもネットの流言ですが、入った金がヤバい筋に流れてると。</strong> 「そんな書かれ方まで・・」 <strong>ないですよね?</strong> 「当たり前じゃないですかッ。これはもう、お願いします・・・・。今回、ネット情報の恐ろしさを身に染みて感じておりまして、誰かにも『お前、嫁の名義で家建てたのか?』って聞かれましたが、何のことですって感じですよ」 <strong>そのネット情報、読みました。堀さんが事業的にまずくなって、豪邸を奥さんの名義に変えたと。</strong> 「まったく根も葉もない話ですよ。家は2年前から作っていて、小さくはないし、それなりですが、これはぼくのフルローンです。月の返済が以前の賃貸よりも安くなって、小さい子供が二人いるので田舎で家族と住みたかった。 ぼく自身のこだわりもありまして、いろいろと注文した家ですが、それがようやく完成して、引き渡しは間の悪いことに3月でした」 <strong>ゴルフスタジアム問題が勃発した。</strong> 「はい。で、一発目のローンが来る前に『すみません、売らせてください』と・・。一日も住んでおりません。ぼくには収入がないから早めに手放そう、そんなことより今はお客様のことですから」 <strong>どこに住んでいるんですか。</strong> 「ありがたいことに、友人にお世話になっています。誹謗中傷が飛び交う中、『今回は無理だけど、次のことなら応援してやる』という声もありましてね。 実際、ある上場会社のトップからも『40億の債権を全部買うから、顧客をくれ』という話がありましたが、その後風評が広がってダメになりました。ビックリしたのは、今やぼくの名前と社名ではレンタルオフィスさえ借りられません」 <strong>「反社扱い」ですか。</strong> 「たしかに大変なご迷惑をお掛けしていますが、誰かを騙そうとか反社会的な行為とか、一切してはおりません。そうでしたら正直な話、雲隠れしてますよ。 逃げるのは絶対にダメですし、本当に辛いのはお客様じゃないですか。ぼくも一人になって辛いわけですが、一人になっても最後の最後まで、お客様のために何かができるんじゃないだろうかと」 <strong>何ができます?</strong> 「う~ん、こうなると相当厳しいですね。本来は、ウェブサイトに特化した収益モデルを作り、契約者の信販会社への支払いを一定期間、延期や免責をして頂き、本質的には当社の債務ではないけれど、事情が事情なので当社が5年、10年掛けて責任を取っていく。そんな青写真を描いていましたが、身動きがとれない状況です」 <strong>会社、潰れますか?</strong> 「う~ん、どうでしょう・・。実は、潰す気はありません。ご迷惑をお掛けしている1153名のサイトを中心に、約1500サイトが運営体に入っていて、これを回している外注さんが『続けます』と口頭では言ってくださるんですね。 運営費は払えてないので、気持ちの部分が大きいと思います。会社を畳むとすべてが無に帰しますので、畳めない。畳まないうちにどうにか策を練りたいし、HPが健全に運営されていたら会社が売れると思うんです。ぼくなんかどうなってもいいんです」 <strong>今、何歳ですか。</strong> 「今年で45になります」 <strong>思うところは多いでしょう。</strong> 「はい。2017年は凄い年になっていますが、多分、なるべくして辿り着いた境遇だと思います。綺麗事ではなく、不徳の致すところだと思いますし、傲慢だったとも思います」 <strong>傲慢さは異常な拡大主義、シェア至上主義に通底します。</strong> 「はい、その呪縛から逃れられませんでした。ゴルフは魅力的なコンテンツだし、その中でレッスンプロが伝えられることは沢山ある。ですから、我々は1500サイトの運営で訴求力を高め、あのプロのHPは面白い、ゴルフの新しい発見や楽しみがあるということを広げていきたいと考えました。 その影響力を発揮するには拡大だ、シェアだと盲信したことが最大の失敗です」 以上、前・後編に分けてGS堀社長のインタビュー記事をお届けした。取材日の6月15日以降、「被害者の会」は7月6日に原告232名の第2次集団提訴(被告ジャックス)を東京地裁で行うなど、新たな動きが起きている。 「被害者の会」の西村國彦弁護士によると、GSは事業ごとに分社化して金の流れを複雑にしていると見られ、社員も系列会社に転籍させたフシもあるとの指摘もあり、今後、これらの事実が明らかになりそう。 一連の問題は、「ゴルフ市場の穴」に着目したGSが、マッチングサービスで収益化を急いだことに端を発しているが、同時にレッスンプロを中心とした零細・個人事業主の契約意識の低さも露呈した。今回のケースを他山の石として、業界の健全発展につなげることが重要だろう。(片山哲郎)
    (公開)2017年07月13日
    <strong>ゴルフ界では今、「ゴルフスタジアム問題」が注目されている。ITを駆使してゴルフのマッチングビジネスを目指したゴルフスタジアムが、零細のゴルフ練習場や個人事業主のレッスンプロに対してホームページ(HP)を制作・提供し、併せてスイング診断ソフトのモーションアナライザー(MA)を数百万円で販売した。</strong> <strong>ゴルフスタジアムは契約者に対して、個々のHPに掲載されるバナー広告料を支払い、契約者はその収益をMAの購入代金に充て、月々の返済を相殺する。いわば、契約者はタダで自分のHPをもらえるということで、契約者が相次いだ。</strong> <strong>ところが、広告不況の影響もあり、ゴルフスタジアムは契約者のHPに掲載する広告費を払えなくなった。支払いが止まりはじめたのが今年2月で、契約者には数百万円の借金が残った。その被害者は1000人超、負債総額40億円規模と見られ、多くのレッスンプロは自己破産の影に怯えている。</strong> <strong>事態を複雑にしているのは、契約者は広告契約をゴルフスタジアムと交わし、ソフト代金の返済契約を信販会社(8社)と結んでいること。双方の契約は別々であり、ゴルフスタジアムの経営状況とは関係なく、ローン契約は継続される。「被害者の会」を結成した西村國彦弁護士(さくら共同法律事務所)は、</strong> <strong>「これだけの被害者を出すのは社会問題。責任はゴルフスタジアムだけではなく、審査を簡単に通した信販会社にもあると見られ、被害者の債務不存在と支払い済み代金の返還を目指して戦っていく」――。</strong> <strong>その渦中の6月15日、本誌はゴルフスタジアムの堀新(ほり・あらた)社長にインタビューを行った。一般ゴルファーにしてみれば、通っているスクールのレッスンプロが「自己破産者」に陥ったり、スクール自体が閉鎖に追い込まれる可能性もあるなど、影響は決して軽微ではない。</strong> <strong>なぜ、こんなことになってしまったのか? 堀社長は、</strong> <strong>「わたしの拡大主義が招いた失敗」</strong> <strong>と猛省するが、背景にはゴルフ業界が抱える負の部分があったことも無視できない。そこで本稿は、ゴルフスタジアムの事業構造に焦点を当て、堀社長が描いた野望の挫折を紐解くことで、再発の防止に努めたい。</strong> <strong>なお、記事は「月刊ゴルフ用品界」7月号に掲載された内容の要約で、取材日は6月15日。文章量が長いので、前・後編に分けて掲載する。</strong> 拡大する市場しか知らなかった <strong>本誌の取材記事は、掲載前のチェックをお断りしています。</strong> 「はい、承知しております」 <strong>で、顔写真はNGですか?</strong> 「申し訳ございません。個人的にはあまり気にしていませんが、家族がおりますので・・。騙したとか詐欺とか言われますと、我々はまったくそう思っておりませんが、やはり周囲の視線が・・」 <strong>了解です。それではまず、業界の皆さんに一言どうぞ。</strong> 「お騒がせして大変申し訳ございません。弊社としては1153件(練習場478、プロ334、ショップ・工房314、その他27名)のお客様に対して誠意をもって対応しておりますので、業界の皆様という意味では、それ以外に言葉もございません」 <strong>今回の件は様々な意味でゴルフ界の脆弱性を表している。この取材はその検証が目的ですが、堀さんの人間性が引き起こした面もあるでしょう。そこでまず、堀さんの経歴を教えてください。</strong> 「わかりました。わたしはそもそも、通信関連商材を扱う商社(ネクサス)で働いておりました。二十歳の頃にアルバイトで入社して、当時は10名ほどの会社がピークで2000名規模になるなど、業界に勢いがあったのです。 いわゆる新電電のときでして、市外電話が安くなるとか携帯電話が自由化されて、ソフトバンクも参入しました。その中でケータイ・ショップを200~300店舗管理したり、ケータイ・メールに広告を載せて売ったりと、すべてが伸び盛りだったわけです」 <strong>銀座で豪遊していた?</strong> 「いえいえ、そういうことではありませんが・・。ただ、イケイケの業界で育ちましたし、これは本当に反省点ですが、わたしは拡大するマーケットでしか働いたことがないんですね。とにかく広げると評価が上がり、収入が増えて会社も潤う」 <strong>その感覚で「ゴルフ」に来た。</strong> 「はい。ゴルフ業界は単価も総額も人口も、すべて半減する中で、ゴルフスタジアムを引き受けたときは年商2億が、昨年は30億まで拡大しました」 <strong>無理をして広げた?</strong> 「おっしゃる通りです。無理をして進めたことが大きな反省点ですし、このような結果になったのは自分のリードが間違っていた。そのことを本当に反省しています」 <h2>ネットレッスンという新境地</h2> <strong>ゴルフスタジアムの発祥は何ですか。</strong> 「元はアソボウズという野球のデータ解析をする会社があって、動作解析が主業務ですが、ここにネクサスが出資をして、アソボウズからスピンアウトする形でGSが立ち上がります。 わたしがMBOでオーナーになったのは3期目からで、売上が2億で赤字が1億7000万というボロボロの状態でしたが、ウェブを上手く絡ませたら復活できると考えました。ちょうどその頃、光通信がネクサスを吸収する形になって、十数年仕えたオーナーも退任された。そのことも転機になっています」 <strong>ゴルフスタジアムの主業務はゴルフスイングの解析ソフトですね。</strong> 「最初はソフトではなく『モーションアナライザー』(MA)という解析機が中心でした。筐体があって、これを練習場に設置すればコインが入ってくるという目論見でしたが、不人気で埃を被ってしまった。その後iPadなどがドンドン出てきて、筐体や専用カメラ、そのための専用ケーブルも不要になります。 という流れで、筐体からソフトウエア重視の方向性に変わっていきます。以前は撮影したスイングをCD-ROMに焼いてPCで見ていましたが、ウェブにアップロードすれば簡単にスイング解析できる。そこからホームページ(HP)の制作や運営に注力するようになったという経緯です」 <strong>スイング解析ソフトを普及・拡販するには「受画面」となるHPが必要だった。それが今回の話、レッスンプロにHPを大量供給した理由でしょうが、数百万円のソフトは桁外れに高い。</strong> 「皆さんそうおっしゃいますが、ソフトですからね、1000万円のCADだってあるし、開発コストと我々の売りたい値段、そしてお客様が納得した価格です。もっといえばローンやリース、クレジットがつかないと成り立たないビジネスなので、」 <strong>それは後で聞きましょう。「MA」はどんなソフトですか。</strong> 「純粋にスイングの解析ソフトウエアです。2画面で撮って、ラインを引いてスイングプレーンと比較したり、ヘッドスピードの計測やプロと自分のスイングも横並びで見られます。 カメラはスマホやデジカメで対応でき、その動画をレッスンプロに送ってレポートをもらうなどのやり取りもできる。これが『MA』の活用法のひとつです」 <strong>それによってインターネットレッスンを広げようとした。</strong> 「おっしゃる通りで、この画面がないとレッスンできません」 <strong>普及させるためにPGA(日本プロゴルフ協会)と折衝した経緯もありますね。</strong> 「10年近く前になるでしょうか。ネットレッスンは、たとえば福岡のプロが東京のゴルファーに対応できるなどの利点があるため、PGA会員の職域拡大につながるので、一緒に広げましょうという話でしたが、結局は実現せずに終わりました。 システムを使えるプロが少なくて、彼らにITスキルを求めたことが普及の障害となりましたが、これとは別にレッスン料金が2000~3000円と安いんですね。プロが慣れない手つきでパチコチやっても、商売的には採算が取れない。これも頓挫した大きな理由でしょう」 <h2>レッスンプロは「先生」じゃない</h2> <strong>このようなソフト事業とは別に、御社はスクール事業も手掛けている。ITに注力する半面、ベタなレッスンにも意欲的だった。</strong> 「あのぉ、わたしがゴルフ業界に興味をもったのは、そもそも練習場の在り方でした。今、無茶苦茶足を引っ張っているわたしが言うのもアレですが、練習場は装置産業的な運営の中できちんと接客できていません。ほかの業界では頭を下げても来てくれないような富裕層や社会的地位の方が、勝手に来てくれるのに放置している。 レッスンプロが『先生』と呼ばれ、お客様が『生徒』や『弟子』になる関係は是正すべきだし、これによる機会損失はもの凄く大きいので、『あなたは先生じゃないですよ。接客業です』と意識改革を促したのです。ピーク時には50カ所ほど運営しました」 <strong>FCがメインですよね。</strong> 「いえ、すべて直営です。インドアではなく、練習場で5~6打席借りるスクールで、社員のプロを教育して送り込みました。同時に雇用環境も見直しています。練習場が一人のプロを丸々1週間抱えるのは大変なので、たとえば一人のプロを3日と2日に分けて違う練習場に派遣するとか」 <strong>いわゆる「空き枠」ビジネスで、ITの進化で可能になった。</strong> 「おっしゃる通りです。そもそも当社がゴルフ業界でやりたかったのは、大手がしないサービスですね。中小の小や零細企業、個人事業主ができないことを、我々がまとめて結びつける。 この業界は個々のネットワークが希薄で、個人的には同業者で知り合いかもしれないけれど、その人脈がきちんとマネタイズされていないわけです。その機会損失を、当社のネットワークで解決できると考えました」 <strong>スクール事業は成功した?</strong> 「いえ、結局7~8カ所まで縮小しました。プロを教育して派遣しても、独立して練習場と一緒に顧客をもっていってしまうとか、お金の問題もありましたから」 <strong>お金の問題というのは、申告しないで懐に入れるとか?</strong> 「ですね。生徒数がずう~っと25名で変わらない、調査したらもっといたとか(苦笑)。また、集金したお金が車上荒らしに遭ったという話もあって、クルマの鍵が壊されてなくてキャディバッグもそのままなのに、お金だけ盗まれたと」 <strong>証拠はないが胡散臭いと。だけど、それは御社の管理上の問題ですね。</strong> 「はい、魔が差す仕組みを放置していたことが問題なので、回収方法は口座引き落としかクレジットカードしか認めない、あるいは練習場のレジを使わせてくださいと。それで解決できるのに、ぼくの悪癖で拡大を急ぎ、『現金取引でいいから広げてしまえ』と。その反省から、一度絞り込んで環境を整え、再度広げようと思った矢先に今回の問題が起きたのです」=つづく=        (片山哲郎)
    (公開)2017年07月12日
    <h2>第2次提訴で原告232名 </h2> 「ゴルフスタジアム信販問題被害者を守る会」(被害者の会)は7月6日、信販大手ジャックスを被告とする集団訴訟の第2次提訴を東京地裁で行った。 ゴルフ関連のIT事業を主業務とするゴルフスタジアム(GS)が、レッスンプロや練習場、ゴルフ工房向けにホームページ(HP)を制作・提供し、併せて数百万円のスイング解析ソフト「モーションアナライザー」(オープン価格)を販売。 GSが契約者のHPに広告費を支払ってソフト代金の返済を相殺するはずが、2月から広告費が止まってしまい、被害者1000名超、総額40億円規模の借金が残ったという案件だ。 被害者の多くはレッスンプロで、返済が滞ればブラックリストに登録されるなど日々の業務に支障を来たし、多くの生活破綻者を出しかねない。事態を重く見た西村國彦弁護士(さくら共同法律事務所)らが弁護団を組織して、被害者の債務不存在等を主張したもの。 5月の1次提訴は原告7名に過ぎなかったが、この日の2次提訴では232名と組織率を高め、7月末に予定する3次提訴ではさらに100名以上の原告を加えたい方針だ。 「GS問題」の争点は、被告の信販会社が「GSと一体になって、本件被害の拡大を助長した責任がある」(訴状要旨)に集約される。西村弁護士は4月、本誌の取材に対して「信販会社はプロだから、割賦販売法とか熟知して巧妙な契約書を作っているはず。 法律論だけで対抗したら被害者は分断され、生活破壊されてしまうので、この案件を社会問題化させながら社会運動との両輪で争いたい」と話していたが、2次提訴終了後の会見では、「割賦販売法」の適用を視野に入れて、今回の契約が法的に無効であることを主張した。 「社会運動だけではなく、法律論としても十分に戦える理論根拠を得つつあります」(西村弁護士) 2次提訴の被告はジャックス(被害総額約8億円)に絞り込んだが、ほかの信販7社に対しても債務不存在の確認と支払い済み代金の返還を求める構え。 <h2>証拠の録音テープは?</h2> 法理論で対抗するときに重要なのが割賦販売法だという。これは購入者保護を目的とする法律で、西村弁護士が配布した説明資料によれば、 割賦販売法35条3の10 契約の申し込みの撤回もしくは契約の解除(いわゆるクーリング・オフ) 同35条3の13 販売業者(GS)による不実告知があったことを理由とする契約の取り消し 以上の2点が同法を適用するための「根拠条文」になるというが、ただし、営業用の商品の購入時には「適用除外」になるという前提がある。これを突き崩すための主張については、「本件では、原告らがソフトをまったく利用しておらず、利用する意思もありません。 ですから過去の裁判例等の基準に照らし、被告ジャックスとの間のクレジット契約が『営業用』の商品購入に当たらず、割賦販売法による保護規定が適用されると考えます」(西村弁護士) つまり、営業に使っていないから営業用ではない、との主旨である。会見に出席した「被害者の会」世話人の飯塚由美子さんによれば「送られてきたソフトを開封さえしていない被害者が多く、GSからそのような説明もなかった」など、被害者側の認識は「営業用」とは程遠かったという。 そこで注目されるのが、GSの営業内容である。セールストークの中でスイング解析ソフトの活用法に触れていなかったり、事実とは違う説明があれば「不実告知」を理由として契約の取り消しを主張できる。その際に重要なのが証拠だが、営業トークの録音テープ等はあるのだろうか? 「現在、700名ほどの被害者を対象に、そのような証拠を集めている最中です。いつ提出されるのか、その内容はどんなものかなど、確定的なことは話せませんが、依頼者(被害者)に提出の呼びかけを行っています」(西村弁護士) <h2>ディズニーランドは「夢の国」</h2> 実際、GSの営業マンはどのような営業スタイルで顧客の獲得を行っていたのか。本誌は6月、GSの堀新(ほり・あらた)社長にこの点を取材しており、「(営業マンは)個々のクライアントに合わせた提案をしていたので、基本的には販売マニュアルではなく、それぞれの提案です」との回答を得た。 つまり、個々の営業スキルに任せているとの主旨である。 「被害者の会」の増田敬子世話人は、10坪ほどのインドアスクール(大阪府)に携わっており、「店としては今回の契約で600万円の債務を抱えてしまった。応援してくれるお客様も多いのですが、スクールを維持する方法を考えなければと思っています」と前置きして、GS流の口説き文句をこう述懐する。 「GSの営業マンは大阪の店に何度もやって来て、長い時は3~4時間話し込んでいきました。わたしはディズニーランドが好きなので、『あそこは本当に夢の国ですよねえ』と意気投合したり、『お仕事、大変ですねえ』『お互いに頑張りましょう』といった話で、気を許してしまった。 そういった会話がほとんどですから、ソフトの話はなかったと思います」。表情に後悔を浮かべながら、「夢の国」で意気投合したことを反省する。 これは「不実告知」が疑われる一例だが、同様の声はほかの被害者からも寄せられている。 弁護団はこれ以外にも、今回の商行為が「公序良俗」に反する点も争点にあげた。 GSと信販会社が行った事業形態はキャッシュバックスキームであるというもので、具体的には「GSが信販会社から目先の支払いを得、一時的な運転資金を得ることが目的で、購入者に無価値な商品を購入させて、その月々の分担金支払いをGSが負担するスキームのこと。 一連の取引でGSは利益を得られず、自転車操業的な取引であり、早晩破綻が見込まれる」(訴状要旨)ことを予期しながら、GSと信販会社は営業活動を行ってきた。 ゆえに「公序良俗」に反しており、過去の判例に照らしてジャックスに対して無効であることを主張できるというものだ。特に経営破綻が現実味を帯びた後に交わされた契約については、詐欺性が強く疑われると強調する。 まとめれば、2次提訴で弁護団が行った主張は「割賦販売法違反」と「反・公序良俗」に集約できる。 <h2>ブラックリストに登録しない</h2> 弁護団は今後、3次提訴に向けて原告(被害者の会)の組織率を高めるため、信販会社に対して「ブラックリストからの削除」も働き掛けるという。「ブラックリストに登録されると銀行口座の開設を拒絶されたり、クレジットカードの与信枠も大幅に減額、ローン取引が不可能になるなど日常生活に支障が出ます。 これをチラつかせて債権回収に走る信販会社の行為は乱暴であることから、今回の案件については被害者をリストに載せないよう強く訴えました」(西村弁護士) 事実、リストへの登録を恐れて返済を続け、原告団に加入できない被害者もいるとか。このシバリを取り除けば組織率が高まると考えており、「(信販会社の)セディナは当初からブラックに登録しない方針を示し、ジャックス側からは6月20日、当弁護団から受任通知をもらった被害者についてはリストに掲載しない旨の回答を得ています」(西村弁護士) 西村弁護団に加入すれば、ブラックリストへの登録を回避できる可能性大。この点を訴求することで、原告の組織率を高めたい考えだ。 以上が2次提訴終了時点までの経緯である。一連の「GS問題」は図らずも、ゴルフ業界関係者の契約意識の低さや社会常識の希薄さを浮き彫りにした格好だが、一方で、小口リース・ローン等に関わる巧妙な手口や「詐欺性」も解明されつつある。 一連の取材で印象的なのが世話人の一人、飯塚さんの獅子奮迅ともいえる活躍だ。日本女子プロゴルフ協会の会員が複数被害者になっていながら、今回のケースで同協会が積極的にサポートした形跡はない。 飯塚さんは千葉県の被害者を取りまとめ、同地区の組織率95%を達成しており、報道関係者への告知や事実確認の電話連絡など、寸暇を惜しんで対応している。 「もはやこれはゴルフ界だけの問題ではありません。我々が腹を据えて戦うことで、同様の被害が起こらないようにしていきたい」と、今回の活動を通じて社会運動家の風貌を帯び始めている。 「GS問題」がどのような落着を迎えるかは未知数だが、少なくとも、被害者が得た教訓と運動実績が、ゴルフ界健全発展の糧になると思いたい。(片山哲郎)
    (公開)2017年07月07日
    月刊ゴルフ用品界2017年5月号掲載 なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <hr /> 「ゴルフスタジアム騒動」で生まれた1000人超、40億円規模と言われる被害者たち。 彼らは何故、騙されたのか。現場を照らしてみると、見えてくるのは金銭の扱いに対する「甘い自覚」と、ゴルフがうまいというだけでは成り立たない「厳しい現実」だった。 <h2>「実質無料」の甘い罠</h2> <strong>男子プロは?</strong> 3月27日午前10時。東京・霞ヶ関の参議院議員会館の会議室に西村國彦弁護士を伴って現れた3人のレッスンプロの顔は、明らかに青ざめていた。 無理もない。3人ともが社会的信用の危機と、背負うには重すぎるローン返済に直面していたからだ。 Aプロの被害額は1000万円を超えていた。まず2014年に436万円と手数料82万5000円、さらに2016年に592万円と手数料134万円のローンを組まされていた。 最初はホームページ(以下HP)の制作から話は始まっている。「制作費は30万かかっちゃうけど、バナー代で月8万円入りますよ。だからジャックスさんでリース契約をしてください、という勧誘でした」(Aプロ)。 プロゴルファーはパソコンに強くない人種が多い。このプロもHPを使って顧客を増やし、営業の幅を広げたいがどうしたらいいか分からない、といった悩みを抱えていた。 実際のところHPを作れば制作費だけでなく保守や更新などにも金がかかる。ハードルが高いため、あきらめているプロが多かった。 ゴルフスタジアムの営業担当者は、そうした弱みを巧みに突いた。制作費というイニシャルコストと保守・運営費のランニングコストは、バナー代という広告収入でまかなえる、という裏技をささやいた。 いざ契約の段になると「実体のないものにお金は出せないので、ソフトを購入してください」と持ちかけられる。いかに広告費でタダになるとはいえ、ここでほとんどのレッスンプロが躊躇する。高額のローンを組まされることになるからだ。 そもそも、安定収入のないレッスンプロたちは、車のローンすら組めない。ところがゴルフスタジアムの営業マンは「大丈夫です」と自信たっぷり。実際、ソフト購入の契約を結ぶとローン審査はアッサリ通った。 広告費も毎月振り込まれ、ローンの返済金はまかなわれた。ソフトとは「モーションアナライザー」という解析ソフトだが、プロたちはほとんどこれを使っていない。使うためにはカメラが2台必要で、別途購入するための設備費がかかるからだ。 埃をかぶっているのはまだましな方で、封すら切っていないレッスンプロも多い。ソフトはあくまでローンを組むための「道具」であって、HPさえ運用されていれば満足、という現実を証明している。 しかもこのソフト「有効期限が2か月しかないんです。そんなものを誰が買いますか? 営業マンはそういう肝心なところを説明していない」(Dプロ)と憤る。 ここで誰もが疑問に思うのは、もし広告費が止まったらどうなるのか、という不安をなぜ感じなかったかということだ。Bプロがこの辺りの事情を明かす。 「実はPGA(日本プロゴルフ協会)のインストラクター講習を受けた時に、講師としてゴルフスタジアムの人が来て、業務内容の説明なんかをやってるんです。バックにPGAが付いているんだから、大丈夫だと思うでしょ?」とため息をつく。 <h2>練習場も深く関与</h2> <strong>練習場は?</strong> レッスンプロ個人だけでなく、職場である練習場もゴルフスタジアムと深く関わっていることも、判断を誤らせる要因となっている。 「ロッテ葛西とか、全国の練習場が採用していて、伊沢利光や江連忠のゴルフスクールも関わっているとなれば、信用しちゃうじゃないですか」。 しかもゴルフスタジアムの旗艦店である「e-golf stadium 大崎」(東京都品川区)所属プロにもPGAのインストラクター資格を持つものがA級2人、B級2人の計4人もいた。同じ組織の仲間がゴルフスタジアムとすでに深く関係していることも、不安を取り除く要因にはなった。 前出のAプロは組織や仲間のしがらみも理由の一つだと明かした。「静岡県のゴルフ練習場協会やプロゴルファー会のホームページも作っている。先輩から紹介されれば、断れない雰囲気もある」と義理人情もからむ苦しい胸の内も明かしている。 <h2>女子プロ協会は「自己責任」</h2> <strong>女子プロは?</strong> 被害者の会でも積極的に情報発信し、団結を求めている女子プロもいるというから、かなりの数に達するはず。女子プロのインストラクター部門にも「e-golf stadium 大崎」の所属プロが2人いる。そんな状況でありながら、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)からは、危機感がいま一つ感じられないのだ。 冒頭のようにすでに3月27日には西村弁護士や被害者たちがゴルフ改革会議で事態の深刻度を訴え、これをマスコミ各社が報じていた。しかしLPGAが動いたのはそれから9日後の4月5日。事務局が注意喚起のメールを送ったのだが、発信元を明記していないうえに企業名も明かしていない大チョンボを犯している。 それに気づいた事務局はさらに翌6日、メールを再送する。このメールにも相変わらず企業名が入っておらず、関係していないプロには理解できない内容のままだった。 しかも気になるのは最後の一文。「このような契約トラブルは、会員個人の責任となりますので、十分にご注意ください」と突き放したかのような言葉で締めくくっている。 ある女子プロはこう憤る。「協会は関わっていないことを強調して自らを守ろうとしているだけです」。 <strong>工房は?</strong> 都内のビジネス街でゴルフ工房を営むCさんは、スイング解析ソフトの存在すら忘れていた様子。「どこだっけな…。あ、あそこだ」と指さした先は本棚の最上部。脚立が必要な天井から10cm下の所に無造作に置かれ、封も切られないまま埃をかぶっていた。 取材もHPの運営費と、掲載料の話に終始した。「最初はゴルフスタジアムの広告を載せるから、その掲載料が振り込まれるという話だった。確か『ゴルフ三昧』とかの」。 それも無理はない。そもそも工房の中はクラブや工具などが並べられ、スイングする場所がない。クラブ作りやチューニングする客がほとんどで、スイングを解析する必要もない仕事だから「根本的にソフトなんかいらないんだもの」。 そんなことは営業マンが工房に足を踏み入れた時点で分かったはず。必要のないソフトを置いていくことで、かなり悪質な感じを受ける。 「こんなことに騙されるなんてアホだと思うだろうけど、何とか被害者の側に立って記事書いてよ」。 その顔には怒りと情けなさが入り混じった、複雑な表情が浮かんでいた。 <h2>小川朗の目</h2> この事件の噂が一気に広がったのは3月24日、ゴルフフェアの行われていたパシフィコ横浜の会場だった。ゴルフ業界の関係者が一堂に会するこのイベントとあって、あちこちで深刻な表情で話し合う関係者の姿が見られた。 4日後に参議院議員会館で行われる「ゴルフ改革会議」で西村國彦弁護士ら被害者が情報発信することも決まり、27日には連絡を受けた報道各社が取材。大阪でこの問題を追っていた大手メディアも上京した。 この問題が全国的な規模で広がっていたことを実感させられた。 30日、ゴルフスタジアムの本社(東京・港区)で堀新社長は、直撃取材に応え、この問題について真摯に対応することを確約している。 一方、会員たちはすでにローン残債の全額免除に向かって団結しつつある。 読者も被害者たちが何故簡単に引っかかってしまったのか、疑問に思う方も多いだろう。しかし「プロゴルファーはローンを組めない人種。お金を貸してくれて返済にもいい方法があると言われれば借りるのが当たり前」という某プロゴルファーの指摘も、一理あるのかも知れない。
    (公開)2017年06月13日
    「ゴルフスタジアム被害者を守る会」が4月30日、都内の会議室で設立された。 レッスンプロを中心に被害者1000人以上、被害総額は推計40億円規模とみられ、これまで「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」としてさくら共同法律事務所の西村國彦弁護士らが被害状況をまとめてきたが、名称を変えて正式に発足。5月中に法廷闘争へ踏み切る構え。 当日参加した被害者は98名で、弁護士16名、報道陣10名の計124名。会場に設置した募金箱に10万1000円が寄付され、当日中に71名が「被害者の会」に入会、本日(5月2日)現在計97名が入会している。 本部役員は今西圭介代表(090-8875-7956)を筆頭に副代表、会計、会計監査、世話人の計11名(事務局2名)。これとは別に全国10地区に支部長を置き、全国に点在する被害状況の把握と入会促進を行っていく。本部役員と支部長はいずれも被害者が務める。 弁護団はさくら共同法律事務所の西村弁護士、東京新宿法律事務所の中村得郎弁護士(各都内)により構成されるが、今後、各地区の弁護士に呼び掛け協力事務所を設ける方針。すでに中部と関西の2地区で決まっている。 弁護団は「集団訴訟」として本件を社会問題化することを目指し、上限1200人と推計される被害総数のうち「最終的には800人程度の入会を目指す。事態は急を要するため、5月の早い段階で第一次訴訟を起こし、6月には数百名規模の第二次訴訟、7月の第三次訴訟で出し尽くすイメージで臨む」(西村弁護士)という。 訴訟相手は信販会社(8社以上)となる。目的はゴルフスタジアム(以下GS)によるリース・クレジット被害から会員を救済することで、GSが販売したソフトを購入するために信販会社と高額なローン契約を結んだことから、生活破綻の危機に瀕していることを重視。信販会社に対して債権取立てやブラックリストへの登録をしないよう求めていく。 また、40億円以上と見られる債務残高の大幅減額、理想的には「残債ゼロ」を目指す方針。「GS問題は非常にショックな事件。千数百名のプロやショップ、練習場が40億円以上の被害に遭ったことは許せない。小口リースの悪徳商法といえるもので、法的手続きに入った信販会社もあるので徹底的に戦っていく」(西村弁護士) 「西村弁護団」と契約を交わす際には着手金8万円(税別)と実費1万3600円(税込・追加実費なし)が必要。弁護団の報酬は会員が得る経済的利益の8%(税別)だが、上限は40万円となる。これは500万円の残債がゼロになった場合の報酬額に相当するが、仮に1000万円の残債がゼロになっても40万円が上限となる。 <h2>被害者をできるだけ一本化したい</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2017/05/170502K2.jpg" alt="「ゴルフスタジアム被害者の会」正式スタート" width="640" height="427" class="aligncenter size-full wp-image-325" /> 以下、総会で行われた質疑応答を要約する。回答者は西村弁護士。 <strong>大阪や名古屋で個別にローン会社を訴える動きがある。つまり「西村弁護団」に参加しない被害者も出はじめているが。</strong> 「その動きは知っているが、他の法律事務所と我々で主張内容は大きく違わないと思う。彼らがどこの裁判所でやるかわからないが、我々はできるだけ当方の弁護団に集まってもらい、東京地裁で集団訴訟を起こしたい。 信販会社が十分な調査確認をせずに契約を締結した場合は、確認義務違反になる。確認義務を怠ると、信義則上、背信性が疑われ、残債務を否定できる判例もある。我々は債務不存在を主張して、集団訴訟を順次起こす」 <strong>着手段階で約10万円の費用が掛かるが、これが厳しい場合は?</strong> 「原則的には気持ちよく払ってもらいたいが、払えないひとは個別相談で分割になることも考えられる」 <strong>月々の返済が8万円あり、これを全額支払わないとブラックリストに載って商売が難しくなる。返済額を半額の4万円にして戦うことは?</strong> 「減額すると債務を認めたことになるので和解となり、裁判ができなくなる。実際、GS側の弁護士の話に乗ったひとが数名いた。信用リスクを害したくないと考える被害者の場合は、信販会社に対して裁判中はブラックリストに載せない提案をしていくつもり。そのうちの1社は了解している」 <strong>ブラックリストに載せないことを書面で確約した?</strong> 「確約というか、口頭での話だ」 <strong>騒動の発端であるGSへの対応は?</strong> 「一番の問題はこちらにあり、GSの動きは監視するが、今は信販会社との裁判を優先する必要がある。すでに支払督促という法的手段をとった信販会社もあり、急を要する問題だ。このようなケースでは、被害者が1人だと無視されるが、千人規模になれば裁判所も無視できない。リース問題にカタがつけば、GSにも対応していく」 以上が質疑応答の要約だが、「被害者の会」と弁護団はゴールデンウィーク中にも各所で説明会を開き、会員の入会率を高める方針。個別訴訟やGS側の弁護士など、被害者の争奪戦が起きている印象もあり、パワーゲームの様相を呈す。 「西村弁護団」の戦略骨子は、数を集めて社会問題化し、信販会社が主張する法的正当性を世論によって覆すこと。時間が経てば自己破産が相次ぐことも懸念され、諸事スピード感が求められる。(片山哲郎)
    (公開)2017年05月02日
    日本プロゴルフ協会(PGA)は昨4月10日、定例理事会後に倉本昌弘会長が記者会見を行った。当日は9項目の議題が俎上に載ったが、「ゴルフスタジアム問題」についても話し合われた。5月1日に新組織がスタートし、新たに「IT事業開発本部」を立ち上げてプラットホームを構築、会員にホームページ(HP)を提供する構想も明かしている。 PGAはこれまで広報業務の一環としてHPを運営してきたが、今後は内容の充実を図り、「HPをもちたい会員がいれば対応できる体制にしたい」(倉本会長)――。むろん、このコメントは「ゴルフスタジアム問題」を意識したものだ。 多くのレッスンプロが信販会社と高額なローン契約を交わし、その動機はゴルフスタジアム(GS)から無料でHPを制作してもらえるところにあった。「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」の西村國彦弁護士は「本来はPGAがその役割を果たすべきだった」と話しているが、新体制でこれを実現する方針を示した。 記者会見の大半は「GS問題」に費やされたが、この件についてPGAの問題意識はどこにあり、どのように解決しようとしているのか? 一問一答で要約する。なお、太字の質問は本誌によるもので、これ以外では日本ゴルフジャーナリスト協会の小川朗副会長から質問があった。 <h2>記者会見冒頭の挨拶</h2> 「ゴルフスタジアムの件もありましたが、5月1日に新組織のひとつとしてIT事業開発本部を設置します。GS問題については片山さんがいろんなことを書いていますが、すべてが合っているというわけではないし、我々は情報収集している最中です。 LPGAは早い段階で「会員個々の問題だから協会はタッチしない」というスタンスを出しており、我々も本来はそうだろうと思いますが、PGAの定款では、自己破産をした会員は資格喪失になる。過去にもそういう事例があったなかで、この件については方策を考えてみようかなと。 顧問弁護士と相談をしながら、救済措置がとれるならば、何か考えていこうということです。ただ、基本的には個人が(信販会社と)交わした契約に我々が関与するのは難しい。理事会に資料を提出するために若干の資料集めをするにしても、今は何をどう集めていいかわからない部分もありますが、各地区で会員の被害状況は把握したい。月並みな言い方をすると、現段階では静観ということになるかもしれません。」 <h2>質疑応答</h2> <strong>IT事業開発本部はいつ、どのような内容でスタートするのか。</strong> 「すでにやっている部分もありますが、一言でいえばプラットホームの再構築です。各所からジョイントしたいという話もありますが、第一段階としては会員情報を入れてシステムを一本化する必要がある。現状は(会員5562名のうち)1200~1300人分のメールアドレスしかなく、集約できていない状況なので、一箇所に集めて一般の人達に情報公開したい。 その後、第二段階で一般の方や業界とのマッチングを目指し、第三段階では業界外とのマッチングを目指す。プラットホームができれば、HPを作りたいという会員にも対応できるでしょう。それがなかったから外部(ゴルフスタジアム)に頼まなければならなかった。実は、この件は2ヶ月ほど前から動き始めていましたが、その矢先にこの問題が出てきたのです」 <strong>小川氏 システム完成までのスピード感は?</strong> 「資金があればすぐできます。ただ、PGAには(遊休財産が)8億円ほどありますが、なかなか使わせてもらえない。どこの団体も高齢化していて、ITについては『なんだ、それ?』という反応があるので、理解を得ながら進める必要があるでしょう。 今、IT関連の予算は年間1500万円ほどですが、それでは何年も掛かるので、大きな投資を一度にして、何年間そのシステムが使えるのか。1億使って10年(償却)なら年間のコストは1000万円、20年なら500万円です。今みたいに1500万円をちょこちょこ使うとツギハギになるので、このへんも含めて精査したい」 <strong>小川氏 かつてPGAとGSが提携していたことが信用となり、GSと契約をしたというプロもいる。</strong> 「ゴルフスタジアムとPGAの関係は平成19年9月から22年末までで、インターネットレッスンの提携をしてましたが、以後は一切関わりがありません。それと、申し上げたいのは、片山さんの記事に『日銭をもらって所得を申告していない者(レッスンプロ)が沢山いる』とありますが、」 <strong>沢山ではなく「一部」と書いています。</strong> 「それが問題だと書いてますが、定職でレッスンをしている者は、ほぼ99.9%申告しています。なかにはラウンドレッスンをして、そのまま領収書がなくポケットに入れちゃう者がいると。ただ、コンプライアンスの問題が発生してから厳しく言い続けていることは、ニギリは絶対にダメですよと。もうひとつは、もらったお金は申告しなさいということで、協会としては指導を続けています。まあ、現実はどうなのと言われると、見つけるのが困難ということですが」 <strong>見つかった場合は資格の剥奪など強制力はあるのか。</strong> 「そうなれば、コンプライアンス委員会に諮って、どういう形かで懲罰が決まります。いきなり剥奪とは思えないけど、戒告なのか訓告なのか・・・」 <strong>無申告で懲罰の前例はありますか。</strong> 「ないですし、告発もありません。ただ、(会員からの)質問はいっぱいあるんですね。例えば地区のプロ会がお金を出し合って大会を開くことも、厳密にはダメだと言っています」 <strong>賭博開帳図利の可能性がある?</strong> 「ええ」 <strong>ただ、そのような大会はかなりありますね。</strong> 「だからやめてくれと言っているわけです、集めたお金が全額取り分になるのはダメです。スポンサーからきちんとお金を集めて、これを分配するのはいいという区分けをきちんとしなさいと、地区大会でも言っています」 <strong>スポンサー大会はOKだけど、プロが出した参加費を全額賞金に充てるのはダメ。</strong> 「はい。うちの会員だけではなく、ほかでもやっているところはあると思いますが、それはダメです」 <h2>プロの未熟さを責めるのは論拠が違う</h2> <strong>定職に就いている者は99.9%申告しているとのことですが、「定職」というのは練習場等に所属して源泉徴収される場合ですか。</strong> 「それと、個人で練習場を借りて営業しているケースですね。不定期じゃない場合は、何月何日に練習場を借りて仕事をしたことを税務署が把握するわけだから、その部分に関しては99・9%申告しているという意味です」 <strong>そう言い切れる?</strong> 「はい。そうじゃないと練習場も困りますし」 <strong>これとは別に、ラウンドレッスン等の場合は事業所を挟まないから捕捉しにくい。</strong> 「そうですね。あとは友達同士の場合などで、例えば片山さんとゴルフをして、終わったあとに食事をした際、これが今日のレッスン費だともらった場合は調べようがないわけです」 <strong>調べようがないから、どうしようもない?</strong> 「いや、どうしようもないということじゃなく、我々はしないでくれと指導しています。だから、やってないだろうとは思っているけど、現実にあると言われれば、告発しなければいけないのか。ということについては、非常に難しいと思います」 <strong>今回のゴルフスタジアム問題は、レッスンプロの常識が欠如していることも槍玉に挙がっています。</strong> 「欠如というのは具体的に?」 <strong>仮に年収300万円のレッスンプロが、500万なり800万のローン契約に判子を付いた。そのことです。</strong> 「それは(審査を通した)ローン会社の問題でしょ」 <strong>むろん、そうです。ローン会社が無審査だったと「被害者の会」も言っており、仮にそうなら責めはローン会社が負うべきです。ただし、その手前で判を押した側にも瑕疵がある。</strong> 「その論拠はおかしいでしょう。だって、たとえば2万円しか収入がなくても1億の家を買っていいと銀行が言ってくれたと。ならば借りるし、むしろ片山さんのほうが非常識ですよ。だって、お金を貸す側が、あなたにお金を貸しましょうと。借りたほうは、お金があればちゃんと回せると思っているわけですから。まして今回は5年ローンが大半と聞いているし、月々5万円、多いひとで7万~8万円の返済額が(広告費として)入ると言われている。『本当にわたしで大丈夫ですか?』と聞いているのに『貸します』と言われたわけだから、それを非常識と言ったらおかしいでしょう」 <strong>そう思うこちらが非常識だと。</strong> 「そこを責めるのであれば、ぼくはそう思いますよ。そうじゃなくて、『あなたはこの関係を疑わなかったんですか』とか、『あなたは5万円を払い続けられるんですか』『あなたの仕事で大丈夫ですか』という話なら、『ちょっと浅はかだったかもしれない』となりますが、」 <strong>それなら今の話と同じでしょう。そもそも常識が欠けて、だから判を押したわけだから。</strong> 「違いますよ。そもそも自分ができると思っていて、なおかつ(広告費が)入ってくるわけですから」 <h2>PGAは基本的に関与できない</h2> <strong>そういった教育的カリキュラムをPGAの講習会に加える必要性は?</strong> 「どういったカリキュラムですか」 <strong>契約の際に気をつけること、あるいは税務署の人間を呼んで税務問題を指導するとかです。</strong> 「税務問題は入っていると思います」 <strong>信販系の問題はカリキュラムに入っていない?</strong> 「あのぉ、我々みたいな人間には基本、お金を貸さないじゃないですか。わたしはPGAの会長で1080万円ですけれど、(1期2年なので)住宅ローンを借りたいと言ってもまともなところは貸してくれないですよ。だって、定額収入がないわけですから。 我々の常識からすれば、プロゴルファーにローンを組ませることが基本的に少ないわけです。逆に言えば今回は、そこを突かれたわけだから、騙されやすい面はあった。 それと、全員に聞いたわけではありませんが、購入者は何百万円もするソフトを1回も使ったことがないと。あれより簡単で安いソフトは沢山ありますが、これを買わないとHPを作ってくれない、お金も(広告費として)払ってくれないから、仕方なく対価として買ったという話を聞いています」 <strong>だとすれば、詐欺性を疑える?</strong> 「ただ、顧問弁護士に言われたのは、被害者かそうじゃないかわからない今、我々公的機関が何かに煽動されたり、こうしたほうがいいとは極力言わないほうがいいと。そのように言われましたので、書く場合はそのあたりを理解した上でお願いします」 <strong>被害人数は調査中ですか。</strong> 「我々のざっくりした感触では、会員数で300~500の間かなと。『被害者の会』は1000人規模と見ていますが、関わった人はそれぐらいだとしても実際にはどうでしょう。まあ、ゴルフスタジアムにつきましては、ゴルフ界の社会問題だと思いますが、我々は直接タッチできません」 <strong>先ほど「救済」を検討するという話でしたが?</strong> 「信販会社と個人の話なので、基本的にはできないと思います。ただ、議論の上では、破産した人間に対して何かできないのかと。そういう話もありましたし、準備だけはしておきたいと考えています」 以上、倉本会長との一問一答を要約した。論旨をまとめると、 <ol> <li>新設のIT事業開発本部でHP事業を強化する</li> <li>ゴルフスタジアム問題は信販会社と個人の問題なのでPGAは基本的に静観する</li> <li>一部のレッスン収入「無申告者」に対しては従来通り指導を徹底し、懲罰を含め厳格化する</li> </ol> ことに集約されそう。今回の問題は、水面下で燻る様々な課題を顕在化させたといえるだろう。契約に至った背景に「プロの上下関係による紹介」を指摘する声もあり、だとすれば、ある種の閉鎖的な人間関係が徒になったと見ることもできる。 ゴルフスタジアムは事業再建の過程で、IT系企業との資本・業務提携を示唆しているが、同社が構築したシステムをPGAが買収すれば「プラットホーム強化」の青写真も描きやすくなる。相互送客や最新のスイング解析システムを導入して顧客カルテを掌握すれば、会員価値の向上と組織の近代化につながるはず。「公益社団法人」としてどこまでやれるのか、このあたりの動向も注視する必要がある。(片山哲郎) <strong>訂正 (4月12日11:28) 自己破産は会員資格停止との倉本会長発言について、PGAから正しくは資格喪失との訂正が入りました。</strong> なお、PGAは代表電話(03-5472-5585)を被害者の「連絡窓口」としているが、一部で「相談窓口」を設けたとの情報については「相談を受けられる段階ではなく、勘違い情報」(事務局)と否定している。
    (公開)2017年04月11日
    さくら共同法律事務所の西村國彦弁護士が中心となって3月26日、「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」が結成された。ゴルフ関連のIT事業を主業務とするゴルフスタジアム(GS)からスイング解析ソフト等を購入し、その支払いを信販系8社(ジャックス、オリコ、クレディセゾン、セディナ、ビジネスパートナー、東京センチュリーリースなど)とローン契約を交わした被害者が、返済に窮した。 「あまりに高額なリース・ローンであり、詐欺性も疑われる」(西村弁護士)との判断から「被害者の会」を立ち上げ、3月28日に専用ホームページを開設するなどで710人(4月5日現在)の参加を得ている。目指すのはローン残債の全額免除。信販会社との戦いに腕を撫す西村弁護士との一問一答を要約する。 <strong>問題の構図をどのようにみていますか。</strong> 「ぼくの理解ではまず、ゴルフスタジアム(GS)とは別に複数の信販会社があり、練習場やプロ達が個別にローン契約を結んでいる。被害者は1400人程度と考えられ、これはGSのホームページ(HP)に契約先として表示されていた名前を数えました。 これを基に呼び掛けて『被害者の会』を結成したのです。一人当たりの契約額は300万~500万円、中には1000万円近いケースもある。その平均を500万円と考えて、1000人ならば50億円、1400人で70億円の金が動いたという案件になります。当初、契約者はGSがHPを作ってくれるということで心が動いた。つまり、自分達でHPを作れない零細者がターゲットになり、GSの営業に乗ってしまった」 <strong>事件性はどこにあるのか。</strong> 「まずはHPありきの営業があって、そのHPにGSは自分達で取ってきた広告を載せて『広告費を払います』と。その後、高額なスイング解析ソフトの販売を持ちかけている。 PGA(日本プロゴルフ協会)がGSと提携していた時代もあったので、その信用から契約を交わした者も多く、数十億の金が信販会社から契約者を素通りしてGSへ流れ込んだ。『ホームページリース詐欺』という類型もありましてね、今回はその変形だと思うんですが、最大のポイントは巨額な金がリース・ローンから『無審査』で流れたところにあると考えています」 <strong>無審査がポイントになる?</strong> 「はい。個人事業主であるプロの大半は、収入証明が難しい。大きな練習場に属していれば源泉徴収がありますが、今回ターゲットになったのはHPを作れないレベルの小さな練習場や、そこで働くプロもやられている。ショップの場合も個人店レベルが狙われています。 HPを作ってくれて、広告費も払ってくれる。で、最後に解析ソフトのパッケージが来て、リース・ローン会社がその後に続く。 順序立てると、まずは借金なんかできないと思っているひとが6万5000円とか10万円の広告料をもらえる契約をGSと交わし、その後、送られてきたソフトの受領書に判子を押して提出するとリース、ローン、クレジットなど、信販会社によって異なる契約を交わす形になる。リースもあれば、サービス提供にリースを付けるなど様々です」 <strong>つまり、ひとつのビジネスでふたつの契約が存在する。</strong> 「とも言えますね。本件の場合はGSと被害者が(広告)契約を結び、これとは別に被害者と信販会社が(ソフト購入)契約を交わすもので、双方が『分断』されているのが特徴です。法律的な解釈では、仮にGSが破綻したときに、契約者はGSに要求することと同じことを信販会社にも言えるのかです。これを『抗弁権の接続』、逆にできない場合は『抗弁権の切断』と言います」 <strong>で、同じことを言えるのか?</strong> 「たとえばゴルフ会員権を購入して金を払ったけど、ゴルフ場ができなかった場合、ローン会社に『できなかったから払わない』と言えるのか? 学説的な判例では、原則的に『ダメです』となる。双方とも別の二者契約ですから」 <strong>すると焦点は「抗弁権の接続」で、これを主張するためにはGSと信販会社の癒着性、一体性を証明する必要がありますね。</strong> 「そうです。基本的な構造は、GSの資金繰りを助けるためにローン会社と組んで、リース物件を餌に契約者から金を集めた。その際に重要なことは、先ほど申し上げたように『無審査』で通した可能性が極めて高い。 契約者は充実したHPを開設でき、ローンを組まされるけど審査はない。返済は厳しいけど広告費で相殺できると安易に判子を押してしまった。そのように考えられます。 ただ、最初からGSと信販会社の癒着性を証明しろと言われると、現段階では厳しいので、まずは疑いを提起するために『被害者の会』を立ち上げてキャンペーンを始めました。すでにNHKが一報を打ちましたが、これはNHKが被害を認定してくれたと言えます」 <strong>本当に無審査だったのか。</strong> 「まあ、年収ぐらいは書いたかもしれませんが、年収を裏付ける書類を要求された形跡はない。常識的に考えて、HPさえ持てないプロが数百万のローンに耐えられる信用性があるとは思えません」 <strong>このようなソフトに数百万円のローン契約を結ぶ側にも非はあるでしょう。</strong> 「世間知らずといえばそうでしょうが、バブルやサブプライムの場合もね、多くの国民が踊らされた。ある種の群集心理が働いたはずで、今回のケースも似ています。たしかに迂闊な面は否定できませんが、1000人以上の被害者が出た案件の場合は、詐欺性が非常に強いと考えられます」 <h2>社会運動を盛り上げる</h2> <strong>「被害者の会」を立ち上げた経緯は?</strong> 「2月末にゴルフスタジアムの資金繰りが詰まってしまい、『(広告費を)払えません』という書状を受けた被害者が相談に来た。ローン返済が滞れば、信販会社に裁判を起こされる、あるいはブラックリストに掲載されて潰れるしかなくなってしまう。 そこで弁護士に相談したら、『裁判をやっても難しいから破産しなさい』『自宅も売りなさい』というアドバイスしかくれなかったと。で、ぼくのところが駆け込み寺になりました。ぼくの考えは、リース・ローン裁判で個別に戦ったら不利だから、まずは被害者の団結が大事だと。実は、会員権問題も同じでした。 ゴルフ場が倒産したら紙屑になるという理論は法律的には正しいし、金融機関が競売に掛けることも法的に問題ありません。だけど、会員は納得できませんよね。するとデモが起こります。そのゴルフ場は150人ほどの会員でしたが、美しい女性がデモの先頭に立って抗議する映像をNHKが全国ネットで一日3回流してくれた。その結果、銀行は競売を断念しました」 <strong>つまり法理論だけでの対抗ではなく、社会運動で世論に訴える。世間の同情なり同調を取りつけて、権利保有会社の気持ちを萎えさせる。ある種のパワーゲームですか。</strong> 「ぼくの発想はそれに近いですね。法律には不備があるし、法の保護を受けにくいひともいる。信販会社はプロだから、割賦販売法とか熟知して巧妙な契約書を作ったはずです。 法律論だけで対抗したら被害者は分断され、生活破壊されてしまう。そのような被害者が1000人以上出る場合は、やはりおかしい。昔、借地人、借家人が権利を得られなかった時代には同盟を組んで、デモで対抗しました。同様に、ゴルフ場が倒産すれば会社更生法で処理しても、プレーできる権利は微妙でしたが、再生法・更生法で会員を追い出すと社会問題になる。 このケースで裁判所は、会員を残れるようにしたんです。いわゆる『大岡裁き』ですね。極論すれば本件は、被害者は名義を使われただけではないか。だから彼らの借金は、実質的に『GSの借金』と解釈できる。そこが一番のポイントです」 <strong>被害者はプロ、練習場、ショップの三者ですが、各々事情が異なる。</strong> 「そうですね。プロは個人事業主だから比較的シンプルだけど、練習場やショップは別の支払いがある中でこのローンを組まれてしまった。ほかのローンがある場合はかなり面倒なので、今回の被害者は通常のローンと切り離して、ブラックリストに載せるべきではない。そんな主張で監督官庁に呼び掛けています。 キャッシュフローが止まると倒産しますので、信用保証会社に載せないようアプローチします。その際、GSの借金を被害者に付け替えただけで、実質は名義貸しにすぎないと主張するわけですが、信販会社は『名義貸しに協力した責任はある』と反論するでしょう。でも、契約書はあるけど本当のことは説明していない。法律的には『説明義務違反』で被害性を訴えられます。これだけの規模の被害者が出るのは社会的事件ですからね」 <strong>戦う相手はGSよりも、信販会社に絞り込んだ?</strong> 「仮にゴルフスタジアムが破産したら、同社に対して裁判を起こす意味はあまりないし、債権の届け出を予備的に出すくらいでしょう。ただ、仮に裁判でローンが認められたら残債はGSが払うべきという主張はしたい」 <strong>GSが倒産した場合、被害者が得られる破産配当は数千円のレベルでしょう。</strong> 「ですから、実質的には被害者と信販会社の戦いになります。そのうちの1社は社会問題化を恐れたのか、ブラックに載せないための『状況説明書』を我々に送ってきて、詳しい事情を教えてくれと」 <strong>信販会社の懸念は、無審査ローンが社会問題化することですか。</strong> 「そう。経産省の商務課などにしてみれば、とんでもない話でしょうからね」 <strong>監督官庁が信販会社に営業停止を求める可能性もある?</strong> 「でしょうね。それと、信販会社の顧客は庶民なので、庶民イジメの烙印を押されることを恐れるはずです。銀行系の信販会社も多いため、逆に戦々恐々かもしれません。 彼らの弁護士が『契約書が整っているから勝てる』と主張しても、銀行は世論の風向きに敏感です。今はコンプライアンスが非常に厳しいこともあり、1000人以上の零細者が引っ掛かるリース・ローンは絶対にやるべきじゃない。 その確信があるから『被害者の会』を作ったわけで、低金利時代の病巣は無審査ローンの広がりですよ。消費者ローン的に薄く広く金を集め、その対象者は被害に遭っても対抗できない。それ自体が問題だと考えています」 <h2>PGAにも責任がある</h2> <strong>この問題が騒がれるとゴルフ界、特にレッスン業界の体質改善も期待できます。</strong> 「おっしゃるとおりです。ぼくは今回の件を通じてゴルフ界の改革につなげたいと考えていて、『被害者の会』の決起集会では『今回の事件を教訓に情報交換・研究を行い、ゴルフ界のイメージアップ・改革につなげる』という一文を加えました」 <strong>改革は浄化を伴います。その意味でレッスン業界は深刻な問題を抱えていて、いわゆる「脱税行為」です。レッスンが現金払いの場合は所得を申告しないケースがあり、 レッスンプロの一部は国民の義務を果たしていない。「業界民度」の低さ、強い言葉でいえば「反社会性」が放置されて、だから正確な収入証明も出せなかった。これらの瑕疵がゴルフスタジアム問題の一因と言えませんか?</strong> 「そう。しかもPGAがそれを放置してきた。いみじくも被害者の一人が『これはぼくらの責任でもある』と話しているので、そういった取り上げ方は否定しません。プロ達は富裕層に取り入って、そのような行為を一部で行っている。 だからプロを全面的に擁護するわけではありませんが、生活破壊は絶対にダメだし、ゴルフ界をより良くするためにもこの案件に取り組みたい。あるプロが今回の件で『我々は本当に世間知らず』とFBに書きましたが、だから目を付けられてリース・ローンの草刈り場にされたとも言えるわけです」 <strong>PGAには諸問題を放置した責任がありますね。</strong> 「あるでしょう。GS問題では引っ掛からないための指導が必要だったし、ゴルフスタジアムがPGAと(過去に)取引があったから信用したという被害者もいるわけです。それと、そもそもPGAが会員にHPを作ってあげて、トータル的なシステムを組んでいれば、こんなことにはならなかった。会費を払っているプロ達が、HPをもちたいという動機で問題に巻き込まれ、路頭に迷うとしたら問題ですよ」 <strong>今回の案件で、最終的なゴールはどこですか。</strong> 「仮に調停に持ち込んだ場合、被害者のローン残高をゼロにできるのが最高だし、今回のリース・ローンは『GSの借金』だと認定してもらうことがベストです。ただ、証拠が完全に出てない段階なので、着地点は流動的でしょう。 いずれにせよ、裁判官も世間の空気を読んでいるし、マスコミの動きも気にします。ぼくはこれまで被害を社会問題化させて、裁判所に『大岡裁き』を求めるやり方をしてきました。訴訟だけでは運動が終息するし、動きが止まると弁護士も辛くなる。このようなケースでは、社会的な運動と弁護士の訴訟運動を両輪にしないと勝てません。特に銀行は、世論をもの凄く気にするので、運動を盛り上げたいですね」 以上が西村弁護士の戦術論だ。同氏は過去、ゴルフ場の会員権問題を複数手掛けた経緯もあり、ゴルフ界への思い入れが強いという。 被害者対信販会社の対立構図を浮き彫りにして、世論喚起と訴訟の両輪で攻めるわけだが、併せてレッスン業界やPGAの体質改善につなげたいと強調する。PGAは東日本大震災の発生直後、即座に会員の安否確認を行っており、ゴルフスタジアム問題についても同様の姿勢が求められる。 むろん、レッスンプロだけの問題ではない。ゴルフスタジアムの堀新(ほり・あらた)社長は、単独系のショップ・工房300店ほどが被害対象と推定するが、これらが返済の滞納でブラックリストに掲載されれば、他の金融機関から融資の一括返済を求められるなど事業の継続が困難になる。 倒産すれば、取引先の地クラブメーカーは売掛債権が未収となり、零細メーカーが多いことから連鎖倒産の恐れもある。負の波及効果は大きいといえる。「被害者の会」は残債の免除を勝ち取れるか? 解決に時間が掛かれば生活破綻が相次ぐだけに、スピード感が必要だ。(片山哲郎) <a href="https://gssmhk.jimdo.com/" title="「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」">「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」</a>専用HP
    (公開)2017年04月05日
    ゴルフスタジアム(GS)は、アソボウズのゴルフ部門から分離・独立して2004年9月に設立された。資本金は5100万円(2016年8月現在)で、スイング撮影機・ソフトの「モーションアナライザー」などを販売する一方、ゴルフ関連会員サイトやゴルフ施設にCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を提供し、2015年1月には伊沢ゴルフアカデミー(都内)を開校するなど業容を広げた。 前期売上高は30億円超とみられている。一連の騒動は、同社が高額のスイング解析ソフトを零細事業者に販売し、その返済契約を被害者が信販会社と交わしたことから、GSの業況とは関係なく、返済が続行するところにある。総じて債務不履行となれば、多くの破産者を出しかねない。 なぜ、このような事態を招いたのか? 堀新(ほり・あらた)社長を取材した。取材日は3月31日夕刻。以下、要約を一問一答で再現しよう。 <strong>今回の騒動について一言。</strong> 「取引先や業界関係者の皆様に多大なご迷惑を掛けたことを大変申し訳なく、心からお詫び申し上げます。すべては私の拡大主義が招いたことであり、責任を痛感しております」 <strong>事業の推移を振り返ってください。</strong> 「当社はソフトウエアの販売だけではなく、スクール運営や解析機の販売など様々な展開をしています。練習場の場合はインソールのフィッティングイベントや試打会の企画・提案もあり、当初はスイング診断機器の販売会社でしたが、機械はあまり売れず、ソフト販売に注力しました。 また、以前は自前のホームページ(HP)をもたない業界関係者が多かったので、当初は有料もありましたが、近年は無料でHPを制作・提供し、これと併せてソフト販売に注力するようになりました」 <strong>当初はHPとソフトの抱き合わせ販売ではなかった?</strong> 「はい。当初は練習場が大半で、広告を柱や仕切り版などに掲出するアナログな事業が好調でしたが、そのうちHP制作を絡めた広告展開に注力して、10年前には2億円の年商が前期で30億円まで急成長。当初は関東が中心でしたが、全国展開を進めまして、今となればかなり無理をして広げたことを反省しています。 成長期には、広告クライアントも楽天など大口を確保でき、その一方で地域の高級レストランや外車ディーラーなど、富裕層向けの地域企業がクライアントの多くを占めました。ここから月々数万円頂いて、当社がマージンを取ってからバナー広告費としてHPの契約者に支払うもので、クレジット会社からの収益と広告収益があったため、一時は高収益企業でした」 <strong>ところが、2月に顧客への広告費が払えなくなった。</strong> 「売掛金の未回収や広告のキャンセルで、当社への入金が止まってしまったのです。そのひとつが広告出稿の代理店的な機能をもつ会社であり、当社のソフトウエアを前金で買ってくれたところも業績が下がり、当社への支払いが滞った。取引先のHPには当社の広告出稿もありましたが、これは完全に逆ザヤで持ち出しです。 この間、銀行から融資を受けて取引先に(広告費の)支払いを続けましたが、厳しくなり、2月末にすべての取引先に支払えない旨を連絡しました」 <strong>「被害者の会」は、GSのHPに掲載された取引先約1400人が被害者になり得ると推計していますが、その取引先名が先日、HPから消去された。</strong> 「消したのは、二次被害を懸念したからです。今回の件が公になって、複数の業者から取引先に『残債処理を手伝います』という営業があったのです。明らかに当社のHPから得た情報で、怪しげな業者も含まれていたので、混乱を未然に防ぐため消去しました」 <strong>「被害者の会」の西村國彦弁護士は被害総数1400人、総額70億円規模と推定しているが、このあたりの事実確認を。</strong> 「信販会社と契約者間の数字なので、私の口から確たることは言えませんが、1200人前後だと思われます。HPに掲載されていた取引先は返済を終えていたり、返済額が月々数千円のケースもありますので」 <strong>70億円の6掛け程度?</strong> 「おそらく、それぐらいだと想像されます」 <strong>標準的な返済月額は5万~8万円とみられますが、問題は、信販会社との契約額が300万~1000万円程度と高額なこと。その理由は?</strong> 「先ほど申し上げましたように、ソフト販売と絡めたイベント提供など個々の契約内容が異なるので、これによって額は変わります。お客様の月々の支払額を想定して、個々に割引幅を設けたり、サービスを組み合わせ、その代り(返済に充当する)『広告費はこれぐらいで』という提案だったと思います」 <strong>ソフトはオープン価格ですね。</strong> 「はい」 <strong>ソフトの価格は300万円程度とされますが、法外じゃないか。</strong> 「う~ん、法外といわれると、少し心外な面はございます・・・。販売価格はお客様との相対で決まり、提示額を了承されていますので。それと、最終的には信販会社がその価格で審査を通したので、それがなければお客様が当社と契約を交わしても、ローン自体が成立しないわけですから」 <h2>弁護士を通じて信販会社と交渉する</h2> <strong>取引先の業種は?</strong> 「おそらくインストラクターが300~400人、練習場施設が約300、独立系のショップ・工房が300ほどだと思われます」 <strong>信販会社への返済を滞納すれば、ブラックリストに掲載される。これにより他の金融機関から事業資金の一括返済等を求められれば、窮地に追い込まれる契約者は後を絶たない。</strong> 「それが大問題だと認識しておりますので、契約を進めたのは当社ですが、審査を通したのは信販会社なので、当社の弁護士を通じて信販会社と交渉し、信用不安が起こらないようにお願いしたい。もっと言えば、(信販会社は)当社に請求してくれていいと思っているんです。払えるかどうかは別にして、本気でそう思っています。相手にはされないでしょうが・・・」 <strong>焦点は、GSと信販会社の癒着性、つまり両者が一体的にソフト販売とローン契約を進めたのではないかとの疑念ですが、その際「被害者の会」は契約が無審査だったと主張している。この点について。</strong> 「信販会社がどのようにしたのかわかりませんが、過去10年間、明らかに中小零細企業や個人に対するOKの出し方は、一般的なそれ(ローン審査)を考えれば、感覚的には簡単だったのかなぁと。 それほど収入のない方でも800万円のローンが通ったことが問題として起きているので、そのような感覚をもっています。ただ、当社とお客様と信販会社の三者において、一番悪いのは当社です。我々がお客さまへの支払い(広告費)を継続できていたら、何も起こらなかったわけですから」 <strong>論点はそこではなく、事業モデルそのものに問題はなかったのか。HPへの広告費でローン返済を相殺する仕組みが不安定であり、しかも大半のレッスンプロが低収入という現実をみれば、300万、500万、800万円の返済はムリでしょう。</strong> 「それは、ムリだと思います。ですから、契約上5万円とか7万円の返済になっているのは、本来目指す額はそこなんですね。それができていなかった。 当社が本当にやりたかったのは、HPを作って、会員化して、スイング画像を作って顧客カルテを作る。これによってレッスン市場の底上げをシステム的にやりたかったわけですが、私の売上至上主義というか、拡大主義のシワ寄せが当社の営業マンに及んでしまい、(ソフト販売による)大きな売上を求めたことが一番の間違いでした。 信販会社から入ったお金は、ゴルフ三昧に投資したり、新しいバックボーンへの投資に回しましたが、本来投資すべき先は顧客のHPをより活性化すべき方向性で、これができていなかったのです」 <strong>地道なHP運営より、高単価のソフト販売に邁進した。</strong> 「はい。そうしなければ厳しい面もありました」 <strong>3月24日付で取引先に「今後の提案」を送付した。その中身は?</strong> 「当社は信販会社に対して、契約者の債務減額を要望できる立場にありません。逆に『回収に協力する立場でしょ』と言われかねませんから。 そこで、当社ができることは、当社の費用で弁護士を立て、契約者の返済について『1年間猶予をください』、つまり『1年間返済を停止してください』とお願いすることに加え、債務減額の交渉だと思います。 この間、我々は新しいビジネスモデルを構築して、取引先の収益に貢献し、その結果をみて『新たに支払額を算定してください』と。当社から広告費を得なくても、プロによるチケット販売やゴルフのマッチングサービスを提供できれば、直接的な収益が発生する。 仮に現在の返済額が8万円の場合、新しい収益が3万~5万円となれば、当社の弁護士から『このヒトは月々3万円でどうでしょう』という交渉を、1年後にお願いできる態勢にしたいのです。この提案に対するお客様からの回答を4月3日までにくださいという案内を送付しましたが、おそらく7日くらいまで掛かるのではないか。10日の週にはほぼ固まると思います」 <strong>取引先の反応は?</strong> 「99%の第一声が『ふざけるな!』という反応ですが、今後の計画を丁寧に説明し、一人でも多くご理解を頂けるように努力したい。その際、ひとつの手法が相互送客です。今、空き枠ビジネスが盛んで、月極め駐車場の空きを時間貸ししたり、店の軒先を借りて販売したり、空車タクシーの活用もそうです。これをゴルフに当てはめると、練習場とインストラクターに双方空き時間があるので、HPを介して合理的に埋めることも今後の青写真です」 <strong>仮にGSが倒産したら、破産配当は数百円、数千円でしょう。</strong> 「多分、それぐらいの世界だと思いますが、そうならないよう他社との業務・資本提携を含め、スピード感をもってやらねばと考えています。 すでにIT系の複数社から話がきており、先方が大手であるほど『信販会社はどうにかならないのか』という声もあります。ですから、最優先課題はHPを閉鎖しないことで、これはかなりの確度で可能だと思います。 大手との提携に際しても、皆さんがHPを活用している姿を見せることが大事です。一番深刻なのが信販会社とお客様の問題で、理屈上は当社を除いた二者の問題ですが、道義的な責任を含め、極端に言えば当社が倒れたとしても、私自身が負っていくべきだと考えています。すべての責任は私にあります」 <strong>責任をどうやって取るんですか。</strong> 「お客様が円滑に返済できるよう、新ビジネスを立ち上げることに尽きます。信販会社に対する1年間の支払い停止や債務の減額交渉も含めまして、できることを着実にやらせて頂きたい。『被害者の会』がお客様のためになるのなら、たとえ我々に何が振り向けられても、事実をきちんと受け止めたい。そのようにして進めたいと思います」 事業再構築の要諦は、1000件を超えるHP会員の「資産価値」を有効活用することで、その際、自主再建にこだわらず、他のIT系企業との業務・資本提携を含めてスピード感が不可欠となる。 顧客であるHP会員が連鎖的に破産すれば、「資産価値」を著しく損なうため、信販会社との交渉が今後の流れを決定する。また、GSそのものが信用を失ったことで、取引継続に難色を示すムキも増えるだろう。 このあたりをどのようにクリアできるかが、今後の焦点といえそうだ。次回は「GS信販問題被害者の会」を取りまとめる西村國彦弁護士との一問一答を詳述する。(片山哲郎)
    (公開)2017年04月03日
    「一人当たり平均500万円、1400人で70億円の被害総額と推定されます」。 そう話すのは、さくら共同法律事務所の西村國彦弁護士だ。同氏が中心となって3月26日、「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」が結成された。「被害者の多くはレッスンプロ。仮に彼らが破産すれば、レッスン市場は壊滅的な打撃を受け、ゴルフ界全体にも深刻な影響を及ぼすでしょう」と警鐘を鳴らす。どういったことか? 顛末はこうだ。ゴルフ関連のIT事業を主業務とするゴルフスタジアム(GS)は、個人事業主のレッスンプロや練習場、ゴルフ工房向けに無料でホームページ(HP)を制作し、併せてスイング診断ソフト(モーションアナライザー)等の購入を働きかけてきた。 ソフトは約300万円(オープン価格)と高額だが、個々のHPにGSがバナー広告を提供し、契約者に広告費を支払うことで、ソフト購入等の返済に充てる仕組み。つまり、契約者は広告収入でローンの返済を相殺でき、無料でHPも開設できるのがウリだった。GSの堀新(ほり・あらた)社長によれば、「10年前に年商2億円でスタートした事業が30億円にまで急成長しました」という。 その仕組みが破綻した。2月末にGSから支払われるはずの広告費が滞り、契約者は「自腹」での返済を迫られる。「長引く広告不況と同時に、主要取引先が経営難に陥ったなど、複数の要因が重なって支払いが厳しくなったのです」(堀社長)。 問題は、被害者がソフト購入等のローン契約を個別に信販会社(8社)と結んでいることだ。仮にGSが倒産しても契約者が得られる破産配当は微々たる額だが、にも関わらず信販会社への返済は続いていく。より深刻なのは、たとえばゴルフ工房の場合、店舗設備や仕入れに融資を受けているケースがあり、信販会社への支払いを滞納するとブラックリストに掲載される。他の金融機関との資金パイプが寸断されれば、倒産の可能性も否めない。 堀社長によれば、契約者の内訳はレッスンプロが300~400人、練習場が300ヶ所、ゴルフ工房が300店ほどで、ローン残高は西村弁護士が試算する70億円の「6掛け程度」(約40億円)とみているが、GSはソフトの販売にイベント開催(試打会等)を組み合わせた「セット販売」も行っており、最高1000万円ほどのローン契約を交わした例もあるのだとか。これらが債務不履行となれば、業界に及ぼす影響は甚大だ。 西村弁護士が問題の構図を説明する。 「仮に被害者と信販会社との契約に違法性がなかったとしても、1000人規模が生活破壊の危機に置かれる状況は大問題です。信販会社は契約の際にほぼ『無審査』で通した形跡もあり、常識的に考えれば、300万~1000万円のローンを低収入のレッスンプロが払えるはずがない。全体の構図を俯瞰すると、プロ達がGSと信販会社の金儲けに利用された疑いが濃厚です」 「被害者の会」は、信用保証会社に向けて契約者がブラックリストに載らないよう求めると同時に、信販会社に対しては今後予定されるローンの免除を訴える。「この件を社会問題化させて、運動を展開します。訴訟と運動の両輪で支払い免除を勝ち取りたい」(西村弁護士) 一方、加害者の立場となるGSも信販会社に働き掛ける。「当社が引き起こした騒動なので、責任はすべて我々にあります。まずは信販会社に1年間の『支払い停止』をお願いし、この間に事業を建て直し、取引先に新たなビジネスメリットを提供するなどで再度返済できるようにしたい。すでにIT系の数社から業務・資本提携等の申し出がきています。過去の拡大主義を反省し、被害を最小限にとどめたい」(堀社長) 以上がこれまでの経緯だが、背景にはもうひとつ、見逃せない問題がある。 西村弁護士が「プロの世間知らずな面が、付け込まれたともいえる」と話すように、上手い話に乗ってしまう業界の土壌も看過できない。レッスンプロは個人事業主が大半を占め、レッスン料が現金で支払われるケースでは申告をしない「脱税行為」も一部でみられる。いわゆる、社会常識の欠如である。 国内のレッスン市場は150億円程度とされ、これを生業とする者は日本プロゴルフ協会の有資格者を筆頭に9000人規模と推定される。一人当たり平均年収が200万円に届かないワーキングプアの業界であり、その生活苦から抜け出すために契約を交わし、今回の事件につながったとすれば、問題の根はかなり深い。(片山哲郎) GS信販問題被害者の会 電話 03-5511-4403
    (公開)2017年04月01日

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