<h2>SDGsはどこから来たのか</h2>
2015年9月、国連で参加193か国の全会一致で採択された文書があります。
「私たちの世界を改革する・持続化可能な発展に関する2030アジェンダ」と呼ばれ英文で36ページの文書です。世界を大きく変革していこうという趣旨で作られた世界の未来を方向付ける内容で、その中の14ページから28ページまでが「SDGsとその目標」であり、私たちが話題にしているSDGsなのです。
なぜ、こんなことを詳しく書くのか。それはSDGsに秘められた本来の意味を伝えたいからです。SDGsが書かれている元の文書の表題は、「私たちの世界を変革する」でしたね。これは世界を根本から変えていこうという意味です。
この文書で使われている「変革する」は、英語ではtransformingとなっています。transformingはデジタル・トランスフォーメイション(DX)やグリーン・トランスフォーメイション(GX)などにも使われているように、大きな変革を意味します。原型をとどめないような変革です。
これまでの人類の歴史の方向を大きく変えようということです。21世紀にその大変革をしないと人類は生き延びることすら困難になるという世界共通の意識があるのです。
DXやGXと呼ばれる世の中の大変革もその流れの中心にあるでしょう。その他にも貧困の撲滅、南北格差の解消、教育の普及など課題が山積しています。こうした現代の矛盾点を思い切って改革しないと人類の未来はない、という危機感です。
<h2>時代を読む力</h2>
経営で最も重要なことの一つに、時代の流れを的確に読み取ることがあると思います。この、地球大変革やDX、GXの流れを理解しないと経営はいずれ傾くでしょう。
私の父は横浜で土建屋をしていました。戦争から帰還し、闇市などで稼いでいるうちに縁あって鉄骨の組み立て業、そして建設業と発展していきました。景気の良い時には職人を連れて台湾などにも遊びに行っていましたが、ある時、東京の六本木で6階建てのマンション建設を請け負いました。かなり大きな仕事だったので父は張り切って、材料の仕入れまで一括で行う契約をしました。あの時の父の張り切った顔は今でもよく覚えています。
しかしその直後、第4次中東戦争(1973)が始まったため材料は全て大きく跳ね上がり、大赤字を抱えることになってしまいました。その傷がもとで会社は3年後に倒産。
湾岸戦争の危険は新聞等で盛んに報じられていましたが、父はそういった時代の流れをつかみそこなったのです。
私はゴルフ業界も世界の潮流を知るべきだと思います。日本のゴルフ業界はDXやGXという流れを掴み切っていないのではないか、と危惧しています。
いきなり世界の変革なんて大きなことを言われてもピンとこないでしょうが、大きな流れだけは掴んでおいていただきたい。
<h2>温暖化とゴルフ</h2>
例えば夏のゴルフに課題が出てきています。40度にもなれば、日本の平地でのゴルフはかなり危険になります。いや、ゴルフだけでなくどの屋外スポーツもできなくなる恐れがあります。これは明らかに地球温暖化の影響でしょう。
夏のゴルフは標高の高い所や東北・北海道もしくは外国ということになるかもしれません。それとも冷房がよく効いた室内ゴルフで、コースを回るように楽しむ人が多くなるのでしょうか。南の国の方々はどうするのでしょう。想像がつきません。
こうした状況への対策は業界全体の課題です。温暖化、気候変動による負荷は今後大きくなることを前提に運営計画を組み立てていかなければいけません。
また、温暖化防止に向けた活動にも積極的に取り組むべきでしょう。環境保全にしっかりと取り組んでいることを評価する一般ゴルファーが増えるかもしれない。
世の中が変わっていけばまた違った運営が必要になってきます。今は当たり前のことでも、この先の世の中の変化を読み取れば、変えていかなければなりません。
<h2>ゴルファーは社会的影響力がある</h2>
ところで、ゴルフ場の会員の皆様の多くは地域の有力者です。銀行、企業、役所などのトップがほとんど会員であり、社会的影響力のある方ばかりです。
今、その方々のお力を結集できないでしょうか。地域の実力者の方々がチームを作ればかなりのことができると思います。どなたかが声を出せばすぐに新しいことができる可能性が高い。
地球大変革でなくとも地域大変革の動きを作りだしたらいかがでしょう。ゴルフ場とその周辺を整備してきれいな里山を作る。地域の人々がゴルフを楽しむような活動をする。郷土料理や芸能、食事などアフターゴルフを楽しむ工夫をして外国人客を誘致し、経済の活性化を図る。また、貧困に苦しむ国へのチャリティゴルフなども良いでしょう。
地域のリーダーであるゴルファーの方々の奮起を、心よりお待ちしています。
<h2>世界を変革する:2030年持続可能な開発のためのアジェンダ序文</h2>
このアジェンダは、人々、地球、そして繁栄のための行動計画です。(中略)特に極度の貧困を根絶することは、最大の世界的課題であり、持続可能な開発に不可欠な要件であると認識しています。すべての国とすべての利害関係者が協力的なパートナーシップでこの計画を実施します。(中略)私たちの惑星を癒し、保護することを決意しています。私たちは、世界を持続可能で回復力のある道へとシフトするために、緊急に必要な大胆で変革的なステップを踏み出すことを決意しています。
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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