なんにせよ、固定観念を変えるのは難しい。特にゴルフの場合は様々な固定観念、換言すれば「レッテル」を貼られ敬遠されてきたフシもある。
ゴルフは「高い」「ダサい」「おやじのスポーツ」といったところか。「ダサい・おやじ」はタイガー・ウッズや石川遼の登場で払拭された印象もあるのだが。
もうひとつ、「ゴルフ=クルマ」という思い込みもある。特に若者世代でクルマ離れが加速する中、「クルマがないとゴルフへ行けない」は、参入障壁のひとつといえるだろう。
「これを払拭したいと考えました。ゴルフには必ずしもクルマが必要ではありません。電車で行けることを訴求して、市場の活性化を図ります」
そう話すのは楽天ゴルフ事業部の米本靖氏。同社は楽天GORAでコースのネット予約を展開中だが、収益源は1回数百円の手数料。そのため予約数を増やすことがビジネスのカギで、様々な企画を考えている。今回の「電車でゴルフ」もそのひとつだ。
米本氏によれば、企画会議はこんな具合なのだという。
「企画は四半期ごとにアイデアを出して、まずはエリアでの可能性を探ります。各地区の営業担当から情報を集め、地域性に合った需要を掘り起こす作業ですね。で、その地域で企画が成功したら、今度は全国展開できるかを検討する。今回の『電車でゴルフ』もそのような手順を踏んでいます」
過去の成功企画は3つだという。ゴルフ熱が高い層に向けた「1人予約」は、ゴルフ仲間を集める手間が面倒なことから、1人でも気軽に予約できることを狙ったもの。
これとは別に楽天限定のサービスが受けられる「イチオシ」や、初心者同伴でプレーすると特典が得られる「楽ゴルプラン」もあり、いずれも立ち上げから利用者を伸ばしているのだとか。
「その際、後ろ盾になるのが楽天の総合力です。当社は『楽天経済圏』の拡張を目指していて、楽天カードやポイントシステム、他のサービスとの連動でグループ内の交流を深め、消費者の囲い込みを図っているのです。むろん、ゴルフ事業の展開もこれと無縁ではありません」
そのような流れで本腰を入れるのが「電車でゴルフ」。交通渋滞による余計なストレスも解消できると強調する。
<h2>最初は栃木県の活性化策</h2>
この企画はどのような経緯で立ち上がったのか。米本氏の説明を聞いてみよう。
「そもそもこの企画は、栃木県の活性化策を論じる過程で生まれました。栃木は全国で一番倶楽部バスの運行が多いのですが、地元メンバーの利用が大半だった。それではもったいないですし、電車を使って東京から送客すれば需要はあると考えたのです」
東京駅から宇都宮駅まで新幹線で1時間弱。浅草からは東武線も運行している。そのあたりが栃木県に注目した理由だが、視野を関東全域に向けてみると電車網が広がっている。
そこで各エリアの担当者が1都7県(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨、静岡県)の状況を調べ、「電車でゴルフ」に最適な約200コースを選定した。
「若者のクルマ離れや、そもそも自動車は渋滞に巻き込まれるなど、ゴルフ場はアクセス面の問題を抱えています。
『電車でゴルフ』の利便性を感じてもらえれば需要が期待でき、『プレー後のビール』も楽しめる。ゴルフ場にとってレストラン収益は大事ですが、これに寄与できる点もアピールして賛同コースを増やしたい」
「電車でゴルフ」は、他の企画との相性もよさそうだ。往復の車両を借り切った「ゴルコン電車」や、宅配業者と提携した送料の割引。初心者に優しいクラブセットをゴルフ場へ直送するなど、ゴルフへの敷居を下げられる。
<h2>初心者用の推奨クラブを直送</h2>
岡山県のゴルフ専門店、プロツアースポーツが「電車でゴルフ」に興味を示す。同社は試打クラブのレンタル事業「クラブステーション」を運営しており、最新モデルを借りられる。ドライバー3本を3泊4日、送料込みで4000円などが人気だという。
「実は数年前、別件で楽天に営業したことがありますが、取引には至りませんでした」
と前置きして、草野行浩社長がこう続ける。
「『電車でゴルフ』は面白そうな企画ですね。初心者に最適なクラブをこちらで用意して貸し出すなど、提携の余地はあると思います。活性化に一役買えるかもしれません」
運行時間が世界一正確な日本の電車。ネットの路線情報で最短アクセスがわかるなど「電車でゴルフ」の下地は整っている。これに他社との提携が加われば、様々な企画を立てられそう。
ただ、前出の米本氏によれば、
「実は専任の担当者は1名で、現状は環境の整備に注力している段階です。派生するサービスは今後の検討課題ですが、ニーズがあればレンタル会社等との連携も模索したいですね」
まずは「ゴルフ=クルマ」の固定観念を払拭して、利用者を増やすことが先決とか。
これとは別に、首都圏に20店舗を運営する有賀園ゴルフは今夏、レンタカー事業に参入する。ゴルフショップの駐車場は空きスペースが多く、これを有効利用すると同時に、試打クラブを提供するなど「手ぶらでゴルフ」も提案する。
ゴルフには多くのハードルがあるが、最たるものが「足の問題」。有賀園と楽天は異なる手法でこれを解決しようと考えた。成功すれば他社の追随もありそうで、そのような連鎖がゴルフの敷居を下げていく。
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