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  • 月刊GEW12月号 「飛ばないボール」ゴルフ市場への影響は如何に?

    ハッシュタグ「社会生活基本調査」記事一覧

    ゴルフ産業は、コロナ禍による需要増に恵まれた。他の多くの産業が塗炭の苦しみを味わう中、数少ない好況を謳歌しただけに、今後に向けて正確な長期予測が必要になる。山高ければ谷深し・・・・。そんなシナリオもあながち否定できない。 前号では〈表1〉の前提条件により、4種類のゴルフ将来需要計算結果〈グラフ1〉を示した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table1.jpg" alt="" width="788" height="400" class="size-full wp-image-75766" /> 表1 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="788" height="707" class="size-full wp-image-75749" /> グラフ1 楽観的なシナリオ3では、コロナ後の参加率、活動率、加齢係数が今後も継続するとした前提条件であり需要は増加し続ける。最も可能性が高いのは、コロナによる影響が時間と共に減衰するとしたシナリオ2だろう。 シナリオ1、2ともに2035年のゴルフ需要量は対2016年比▲34%減、対2020年比▲35%減となる。この予測に対して読者諸兄から「驚かすな。15年先が予測できるものか!」とお叱りを頂くかもしれない。しかし前号で説明したように、 ・ゴルフ需要公理(将来対象人口×将来参加率×将来活動率) ・年齢別将来人口予測(国立社会保障・人口問題研究所) ・参加率、活動率変動モデル(2006年~2021年社会生活基本調査実績値による) ・5歳間隔同一年齢集団別の計算による計算結果である。年齢別将来参加率、活動率は社会生活基本調査過去の年齢別データから導かれた「ゴルフ需要変化法則」に基づく。  論理的な将来予測には、これ以外の手法は考えられない。予測結果の年齢別ゴルフ需要量推移を〈グラフ2〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph2.jpg" alt="" width="788" height="724" class="size-full wp-image-75750" /> グラフ2 なぜ需要が減少し続けるか? 将来の需要が減少する原因は変動モデル〈表2〉にある。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table2.jpg" alt="" width="788" height="1598" class="size-full wp-image-75768" /> 表2 このモデルは、 ・ゴルフ人口は20~29歳に最大となる(参加率1・0以上) ・30歳以後、ゴルフ人口は5年間に20%のペースで減少する ・存続したゴルフ人口は30歳以後5年間に20%のペースでプレー回数を増加させる。  以上を端的に示している。〈グラフ3〉それに加えてゴルフ誕生人口年齢の20~29歳人口は〈グラフ4〉のようにゴルフ対象人口の合計よりも大きく減少する。  以上によりゴルフ需要は年々減少し続ける計算結果となる。勿論20~29歳以外でゴルフを始める人数は存在するが、同一年齢全体の参加率加齢係数に影響するボリュームではない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph3.jpg" alt="" width="788" height="739" class="size-full wp-image-75751" /> グラフ3 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph4.jpg" alt="" width="788" height="710" class="size-full wp-image-75752" /> グラフ4 <h2>変動モデルはゴルフ文化の本質を体現する</h2> 変動モデル(ゴルファー加齢による参加率、活動率変化の法則性)は意図的に形成されたものではない。日本社会にゴルフが普及した結果であり「するスポーツ」としてのゴルフの特質が強く反映している。日本社会が大きく変動しない限りこの変動モデルは今後も持続するだろう。 <h2>変動モデル他スポーツ比較</h2> 比較のため野球、サッカー、テニスの変動モデルを社会生活基本調査より作成した。〈グラフ5〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-1.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75753" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-2.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75754" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-3.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75755" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-4.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75756" /> グラフ5 それぞれ明確に異なっている。野球、サッカー参加人口は10~14歳で最大となり「学校スポーツ」の特徴を示す。テニスの場合は、 ・20~29歳の参加率加齢係数がゴルフより小さい ・参加率、活動率ともに年齢による落ち込みがない。  ゴルフは将来需要減少が不可避としても日本社会で最大、唯一無二の「生涯スポーツ」である。 <h2>ゴルフ市場活性化とは変動モデル意図的改造</h2> ゴルフ産業界はこの需要変動の法則性を尊重、熟知して、市場活性化に当たらなければならない。 人口減少が不可避ならば、ゴルフ需要の増大には変動モデルの意図的な改造が必要となる。求められる改造ポイントはゴルフ市場活性化委員会発足のスローガン「始めよう、続けよう、もっとゴルフを!」にきっちり集約されている。〈グラフ6〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph6.jpg" alt="" width="788" height="789" class="size-full wp-image-75757" /> グラフ6 <h2>最重点とすべき「続けようゴルフ」</h2> ゴルファー誕生最大年齢である20~29歳人口は、全体ゴルフ対象人口以上に減少する。また70代まで増加し続ける活動率増加も今以上の増加は困難であろう。活性化策最重点は「ゴルフ参入後参加率低下の防止(続けようゴルフ)」に絞られる。 <h2>続けるゴルフアーの特質は何か</h2> 一度はコース、練習場を利用したが、その後中断、停止する顧客と、連続来場し続け加齢と共に利用回数を増加させる顧客の相違点把握が重要である。そのためには年齢、所得、身体能力、健康状態、会員権の有無、到達平均スコアなど比較したい属性点は多くあるが、信頼できるデータがない。前号までも活用した「ゴルフ練習場複数施設2019年~2021年全来場者データ」を利用する。 その年の来場回数を横軸、翌年連続来場率(止めなかったゴルファー率)を縦軸とする〈グラフ7〉が得られる。 ・2020年、2021年間に殆ど差がない。 ・来場回数が増えるほど連続来場率が高くなり、12回を超えると80%以上で安定する。  練習場利用回数はゴルフ熱中度の良い指標である。その年12回以上の来場顧客を安定ゴルファー、12回未満を不安定ゴルファーと定義する。各年の安定・不安定ゴルファー比率推移を〈グラフ8〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph8-1.jpg" alt="" width="788" height="638" class="size-full wp-image-75758" /> グラフ8 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph8-2.jpg" alt="" width="788" height="638" class="size-full wp-image-75759" /> グラフ8 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph8-3.jpg" alt="" width="788" height="638" class="size-full wp-image-75760" /> グラフ8 ・安定、不安定比率ともに変化は小さい。 ・その年実動顧客の25%に過ぎない安定ゴルファーに来場数の80%を依存している。  ゴルフ産業の業績は安定ゴルファー量で決定し、「ゴルフ需要増加対策の『続けようゴルフ』」とは「不安定ゴルファー安定化対策」である。 <h2>安定ゴルファーの特質、要件</h2> ゴルフ界には安定ゴルファーの特質、要件の解明が重要課題だがデータは不足している。 ゴルフ練習場の複数施設全来場者データから得られる2021年安定ゴルファーの特徴を〈グラフ9、10、11〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph9.jpg" alt="" width="788" height="696" class="size-full wp-image-75761" /> グラフ9 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph10.jpg" alt="" width="788" height="1027" class="size-full wp-image-75762" /> グラフ10 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph11.jpg" alt="" width="788" height="696" class="size-full wp-image-75763" /> グラフ11 ・顧客数、来場回数ともにボリュームゾーンは40~59歳にある。 ・60回以上来場する来場量が圧倒的に大きい。安定ゴルファーを12回以上ひとまとめではなく階層を細分化した分析が必要である。 ・60回以上の階層でも来場回数の中心は40~59歳である。 <h2>コロナ後の安定化率</h2> 「ゴルフ参入後参加率低下の防止(続けようゴルフ)」とは前年休眠ゴルファー、不安定ゴルファーの翌年安定化にあることが立証された。コロナ前後3ヶ年の安定化率は〈表3〉である。「現在安定化率」は14%しかない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table3.jpg" alt="" width="788" height="988" class="size-full wp-image-75769" /> 表3 安定化率向上はゴルフ産業の使命、生命線といえるため、安定化率向上にあらゆる施策を集中させなければならない。たとえばゴルフスクールもその収益だけではなく、安定化率向上の貢献度で判断されるべきだろう。 「現在の安定化率14%」は、まだ不安定な潜在安定ゴルファーが大量に存在することを意味しており、「ゴルフ需要増加対策(続けようゴルフ)」には1143万人の大きな未開拓分野が存在する。 <h2>安定ゴルファー人口量推定</h2> 実動顧客とは全顧客(コロナ前後3年間に一度でも来場した全顧客)から休眠顧客を除いた、その年実際に来場した顧客数である。社会生活基本調査をはじめ各種ゴルフ調査のゴルフ人口は、すべてこの実動顧客数を調査している。強引であるが複数ゴルフ練習場実績から全ゴルフ人口中の安定ゴルファー数、安定化人数を推計した〈グラフ12〉。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph12.jpg" alt="" width="788" height="867" class="size-full wp-image-75764" /> グラフ12 ゴルフ界、ゴルフ産業界は、 ・2021年ゴルフ人口1300万人 ・安定ゴルファー188万人 ・不安定ゴルファー585万人 ・休眠ゴルファー527万人  であることをしっかりと共有すべきである。 <h2>不安定ゴルファーの細分化</h2> 安定化率向上は対象ゴルファーを細分化し、それぞれ最適な対策が必要である。筆者は、 ・1回のみ来場(ジャストビギナー) ・2~4回来場(コース未体験、ラウンド準備中) ・5~11回来場(コース体験済み、楽しさ未体験)  に三分割すべきだと考える。その推計人口と需要依存率を〈表4〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table4.jpg" alt="" width="788" height="459" class="size-full wp-image-75767" /> 表4 ジャストビギナー集団のほとんどはクラブセットも未購入であり、翌年68%消滅する。この金の卵の再来場を誘導する強力な対策が求められる。 コース未体験、ラウンド準備中の集団には、ハッピーなコースデビューへのサポートが必要である。 以上の2集団に対してゴルフ界はゴルフ練習場でしか関与できない。日本のゴルフの将来、安定ゴルファー化には、ゴルフ練習場の役割が極めて重要である。 <h2>不足する必要データ</h2> 今回の連載でゴルフ界・ゴルフ産業界が直面している問題点をある程度定量的に明示できた。それは同時に「するスポーツゴルフ」の定性・本質に迫るものでもあった。いやしくも文化にビジネスとして携わるならば定性的判断が重要だが、そのためにはどうしても統計データが必要である。 ひるがえってゴルフ界・ゴルフ産業界の統計データは誠に心もとない。まず自助努力によるデータが殆ど無い。連載第1回で提示した調査結果はスポーツ全般に対する比較調査でありゴルファーを母集団とする調査ではない。最も重要な年齢別参加率、活動率にしてもゴルフ界がゴルフフィールドで直接ゴルファー対象に調査すれば小さな費用で精度の高いデータが得られる。そのような理念、覚悟、体制はいまだかつて存在しない。連載を終えるにあたり不足するデータを列挙する。 ・社会生活基本調査5年間隔を補完する毎年データ ・ゴルフ人口定義拡大(少なくとも過去3年間コース、練習場利用者) ・ゴルフ人口の定義拡大による、単年だけではない複数年間変化分析による安定化率調査 ・利用税コース利用者数に並置できる練習場利用者数大規模調査 ・社会生活基本調査以上に精度の高い年齢別参加率、活動率調査 ・年齢、所得、身体能力、健康状態、会員権の有無、到達平均スコアなど安定ゴルファー実態調査 データはないが「安定ゴルファーイコールシングルプレイヤー」でないことは誰もが確信できる。つまり「競技力の強化」だけでは「するスポーツの文化」は開花しない。ゴルフ関連団体は、このことを肝に銘じるべきである。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年02月10日
    総務省が5年に一度、20万人規模の調査をまとめる「社会生活基本調査」が今年8月、発表された。これにより「コロナ禍におけるゴルフ人口の変化」を読み解く記事の第2弾をお届けする。 前号の第1弾では、2016年との比較でゴルフ人口13%減、ゴルフ行動日数16%増という、異常な凸凹の実態を明かした。本稿では信頼に値する各種調査との比較検証で、何がわかり、何がわからないかを精査しよう。 2021年社会生活基本調査を読むゴルフデータ間の比較検証 前号では、最新の「社会生活基本調査」から次の2点を確認した。 ① ゴルフ人口▲13%減少 ② 年間平均ゴルフ行動日数+16%増加 ゴルフ人口は大幅に減ったものの、プレー需要は大幅に伸びたことが確認された。この点は非常に重要なポイントである。 <h2>社会生活基本調査長期推移の確認</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph1.jpg" alt="" width="788" height="821" class="aligncenter size-full wp-image-74190" /> 2011年から2021年まで、3次調査の変化率を〈グラフ1〉とした。 最新の2021年の変化率は、2011年と良く似ている。言うまでもない。2011年は東日本大震災の発生により、ゴルフ人口▲9%減少、平均行動日数+14%増と大きく変化したが、その5年後の2016年は小さな変化量におさまっている。しかし、2016年のゴルフ人口量そのものは、その10年前の2006年レベルには回復していない。つまり、震災の影響が緩和しても、長期減少トレンドが働いたのである。 今回、2021年の変化原因がコロナ禍にあることは間違いない。コロナ禍による需要増と、長期トレンドによる人口減の推移を、正確に分離・把握して、将来に備えなければならないことは自明である。 <strong>他スポーツとの比較</strong> 社会生活基本調査は、ゴルフだけの調査ではないため、他のスポーツ市場へのコロナ禍の影響も確認できる。「プレー費用」「民間営利スポーツ施設依存度」で、ゴルフと似たテニス、ボウリング、スキーの状況を〈グラフ2〉に表した。ここから明らかなのは、他スポーツでも参加人口はゴルフより大きく減少している。 <strong>ゴルフ市場他データとの比較</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/2211yamagishi_table1.jpg" alt="" width="2146" height="2113" class="size-full wp-image-74254" /> 表1 社会生活基本調査と比較検証できるゴルフ関連データを〈表1〉とした。 これらの「コロナ後の変化」を社会生活基本調査と比較し、コロナ後の変化をより正確に把握したい。 〈表1〉はどれも調査主体、調査方法が異なるため、社会生活基本調査と単純に比較できない。調査につきものの「誤差」は、調査方法、調査規模により変化するからである。〈表1〉は、 ・ 全数調査 ・ 標本調査 ・ 定点調査 に大別される。標本調査はさらに、 ・ 統計標本調査 ・ ネット標本調査 に区別される。以下、調査に関わる基礎知識を整理しよう。 <strong>全数調査とは</strong> 母集団(知りたい集団)に属するすべての個を調査し、母集団の全体量、平均値等をつかむ。誤差はないが時間、コストがかかる。 全地域・全住民をもれなく調査する「国勢調査」は政策、学術研究の根幹である。統治国家の必須条件であり莫大な調査費用をいとわない。その点「ゴルフ場利用税」から見たコース利用者調査は、業界がもつ異色の全数調査といえる。費用負担なく、すべてのコース、すべての利用者が調査されるもので、ゴルフ界、ゴルフ産業界にとっては市場を把握するうえで幸運な調査データである。ゴルフ振興のため、業界は利用税の撤廃運動を行っているが、仮にこれがなくなれば、ゴルフ界は貴重なデータを失ってしまう。筆者にとってはある種、皮肉な運動に思える。例:①、④ <strong>標本調査とは</strong> 母集団から可能なかぎり、偏りなく選び出した少数標本を調査し、その全体量、平均値から母集団を推定する。時間、コストを節約できるが誤差は避けられない。標本数が多いほど誤差は小さくなる。例:②、⑤ <strong>定点調査とは</strong> 〈表2〉では「特定サービス産業動態調査」が該当する。一定のゴルフコース、ゴルフ練習場の来場者数を定期的に継続調査するもの。全国来場者数(母集団)の推計は不可能だが、毎月の変化量が迅速に観測できる。〈表2〉はその1ホール、1打席あたりの来場者数で、対象調査施設の変動が除去されている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/2211yamagishi_table2.jpg" alt="" width="1326" height="816" class="size-full wp-image-74255" /> 表2 <strong>統計標本調査とは</strong> 母集団から可能なかぎり偏りなく標本を選び出す調査(無差別抽出)。標本は母集団の精巧なミニチュアであり、誤差の範囲(標準誤差)を統計学的に明示できる。例:〈表2〉では社会生活基本調査のみ。 <strong>ネット標本調査とは</strong> 母集団は、知りたい集団そのものではない。民間調査会社があらかじめ募集登録を受けた「ネット調査協力者集団」(通常2、3百万人)である。そこから知りたい集団の構成率に合わせて標本を割当てる。ゴルフ参加率調査の場合、年齢・地域を国勢調査の構成率に合わせて、ネット調査協力者集団に割り当てて標本とする。標本は母集団の精巧なミニチュアとは言い難い。時間、コストが統計標本調査の10分の1以下に節約できるが、誤差は避けられない。また標準誤差も明示できない。 <strong>特定ゴルフ練習場来場実績</strong> ⑦はカードシステムを導入した東海、近畿2施設の2019年~2021年の全来場者データである。2019年以降、すべての顧客来場者の「連続来場経過」が記録されており、コロナ禍の影響が正確に分析集計できる。たった2施設であり、複数施設をかけもちする利用者による誤差も存在するが、多角的な分類集計結果が正確に得られる。 <strong>母集団に対する標本率</strong> ゴルフ人口(ゴルフ参加率)を得るには現実的に標本調査しかない。〈表2〉にゴルフ人口を比較検証できる三標本調査の特徴を整理した。 ・ 母集団 ・ 標本数(調査規模) ・ 標本抽出方法 ・ 捕捉ゴルファー数 ・ 母集団に対する標本率 により、調査結果の信頼性が決まる。この特性を常に留意して比較検証したい。この中で社会生活基本調査の信頼性が圧倒的に高いことが、直感的に理解できる。 ただし、社会生活基本調査の欠点は、調査が5年間隔であること。本稿のテーマはコロナ禍の影響分析にある。社会生活基本調査では2016年対2021年を比較するしかない。この間、必要なコロナ直前の2019年データについては「スポーツ庁調査」と「レジャー白書」でこの点を補いたい。 <strong>社会生活基本調査標準誤差</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph3.jpg" alt="" width="788" height="684" class="size-full wp-image-74192" /> グラフ3 厳密な統計調査である社会生活基本調査は「標準誤差」も公表されている。年齢別ゴルフ人口の標準誤差を〈グラフ3〉とした。標準誤差の意味や計算式は難解だが、標準誤差が大きいほど母集団の真の値から外れる可能性を示す。 留意すべきは全体ゴルフ人口(全年齢)が最も正確であり、各年代別ゴルフ人口は段違いに不正確であることだ。その理由は、各年代別のゴルフ参加有効回答数が、母集団各年代別人口に比例しないためである。 このことは、最も信頼すべき社会生活基本調査の結果も、年齢別、地域別、行動頻度別等のゴルフ人口詳細を用いる場合に、注意が必要なことを示している。〈表1〉すべての標本調査で最も信頼度が高いのは、ゴルフ参加率すなわちゴルフ人口である。 <strong>他データとの検証ポイント</strong> 比較検証は以下の4点に絞りたい。 ① ゴルフ人口(ゴルフ参加率) ② 都市階級別ゴルフ人口 ③ 年代別ゴルフ人口 ④ ゴルフ活動率(平均利用回数) ⑤ ゴルフ行動量(コース利用者数+練習場利用者数) <strong>ゴルフ人口(ゴルフ参加率)</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph4.jpg" alt="" width="788" height="696" class="size-full wp-image-74196" /> グラフ4 三標本調査の「ゴルフ人口変化対2016年」を〈グラフ4〉、「コロナ後の変化」を〈グラフ5〉とした。社会生活基本調査のゴルフ人口▲13%減は、スポーツ庁のコロナ後と一致する。コロナによるゴルフ人口の減少は間違いない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph5.jpg" alt="" width="788" height="727" class="size-full wp-image-74197" /> グラフ5<br /> <strong>都市階級別ゴルフ人口</strong> 都市階級別ゴルフ参加人口の変化はスポーツ庁の調査と比較できる。〈グラフ6、7、8〉とした。 社会生活基本調査に表れた「大都市」の+10%増はスポーツ庁には確認されない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph6.jpg" alt="" width="788" height="813" class="size-full wp-image-74198" /> グラフ6 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph7.jpg" alt="" width="788" height="618" class="size-full wp-image-74199" /> グラフ7 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph8.jpg" alt="" width="788" height="618" class="size-full wp-image-74200" /> グラフ8 <strong>年代別ゴルフ人口</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/2211yamagishi_table3.jpg" alt="" width="1389" height="703" class="size-full wp-image-74256" /> 表3 「コロナ後に若い人が増えた」は、ゴルフ界共通の認識であり、これにより「全体ゴルフ人口も増えた」と考えがちである。ところが筆者はここに違和感を覚えるため、解明する必要があると考える。まず、年代別ゴルフ人口の変化を調査データで確認しよう。 社会生活基本調査、スポーツ庁調査のコース年代別人口変化を〈グラフ9〉、練習場の変化を〈グラフ10〉とした。レジャー白書の調査は年代別の有効回答数が少ないため、本稿では割愛する。 ・ おおまかな傾向として40代以上はコロナにより参加人口減少が読み取れる。 ・ コロナ後増加したはずの20、30代増加が少ない。 ・ スポーツ庁の10代コロナ後急増は〈表3〉のように有効回答数が少なく信頼度が低い。 以上の結論として「年代別人口変化」は、〈表1〉の現有標本調査では判断しがたい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph9.jpg" alt="" width="788" height="561" class="size-full wp-image-74205" /> グラフ9 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph10.jpg" alt="" width="788" height="561" class="size-full wp-image-74206" /> グラフ10 <strong>ゴルフ活動率(平均利用回数)</strong> 2021年社会生活基本調査は「ゴルフ活動率」が急増した。しかし、これを他の標本調査で検証するのは年代別参加人口の検証以上に困難である。標本調査では直近1年間でのゴルフ参加の「有無」を最初に問う。参加したか、しないかの二択であり、誤回答はない。 活動率は、参加回答者に、さらにそのスポーツの参加回数を求める。それも参加回数そのものではなく、参加回数を階層化した選択肢から選ばせる。複数スポーツの参加者は、直近1年間の回数をそれぞれ集計し回答しなければならない。そのため全体平均回数は、各参加階層選択肢の「中央値」を設定し計算される。まして社会生活基本調査の場合は「コース回数」と「練習場回数」を合算しなければならないため、回答の「記入誤差」がどうしても大きくなる調査項目である。 標本数が小さい場合は、平均回数の信頼性はさらに低くなる。コロナ後の社会生活基本調査の平均活動回数増加(対2016年)の他調査比較・検証は、不可能である。 <strong>ゴルフ行動量(利用回数)</strong> 年代別参加人口、平均利用回数の検証は困難だが、全国コース、練習場利用回数のコロナ後の変化は確認しておきたい。〈表1〉の特定サービス産業動態調査、利用税から見たコース延べ利用者は、利用数そのものである。 対2016年、コロナ後の変化を〈グラフ11、12〉とした。コロナ後の変化は良く一致している。コース利用者は+3%増、練習場利用者は+18%増加した。カードシステムを導入する練習場は大都市に立地する。特定サービス産業動態調査の対象練習場が大都会ならば、コロナ後の大都市ではゴルフ練習場利用者が+18%増加と断定して良い。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph11.jpg" alt="" width="788" height="1015" class="size-full wp-image-74207" /> グラフ11 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph12.jpg" alt="" width="788" height="951" class="size-full wp-image-74208" /> グラフ12 <h2>なぜコロナ後コース、練習場利用者数増加に大差が生じる?</h2> コロナ後のコース利用者数は、 ・ 全数調査利用税+3% ・ 特定サービス産業動態調査+4% これに対し練習場利用者は、 ・ 特定サービス産業動態調査+18% ・ カードシステム練習場+18% である。コース、練習場利用者の変化に大差があることは間違いない。次号では、このギャップについての解明にも挑戦する。 最新の「社会生活基本調査」で明らかになった、コロナ後のゴルフ人口▲13%減を、ゴルフ界、ゴルフ産業界は真摯に受容し、将来予測をしなければならない。しかし、そのために必要なゴルフ人口・ゴルフ需要の詳細は、社会生活基本調査では十分でなく、他の標本調査でも補完出来ないことを本稿で確認した。 次回は特定のゴルフ練習場におけるカードシステムのデータと比較して、業界に今、何が必要なのかを考える。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月10日
    総務省が5年に一度行う「社会生活基本調査」の結果が発表された。調査件数20万人、有効回収数は17万人を超えるもので、国民の生活様態を大規模かつ精緻に調べた統計として類例を見ない価値をもつ。ゴルフ人口に関わる調査結果も含まれることから、市場研究者垂涎のデータでもある。 前回は2016年だったから、この間に生じたコロナ禍の影響も比較・考察でき、他の信頼度が高い調査と組み合わせることで「コロナとゴルフ人口」の関係が深掘りできる。ゴルフ市場研究の第一人者・山岸勝信氏の短期集中連載で、ゴルフ産業界の課題を丁寧に読み解く。 さる8月31日に「2021年社会生活基本調査」の結果が公表された。これは総務省が5年に一度行う国の基幹調査であり、「国勢調査」の体制による厳格な無差別抽出で20万サンプルという大規模な調査である。むろん、ゴルフ界にとっても最重要な統計データといえる。なぜなら、他の調査とは比較にならない最高精度で、ゴルフの参加人口が得られるからだ。 前回の調査は2016年であり、5年に一度の今回と比較することにより、コロナ禍によるゴルフ市場の変化を精査できる。業界では「コロナ特需」の影響を肌感覚で語られたり、簡易的な調査で断片的な動きが公表されてもいるが、「社会生活基本調査」の内容に、その他調査の中身を組み合わせることで、精度の高い考察が可能となる。本稿では、その作業を丁寧に積み上げていきたい。 まず、ゴルフ人口は「ゴルフ対象人口×ゴルフ参加率」の計算により得られることを強調したい。 「ゴルフ対象人口」は国勢調査により正確に得られるため、ゴルフ人口調査は「ゴルフ参加率調査」と同義になる。2020年の国勢調査と2021年の社会生活基本調査から、次のことが考察できる。 ・ゴルフ需要の長期トレンドを確認して将来の予測を立てる。 ・2020年に突如現れたコロナ禍による需要急増の詳細と持続性。  以上を把握することが本稿の目的となる。 <h3>(1)ゴルフ需要長期トレンドの確認</h3> 「社会生活基本調査」の主要集計値から、以下のことを確認したい。 1、ゴルフ対象人口 2、ゴルフ参加率 3、ゴルフ参加人口 4、年間平均ゴルフ行動日数(ゴルフ活動率) 5、ゴルフ行動量(参加人口×行動日数 コースと練習場の合計利用回数・ゴルフ産業需要量に相当する) 以上の2011年、2016年、2021年における調査の「三次推移」を〈表1〉と〈グラフ1〉に表した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="788" height="694" class="size-full wp-image-73923" /> グラフ1 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/hyou1.jpg" alt="" width="788" height="340" class="size-full wp-image-73933" /> 表1 ゴルフ対象人口について、筆者は現状10~79歳とするのが妥当だと考えているが、この数字はゴルフ需要の長期トレンドをもっとも強く左右する因子である。 〈グラフ1〉に2011年と2021年のゴルフ対象人口を結ぶ直線を「ゴルフ対象人口傾向線」として記載した。すると、2021年の社会生活基本調査における「結果変動」は、傾向線との乖離程度により、 ・長期トレンドに沿った必然的な変化なのか? ・何か他の構造的変動が起きていないか? が判断できる。具体的には、2021年のゴルフ対象人口は2011年比▲3%減少となる。これに対して、 1)ゴルフ参加率、ゴルフ人口は▲13%減少(ゴルフ人口はゴルフ参加率に連動する) 2)年間平均ゴルフ行動日数は+16%増加 という結果が得られた。この二点は長期トレンドを超えた大きな変化であり、 「2021年社会生活基本調査はゴルフ参加率の異常な減少、ゴルフ活動率の異常な増加を示した」 と言える。 ゴルフ産業需要量を表す「ゴルフ行動量(ゴルフ産業需要量)」は、参加率の減少を活動率の増加で補い、長期トレンド上に留まった。ゴルフ界やゴルフ産業界は、これに安堵することなく、異常変動の二点について、それが「今後も継続し、将来予測を修正する必要があるか」を解明しなければならない。 現場感覚はデータと一致 <h3>(2)コロナ禍による需要急増を把握する</h3> ゴルフ産業界の現場皮膚感覚では、「コロナ禍による需要増は若者を中心に2桁増した」が共通認識となっており、ひとつの定説として業界に定着した印象がある。そのため筆者が提示した「ゴルフ人口13%減少・2021社会生活基本調査ゴルフ行動量対2016年+1%増加」について、違和感をいだき、社会生活基本調査の信頼性に疑問を覚える読者がいても当然だろう。この点をクリアにするために「コロナ禍需要増がどこにどれだけ発生し、今後も持続するのか」は、どうしても解明しなければならない。 その前提として、社会生活基本調査以上に正確な統計調査を実施するためには、莫大な費用を要し、ましてゴルフ界単独でより正確な調査を行うことは、まず不可能であることを付言したい。つまり今後も、ゴルフ人口を推計するには社会生活基本調査を受容するしかないわけだ。 そこで次に重要なことは、社会生活基本調査と他のゴルフ関連調査を比較検証することになる。次月号では他のゴルフ関連調査を活用して可能な限り検証したいが、その前に本稿では、社会生活基本調査の年齢、頻度、地域別等の詳細データを分析して、コロナ禍による需要増を確認する。 前述のように、社会生活基本調査は5年毎の実施であるため、コロナ禍直前の2019年データは存在しない。前回2016年調査の結果と比較して、コロナ禍による需要急増の実態を把握しよう。 1、年齢別ゴルフ行動量 2016年、2021年の社会生活基本調査におけるゴルフ行動量により、「年齢別ゴルフ行動量」の増減量と増減率を〈グラフ2、3〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph2.jpg" alt="" width="788" height="940" class="size-full wp-image-73924" /> グラフ2 「増減量」では若者20~29歳が大きく増加しているが、70~74歳をはじめ他の世代も増加したことがわかる。また65~69歳のように、最大減少した世代も存在する。 そのため「現場感覚」では、そもそも少なかった20~29歳の来場増加が圧倒的に目立ったはずだ。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph3.jpg" alt="グラフ3" width="788" height="940" class="size-full wp-image-73926" /> グラフ3 その一方で、来場しなくなった層は現場では見えない。「年齢別ゴルフ行動量」の変化は現場感覚と一致しており、社会生活基本調査はコロナ禍における需要増の存在を証明している。 1、頻度別ゴルフ行動量 社会生活基本調査での「プレー頻度別行動量」の変化を〈グラフ4〉に表した。年間40回(コース、練習場の合計利用回数)を境に、低利用の回数減少・高利用の回数増加と、対照的に変化したことがわかる。つまりコロナ禍は、ヘビーゴルファーのプレー回数を増やし、ライトゴルファーを減らしたのである。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph4.jpg" alt="グラフ4" width="788" height="881" class="size-full wp-image-73927" /> グラフ4 2、地域別ゴルフ行動量 社会生活基本調査には県別、地域別のデータがある。そのうち「都市階級別ゴルフ行動量」の増減を〈グラフ5〉とした。都市階級の定義は、 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph5.jpg" alt="" width="788" height="1196" class="size-full wp-image-73929" /> グラフ5 大都市 東京都区部、政令指定都市 中都市 人口30万人以上 小都市A 人口30万人未満10万人以上 小都市B 人口10万人未満の市、町、村 である。興味深いのは、行動量の変化は大都市で圧倒的に増加し、中都市、小都市は逆に減少したことである。コロナ禍の需要急増は、大都市中心に起きたと考えられる。 3、ゴルフ統計他データとの検証 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/hyou2.jpg" alt="" width="788" height="497" class="size-full wp-image-73934" /> 表2 社会生活基本調査と比較検証可能な統計データを〈表2〉とした。本稿では比較するデータを厳選しているが、未掲載の調査にはSSS笹川財団によるスポーツライフデータがある。統計的に正しい調査方法であり、コース、練習場が別途に調査された貴重なデータだが、調査実施が定期的ではないため割愛した。これらとの詳しい比較検証は次号に譲るとして、ゴルフ行動量データが連続集計されている調査として、 ・ゴルフ場利用税から見た延べコース利用者数 一般社団法人 日本ゴルフ場経営者協会 ・特定サービス産業動態調査 ゴルフコース・ゴルフ練習場 経産省サービス産業調査室  このふたつの調査結果と、社会生活基本調査の「ゴルフ行動量」を比較してみよう。 <h2>一致点と非一致点の考察</h2> 利用税から見た延べコース利用者数は泣く子も黙る全数調査であり、一桁台までの人数が開示されるなど国勢調査人口と同等の重みがある。また、非課税利用者(70歳以上が大半を占め一部18歳未満等)の数が明確なため、70歳以上の利用者数変化が把握できることも貴重である。日本ゴルフ場経営者協会の協力により、2021年の社会生活基本調査対象期間(2020年11月~2021年10月)のデータを得た。 また、「特定サービス産業動態調査」は、コースと練習場が分離されたデータで、長期月次データが公開されている。複数コース・練習場の定点観測と推定されるが、永い間に観測地点の入れ替えが生ずるため、毎月稼働ホール数、稼働打席数が開示されている。各月1ホール、1打席あたりの利用者数を計算した。こちらは社会生活基本調査の対象期間に合わせて11月~10月の合計を1年とした。 社会生活基本調査と利用税から見た延べコース利用者数及び、特定サービス産業動態調査の対2016年の増減率を〈グラフ6〉に表したのでご覧いただきたい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph6.jpg" alt="" width="788" height="650" class="size-full wp-image-73930" /> グラフ6 ここから得られるポイントは以下に集約されるだろう。 ・利用税からみたコース合計利用者の増減率103%は、社会生活基本調査におけるゴルフ行動量増減率101%と差異が2%しかない。 ・利用税70歳以上の非課税利用者増加率128%は〈グラフ3〉の年齢別行動量70~74歳121%と差異が7%しかない。 ・特定サービス産業動態調査コース利用者数の増加率は、社会生活基本調査、利用税から見た延べ利用者数の増加率を大きく超える。特定サービス産業動態調査の観測点が「大都市中心」に設定されているならば、その差は納得できる。 ・社会生活基本調査のゴルフ行動量は、コースだけでなく練習場も含む。コロナ禍による需要増が、特定サービス産業動態調査のように練習場の方が大きいとすれば、社会生活基本調査のゴルフ行動量は101%以下となり、利用税から見たコース合計利用者の増減率103%との差はもっと大きくなるはずである。 以上のように、社会生活基本調査は他のゴルフ関連統計データとある程度共通しているが、すべてすっきり一致してはいない。本稿のまとめとしては、 ●2021年社会生活基本調査は、長期トレンドから外れた異変が生じたことを示した。 ●2021年社会生活基本調査は、コロナ禍による需要増を反映している。 ●異変や需要増の詳細はある程度推定できるが、十分とは言えない。 以上、短期連載の初回として、国内最大規模の調査である「社会生活基本調査」の概要と、これをどのように考察し、位置づけるべきかを説明した。次号からは、比較検証可能な他データの特性を吟味しながら、詳細に迫っていくこととする。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月18日

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