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    ハッシュタグ「練習場経営塾」記事一覧

    製造業の標語でよく使われる5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)に「スマイル」を足して、6Sと称して設備の美化に努めます。「6S屋っていますか?」と尋ねると、多くの施設から「やっています!」という声が返ってきますが、そのレベルには大きな差があります。「これくらいでよし」という基準を作るのは、その施設の経営者やスタッフなので、基準によって清潔度は上下します。 私は営業時間中の清掃では徹底できないと考え、清掃員による営業時間外の清掃を行って年間約200万円を支出してきました。この額を必要経費と考えるかどうかは経営者の判断によります。 現場での「6S状況」をチェックするのが6Sパトロールです。フロントとインストラクターを組み合わせて2名1組となり、場内を巡回します。異なる目線の者が毎月交代で巡回するので、新たな気づきや指摘ができ、業務として行うので後輩も遠慮なく先輩に指摘できることなどが利点です。 月初のパトロールで指摘し、それを月末までに改善するというのが基本パターンです。指摘のポイントは①(お客様の目線で)清潔感を感じられるか?②(スタッフの目線で)使い勝手が良いか?③(経営者の目線で)無駄がないか?④(危険防止の観点で)危ない場所や危ない置き方がないか?の4点が挙げられます。「6S担当者」の仕事は、定期的な実施のサポートと指摘事項の改善促進です。 次にトラブル対応です。日々発生するトラブルに臨機応変かつ誠実に対応しなければならず、スタッフによって対応に差があってはいけません。そのため各種トラブルの「対応マニュアル」をA4サイズにまとめ、ハードカバーのケースに入れて個々に保存。トラブル発生時には関係するマニュアルを抜き取り、現場に持参して対応する方式が最も確実です。 最初は「停電時」の対応です。事前訓練としてブレーカーの位置と通電のための復帰手順を確認しておきます。ブレーカーが分散している場合は、どのブレーカーがどの系統なのかを配電盤の内側に図示しておきます。実際に停電したら外に出て、施設周辺をチェックすることが初期動作。自社だけなのか、周辺一帯の停電なのかを知るためで、復旧作業を行いつつ来場者に情報を伝えます。 多くの施設には無停電電源装置が組み込まれていますが、来場者には早めにカードを抜き取って頂きます。LEDライトはすぐに再点灯しますが、HID系ライトは再点灯に10分以上かかります。帰宅者には料金を払い戻すなど、お客様が損をしない措置も大切です。不測の事態に備えてサービス券の常備が必要ですが、無い場合は日付と金額を書いた手書きのカードでもOK。手早く渡します。 「駐車場での事故」は保険の対象外なので言動には注意が必要です。事故が起きたら所轄警察の交通課に連絡して出動を依頼し、保険適用に必要な事故の「受理番号」を取得します。受理番号の受け取りには当事者双方の立ち合いが求められるので、両者を警察到着まで引き留めます。迅速に対応するためにも交通課の電話番号はあらかじめ調べておきましょう。 警察の到着までは当事者に付き添うか、喫茶などで待機してもらいますが、事故に関するコメントはしないように注意します。 「急病人の発生」では、起き上がろうとするお客様が多いので、動かずその場にいてもらいます。床に寝た状態の場合はバスタオルなどをかぶせて体が冷えないようにし、周囲の視線を遮る工夫も必要。救急車の出動を要請したら、スタッフが練習場の入口に立って誘導、警報音を早めに止めてもらいます。救急車の出動要請と同時にご家族など関係者への連絡も必要です。周囲に知人がいない場合はスタッフが救急車に同乗します。同乗の際には携帯電話と治療費や帰りの交通費など現金が必要です。 心臓疾患などで救急車が来るまで待てない場合は、AEDを使用します。定期的な使用・作動訓練と電池の交換も念入りに。自販機メーカーがAED設置を支援してくれる場合もあるので、未整備の施設は相談してみましょう。 <h2>大切な「動産保険」</h2> 打席での「盗難や車上荒らし」は保険の対象外なので、言動には注意が必要です。駐車場への監視カメラの設置や車内に物を置かないなどの注意喚起も必須。クラブが当たったり打ったボールが跳ね返って人に当たる練習中の「打球事故」は、施設賠償保険もしくは第三者賠償保険などが適用されると思われがちですが、意外に保険対象外のケースがあります。事故が起きてからでは遅いので、早めに保険対象と「対象外」のケースを文書で保険代理店からもらっておくことをお勧めします。 担保されていない部分は新たに契約を結ぶなどで更新しましょう。レッスン中の生徒の打球事故は保険対象外のケースもあるので、契約内容を事前に必ず確認します。スクールの「運営主体」が練習場ではなく、レッスンプロ個人の場合でも、練習場の契約がそのまま適用されるかどうかなど、細部にわたる確認を強くお勧めします。 なお、インストラクターやフロントスタッフの事故を担保する労働保険は「高額」なため、未契約の施設が多いと思います。よってクラブで叩かれるなどの事故には細心の注意が必要です。 ボールの「飛び出し事故」は一般的に保険の対象となりますが、被害者が興奮している場合も多いので、冷静になって被害者の話を聞くことが大切です。相手の言い分をよく聞き、持ち帰って保険会社と相談して、できるだけ早く回答します。同時に、飛び出した原因を調査して再発防止に努めます。私はクレームのついた翌早朝にネット点検を行うことと、クレームのついたお宅へのお中元とお歳暮を欠かしませんでした。これらによって感情的なもつれが少しは収まっていたかもしれません。 「動産保険」に入っていれば、レジスター内や金庫の現金はすべて保険がおりるので盗られても大丈夫です。ただ、動産保険での保険請求には、金庫内などにいくらの現金があったのかを示す証拠資料が必要なので、現金明細表や現金出納帳などを金庫の中に入れて一緒に保管してはいけません。 レジスターが閉めてあると中に現金があるのではと思ってレジを壊そうとするので、レジスターは開けておきます。こうした動産保険は社内だけでなく、銀行への入金途上に襲われた際も担保される場合が多いので、襲われたら抵抗しないでお金を渡すように徹底指導しておくことが望まれます。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年02月12日
    今回は「施設管理」について詳述します。1)設備の維持管理、2)清潔感を向上させる6S、3)トラブル時の対応、の3項目が中心です。 まず、施設管理で大事なことは定期点検を行ってトラブルの発生を未然に防ぐこと。これは「予防メンテナンス」の考え方で、トラブル時の対応に比べコストが安く対応も容易になります。事前にトラブルや点検の周期を調べてから導入すると効率的な運用ができます。 練習場の設備で最もリスクの高いものが鉄塔・ネットです。倒壊や座屈すると高額の出費だけでなく営業継続も危うくなりますが、対策には「事前の対策」と「状況対応」の2種類があります。 事前の対策は、遅番勤務者がネットで得た天気予報の情報を印刷し、所定の場所に張り出して対応を決める方法をお勧めします。風が強まる場合は「風力欄」に赤丸を付けて注意喚起し、営業終了時のネットの降下位置を決めます。 出勤した際に色付きのリボンを持ってネット外周をまわる日常点検も大切です。ボールが落ちていたりネットの穴に気づいた場合は、その場所にリボンを縛り付けて修理の際の目印にします。 状況対応時に求められるのは早目の対応です。風が強まりそうな場合は早めに2階、3階打席をクローズしてネットをあらかじめ下げておきます。どの程度の風でネットを下げるかは業者の指導や過去の経験値から判断しますが、雨や雪が降るとネットに付着して重くなり、透過率も下がるのでさらに危険性が増します。 降雨の場合は通常時の風速+5mで降下を判断します。湿ったボタン雪とサラサラの粉雪との違いは多少ありますが、ネットがうっすらと白くなってきたら降下しなければなりません。判断基準となる風速計はスタッフが常駐しているフロントなどに置き、最初は10m程度で警報が鳴るように設定。以後は3m程度ずつ設定風速を上げていく方法をお勧めします。 鉄塔構造による違いも重要です。一般に鋼管やトラス構造の方がコンクリートポールよりも横風に強いと言われます。天井ネット方式の場合は強風で天井ネットが上下にあおられるため、より早めの対応が求められます。 ネット下降時に大切なことは風の強弱を見分けることと、風下側の突起物に注意することです。風は波と同じように強く吹いたり弱まったりするので、下降スイッチは風が一瞬弱まった時に押します。ネットは風下側に大きくたなびくため、強風時は風下側に見張りを立て、ネットの引っ掛かりなどに注意しながら下ろします。 ネットの色は、外部の風景を見せたい時は茶色、視界を少しでも遮りたい時は緑色が適します。ネットを保持するワイヤーは、破れの軽減とネット仕立ての効率化を図る目的からポリロープを使用するケースが増えているので、ネット業者と相談しましょう。 ウィンチの予備を1台は持っておくことです。ウィンチは回転速度によってネットの上がり方が異なるため、同型の機器をそろえる必要がありますが、壊れた時にすぐに手配できるものではありません。あらかじめネット業者に依頼しておき、廃業した練習場の中古品を仕入れるなどして用意しておくことをお勧めします。 ティーアップ機は、全自動方式の場合は機種による優位さよりもカードシステムの優位さの方が大きいように思います。この点は打席の号で既報したのでそちらを参照願います。ボール販売機方式の場合は、ボールをティーに乗せるとティーが下から上がってくる方式が急速に増えています。こちらを導入する際もカードシステムの優位さをチェックしましょう。 ボール洗浄機は、ローラーの上で水をかけながらボールを転がし洗浄する方式と、加圧しながら洗浄する方式の2種類を組み合わせることをお勧めします。注意が必要なのはボール洗浄液の使用です。塩素系の洗浄液はボール表面の塗膜をはがすのでボールの傷みが早まります。中性の洗浄液は大丈夫なので、洗浄液の成分を調べてから使うことをお勧めします。 フェアウェイの人工芝は近年、材質や張り方が大きく変わり、ボール集球の性能や色の付着の問題も徐々に改善されているようです。私は2種類のフェアウェイチェックを行っていました。一つは営業中に人工芝部分を見てまわり、ボールが溜まっている部分の有無を確認。特にU字溝を先頭にしてボールが溜まっている場合は、U字溝の縁が下がっている証拠で、状況がはなはだしい場合は部分補修をします。 また、私は早朝のフェアウェイを底の柔らかい靴でくまなく歩き、足の裏でフェアウェイの凹凸を感じることで、水の流れる道が出来ていないかをチェックしていました。道ができると徐々に広がり、人工芝を破ってしまう。段差が大きくなったと感じたら、費用をかけてでも部分補修した方が人工芝は長持ちします。天然芝の場合は、雨の上がった日の朝にシャフトを持って裸足で歩くと、足の裏で潜っているボールを感じ取れるので掘り出していました。 打席近くの人工芝部分や2階打席の前のひさしの部分に張った人工芝が、カビで黒くなったケースを見かけます。フェアウェイ用人工芝のナイロンは水を吸うためカビが生えますが、色が付くので敬遠されるポリプロピレンは、融点は低いが水を吸わないのでカビが発生しにくい素材です。このため打席近くの部分や打席前のひさし部分は、ポリプロピレン製の人工芝を張ることをお勧めします。 練習ボールの有意差は施設によって違うので判断が難しいですね。シニア層が多い施設は手に優しいワンピースボールがいいでしょうし、若年層が多い施設はツーピースが良いものの、ツーピースは打ち出し角が高いのでボールの飛び出しに注意が必要です。 私がこだわったのはマットです。手の衝撃をやわらげるためとマット価格を下げるため、アイアンマットの下を掘り込んでスポンジゴムを入れました。マット自体の厚みを減らせるので、長い目で見ればコストダウンにつながります。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年02月05日
    前号で練習場における「クラブ販売」の施策を書きましたが、今回もその続きです。計8項目の施策のうち、1番目と2番目は前回紹介しましたので、本稿では3番目から始めたいと思います。随所に筆者が手掛けた練習場での事例を挿入しながら書き進めます。 3番目は、試打会の活用です。試打会での販売は、あらかじめ顧客のクラブをチェックして、A・Bにランク分けした購入見込み客を集めましょう。 この見込み客で「予約表」の60%が埋まれば、一定の売上が見込めます。試打会を1階打席の目立つ場所で行うと冷やかしの客が中心となるため、試打会は一見にぎわっても売上は少なくなりかねません。 そのため試打会はスクール打席の隣で行い、レッスンプロが常に立ち会えるようにします。日頃から自分のスイングを知っているレッスンプロが適切なスペックをアドバイスしてくれ、購入後も打てるようにフォローしてくれる安心感と期待感があれば、購入につながりやすくなります。 特に女性は一般的に、クラブの知識が乏しいので、レッスンプロは頼もしい存在です。そのせいかクラブ売上の25%は女性が占めるという結果が得られました。 試打会販売でレッスンプロの存在は不可欠であり、顧客と面識がないメーカーの販売員まかせはNGです。注文書/請書や発注書をその場で作成するスタッフも必要なため、試打会当日の勤務スケジュールを事前に調整しておきましょう。 打席は、試打用と順番待ち用で2~3打席用意します。さらに打席のマットは毛足の長い新品と入れ替えるなど、ボールが上がりやすくする工夫も必要です。 また、レッスンプロには販売するクラブの知識とクラブの機能に関する知識が不可欠。 知識としては試打するクラブの特長やヘッド体積、フェース角と標準的な総重量程度は事前に頭に入れておくこと。これとは別に、ロフトが1度変わるとバックスピン量がどのくらい増減するかなど機能面の知識もあると信頼感が増すでしょう。 4番目は、購入後にフォローするための「クラブサポートシステム」です。いくら先生のお勧めでも高額なクラブを買うことに抵抗感があるはずで、その気持ちを和らげるためにサポートシステムは有効です。購入して6か月後、1年後、2年後など、複数回にわたりクラブのメンテナンスを行います。 しっかりとチェックして、きれいに磨き上げたクラブを他の生徒の前でお返しすると特別感が演出でき、販促効果も期待できます。 クラブサポートは全数預かり、じっくりクラブをチェックすると次の推奨クラブも選定しやすくなります。このようなサポートシステムを円滑に行うためには、毎月のクラブ販売実績表とは別に、顧客別のクラブ販売実績表を作ることが必要です。 この表をカルテに挟み込み、レッスンプロ全員で共有すれば誰もがフォローでき、次のクラブを推奨するきっかけになります。クラブ販売は売り切るのではなく、継続的に販売することが大事なのです。 例えば、まずは単価の安いウェッジを販売し、次に同じブランドのアイアンを販売する。こうした継続販売を実践するには、そのお客様がどのスペックをいつ、どこで購入したかの記録が必要です。 クラブ工房で演出 5番目は、クラブ販売のための演出「クラブ工房」の活用です。蕎麦打ちを実演している店というのは、それだけで「美味しそう」と期待感が高まります。 これと同じでクラブに詳しいスタッフの存在を印象づけ、相談にも乗って信頼度を高めるのがクラブ工房の役割ですが、ポイントは工房の設置場所で、別棟や打席棟に設けるとコミュニケーションが取れません。 工房で音が出る作業は稀ですし、近年は臭いが少ない溶剤が開発されているので、フロント周辺部への設置をお勧めします。 フロントに隣接していれば、グリップを剥く作業やテープの下巻きなどはフロントのスタッフが手伝えます。 昔はグリップカッターを使う危ない力仕事でしたが、最近はグリップをセットして押せば簡単に切れる安全で廉価な工具があるので誰でも可能。特に仕事が丁寧な女性は、テープの下巻きをきれいにやってくれるので大助かりです。 我々の工房スタッフはクラブの組み立てもできますが、メーカーのプロパークラブの販売に注力するのでクラブ製作は行いません。 レッスンやフロント業務を兼務するクラフトマンが多いため、組み立て販売よりも他の業務を行った方が時間効率が良いからです。 <h2>在庫を絞り込む</h2> 6番目は、メーカーの絞り込みです。 メーカーは、販売実績が高いショップに対して「販売条件」の改善やサービスをしてくれるので、メーカーを絞って業績を上げれば有利に交渉が進められます。 また、扱うクラブの種類が減るため商品特長やスペックを容易に覚えられる利点もあります。在庫が減り、不良在庫の発生を抑止できる効果も見逃せません。 メーカーを選ぶポイントは、ボールも生産している国内クラブメーカー1社ともう1社の2社体制がお勧めです。 7番目は、不良在庫の発生防止・商品在庫の圧縮です。我々の練習場インショップは年商2000万円ですが、通常の在庫は仕入れ価格で170万円程度です。 クラブ60万円、ボール40万円、グリップ他15万円、グローブ15万円、その他40万円といったところでしょう。 もちろん在庫は新商品の入荷時期やメーカーの販促キャンペーンなどで増減しますが、標準在庫はこの程度なのです。練習場インショップは常連客への販売が多く、納品まで待ってもらえるので、無理な在庫を必要としません。 シューズなどは少量を在庫しても意味がないので、在庫ゼロの場合が大半です。 その代わり年に2回ほどシューズの委託販売をして1か月で30足程度販売します。 一方キャディバッグはショップに鮮やかな彩りを添えてくれる貴重な商材なので、目立つ色のバッグを常時数本展示します。一定期間売れなくてもコンペ賞品などに使えるので、便利です。 在庫を圧縮する際に大切なのが「発注権限」の明確化です。客注分は担当者まかせで良いのですが、在庫分の発注については、金額に応じて「発注承認」を得る制度が必要です。 担当者が自由に発注できると在庫が徐々に膨らんでしまうので要注意です! <h2>レッスン連動型販売</h2> 8番目は、スタッフを活用した販売キャンペーンです。これにはレッスンプロが主役のキャンペーンと、フロントスタッフによるキャンペーンの2種類があり、前者の場合はスクールとのコラボ企画が有効でしょう。 アプローチ強化月間では各種のウェッジを用意して販売、パター強化月間ではパターを販売するなど、スクールの企画とコラボすると販売チャンスが広がります。 生徒にとってウェッジやパターはそれほど高額ではないので、わざわざ量販店に行くよりも練習場インショップで購入する便利さを選ぶ傾向にあるようです。 こうしたミニ企画の連発によってインショップで購入する習慣付けを行い、さらに先述したクラブメンテナンスで手厚くフォロー、顧客の囲い込みを図るのです。 次にフロントスタッフの場合ですが、こちらは年間の販売キャンペーン計画に基づいて活動します。 ゴルフシーズンの 3~4月と9~10月はスクールの集客を優先するため、ショップはキャディバッグなどの展示販売にとどめますが、それ以外の月は積極的な企画で販売に注力します。 例えば梅雨入り前とシーズンオフ、またはシーズン入り直前の年2回、グリップキャンペーンを行います。これはグリップ交換の必要性を訴求するための活動で、値引きキャンペーンではありません。 なので1本では値引きせず、数本まとめ買いで値引きを適用します。グリップは粗利率50%を越える商材なので、簡単に値引したらもったいないのです。 これ以外ではボール、キャディバック、シューズキャンペーンを年2回ずつ行います。 その際とても大事なことは、キャンペーンの前月に商品勉強会を行うこと。商品知識がないスタッフは声掛けが消極的になるので勉強会で自信をつけ、年2回ずつの勉強会で知識が深まります。知識がついたら次はセールストークの勉強会に切り替えましょう。 グローブの勉強会であれば、最初は材質の違いによる特長や着色の違いなどを覚えます。慣れてくるとグローブサイズの測り方を学び、次はセールストークへと移りますが、実はグローブの販売には3種類の方法があるのです。 1番目は、1枚ずつの値引き販売。 2番目は1枚では値引きせず、3~5枚のまとめ買いで多めの値引きをする方法。大量発注で仕入れるので粗利は確保できます。 3番目は「サマージャンボ宝くじ」や「年末ジャンボ宝くじ」と称して、2枚2000円で合計300セットを販売する方法です。 やり方は、購入と引き換えに抽選券を渡し、後日当選者を発表するものです。一等の賞品はペア宿泊券で、「飛び賞」にゴルフ無料プレー券を用意するなど、少々手間はかかりますが、閑散期で60万円の売上は魅力的です。 以上、練習場インショップにおける様々な販売戦略をご紹介しましたが、前提として大切なことが2点あります。 一つは、日頃から顧客とのスキンシップを大切にすることです。いつも「おはようございます」「ごゆっくりどうぞ」など型通りの挨拶をするスタッフが、キャンペーンだからと急に声掛けしてもお客様は心を開きません。日頃からワンモアリップサービスなどでコミュニケーションを取っていると、売り込みの声掛けにも気軽に反応して頂けます。 2点目は販売データの整理です。 例えば「宝くじ」の前回購入者が、入場時にカードを挿入すると画面に購入実績が表示されるので、スタッフは「今回もお願いします」と声掛けしやすくなります。 ボールもグローブも前回購入したサイズや色がわかるので「前回通りでいいよ」と言われればすぐに対応できます。販売データの整理はお客様の利便性だけではなく、フロントスタッフが自信をもって声掛けできる根拠にもなるのです。 顧客とのスキンシップもデータ整理も、日々の地道な活動の積み重ね。まさに継続は力なり、です。 2か月にわたりショップの話を書きましたが、如何だったでしょうか? 筆者は常々「打席」「スクール」「ショップ」の三位一体経営を提唱していますが、それぞれがきちんと連携することでショップの売上増が期待できます。特にレッスンプロとの連携具合で売上は大きく異なります。クラブや用品販売で適正利益を得るためには、それに応じた仕掛けや努力が不可欠。日々の仕事は大変ですが、 「あのクラブ、良かったよ!」 と笑顔のお客様を見ると、やっててよかったなあと心から思います。皆さんも試してみませんか? <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年01月22日
    練習場の「インショップ」と言っても様々です。ティーやグローブなど消耗品だけを並べるところ、クラブやボール、ゴルフウエアまで本格的に販売する大型のインショップもあり、中古クラブに注力する店舗も珍しくありません。 そこで今回の経営塾は、打席・スクール・ショップの3部門が連携した「三位一体運営」による、通常の専門店に対抗できる練習場インショップの構築がテーマです。インショップは売れないよとか、在庫ばかり増えて儲けは少ないから割に合わない、といった声をよく聞きます。 しかし、本当にそうでしょうか? 筆者が経営指導する練習場インショップは年商2000万円、粗利25%を継続的に確保しています。粗利額は500万円、これによりフロントの正社員2名相当の人件費を賄ってきた実績があります。 秘訣はコスト削減と、「適正価格」で販売するシステムの構築。さらに販売の主要顧客であるスクール生を増やしていくこと。本号から2回にわたり、練習場インショップのマーケティング手法について述べていこうと思います。 最初に検討すべきことは、「商品力」と「販売力」のいずれかの販売方式を選択することです。むろん両方あればいいのですが、話を明確にするために二者択一で考えてみましょう。 商品力による販売の最たるものは「売れ筋商品」の販売であり、これには取扱いメーカーの数と在庫量が必要です。集客力、資金力、さらに返品可能な仕組みも必要となるため、大型量販店などに限られた販売方式となります。 一方の販売力を重視する方式は、レッスンプロを中心にスタッフが商品知識を持ち、顧客のゴルフスタイルに合った商品を販売するもの。 メーカー数を増やさず、少ない在庫で営業できるため、不良在庫の発生も抑えられます。筆者はこの方式こそが練習場インショップの目指すスタイルと考えます。 次に取扱い商品と販売規模についてです。 取扱い商品を大別すると別掲1のようになります。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/111.jpg" alt="" width="788" height="1205" class="aligncenter size-full wp-image-75115" /> 練習場インショップの多くが最寄り品(ついで買い商品)の販売にとどまり、買い回り品(目的買い商品)まで扱う店は少数です。さらにファッション系商品となると大都市近郊のインショップにほぼ限られます。 この「商品別特性」によるショップ形態を表したのが別掲2です。ついでに買う最寄り品だけの販売では、販売数量を伸ばすことが難しい。クラブを中心とした買い回り商品の売上が増えるとショップ売上も急速に伸びます。 <h2>クラブ関係が売上の7割</h2> 収益向上策は別掲3に示した販売促進、値引き抑制(適正価格での販売)、コスト削減の3項目です。 年商2000万円の店舗ではクラブ販売が50%前後、グリップ交換を含めた工房の売上が20%前後と、クラブ関係で全体の約70%を占めるため、収益向上策もクラブ関連の項目が多くなります。 クラブ販売主体の練習場インショップ、量販店、ゴルフ専門店をチャネル別に特徴づけたのが別掲4です。 練習場は来場客数が圧倒的に多いものの、購入目的の来店客が少ないのが弱点。特に「値引額」の面で量販店やネットショップに負けますが、そもそも練習場インショップは仕入れ価格が高いため、値引対抗するのは無理。 適正利潤を確保するには、値引率を20%程度に抑えることが必要です。これで果たして勝負になるのか? もちろん勝機は十分にあります。 まず、スクール生中心のクラブ販売です。我々の店ではクラブ売上の80%をスクール生が占めています。過去の実績では生徒1名の年間クラブ購入額が1万9000円なので、300名で570万円、500名で950万円のクラブ販売が見込めます。 そのための具体的な手順を列記しましょう。 レッスン時に生徒の「クラブチェック」を行って、スペックの合わないクラブや飛距離などで歯抜けとなる番手を見つけます。見つけたらレッスン時に「試打クラブ」の使用を勧めます。 その試打の感触を見て、購入見込み客をA・B・Cの3段階に分け、A・Bランクを試打会に誘います。あまりガツガツせず、今月はドライバー、来月はアイアンなど、月ごとのテーマで徐々に誘導する方法もあります。 複数のレッスンプロがいる場合は、カルテや連絡ノートにクラブチェックの結果・試打クラブの推奨状況を記して共有しましょう。 2番目の対策は試打クラブの有効活用です。推奨の試打クラブを随時レッスンに持って行き、新商品の発売時期には試打クラブをスクールの打席に並べて、生徒の興味喚起に務めます。試打クラブの運用にはフロントスタッフの役割が欠かせません。 手ぶらの来場者には試打用ではなく「貸しクラブ」を提供。試打クラブの破損・盗難防止が目的です。破損防止にはヘッドスピードに見合うスペックの提供が不可欠なのでネックにカラーテープを巻くと女性用、R、S、X、レフティー用が一目瞭然です。 また盗難防止策として、保管中は女性の小型髪留めにリングを通し、商品名を書いた札等でクラブのネック部分を挟んで留めておけばOK。 クラブを貸出す際は髪留めを外し、フロント内の所定の場所に置いて、どのクラブを貸し出しているかがひと目で分かるようにしておきます。まだまだありますが、続きは次号で。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年01月01日
    練習場経営者の皆さんは、近隣練習場の状況が気になるはず。そこで今回は、マーケティングの発想に基づいた競合対策を考えていきたいと思います。 突然ですが、あなたが誰かと戦うことになったら最初に何を考えますか? まず思い浮かべるのは相手がどんな技や武器を持っているのかでしょう。その上で、どうやったら勝てるかを考えますが、練習場のマーケティングも同じです。まずは自社や競合施設を取り巻く市場環境を調査。敵を知り、己を知れば百戦危うからず、です。 そのため本来は、練習場を取り巻く「外部要因」と自社の強みや弱みといった「内部要因」を精査しますが、紙面の都合上これらを割愛して、本稿では「一般市場調査」から説明します。 自社商圏内にどんな人が住んでいるのかを調べる方法が一般市場調査です。朝日新聞発刊の「民力」が優れた資料でしたが、2015年に廃刊となったため調査が大変になりました。 対象地域の人口、年齢別人口構成比、世帯当たり人口、年少/労働/老齢/従属人口指数、人口伸び率、新設住宅着工件数、昼夜間人口比、産業3部門別就業人口比、1人当たり民力水準、小売吸引力指数などが主な調査項目になります。 世帯当たり人口や老齢/従属人口指数が高ければ、可処分所得が少ないことを表し、産業3部門別就業人口比で第一次産業従事者が多ければ、ゴルファーが少ないことを表す。逆に第三次産業従事者が多ければ、ゴルファーが多いことを示しています。 年少人口比率や人口伸び率が高く、新設住宅着工件数が多ければ若くて伸びていく街となります。「小売吸引力指数」は、買い物で人が集まる街か、買い物に出かけていく街かを表します。 あまり耳慣れない言葉ですが、練習場の入場者に影響するのが「昼夜間人口比」です。これは昼と夜の人口を比較する指数で、東京の中心部は高くベッドタウンは低くなります。昼夜間人口比が高ければ「職住接近型」の都市となり、夕方の来場時間帯が早くなります。 逆に低い地域は、周辺都市への通勤者が多いので、来場し始める時間帯が19時以降となり、総入場者数が相対的に減ります。営業時間を繰り下げて対応しても、翌朝の出勤時間が早いため増え難いことに留意しましょう。 次に行うのが「将来人口調査」ですが、これは自社の商圏内のゴルフ人口がどのように変化するかを知ることが目的です。 「民力」は廃刊しましたが、(株)ゴルフ産業需要調査研究所では、指定した商圏の〇〇市〇〇町〇丁目といった詳細な区切りで将来人口のデータを廉価で販売中、お勧めです。ちなみに私は、車での移動時間が「20分以内」を練習場の商圏とみており、都心部なら2㎞程度、地方都市なら10㎞程度でしょう。 <h2>「007」の気持ちで臨む</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/20221217.jpg" alt="" width="650" height="499" class="aligncenter size-full wp-image-75049" /> 以上の基礎データを把握したら、次は「競合調査」です。これは競合施設の価格、営業時間帯やハード面に変化がないかを知ること、さらにソフト面で優れている点の把握が目的です。 相手の良い点を自社で吸収すれば、競合先の良い点を消すことができます。競合調査でとかく目につくのがハード面ですが、これはコスト面等で導入が難しいため、比較的容易なソフト面に注目します。相手の粗捜しは無意味です。 別図を参考にしてください。調査はゴルフを熟知するスタッフと女性スタッフの2名体制が望ましいでしょう。駐車場の一番奥に車を停め、自社と比較しながら駐車している車を眺めると客層の違いが分かります。次にフロントへ行って料金と同時に接客や装いなどのソフト面をチェックします。 打席はフェアウェイに向かって左奥を選びます。この場所は来場者の背中側に回るので当方の動きが目立ちません。マットやボールなどを含めた打ちやすさ、打球の見やすさ、打席周辺の清潔感などをチェックし、必要があれば同伴スタッフの写真を撮る雰囲気を装って必要な写真を撮ります。 トイレは練習場の接客レベルが最も分かる場所でしょう。まずは臭い、便器の汚れ具合、洗面台の清潔感、清掃用具の収納状況をチェック。洗面台は「花無し」「造花あり」「生花あり」などに施設の姿勢が表れます。また、フロントで「妻を通わせたいのでスクールについて教えて下さい」と聞くと、スクールへの取り組み姿勢が分かります。 カウンター上にチラシが置いてあればスクールに注力している。棚から持ってくる施設はその逆です。掲示物は当該練習場の掲示物が多いか、用品、コース、飲料など施設外の掲示物が多いかでレベルが分かります。「施設情報」も、打席/スクール/ショップと区分して掲示してあれば、かなりの強敵だと思って間違いないでしょう。 以上の「競合施設調査表」に自社の分を記入したら、いよいよ分析のスタートです。前記の集めた情報量が多いほど混乱し、対策の糸口が見えなくなります。 これを解決するのがマトリックスによる分析で、まずは自社や競合施設の長所・短所をランダムに書き出し、自社の改善点を考えます。 「距離が短い」は改善できませんが、「接客が劣る」「マットが硬い」などは改善可能。相手が打席中心の営業ならば、当方はスクール中心で打開策が描ける。縦軸と横軸の二次元で、マトリックス表を作成しますが、縦・横の項目は施設の状況に応じて自由に変える。これをスクールやショップに置き換えて検討しても面白いでしょう。 大切なのは、当該商圏における自社のポジションを認識することです。御社が地域の一番店なら他社の強みをマネして消せば勝利できます。二番手以下の挑戦者ならニッチな部分で独自性を出していく。その際に「選択と集中」を徹底して、やること、やらないことを明確に絞ることが大事です。 前述したソフト面の改善で「笑顔の接客」「清潔感の向上」などが改善の第一歩になりがちですが、私の経験上、効果が出るまでに6か月はかかります。そこまで粘り強くできるのか? 日々変わる商圏状況を睨みながら、冷静に取捨選択することが必要です。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年12月18日
    売上を入場者数で割ったものが客単価ですが、客単価には2種類あります。打席売上に限定した客単価と、打席にスクールやショップ売上なども加えた総売上の客単価です。細かい話をすれば、打席の客単価にも入金ベースと使用ベースの2種類があります。 客単価を上げる方法は(1)「販売数量の増加」(2)「値上げ」(3)「両者の中間」の3種類ですが、まずは(1)についてみていきましょう。 これには「打球数の増加」と「打席外収入」(スクール、ショップ含む)の増加があります。打球数を増やすためには、目標グリーンの設置などアプローチ環境の整備が挙げられます。これにより1人1球増えたとして、1球10円の施設の場合、入場者8万人×単価10円で年間80万円の純益となります。 もう一つの「打席外収入」の向上には、レッスンプロやフロントの正社員化などが必要なため、踏み切れない経営者が多いようです。 また(3)の「中間方法」は、単価を上げずに量を増やす方法です。例えば1球10円、1カゴ50球で500円を、60球で600円にする。あるいは60分打ち放題を80分に伸ばしたり、打ち放題でも時間オーバーをOKにして「割増料金」を稼ぐ方法などです。 さて、残るは「値上げ」による客単価向上です。こんなご時世で値上げは無理と思われる読者は多いでしょうが、筆者が関わった練習場では過去、数回にわたって値上げをしています。どうやって?そのあたりを中心に話を進めます。 打席もスクールも、値上げをする前には環境の整備が必要です。接客や6S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ・スマイル)を良くすると共に、三位一体運営を行えば徐々に入場者が増えて待ち時間が発生します。閑散期でも、平日の夕方や週末に待ち時間が出るようになれば値上げのチャンス。フェアウェイや打席の改装工事、打球測定機器の導入などにタイミングを合わせて値上げをします。 日頃から顧客とコミュニケーションが取れていれば、大きなクレームにはならないでしょう。値上げに対する反応が厳しい場合は、値上げ分をポイント還元する方法もあります。入場料を100円値上げし、一定部分をポイントで返せば不満は収まるでしょう。ポイントはすぐに還元しない来場者が多いので、値上げとの差額分が実質的な増収となります。 そもそも練習場は打席数が限られています。限られた打席でより多くの売上を得るには、入場者を増やして回転率を上げる、時間当たりの単価を上げる、客単価を上げる、の3点しかありません。 過去にこの連載で述べたように、様々な施策で入場者を増やし、入場者が増えたら値上げを行って一時的に入場者を減らす。また努力して入場者を増やして値上げを行う。その繰り返しが客単価向上に適しています。値上げをしても、顧客に逃げられないための対策は、当連載の「打席の項」で詳述した永続的な差質化です。 練習場が単にボールを打つだけの場所なら、価格競争のレッドオーシャンになる。そこでしか出会えないスタッフの笑顔や気遣い、仲間との語らいの場になるとブルーオーシャンになる。価格ではなく、価値で選ばれる施設になれば値上げしてもロイヤルカスタマーは絶対に離れません。 <h2>レッスン値上げの時機は?</h2> スクールも同じです。単にボールを打つだけなら近くの練習場を選ぶでしょうが、良いレッスンを受けたいとなると遠い練習場でも通います。フロント業務や施設管理まで担うレッスンプロの場合、生徒数は120名程度が限界です。レッスンの評価が高まり、生徒が限界数になるタイミングが月会費を値上げするチャンスです。 一斉値上げではなく、新規入会者から上げていけば、既存会員からのクレームはゼロなので、スムーズに値上げできます。5年経つと多くの会員が入れ替わるので、値上げ効果が徐々に浸透します。 一方、チケット料金は打席料金との見合いです。7人70分のレッスンを行っている場合であれば、打席の平均客単価より200円高い金額設定が目安です。打席客単価が1200円であればチケット料は1400円という感じです。 チケット料の場合は全会員に影響するので、値上げの理由も必要です。スクール打席を改装したり、新しいレッスンプロを採用し、レッスンを始めた時期が値上げのチャンスですが、1か月前に値上げを告知して、事前に旧単価のチケットをまとめ買いしてもらうなどで不満を抑えます。 スクールを新規開校する施設は集客に自信がなく、料金設定は控えめにしがちです。このため、生徒が集まった時点で料金設定を見直して、値上げに取り組んでいくケースが多いかと思います。 これとは別に、客単価向上を目指す「入金」キャンペーンを行っているケースをたまに見ます。練習場のカード残高を大幅に増やし、競合施設に流れることを阻止すると共に、売上を増やす一石二鳥の作戦と考えられているようです。しかし、カードをまとめ買いするお客様はそもそも常連客なので、浮気の心配はありません。おまけに割引特典を設けて販売するため、結果的に常連への割引販売となっています。 プレミア率の高い券種の購入を促したり値引き販売することは、客単価の大幅な下落要因となり、月次の売上が乱降下します。購入者は残高が減るまで追加入金しないので、一時的な販売増となるだけでメリットはありません。 筆者は過去、習慣的に安売り販売している施設に、それをやめるようアドバイスしたところ、恐れていた入場者の減少は起こらず客単価の上昇だけが残りました。おまけに売上が平準化して、入場者動向が見えるようになりました。 2万~3万円の超高額カードも同じです。2万円、3万円のカードがあるばかりに、20%や30%の高いプレミアを付与することになり、結果的に客単価を落とします。しかし、その対策は簡単です。2万円、3万円のカード販売を無くせばよいだけなのです。 支配人などに運営を任せているケースで気になるのが、サービス券の発行です。サービス券の発行には(1)イベントや賞品としての発行、(2)お詫びの印としての発行、(3)来場促進を図るための発行の3種類があります。 イベントやコンペ賞品としてたまに発行する分には特に問題ありません。待ちが多すぎて帰る客や停電などで帰る客にはお詫びの印として積極的に配るべきでしょう。これは「来なければよかった」と後悔している客の心理を逆転する効果があるため、日頃から用意し、いつでも使えるようにする必要があります。 一方の来場促進用は、発行枚数が増えることから客単価の下落につながる場合が多く、制限して使うようにします。来場促進用のカード発行を自由に出来るようにすると乱発が起こり、客単価が下落します。このため来場促進用のカード発行には「社長決裁」が必要など、発行に一定の制限を設けなければなりません。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月27日
    「接客力」の中身は、店によって異なります。高級ブティックやホテルでの挨拶は「いらっしゃいませ」が多いでしょうが、私が指導する練習場では「いらっしゃいませ」はNGでした。 来場頻度の多い顧客に「いらっしゃいませ」では親近感がわかず、「おはようございます」なら「おはよう」と返せますが、「いらっしゃいませ」では返せないのも理由です。 「〇〇さん、おはようございます」が挨拶の基本ですが、若い方や常連ではない方の実名を呼ぶことは控えました。 このように挨拶ひとつにしても店の格、地域性、年令、来場頻度、取扱商品などによって異なるので、接客は難しい。その半面、独自色を打ち出すチャンスとも言えます。 そこで今回は、接客力を高める施策について述べていきます。 接客で一番大切なことは店の方針です。ホテル並みのてきぱきとした接客でお客様との距離感を保つ接客を志向するのか、フレンドリーな接客で一人一人のお客様をもてなすやり方かが問われます。大型店舗や都会の施設は前者が多く、地方の施設は後者が適していると思います。 二つ目に重要なのが人材です。接客は「施設の文化」ですから、継承する必要があります。早番/遅番があるため、長期間勤務するスタッフが最低2名は必要ですが、同時に週25時間以上勤務するスタッフの確保も大事です。教えても短期間で辞めていく学生バイトなどは論外です。 三つ目は「フロント」の仕事内容です。カード販売機や自動入金機でカードを販売し、打席指定をして送り出すだけなら軽作業ですし、電話・質問への対応をきちんとこなす手堅いタイプでOKです。 ところが「三位一体運営」(打席、スクール、ショップ)のフロント業務は総指揮官としての役割が求められます。 受付/精算にとどまらず、試打会の声掛けによる集客や打席清掃、イベントの企画・実行など各種業務が期待されます。前者は待ち(さばき)の接客であり、後者は攻め(売り込み)の接客です。良し悪しではなく、業務内容によって大きく異なってきます。 ここまでの大枠が決まってから、実務としての接客です。まずは攻めの接客を行うための新入社員教育を詳述しましょう。 最初に教えるのは会社としての取り組み姿勢です。 経営理念に始まり、お客様第一主義や三位一体運営など、考え方について学ばせます。次いで挨拶と発声です。お客様に体を向けて、目を見て、来場を感謝する気持ちを表すのが基本です。レジを打ちながら目も見ずに挨拶をするなどは論外です。 指導社員と一緒にフロントに立ってこうした挨拶ができるようになったらレジ操作の習得です。 まずは入場料、ボール料、打席指定の仕組みについて教えます。覚えたら挨拶は指導社員が行い、レジ操作に集中させ、レジに慣れてから挨拶を入れます。部分的に教えた方が習得が早いからです。 次の段階はお客様の「名前覚え」です。来場頻度の多いベスト100~200人のリストを渡し、3ヶ月程度で顔と名前が一致するように指導します。 名前を覚えて挨拶すると、お客様もスタッフの名前を覚えてくれ、仕事の楽しさが増えていきます。 以上と並行して行うのがワンモアリップサービスの習得です。最初の段階は時候の挨拶からです。暑いですねえ、寒いですねえなら誰にでも言えるので、声掛けの練習に適しています。 慣れてくるに従って「お久しぶりですねえ!どうされていたんですか?」とか「最近はコースに行かれているんですか」といった質問系の会話が増え始めます。 このやり取りを顧客データのメモ欄に記入、スタッフ間で共有できれば接客レベルはかなり向上していると思います。 <h2>懲戒免職の三原則</h2> 以上は基本的なコミュニケーションスキルです。攻めの接客を行うためには、「営業の声掛け」を行う実践訓練(ロールプレーイング)を繰り返し行う必要があります。 スタッフ役とお客様役とで二人一組となり、テーマに沿って台本を見ながらロールプレーイングを行います。私は「新規来場対応」「新規客が複数回来場された時の対応」「打席会員勧誘」「体験レッスンの声掛け」「体験レッスン2回予約」「休会届け提出時の対応」といった台本を用意しました。 台本を見ながら3~4回ロープレを行うと、台本なしで話せるようになります。話せると自信がつくので実践したくなります。やらせるのではなく、試してみたくなる雰囲気を作り、うまくいったら盛大にほめましょう。 ロープレを二人で行って、みんなで見る方式は無用なプレッシャーを与えるのでNGです。2~3組が同時に行い、指導者が巡回する方式が最適です。 体験レッスンなどは断られるケースが多いので、「体験渋り用」のロープレ原稿も用意します。そうしないと、声掛けにためらいが生じるからです。 次に、スタッフの「無駄話」についてです。フロントのスタッフ同士が会話をすることは当然ありますが、そのときは二人が横に並び、互いに壁を背にして前を向きながら話すよう指導します。お客様の動きに合わせた速やかな対応ができるからです。 無駄話は適切な仕事がないから生じるので、ノートパソコンを使って仕事ができる環境をフロントに作り、具体的な業務を委嘱します。無駄話を禁じるのではなく、客待ちの時間を有効利用する方策が大事なのです。 次は食事やゴルフに誘われた時の対応です。私の会社では入社時に、飲酒運転、お金に手をつけた時、不倫行為の3点は即時懲戒免職と伝え、年に一度はこの言葉を繰りした結果、20年間でそうした事例は皆無でした。 顧客に誘われると、最初は割り勘でも、次第に昼食やプレー代を出してもらうことになり、断れなくなるケースが増えます。これに備えて「会社の規定で同行は禁止されています。コンペがあった時に一緒に回らせて下さい」といった言い方をさせます。 行きたいけれど会社の規定があるので・・・・・、というニュアンスをにじませることがポイントです。 スタッフの装いやお化粧への配慮も大事です。同じ服でも他人と違う着こなしをするのがお洒落のポイントですが、制服は全員が同じ装いをしているから統一された美しさ(様式美)が強調されます。 ポロシャツの裾を出す/出さないもこの基準で考えることです。 私は「スポーツ産業で働いているのだから健康で爽やかに見える装いをしましょう」「お客様より控えめな装いをしましょう」と言い続けました。「結婚式に花嫁さんより目立つ装いで行かないでしょう!それと同じだよ」と。 耳につけるタイプのピアスはOKですが、イヤリングみたいにぶら下がるタイプはお客様の目線を散漫にするので禁止です。いずれも単純に禁止するのではなく、明確な理由を設けなければ若いスタッフには届かないようです。 接客のレベルは、その店の一番劣るスタッフによって判断されがちなので、根気よく底上げを図り続ける努力が大切です。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月13日
    今回は、前段で顧客データを活用した来場者の増加対策について、後段では顧客データがない施設でもデータ収集できる方法を紹介します。まず、顧客データを活用した「入場者増加対策」を行うための条件について説明します。 一つ目の条件は、その施設がリライトカードかICカードを導入していること。 二つ目は、来場者が施設発行の顧客カードを持っていることです。 現金との併用や、顧客カードを積極的に勧めていない施設では、来場者を特定できないゲストカードの使用者が多く、対策が甘くなってしまいます。 そのため「ビジターカード利用者」に「顧客カード」へシフトしてもらう必要があります。ビジターカードと顧客カードの利用単価に差をつけて、カードを作成するメリットを訴求しましょう。入場料を数回無料にするのも一案です。 入場料を無料にしても、カードの作成費用は顧客持ち。しかも何回も来場して、ボール料を払ってくれるのでメリットは大です。 一度「顧客カード」を作ってしまえば、誰がいつ、どれだけ来場しているかが把握でき、「顧客対策」が打てるようになります。 まず、新規来場者対策を考えてみましょう。 自社の練習場を「知らない」「来たことがない人」を来場させるには多大な労力が必要ですが、たまたま初めて来た人に印象的な接客をすれば、再来場につなげられます。具体的には、新規来場 ⇒ リピーター ⇒ 常連固定客化の流れが新規来場者対策です。 そのための手順は、新規カードの作成を依頼する ⇒ 新規来場者限定の入金特典を説明する ⇒ 1回では消費しきれない(カード残高が残りそうな)入金を推奨する。その上で、接客を担当したスタッフが打席まで案内して、利用方法などを丁寧に説明します。 フロントに戻ったらタイマーを15分後にセットして、レッスンプロが打席を訪れスイングのアドバイスをします。 レッスンプロがいない場合は、フロントスタッフが行って「お困りのことはありませんか?」と尋ねます。さらに、お帰り時に「サービス入金」などを行って、カード残高が残るようにする。再来場を促すためです。 新規から再来場者になった人を「リピーター」と呼びますが、上記の施策を行なった施設のリピーター率は40%台だったものが、今は60%台になっています。新規来場者10人のうち6人がもう一度来場するのは凄いことです。 筆者は、これで良しと思っていたのですが、データを詳しく調べたら、3年前に新規で来てリピーターになった人が、3年後も利用している率はわずか15%しかなく、愕然としました。 その一方、累計来場回数が5回以上の人は、3年後の利用確率が高いことも分かりました。そこでまず、2回、4回、7回というステップを踏み、目標値はそれぞれ60%、40%、20%として、複数回来場して頂くための対策を考えることにしました。 施設によって異なりますが、1施設の年間新規来場者数は1000名前後。累計来場回数は5000名にもなります。年間入場者10万人の施設でも、5%を占める大きなボリュームなので、取り組む価値は十分にあります。 <h2>クイズで情報収集</h2> 新規来場者対策の次は「消滅顧客対策」です。 様々な理由で疎遠になるケースは珍しくありませんが、リライトカードかICカードを導入していれば、誰が来なくなったか分かるので個別の対策が打てる。それが消滅顧客対策です。 まず、一定期間来場が途絶えた顧客に「特典付きのDM」を送り再来場を促します。ある施設の年間DM発送量は4000枚、回収枚数900枚、回収率は23%で、回収後の累計来場回数は5000名となっています。 その際、DMの発送対象者ですが、カード残高と回収率の関係性は低く、未来場期間と回収率の関係性が高いことが分かりました。 未来場期間が長くなると「通う」「練習する」習慣がなくなるのだと思います。期間別では「2~3ヶ月未来場」の回収率が最も高いため、主に3ヶ月間の未来場者を対象にDMを発送します。 この時に注意したいのは、DMの「特典目当て」で来場するケースです。 DMの特典が付いた時だけ来場されるのでは困りますね。入金された消滅顧客の再来場率も高いので、入金ポイント5倍などの特典で入金を促し、再来場率を高めること。 また、DMを送って再来場した人へのDM発送は、その後半年は行わず、特典目当ての来場を抑えます。 ただし、消滅顧客対策のポイントは、定期的にDMを出し続けることです。消滅期間が長くなると、回収率が20数%から一桁台へと極端に落ちるからです。放置すると縁が切れるので、賞味期間があるうちに発送しましょう。 このような対策は、ゴルフ人口減少時代で顧客の争奪戦になったとき、大いに威力を発揮します。 さて、ここから後段の始まりです。話は分かった。でもうちには設備もスタッフもいない、とおっしゃる経営者のために、いくつかの方法を紹介しましょう。 筆者が20年前に練習場を賃借した時、そこはコイン精算方式でした。フロントスタッフは筆者を含めて3名、レッスンプロ2名の5名体制。 資金も乏しく、この5名で接客、打席清掃、ネットの修理、レッスン、朝の立ち上げから夜の閉め作業まで行いました。 このような状況で、どうしたら顧客データを集められるのか、筆者らは知恵を絞ります。結果、来場者が楽しく、自らデータを提供してくれる方法を考えたのです。 まず、練習ボールでもいいのできれいなボールを200個ほどと、これを入れる透明な容器と投票用紙、ポスターを用意。 ボールの「数当てクイズ」をするためです。投票用紙に名前、住所、電話番号、メールアドレス、誕生日を記入して投票してもらうのです。 これを3週間~1ヶ月間行い、期間中は何度でも来場の都度、投票してもらいます。賞品が当たった時の「連絡用」の記入なので、来場者は楽しそうに記入します。 名前を書くのを嫌がる来場者はそもそも投票しないので、トラブルは起きません。 賞品を「1~3時間打ち放題」や「1週間無料パス」にすればコストはゼロ。投票期間を長めに設定したのは、来場頻度もチェックするためです。 これとは別に、回数券やプリペイドカードと同じ金額の券種を、10枚集めたら1枚プレゼントしました。 1枚プレゼントする際に交換された方の顧客データをすべて記入してもらえば、来場頻度が分かります。 単に「お名前や住所を書いてください」とお願いすると、多くの来場者は抵抗しますが、賞品を受け取るメリットがあれば話は別。そこが狙いです。 前々回の号で差質化対策について書きましたが、今回も差質化による入場者増加対策です。消滅顧客対策などは、隙間時間に消滅顧客のデータを拾い、DM発送するだけの単純作業なので、パートさんに適していると思います。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月30日
    コロナ禍によりゴルフ練習場の入場者が爆発的に増え、特に若年層の増加は朗報です。 その一方、コロナ禍が収束すれば若者のゴルフ離れが起きかねず、業界に防衛策がないことを危惧しています。社会環境の変化によって、常に入場者は増減しますが、練習場経営者の皆さんはこれらをどのように把握していますか? 把握しなければ具体策は打てません。 実は、いま導入しているカードシステムや入場処理の仕方によって、顧客動向の分析レベルがまったく異なってきます。今回はそうしたカードシステムによる違いと活用法を詳述しましょう。 カードシステムの違いを表示した一覧表を作成・別掲したのでご覧ください。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/08/2203uchida.jpg" alt="" width="788" height="358" class="aligncenter size-full wp-image-73314" /> まず、カード・現金併用システムは、売上を把握できますが、具体的な入場者数は分かりません。現金を扱わずに各種カードのみで営業している施設も、売上は把握できますが入場者数は分かりません。こうした施設はカード売上の増減によって入場者の増減を「推測」しています。 これでは、実際の入場者数の増減が分からないだけではなく、顧客が競合施設に取られても、名前も住所も分からないので取り返すことができません。 次は「プリペイドカード」を使って入場処理を行っている施設の場合です。このケースは「曜日別」の入場者数が分かるため、入金客単価や一人当たり打球数、使用ベースの客単価も分かります。使用ベースの単価が変わらず入金ベースの客単価が上がれば、入場者が増加傾向にあると推測できます。 また「再来場したい」と思うから入金して客単価が上がります。再来場するつもりがなければ、カードを使いきって入金しないので、入金客単価が下がります。同時にカード残高も把握できます。入金客単価や使用客単価とカード残高の増減をチェックすれば、入場者数が増加傾向なのか減少傾向なのかが容易に分かります。 コロナ下で好調だった2020年は入金客単価が高く、カード残高も増えたでしょうが、2021年秋以降は使用客単価に比べて入金客単価が下がり、カード残高も減少傾向ではないでしょうか? プリペイドカード方式の弱点は、顧客の名前が特定できないため個々の来場動態が把握できません。 フロントスタッフも顧客の名前を覚えられず「○○さん、お久しぶりです」などの声掛けもできません。リライトカードやICカードを導入する施設と比べ、接客のクオリティも見劣りします。 <h2>顧客データの活用術</h2> 「リライトカード」や「ICカード」を導入している施設の場合は、初回来場時にカードを作成するため、名前、住所、誕生日などを記入してもらいます。 来場してカードを通すと「名前」「前回来場日」「累計来場回数」「会員・一般・スクール生などの種別」「情報メモ」などが瞬時に画面に出ます。 情報メモを読んでから声掛けすれば、ワンモアリップサービスが容易にでき、施設と顧客の親密度が一気に高まります。入社間もないスタッフでも、顧客情報が頭に入れば体験レッスンなどの声掛けもできるでしょう。 こうした接客対応が可能な施設は、積極的にカード作成を勧めているところに限られます。 そのような施設は、「名前不明」のビジターカードの使用率が4%程度と低いので、より精緻な対策が打てますが、ビジターカード使用率が10%を大きく越える施設では対策が歯抜けになりやすいのです。 ビジターが多い施設には、二つの理由が考えられます。一つは顧客データの活用が進んでいないケースで、顧客データの価値が理解できず、組織として顧客データの取得にも取り組んでいません。 二つ目の理由は、カード作成費用の問題です。ICカードはカード代が数百円するため、その費用を来場者から徴収する施設もありますが、カード作成費用の支払いを嫌う方がいるため普及せず、ビジターが増えていくのです。 施設側の気持ちも分かります。再来場するか分からない方に数百円のICカードを無償でわたすことに、抵抗感を覚えるのでしょう。ただ、カード購入を敬遠するビジターが増えて、肝心の入場者増加対策に支障が出るとしたら本末転倒ではないでしょうか? また、せっかく登録して画面に名前が表示されても名前で呼ばず、「ごゆっくりどうぞ」だけの声掛けでは有効活用になりません。 中には名前を呼ばれることを嫌う方もいますが、それは表情を見れば分かります。最初は嫌がっていても、何回か来場するうちに「そろそろ呼んでよ」と心の声が聞こえる瞬間もあります。 <h2>カードの選び方</h2> 以上の説明でリライトカード/ICカードの利点が分かると思いますが、新たにカードシステムの入れ替えを検討する経営者に対して、筆者はリライトカードの導入を推奨します。 多くの設備業者は売上の多いICカードの使用を勧めます。リライトカードはトラブルが多いとか、いずれなくなるなどの理由も聞きます。 しかし、カードリーダーを打席から撤去して、フロントで集中管理をすれば、打席カードリーダーのトラブルはゼロになります。 いずれなくなるという話にしても、パソコンなどの情報関連機器の寿命は長くて10年なので、10年経てばまた入れ替えになります。リライトカードの生産もあと10年は続くと聞きますので、この間は支障がないと考えられます。 ICカードの問題点は、1枚数百円もするコストです。このランニングコストを踏まえた上で、どちらにするかを検討する必要があるでしょう。 ところで、皆さんの施設では顧客データの管理をどのようにされていますか? カードシステムの導入施設は、セキュリティー対策が重要なので、代表的な対策をいくつか述べます。 一つ目は、打席やカード情報を管理するシステムは、外部と遮断しておくことです。データを取り出す必要がある場合は、接続する機器のウイルスチェックを徹底しなければなりません。 二つ目は、データの退避です。パソコンの盗難、火災や落雷によるデータの喪失など、不測の事態はいつ起こるか分かりません。これに備えるため、営業終了後に外部のサーバーに自動的にデータを送って保管するシステムもありますので、このシステムの採用を勧めます。費用は掛かりますがカード喪失時の保険と考えましょう。 三つ目は顧客データの管理です。ゴルファーの顧客情報は名簿業者にとって利用価値の高いデータなので、注意が必要。レッスンプロが退職するときなどに持ち出されやすいため、顧客データを管理しているパソコンへのアクセス権を決めるなど厳重な管理が必要です。以上の3点に注意してください。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月16日
    「どうやったら入場者を増やすことができますか?」 と、よく聞かれます。大規模な改修工事や、広い敷地に様々な施設を組み合わせれば入場者増も可能でしょうが、コストをかけず、瞬時に入場者を増やすマジックみたいな方法はありません。 全国の商圏のゴルフ人口は、一定数に近い状態です。こちらが入場者を急に増やせば、競合施設の入場者は急減する。結果的に相手を刺激して、価格競争などの対抗策を講じられ、得策ではありません。そのため急に増やす方法ではなく、永続的な「差質化」によって時間をかけながらじわじわ増やす方法が一番良いのです。 その方法にはハードとソフトの2種類がありますが、施設のハードによる差質化は、残念ながら効果が持続しないケースが多々見られます。 大規模改修工事で一定期間入場者が増えたとしても、時間の経過と共にその効果は薄れてしまう。 過去には自動ティーアップ機の導入で「入場者が増えます!」と喧伝された時期もありましたが、結局、多くの施設が導入したので差質化にはなりませんでした。 メーカーが、同一商圏の同業者に製品を供給しない「テリトリー制」を導入すれば別ですが、そうではない以上、ハードは永続的な差質化にはなりません。 ただ、こうしたハードも使い方を工夫すれば差質化につながるケースがあります。 例えばリライトカードやICカードです。多くの施設が導入していますが、これを精算用に使うだけなら差質化にはつながりません。カードから得られるデータを活用して、各種の集客対策や客単価向上策に活用すれば、永続的な差質化対策となります。詳細は今後紹介しますので本号では割愛します。 <h2>凡事徹底が基本</h2> 次にソフトによる差質化ですが、こちらは「実務」と「システム」による差質化の2種類あります。実務による差質化で最も一般的なのは「接客力向上」でしょう。場内をクリーンに保つ6S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ・スマイル)も重要なポイントです。 2種類のソフトを組み合わせて「徹底して継続」すると、他施設との差質化につながり、入場者も6か月経った頃から徐々に増え始めます。こうした差質化の動きを競合施設は感じにくく、たとえ感じたとしても追随しません。なぜなら、最初はやろうとしても継続することが難しいからです。 難しさの一つ目の理由は、接客サービスなどによる入場者対策は効果がすぐに出ず、たとえ入場者が増えたとしても、それが接客による効果なのかどうか判断できないからです。やったことに対する手ごたえが感じられず、中途半端に終わるケースが多いのです。 二つ目の理由は、経営者の強い信念の欠如です。 筆者が施設を訪れ「6Sをやってますか?」と質問すると、どの施設も「やってます」と答えますが、経営者が中途半端に妥協するためそれぞれのレベルは大きく異なります。 スタッフは経営者の様子を眺めて「この程度でいいや」と自分で基準を決めてしまいます。だからこそ、経営者の強い信念と指導力が必要ですが、そこまで徹底する経営者は多くありません。 凡事徹底――。接客力や6Sなど、やって当たり前のことを徹底すると、必ず差質化の決め手となります。 ソフトによる差質化のもう一つは、システムを活用したものです。 スクールの章でもお伝えした「三位一体運営」などがこれに相当します。 地道な活動ですが、まずは来場者に声掛けしてスクールに誘導し、同時に継続したスクールの受講と予習・復習の大切さを伝え続けます。 これを繰り返し行うと500名の生徒で受講総数が年間2万2000人、レッスン以外の「自主練」打席利用が年間1万人、合計3万人超という、とてつもなく大きな数値になります。 年間入場者が7万人以上で60打席以上の施設であれば、どこでもこのような数字を達成することが可能です。 <h2>「永続的」の本義</h2> ここで永続的な差質化の「永続的」について考えてみましょう。 筆者が描く「永続的」のイメージは「相手が対抗できない、もしくは対抗しようとも思わない手段」となります。対抗しようとも思わない、だから永続的だとも言えるのです。筆者が賃借して運営を始めた施設は築50年でしたが、改修資金がなかったため、清掃を徹底していました。60打席を営業終了後の23時から3時間、2名のスタッフが清掃し、さらに営業開始後はフロントスタッフが1時間に1回、全打席を回って清掃します。 来場者から「ここはきれいだねえ!」と褒められましたが、このとき筆者が実感したのは、「きれい」は施設の新旧だけではなく、「清潔感」によって感じて頂ける。清潔感という、数値化できない魅力の価値をこのとき初めて知りました。清掃コストは年間200万円。そのせいかどうか、入場者は徐々に増え始めました。 集客効果がはっきりとは見込めないこのような作業に、多額な費用をかけようとは思わない経営者は多いはず。だからこそ、差質化につながるのです。 接客も、当初はコイン精算方式で個人名がわからないため「笑顔で元気よく挨拶しよう」から始めました。3年目にリライトカードを導入してからは、挨拶に名前を挟むように変更。さらにその後、ワンモアリップサービスを伴った接客に変えました。接客したフロントスタッフが打席清掃で巡回し、体調を気遣ったりイベント案内をすることで、自然と施設のファンが増え、開業して7年後には入場者が2倍になったのです。 重要な点は、価格競争や施設改造ではなく、コミュニケーションで増えたこと。徐々に増えたため同一商圏の競合施設はあまり気づかず、万が一気づいても、うちのフロントはあそこまでは出来ないと諦めてしまい、対抗意欲を失ったのではないでしょうか。だから永続的な差質化が図れたのです。 先述したカードシステムの活用も、接客力の向上も、差質化を図るには継続した工夫と改善が必要です。その過程を知らずに結果だけを見ている競合他社は、どこから始めたらよいのかわからないため、最初から追随を諦めます。永続的な差質化を図るには、何らかの内製と改善の過程が必要なのです。 外部から購入したハードによる差質化は、内製やハードのオリジナル化が難しく、永続的な差質化が難しいのです。 先述の施設が投資した主な費用は、イニシャルコストとしてコイン式からカード式への切り替え費用1000万円、ランニング費用として年間の清掃費用200万円と、パートと比較した正社員の労務費の増加分が年間500万円ほどでしょうか。 カードシステムが一般化していることを考えれば、増加費用はランニングコストの700万円だけ。この支出増で入場者が大幅に増えるのであれば、試してみたくなりませんか? <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月02日
    前回は「委託」のゴルフスクールを「直営」にするための手順について書きました。委託よりも直営のほうが様々な面で利便性が高く、売上や利益面で優位に展開できるからです。そこで今回は、自社運営のスクールをどのように展開していくかについて詳述しましょう。 スクールの運営者は、どうしたら生徒を増やせるのか、売上を増やせるだろうかと日々考え、取り組んでいることと思います。 筆者は過去35年間、スクール運営に取り組んできましたが、そのような経験からスクールと「数字の関係性」ともいえる構図がおぼろげながらわかるようになりました。今回はそうした「スクールの数字」を中心に説明します。 まずは数字の前提となる料金体系について考えてみましょう。 スクールの料金は「ボール代込み」と「ボール代別」の料金があり、ボール代が別の場合は、地域の価格競争で通常の「ボール代」が安くなると、スクールの料金も影響を受ける。そのため「ボール代込みのほうが良い」と前回書きました。 ちなみにボール代は東京など大都市圏で1球20円前後、地方都市で10円前後が多いようです。 次は「月謝」の払い方についてみてみます。これには3種類の方法があり、具体的には「月会費制」「チケット制」、さらに月会費とチケットの「併用制」となります。 運営側の管理がもっとも楽なのは、何回でもレッスンを受け放題という月会費制で、次にチケット制の順となり、月会費とチケットの併用制は一番手間がかかります。ところが筆者は「併用制」を推奨しています。なぜでしょう? スクールの売上は「生徒数×客単価」で成立しますが、「客単価」を上げようとしても、月会費の定額制ではなかなか上げられません。また、チケット制は生徒が習いに来なければ売上が下がり、ヘタをすればゼロにもなりえます。 ところが、併用制の場合は生徒の受講の有無にかかわらず定額の月会費が入り、受講回数が増えればチケット代が増えて客単価が上がります。だから売上確保には、月会費とチケットの併用制がもっとも優れているのです。 ここでいう「生徒数」とは、当月分の月会費をきちんと入金した生徒のことです。月会費の支払いを停止した「休会者」などは生徒数に含みません。筆者がスクールの運営者から相談を受ける場合、もっとも重視するのが生徒数とスクール客単価です。 売上はそれを掛け合わせた結果にすぎません。 <h2>一定水準を超えると急増</h2> それでは生徒数を増やし、客単価を上げるためにはどうしたら良いでしょうか? まず、客単価の方から説明しましょう。筆者が指導しているスクールの売上は、 「入会金+月会費+チケット料+ラウンドレッスン料」 から成り立っています。 「入会金」と「ラウンドレッスン料」の売上は、全体に占める割合が多くないので「月会費」と「チケット料」が重要です。このうち月会費は定額なので、売上や客単価を増減させる最大の要因はチケット料です。そして、受講者が増えればチケット料も増えるため、受講者をいかに増やすかが重要です。 では、受講者をどのように増やすのか? 今回は「数字の話」なので、「レッスンの質」は横に置きます。ここで注目されるのが「月間利用回数」です。これは、一人の生徒が月に何回受講したかを表わすものですが、あくまで結果的な数字であり、この結果を導く直接的な数字が「充足率」と「予約率」になるわけです。 充足率は1クラスの定員に対して何名が受講したかを表わす数字で、定員6名に対し3名の受講が50%。筆者の指導先では、平均充足率80%を目指しています。 この充足率に関係するのが予約率です。毎週月曜の朝の時点で、1週間の予約者数を調べた定員に対する比率です。予約率と充足率の差は10%程度なので、充足率80%を目指すには、予約率70%が必要となります。予約率が75%を越え始めると、充足率は90%台まで急速に上がり始めます。なぜ、このような現象が起きるのでしょう。筆者はこう考えます。 予約をしないと受講できない→キャンセルすると次にいつ受講できるかわからなくなる→キャンセルせずに受講しようとする。このような気持ちが働くからです。 予約率を上げると充足率が上がり、受講者が増え、チケット売上が上がり、スクール売上が上がり、客単価が上がるという関係図になります。なお、チケットの購入キャンペーンを行っている例を見かけますが、これをやると割引などのキャンペーン特典が発生して客単価が下がります。 <h2>体験者獲得の方策</h2> 続いて生徒数の増加対策について考えてみましょう。生徒数は、 「前月末の生徒数+当月の入会者数+復会者数-休退会者数」 で表します。月会費を徴収しているスクールにおいては、月会費の支払いを一時的に止めることを休会と言い、もう戻りませんという意思表示が退会。もう一度スクールに戻ろうとすることを復会と称しています。 これを血液の循環に置き換えると、輸血が入会や復会であり、出血が休退会となります。いくら輸血しても出血が多ければ血液=生徒は増えませんね。だから輸血=入会/復会者を増やすと共に、出血=休会者を減らす動きが必要となるわけです。 次に、肝心な話。入会者を増やすには「体験者」を増やすか「入会率」を上げるかになります。入会の検討は体験レッスンの受講が一般的なので、体験者を増やすことが入会者増につながります。体験者獲得の主な媒体は場内での声掛け、SNSでの募集、生徒や一般客からの紹介ですが、フロントでチラシを配った場合の体験獲得率は2・5%程度です。1000人に配れば25人を獲得できます。 チラシ配布に慣れていない施設の場合は「体験何名獲得」を目標にするのではなく、チラシの配布枚数を目標にしましょう。 SNSで募集する場合は、自社のホームページが施設紹介中心ではなく、スクールの体験獲得中心となっていて、かつ、スクロール方式のスマホ対応型で、スマホから体験を申し込める仕様であることを確認して下さい。紹介チケットは既存の生徒中心に配布します。 入会者の30%程度はゴルフ未経験者なので、練習場との接点がありません。新たな接点を設けるためには、紹介チケットの配布とSNSの強化が最も有効です。一方で、紹介チケットからの紹介の多い/少ないが、レッスンプロに対する満足度のバロメーターにもなりえます。良いレッスンでないと紹介しようとしないからです。 紹介チケットを配布して、実際に受講するまでに1ヶ月のタイムラグがあります。このため、ゴルフシーズンの1ヶ月前から配布を開始することが大切です。年間入場者7万人の施設であれば、月平均の体験獲得者は40名程度が初期段階の目標となります。 体験者を獲得したら、次に重要なのが入会率の向上で、平均入会率は33%程度です。入会率向上対策として、体験を「2回受講」とする場合は、10日以内の2回受講率を上げること。2回受講率の目標は85%程度であり、体験申込み時に「体験レッスンは2回受講して頂くことになっておりますが、いつといつに致しましょうか?」という問いかけをします。 体験受講者と入会率の関係を見ると、体験1回目と2回目の間隔が「10日以内」の入会率は50%程度、10日以上だと25%程度に半減します。このため、10日以内の2回受講が大切になるのです。 <h2>生徒を6分類</h2> 次に「休会防止対策」です。休会率は「休会者÷在籍者数」ですが、夏場や冬場に休会率が上がり、ゴルフシーズンには下がります。 休会率は5%未満を年間目標としましょう。休会の多い属性は①入会して6ヶ月未満のビギナー、②初めて夏や冬を迎える新規入会者、③1ヶ月間一度も受講していない未受講者があげられます。 初心者を「ビギナー」と一括りにするケースが多いのですが、これでは雑な括りと言えます。我々のスクールでは、 ランク0:コース未経験者 ランク1:120以上 ランク2:110以上 ランク3:100以上 ランク4:90以上 ランク5:90以下 の6段階に分類しており、女性の場合はこれに10プラスします。ビギナーはランク「0」と「1」ですが、入会6ヶ月未満のビギナー対策として、月々の受講回数を調べ、回数が前月より減った場合はカウンセリングなどを行ないます。こうした対策を講じれば、入会して1年後の生存率が従来の45%から60%にまで上がり、全体の休会率改善にもつながります。 また、ビギナーだけのショートコースでのコンペやラウンドレッスン会などを開催して、ゴルフに親しむ機会を増やすことも大事。1ヶ月に一度も受講していない生徒を短期、2ヶ月を中期、3ヶ月以上を長期未受講者と呼びますが、「長期」になると電話やメールに無反応のケースが増えるので、未然に防ぐことが大事です。 上旬の時点で短期/中期/長期未受講者リストをレッスンプロ別に書き出し、レッスンプロから電話やメールの声掛けを行って、受講を促すことがポイントです。無反応の生徒には、ラウンドレッスンの誘いも一手でしょう。 特に大事なのが、休会率が高く復会率が低い傾向の「ランク1」への対応です。 復会者は休会して4ヶ月以内が大半であり、4ヶ月以上経つと復会率の減少が明らかです。そのため、休会防止対策をランク1の生徒に入念に行い、休会後は早めに復会の声掛けを行いましょう。 休会から復会に目を転じると、スクール在籍時に打席を自主練習で利用する生徒は、未利用の生徒よりも復会率が高くなっています。このため、スクール生の自主練習を我々は促進しています。 以上、駆け足で「数字」をベースにした運営方法を紹介しましたが、これだけでも大変な業務量になるかと思います。 このため筆者は、フロントに正社員を雇用し、接客をする傍らでデータ作成と体験獲得のための声掛けを行ってもらっています。 入会者が多い、入会率が高い、休会率が低いのは、レッスンプロの努力だけではなく、フロントの協力があってこそ達成できるのです。長々と説明しましたが、指標となる数字を数多く紹介しましたので、ご自身の数字と比較してみませんか? <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年09月18日
    先月号で、練習場の収益を上げるには委託型のスクールではなく、練習場自身が運営する「直営型スクール」が必要と述べましたが、本稿で具体的な手順を紹介します。 まずはレッスンプロが練習場に場所を借りて個人的に指導する「委託型」のデメリットを考えてみましょう。この場合、練習場の取り分はスクールで使用したボール代だけのケースが多いので、周辺施設との価格競争でボール代が下がれば、練習場の取り分も減少します。様々なプロにレッスンを委託すると指導に互換性がなくなり、生徒募集もプロ任せだから客数が伸びないことも問題。そこで「直営化」が必要になります。まずはその手順を列記しましょう。 1)直営スクールの開校を決断。2)レッスンプロを説得し、個人事業主となってもらい、スクール売上を一定割合で配分する方式に改める。3)プロの同意を得たらPGAゴルフスクールの開校を申請し認可を得る。4)生徒にスクールが直営方式に替わり料金体系も変わることを周知。5)開校、という流れです。 プロの了承が得られれば、決断から4か月後には開校可能。 仮にスクールの客単価が月額1万3000円、生徒数約100名として年商1600万円、利益を半々に折半すれば800万円の収益となり、生徒募集と休会防止をしっかり行えばこれらの数字が3倍になることも可能です。 とはいえ、最大の難関は「決断」に際して社内外の了承を取り付けることでしょう。特に従来のやり方に慣れたプロやオーナーを説得する作業は、机上論ではなく、感情が入り混じるだけに一筋縄ではいきません。まず、経営層に対する口説き文句は3点です。 1)価格競争に備えてボール代を含めた料金体系にすること。2)スクール収益を伸ばして打席外収入を増やし価格競争に対する耐久力を強化。3)直営化によって生徒数を大幅に増やし固定客化を図る。 この文脈で関係者の了承を得たら、次はレッスンプロの説得に入ります。大事なのはプロのメリットを明確に示すことで、直営化すれば1)生徒数が増えプロの収入も増える。2)個人事業主なので束縛が少なく従来通りの活動ができる。3)入会、休会、予約、チケット発行、集金などの面倒な業務から解放される――。 彼らにとって、いずれも魅力的な囁きに聞こえるでしょう。 説得を終えたらプロと新たな契約を結び、冒頭の3)で述べた「申請・認可」を得る作業です。 申請先はPGAで、認可料1万円とテキスト料(10冊購入が認可条件)が1万5000円。計2万5000円です。レッスンプロの多くはPGAやLPGAの資格所有者ですが、スイング理論は様々だから生徒の混乱を招きがち。 そこで、レッスン理論はPGAの「教本」の内容に統一し、生徒に教本を配布すれば直営スクールとしてのスイング論が統一されます。また、PGAのブランド力も活用できます。 <h2>パートの気持ちに配慮する</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/09/2112uchida.jpg" alt="" width="739" height="337" class="aligncenter size-full wp-image-73271" /> 次は開校の準備です。最初にやるべきは月会費の「自動引き落とし」で、銀行またはクレジット会社と契約しますが、取引銀行または引き落とし手数料の安い金融機関との契約のほか、クレジット処理ができる仕組みも必要です。 以上を終えたら、スクールの予約システムとレッスンカルテの構築作業に移りますが、特にカルテは必須です。委託型の場合は個々のプロに生徒が紐づくので、特定のプロからレッスンを受け、生徒には日時を含めた選択の自由がありません。一方の直営型は、好きな時間にどのプロからでもレッスンを受けられるため自由度が増し、受講回数や生徒数が伸びます。 ただし、前任プロの指導内容がわからなければ指導の継続性が損なわれます。この問題を避けるためにカルテで指導内容を記録すれば、どのプロから習っても継続性を担保できます。 最近はiPadを使った電子カルテが普及しており、これを導入すればネットでのレッスン予約やチケットの回収も行えます。 指導内容の記入が苦手なプロでも、話せば自動的に文字変換する仕組みがあり、スイング画像も簡単に保存。生徒は自宅でカルテを見て、プロとコメントのやり取りも可。使用料を考えても利用価値は高いのです。 直営スクール開校に際しての料金設定、その他の調整事項は別掲の資料を参照してください。新料金の設定は、従来のスクール料金にボール代を加えて値上げするケースが多いのですが、近隣スクールの料金も事前に調べましょう。 さて、残された最大の課題は生徒への説明です。月会費の自動引き落としに関わる書類手続きやチケットの買い直しなど、一時的に出費と手続きを強いることになります。 説得の際、練習場やプロの事情を説明すると反発を招きかねないため、「生徒のメリット」を強調します。先述したレッスンを受ける「自由度」の向上やカルテの「利便性」だけではなく、 「練習場直営のスクールになるので、受講日の入場料は無料です。打席のボール代やショップでの割引サービスなど、いろんな特典をご用意しています」――。 直営化で値上げする際、電子カルテの導入は最高のエクスキューズになり得ます。 忘れてはならないのがスタッフへの「配慮」です。直営化で作業量が増えてしまい、現行の人員ではオーバーワークになるかもしれませんが、生徒の確保が不透明な段階でフロントの正社員を雇用するのは冒険です。 そこで、開校準備と開校してからの数か月は、多少割高でも派遣社員を活用し、円滑に運び始めてから正社員の獲得に踏み切る方法もあると思います。 この時に気をつけたいのはパートさんへの配慮です。まず、既存のパートさんに正社員にならないかと打診してください。「最初に声を掛けられた」ことで彼女たちのプライドが保たれますが、大半は主婦なので、正社員に名乗りを上げる人は少ないでしょう。 また、パート主体の組織に正社員が一人で入ると、離職する傾向があるため、できれば複数名の同時採用を推奨します。同期入社は互いの絆が強く、耐性が強まり、離職率が下がる傾向にあるのです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/09/2112uchida2.jpg" alt="" width="770" height="518" class="aligncenter size-full wp-image-73272" /> <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年09月04日
    今月より本コーナーを担当する練習場経営コンサルタントの内田徹と申します。この連載では高いモチベーションを持ったスタッフを育成するための労務管理や、練習場の収益力を高めるマーケティング戦略・戦術を具体的な事例・データに基づいて展開してまいります。 住宅街に近接する練習場は、ゴルファー創造の前線基地。練習場の活性化は、ゴルフ界全体にとっても重要なポイントです。本連載は机上論ではなく、練習場経営に携わった経験を基に「実践論」をご紹介しますので、よろしくお願い致します。 さて、コロナ禍による屋外健康志向の高まりで、若年層の流入を含め、練習場の入場者はバブル期以来の空前の伸びを示しています。この勢いがいつまで続くか予測することは難しいのですが、国内総人口の減少や高齢化によるゴルフ人口の減少、参加・活動率の低下などを考えると、ゴルフ人口は間違いなく減少していきます。 私のコンサル先地域(大阪、兵庫、愛知、千葉県)の練習場では、2015年に比べた2030年の入場者予測は平均78%が見込まれます。練習場経営者はそのことを受け止め、早い時点で対策を打ち、勝ち組になる。そのためには無駄な競争を避け、他社が乗り出してこないブルーオーシャン領域に逸早く漕ぎ出さなければなりません。 そのキーワードが「打席外収入の増加」であり、具体的にはスクールの「直営化」とスクール生への「クラブ販売」を中心としたショップ経営を手掛けること。私が経営した、あるいは指導した施設は入場者数の伸び以上に売上が伸びた実績があり、売上が2~3倍になっているにもかかわらず、近隣施設との価格競争は起きていません。それどころか、入場料やボール料などの利用料金を数度に分けて合計300円程度値上げしています。 つまり、私が目指す練習場の経営戦略は、入場者増加による収益向上ではなく、スクールやショップ売上も含めた「客単価向上」による収益向上対策なのです。この方式はゴルフ人口減少時代において、近隣施設と価格競争をせず、収益向上を実現する唯一の方法といっても過言ではありません。 連載初回の本稿では、基本的な考え方について記述しましょう。 <h2>スクール直営化の利点</h2> 一つ目はスクールに関わる「委託方式」と「直営方式」の違いです。委託方式の場合、スクールの主宰者は個人事業主のレッスンプロが多いため、スクールで使用するボール代が別料金になるケースが多く、近隣の練習場と価格競争になった場合はスクールで使うボール代も下がってしまい、結果的にスクール収入が落ち込みます。委託方式の場合、施設側の収入は生徒のボール代のみが一般的であり、施設側が受付を行っている場合に限り、業務委託料としてレッスンフィーの一部をレッスンプロから受け取っているにすぎず、年間数百万円の売上にとどまります。 一方、練習場直営のスクールはそもそもボール代込みの料金なので、価格競争でボール代が下がっても影響を受けません。なおかつ、ボール代やレッスンフィーを含めたすべてが施設側の収入となるので年間数千万円の収入となります。 二つ目は生徒数の確保です。委託の場合は個々のレッスンプロが自分で生徒を集めます。募集方法は場内POPやSNSが多いのですが、施設から場所を借りるため自由度が低く、レッスン時間も限られており、生徒数は限定的です。 ところが、直営の場合は練習場のフロントが積極的に声掛けを行って生徒を集めます。入会した生徒はどのレッスンプロからでもどの時間でも自由にレッスンを受けられるので非常に利便性が高く、入会促進や休会防止の対策も包括的に行えるため生徒数は大幅に伸びます。私の経営していた練習場とコンサル先の練習場で年間入場者数が7万人超の施設の場合、開校5年後には7施設すべてで生徒数が300名超、年商5000万円超となりました。生徒数が500名を超えた例もあります。 また、生徒へのクラブ販売も委託ではレッスンプロの副収入になるだけですが、直営は練習場ショップの売上となるため年商1500万円を超える店が多く、利益も確保しています。 こうして見ると直営スクールのメリットは多いのですが、直営化を実施する練習場は少ないのが現状です。なぜか? それはレッスンプロの「正社員化」が障壁となるからです。 レッスン以外の仕事に見向きもしないレッスンプロを見ている経営者にとって、彼らを正社員で雇用することへの抵抗感は強いでしょう。また、受付と電話応対が主たる業務となっているフロントスタッフの正社員化もコスト高となり、抵抗感を感じると思いますが、ここで大事なのが働き方改革です。 レッスンプロがフロント業務の応援からティーアップ機やネットの修理、そして経営者をサポートする業務まで行ったらどうでしょうか? 電話応対と受付対応だけのフロントスタッフが、体験レッスンのPOP制作からチラシ配り、声掛けまで行い、接客の合間に打席清掃やティーアップ機の修理まで行うとしたらどうでしょうか? そんなことができるのか、と懐疑的な経営者は多いでしょうが、私のコンサル先の施設には打席係やメンテナンス専門のスタッフは皆無です。セクショナリズムを排除した結果です。ネット点検も修理も芝の管理も、レッスンプロとフロントが協力して行うので「専門スタッフ」は不要なのです。 話はわかった! じゃあどうすればいいんだ! そこが知りたいポイントですよね。 連載初回の本稿では、残念ながら紙幅が足りません。具体策は次回以降に詳述しますが、ここで強調したいのはレッスンプロの総合力を高めることの重要性です。彼らの多くは華やかなツアーの世界に憧れ、挫折した経験があるでしょう。多くは薄給に喘いでもいます。 その彼らに新たな職業意識とプライドを植え付け、正社員雇用で生じる社会保険・賞与等のコストを補って余りある戦力に育てることが急務なのです。このあたりも都度、実例をあげて紹介してまいりますので、次回以降をお楽しみに! <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年08月21日

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