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  • 月刊GEW12月号 「飛ばないボール」ゴルフ市場への影響は如何に?

    ハッシュタグ「sdgs」記事一覧

    ゴルフ界のジェンダー これまでSDGsの話をいろいろ書いてきましたが多くは環境問題の話題でした。しかし、実はSDGsの半分以上は環境問題以外の世界平和や経済格差、教育、人権、ジェンダーなど世界の人々が平等に、豊かに生きていくことを訴えています。 世界では、多くの人々はその日の食事に困っています。女性差別が依然として残っている。戦争が多発しているなどの課題もあります。もう一度、図を見ながらSDGsの基本について考えてみましょう。 こう書き始めたところに古江彩佳選手がエビアン選手権で優勝したというニュースが入ってきました。メジャー優勝は史上5人目で、松山選手を除くと残る4人はみんな女子選手です。6月には笹生優花選手が全米女子オープンで2度目の優勝を飾っています。凄いと思いませんか。 SDGsの思いの中で重要な課題の一つにジェンダーありますが、今回は古江選手の活躍もあり、ゴルフ界のジェンダーについて、2022年11月号に続いて再度考えてみたいと思います。 古江選手は身長153cmでやや小さめの体格です。日本人のほとんどの男性は古江選手より大きいと思いますが、どうして古江選手のように飛ばないのか、また、うまくなれないのか、不思議な気がします。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/10/2408okajima2.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="size-full wp-image-83626" /> 小柄ながら大記録達成の古江選手(ブリヂストンスポーツ<br />契約発表)。 もちろん古江選手をはじめ女子プロの方々は小さい時から血のにじむような練習を続けてきたからよく飛ぶし、技術も素晴らしいのだと頭では理解しているつもりですが、アマチュアのおじさんたちはなかなか飛距離が伸びない、上達しない、という悩みを抱えているので彼我の差を簡単に受け入れることが難しいのかもしれません。 日本の女子プロは強い、そして世界に通用する選手が続々と出てきています。人気も男子よりずっと高いのです。でも、女性のゴルファーは少ない。どうしてでしょうか。 <h2>紳士のスポーツ</h2> ゴルフ場で女性が冷遇されているといったことを22年11月号で書きましたが、まだまだ改善のスピードが遅いようです。中年のおじさんが幅を利かせているゴルフ愛好家の中では女性の待遇改善について話題になりにくいのかもしれません。 ひとつにはゴルフは「紳士」のスポーツだ、という精神を取り違えている男性が多いようです。「紳士」のスポーツを「男」のスポーツと間違えているのではないか。プレー中にたばこを吸ったり賭けゴルフをしてみたり、プレーファーストができない自分勝手なしぐさなど紳士にあるまじきゴルフをしている方々は紳士ではなくただの男です。 こうした状況に対し、女性を受け入れる時に「紳士・淑女」のスポーツと考えればいいのです。今はまだ古い時代の男尊女卑的な考えの中で紳士の雰囲気だけを盾に「ただの男たち」が女性の参加を阻んでいるとすら思えます。 世界では女性の総理大臣、社長もたくさん出ています。昔は体力のない女性は家にいて家事をこなすのが主流でしたが、今は21世紀、コンピューターの時代です。ほとんどの職業に男女差はありません。スポーツの世界でも、記録的には男女差はありますが、選手の扱いに差はありません。 イギリス発祥のスポーツの多くはフェアープレイを基本に置いています。ラグビーの基本は前に投げてはいけないことです。ゴルフでは成績が自己申告です。卑怯なことはしない、正々堂々と戦うことが基本。それ故、世界に広まっていったのではないかと感じています。その精神には男も女もありません。そういった基本を忘れて、形だけ真似をしている「紳士」がゴルフ界に少なからず存在するのが問題です。 <h2>もっと女性を</h2> ビジネスから見ても女性ゴルファーは未開拓の分野です。ゴルフ場でもメーカーでもお客を増やすチャンスなはずです。このブルーオーシャンになぜ真剣に取り組まないのか不思議です。 7月号でも「船中八策」で倉本昌弘氏が、ゴルフの普及活動に対してJGAなどにもっと力を入れるべき、と提唱していましたが、同感です。ここはゴルフ界を挙げて突き進まないと、ゴルフという遊びは忘れられていく恐れがあります。ゴルフ界の方々が他のスポーツや企業、社会の様々な分野に目を向ければ、ゴルフ界の女性進出が遅れていることに気がつくはずです。 日本は世界でも女性の社会進出が遅れていると言われていますが、少しずつ変わってきています。ゴルフへの女性参加が少ないことを社会のせいにしないで、むしろゴルフ業界が率先して女性参加の先進事例を創造していったら、どうでしょう。 例えば、ある条件を満たせばプレー費用を半額にするとか、貸しクラブを増やし、電車でもゴルフ場に行かれるようにする。女子プロ選手のテレビでの露出を奨励し、社会活動に積極的に送り出す仕組みを作るなど、画期的な変化を起こすような作戦を業界あげて作ったらどうでしょうか。 <h2>「貧困をなくそう」</h2> SDGsの第1章は「世界中の貧困をなくす」です。ジェンダーそのものに対してはまた別な項目がありますが、この貧困の項目でも女性の地位向上は重要な位置を占めています。 五つのターゲットでは、2030年までに、極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。貧困状態にある人々の割合を半減させる。各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、貧困層に対し十分な保護を達成する。国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年11月11日
    ヨウスコウカワイルカ 最近読んだ雑誌『図書』2024年6月号(岩波書店)に、すでに絶滅したとされるヨウスコウカワイルカの話が載っていました。 このイルカは揚子江に生息し、体長は2.5m程度。淡水に棲むイルカとして有名でしたが、1990年代になって急激に減り、2006年の大規模な調査で生息が確認できなかったために絶滅が宣言されました。これは21世紀になって初めて大型動物の絶滅でした。 中国の工業化、魚の乱獲、船舶による水上輸送、ダム建設などの影響により激減し、特に揚子江中流にできた巨大ダム・三峡ダムの建設は、致命的な被害を与えたようです。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/10/2407okajima2.jpg" alt="" width="1000" height="762" class="size-full wp-image-83614" /> 揚子江を堰き止めた巨大な山峡ダム 雑誌では2006年の大規模調査に参加した日本人研究者・赤松友成さんの話が紹介されていました。勤務先の水産総合研究センターでクジラの音響調査を続けていた赤石さんは、1996年に中国でまだ生息していたヨウスコウカワイルカの鳴き声を録音していました。 イルカの鳴き声は普通、ソナー音とホイッスル音の2種類あるそうですが、ソナー音は見えない目の代わりの役割で、ホイッスル音は個体同士のコミュニケーションに使われるというのですが、赤松さんはこのイルカ特有のホイッスル音の確認を担当しました。 調査は2006年11月から12月にかけて38日間行われ、揚子江中流、三峡ダムから河口までの1669キロを調査船2隻が時速15キロ程度で往復したということです。船上からの目視と船室からのホイッスル音の調査が並行して行われましたが、ついに確認はできませんでした。 この時、調査船は片道で19830隻の大型船に遭遇しましたが、これは100m当たり1隻を超えている数です。ひっきりなしに大型船が航行していたということです。 <h2>生物の絶滅</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/10/2407okajima3.jpg" alt="" width="788" height="551" class="size-full wp-image-83616" /> 絶滅危惧種のオオルリシジミ。九州亜種と本州亜種の2タイプがある。(環境省HPより) この記事を読んで、私は何とも割り切れない気持ちになりました。地球上には人間以外の生き物がたくさんいます。その生きものたちがお互いに影響を受けながら何億年も生き続けてきたわけです。 海に生まれた生命体が次々に広がり、やがて陸上に進出し、多様な生きものが共存するようになった長い歴史があるのです。 しかしながら現在、多くの生き物が絶滅し続けています。天変地異による大量の絶滅もあったのですが、それよりも人間の活動によって絶滅した事例が多い。 46億年といわれる地球の歴史があり、生命は40億年前に生まれたと言われていますが、生きものの大量絶滅のほとんどは近代工業文明が発生してからのことです。特に1950年頃からの絶滅が悲惨です。 <h2>地球のバランスが狂ってきた</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/10/2407okajima4.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-83617" /> 絶滅危惧種のヤンバルクイナ。国の天然記念物で、沖縄本島北部の<br />山原(やんばる)の森に生息。(環境省HPより) そもそも、この地球上に生命が生まれ、そこから次々と新たな生きものが広がってきたわけですので、生きものたちはみんな親戚のようなものです。それを人間たちが絶滅に追い込んでいることは天に唾吐くことに等しいのではないでしょうか。 私たちは今も、薬品のほとんどを野性生物に頼っています。水や食べもの、木材、石油、鉄など生きていく上で必要なものすべてを自然からいただいています。 私たち人類は自然の中で生活し、自然とともに生きているのです。にもかかわらず、私たちは自然を痛めつけています。そして、自然が貧しくなれば私たち人類も貧しくなるのは自明のことなのです。 命の母体とも言うべき自然を痛めつけ、しかも気が付かないままこの消費文明を突き進めているのです。 一方、石油に代表される現代文明はついに私たち人類の生存をも脅かすところまで来てしまいました。地球「温暖化」も今では、温暖化ではなく地球「沸騰化」と言われるようになっています。いずれ平地での夏のゴルフが困難になるでしょう。甲子園の高校野球もどうなるか。 このまま手をこまねいていては手遅れになってしまいます。問題は人間の意識の改革です。それしか方法が見当たりません。 <h2>ゴルフのまち</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/10/2407okajima5.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-83618" /> ゴルフの街市原についての連携<br />協定を結ぶ小出市長(中央)と<br />PGA 吉村会長(左)、千葉プロ<br />会比嘉副会長(右)。(市原市HPより) ところで、私が住んでいる千葉県市原市には日本一の数を誇る33のゴルフ場があり、首都圏からのアクセスの良さから年間168万人がプレーを楽しんでいます。 実際、私の家に隣接して千葉国際があり、車で5分のところに浜野、10分で真名、ミルフィーユなどがあり、ハーフが終わった後、自宅で昼ご飯を食べることもできます。 市原市は子どもたちのゴルフ教室に力をいれており、小出譲二市長は「世界で活躍するゴルファーを育てたい。将来的に市原市が『ゴルフの街いちはら』から『ゴルフの聖地』と呼ばれるようにしたい」と語っています。 そして、紳士のスポーツを楽しむゴルファーにノブレス・オブリージュ(地位の高い人の義務)の精神を語り、各ゴルフ場に呼びかけ、里山の自然保護を進めています。 全国各地にこうした動きが広がるといいと思っています。 <h2>「レッドリスト」</h2> 世界の野生生物の絶滅の恐れのある種(絶滅危惧種)を選定し、まとめたものです。IUCN(国際自然保護連合)が作成しています。2012年2月に公表されたIUCNのレッドリストでは、ジャイアントパンダ、レッサーパンダ、ジャワサイ、アジアゾウ、チンパンジー、ソデグロヅル、ホッキョクグマなど哺乳類の20%、鳥類の10%、両生類の30%が絶滅危惧種とされています。日本における絶滅危惧種はコジュリン、ヤンバルクイナ、ハヤブサ、ニホンウナギ、オオルリシジミ、ゲンゴロウ、などです。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年10月23日
    キャロウェイゴルフは、鳥取県智頭町、智頭町大字芦津財産区、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会と一般社団法人more treesとのパートナーシップに基づき、9月18日~20日の3日間で開催された第2回「未来へつなぐ森:共創プロジェクト」に中央大学と東京海洋大学の学生7名が参加した。 本プログラムでは“次世代に環境保全の大切さをつなぐ”ことをテーマに、地域の「課題」と「魅力」を発見・体験するワークショップや地域住民との交流プログラムを実施。面積の90%以上を森林が占める中、人工林率がその78.6%にもおよぶ智頭町は、林業の担い手不足に伴う森林整備が課題になっている。その中、1日目は林業家兼智頭町地域林政アドバイザーの國岡将平氏と山本福壽元鳥取大学教授によるナビゲートのもと、芦津渓谷の豊かな自然環境資源の天然林を視察。その後、2022年から森林整備活動を行っている「キャロウェイの森」で、学生たちは天然林で採取した種子を植える作業を行い、多様性のある森づくりに取り組んだ。また、視察を通じて、森林における鹿の被害の深刻さを目の当たりにし、獣害対策の重要性についても学んだ。その後、閉校した旧那岐小学校を改装して新たにコミュニティスペースとして生まれ変わった「ナギノ森ノ宿」にて芦津財産区議会を含む、地域コミュニティとの交流。地域住民が感じている地域課題について理解を深めた。 2日目は芦津地区でよもぎ摘みアクティビティを行った後、山里料理を提供する「みたき園」によるサポートの元、よもぎ餅作りに挑戦。豊富な自然の恵みを実感するプログラムに参加した。その後は住民自治を実践する智頭町百人委員会との交流を行い、住民が主体となって独自に地域課題解決に取り組む事例について学び、活発な意見交換を行った。 最終日には、国登録有形文化財に指定されている旧山形小学校にて、智頭杉を含む智頭町産材や国産材を活用したネームタグ作りに取り組み、3日間におよぶプログラムを終了した。 参加した学生からは「智頭には林業で木の価値を上げるための取り組みがたくさんあることが興味深かった」や「木を切り落としている伐採の光景は印象的だった」といった感想が聞かれた。 キャロウェイゴルフでは今後も「未来へつなぐ森:共創プロジェクト」を通じて、若い世代を巻き込みながら多様性の ある森づくりを推進。“美しい自然環境を次世代につなぐ”活動を通じて、智頭町が抱える課題の解決や未来像の実現に貢献をしていく。
    (公開)2024年10月22日
    <h2>氾濫する英字略語</h2> 北の国・青森にもようやくゴルフの季節が巡ってきました。早いところでは3月下旬から始まっていますが、やはり5月の連休明けからが本番です。久々のプレーに友人との話が弾みますが、今年は時節柄、環境の話題が多かった。 その中で、SDGsやESG、ESDなど様々な英字略語が使われていてそれがどうなのかよく分からないという声が聞かれました。今回はその点について説明したいと思います。 ところで、これらの略語に一つ共通しているのは「地球環境を守る」ということです。20世紀型の経済活動を続けていると、地球が、正確に言えば地球を覆っている大気圏のさまざまな仕組みが変調をきたし、現在生きているほとんどの生命が絶滅の危機に晒されているという現在の状況を直すための手段の一つなのです。例えば、温暖化がこのまま進めば地球上に生息しているほとんどの生物は生きていくのが難しくなる。これを何とかしようという試みである点では一致しています。 SDGs(持続可能な発展のためのゴール目標)は、自然の仕組みを壊さないように世界全体の経済発展をするための様々な目標、具体的な数値をまとめたものです。 ESG(環境・社会・ガバナンス)は、こうしたキーワードを軸に、企業活動や投資活動を行なおう、という考え方で主に経済界で使われています。企業にとっては、このESGが重要でしょう。 ESD(持続化可能な発展のための教育)は学校や社会、会社などで環境教育を普及し、一般市民の理解を高めていく活動です。 <h2>ハランベー</h2> こうした動きの中で真ん中に位置する言葉は「持続可能な」であり、英語ではsustainableです。この言葉が環境用語として使われるようになったのはいつごろからでしょうか。 1987年に「環境と開発に関する世界委員会」が公表した「Our Common Future(われら共通の未来)」という報告書に登場したのが初めてでしょう。この報告書では「将来の世代のニーズを満たしながら現在世代のニーズも満たす開発」が「持続可能な(sustainable)開発」である、と説明されており、以後、環境問題の主要言語として現在に至っています。 ところで、この「環境と開発に関する世界委員会」を作ったのは日本政府なのです。1982年5月、アフリカ・ケニヤの首都ナイロビで行われた国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合で、「ナイロビ宣言」などが採択されましたが、この時、当時の原文兵衛・環境庁長官が「環境と開発に関する世界委員会」の設置を提案しました。 私もこのナイロビ会議に参加したのですが、この提案にはかなり多くの国が賛同しました。それには原長官をはじめ日本代表の巧みな外交技術が功を奏したと思います。原長官は演説や各国代表との挨拶には必ずスワヒリ語で「ハランベー(よろしく)」と声を掛け、続いて「私の名前もハランベー(原文衛)」とユーモアたっぷりに相手、特に途上国首脳の気持ちを掴んでいったのです。 原長官がなぜこの委員会を提唱したのか、後にご本人から聞いたのですが、ナイロビに行くことが決まった後、鈴木善幸総理に会い、10億円の資金を要請したそうです。 国務大臣環境庁長官として会議に出る以上、世界が納得できる事業を提案したい、環境立国として世界に決意を表明するためにも資金が必要です、と説明した。鈴木総理はそれを聞いて了解してくれたということでした。 <h2>ブルントラント委員会</h2> この世界委員会は賢人会議とも呼ばれ、ノルウエーの環境大臣だったブルントラント女史が委員長に就任し、世界21か国の著名な方々が加わりました。日本からは経済学者であり外交官でもあった大来佐武郎さんが選ばれています。 委員会は2年半かけて世界をめぐりながら9回の会議を重ね、1987年5月、東京で最終会合を開き、報告書「our common future(われら共通の未来)」を公表しました。 ブルントラントさんは、その間、ノルウエーの首相になりましたが、委員長を辞めずにより精力的に取り組んでくれたのです。 委員会がロッシアで開かれた時、私はブルントラントさんにインタビューさせていただきました。その時には既に首相になられていたのですが、地球環境の課題について、委員会の意義について熱心にお話いただきました。 ブルントラントさんは、背はそう高くはなかったのですが、がっしりした体型で鋭い目をしていました。インタビューの途中で部下の方が書類を持って入ってきたのですが、片膝をついて説明をしていたのが記憶に残っています。 インタビューの最後に、日本がこの委員会を提案してくれたことに感謝している、と話していました。 日本のこうした努力が後に、この連載の第一回で書いた竹下元首相の活動に繋がり、1992年のリオデジャネイロの「環境サミット」を導いていったのです。 <h2>「われら共通の未来」</h2> 12章構成で、第1章で現在の環境課題を述べ、第2章で持続可能な開発に向けて、環境・資源基盤を保全しつつ開発を進める「持続可能な開発」の道程を提示している。次いで経済、人口、食糧、生態系、エネルギー、都市、海洋・宇宙・環境などの共有財産、平和、安全保障、第11章 平和、安全保障、開発と環境、学術研究国際的な法制度の充実などについて詳細な分析と方向性を打ち出している。邦訳は『地球の未来を守るために』福武書店1987年。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年09月28日
    ゴルフは自分より上手い人から教わりたいというニーズがあり、ゴルフが上手くなければ人に教える資格がないと考える人も多いでしょうが、本当にそうでしょうか? 自身を「運動オンチ」と公言し、ゴルフ未経験ながら多くのゴルファーを上達に導いている人がいます。その人は、日本脱力関節調律協会の代表理事・山本ゆう子さんです。 「脱力関節調律Ⓡ」という、身体パフォーマンスを高める独自のメソッドで、多くのゴルファーの身体機能を向上させ、飛距離アップやスコアアップの成果を出しています。またそのことを通じて身体の不調を解消、多くの人を健康増進に導いています。今回は山本代表の活動と脱力関節調律を紹介しつつ、ゴルフ指導のあり方を考えてみましょう。 6月6日、ゴルフ関係者のみならず、ヘルスケア関係者や施術家などおよそ90人が集まるイベントが都内で開催されました。日本脱力関節調律協会(以下、WJT協会)の設立5周年記念イベントです。(図1) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2409komorizu1.jpg" alt="" width="1000" height="563" class="size-full wp-image-82777" /> (図1)日本脱力関節調律協会の設立5周年イベントにて WJT協会の設立者で代表理事の山本さんは、大学在学中に柔道整復師と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー資格を取得。某ストレッチ専門店でアルバイトをしていました。大学卒業後、大阪で施術の仕事をしている中、高齢者の身体がみるみる変化するのを目の当たりにし、脱力関節調律メソッドの原型が生まれたとのこと。  身体を良くする施術サービスは、ストレッチやマッサージ、整体など世の中に多くありますが、それらとの違いを本人に尋ねたところ、 「脱力を促し、正しい関節の動きを取り戻すこと。そしてお客様自身が解剖学を理解すること」 との返答。筆者も山本代表の講義を受けたことがありますが、一見難解に思える骨格の構造を、タブレットを用いてビジュアルで解説、分かりやすいと感じました。(図2) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2409komori2.jpg" alt="" width="1000" height="563" class="size-full wp-image-82778" /> (図2)タブレットを用いて身体の構造を説明する山本代表 その後、多くのゴルフ好きのお客様から、ゴルフに関する質問や要望があり、それに応えていたところ飛距離やスコアなどがどんどん良くなったそうです。そこで山本代表は、 「人は予防のためには頑張れないが、ゴルフのためなら頑張れる」 と気づき、ゴルフに特化した「ゴルフ関節調律Ⓡ」が生まれました。 ゴルフの上達は目的のひとつですが、それで完結ではなく、その先に健康増進を見据えている。そのことは山本代表が掲げるビジョン「歳を重ねることに夢が持てる世界をつくる」に表れています。 誰でもできる正しいスイング ゴルフ未経験の人間がゴルフを教えられるのか? 山本代表は、ゴルフスイングを学んだ経緯について、 「人体の動きとして最大効率の動作を伝えていたら、それがゴルフの理想的な動作だと気づきました」 と振り返ります。 筆者はかねてから「ゴルフはやさしい」「正しいスイングは誰でもできる」と述べています。なぜならゴルフスイングは、人間にとって極めて自然でシンプルな回旋運動だからです。にもかかわらず上達が難しいのは阻害要素があるからです。それは、①身体バランスの崩れ、②身体機能の低下(柔軟性の欠如、関節の可動域不足など)、③誤った情報や勘違い、④思考と感覚とのズレ、⑤誤った思考パターンや感情(メンタル)等です。詳しい解説は省きますが、阻害要素の殆どは身体と脳(思考と感情)に起因しています。 山本代表のメソッドは、その身体に起因する部分、①と②を脱力関節調律という新たな手法で改善し、多くのゴルファーをやさしく上達に導いています。山本代表と従来のゴルフ指導者との決定的な違いは、解剖学や生体力学など人体に関する基礎学問を学び、身体パフォーマンスを向上させる術があるか否か、です。この術によって阻害要素を取り除けば、ゴルフはやさしいのです。 「ゴルフは難しい」「そう簡単には上達しない」と、ゴルファーの夢を壊すようなことを平気でいう指導者がいますが、そのような人はもっと勉強して欲しいと思います。 ゴルフ指導者の要件とは? ゴルフ未経験者でもゴルフ指導はできますが、ゴルフに無知でいいわけではありません。山本代表はその都度、ゴルフやゴルフ用語などを調べる「学びの姿勢」を徹底しているそうです。以上の話を整理すると、ゴルフ指導者の要件が見えてきました。それは次のようなものです。 ・解剖学や生体力学など、身体に関する基礎学問を学んでいる人 ・上達の阻害要素が何かを把握し、それを解消できる人 ・マニュアル通りのスイングを指示強制するのではなく、学習者の能力を最大限に引き出すことが出来る人 ・分からないことは即学ぼうとする「学びの姿勢」のある人 ゴルフ指導者には、必ずしもゴルフの腕前が必須ではありません。ゴルフスクールでは見本を見せることが必要なので、最低限ボールを打つ技術は必要ですが、常に70台で回る腕前はまったく不要。「名選手必ずしも名コーチにあらず」です。 山本代表はある日突然、「このメソッドを1000人に広めよう」と思い立ったそう。しかし自分でセッションを提供できる数には限界があるため、このメソッドを提供できる指導者を育てることで、より多くの方に広めることができるという思いから、2019年、WJT協会を設立し、指導者の育成に乗り出しました。その結果、現在198名の資格認定者を輩出しています。(2024年6月現在)(図3) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/2409komori3.jpg" alt="" width="1000" height="563" class="size-full wp-image-82779" /> (図3)多くの資格認定者を排出している日本脱力関節調律協会 ゴルフ指導者の認定制度を有する団体は、現在の認定制度を見直し、世の中に求められる指導者を輩出して欲しいと思います。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年09月05日
    国連のプラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する新たな報告書(2024年7月公表) 2024年8月も「観測史上最高」や「猛暑日過去最多」が各地で相次いだ。気象庁が発表している「観測史上最高気温ランキング」(2024年8月18日現在)を見ると、上位21件(41.1℃~40.4℃)のうち14件が2018年以降に観測されている。2000年以前に観測されたものは2件しかなく、この5年程度で地球が急激な気温上昇している状況がわかる(表1)。 表1.日本における最高気温ランキング(2024年8月18日現在 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/hyou1.jpg" alt="" width="1000" height="994" class="size-full wp-image-82752" /> ) 2024年7月15日に国連環境計画(UNEP)と国際科学会議(ISC)は、プラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する報告書(A global foresight report on planetary health and human wellbeing)を発表した。数百件のリファレンスを用いたこの報告書は96ページにも及び、世界の気候変動等に関する新たな課題を予測し示している(図1)。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/zu1.jpg" alt="" width="424" height="600" class="size-full wp-image-82754" /> 図1.<br />2024年7月に発表された報告書 <h2>報告書の内容は2024年9月に開催される国連未来サミットでの議論に反映される</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/zu2.jpg" alt="" width="880" height="649" class="size-full wp-image-82755" /> 図2.<br />8つの重大な世界的変化・現象(報告書より) 報告書では、中長期的な観点から、3つの地球の危機(気候変動、自然と生物多様性の喪失、汚染と廃棄物)を加速させている8つの「大きな変化」について言及(図2)し、18の「変化の兆し(Signal of change1~18)」が強調されている。この報告書は、9月22日~23日にかけてニューヨークで開催される国連未来サミット(Summit of the Future)での議論に反映される予定である。 <h2>報告書ではSDGs目標達成の遅れが指摘される</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/zu3.jpg" alt="" width="785" height="562" class="size-full wp-image-82756" /> 図3.<br />SDGsの17個の目標の進捗状況評価(報告書より) 2015年に国連加盟国が採択したSDGsについて、10年が経った現在の状況について、報告書は「成果は期待外れ」としている。項目によっては、2015年以降何の進歩も見られないばかりか、さらに悪化・後退しており、環境関連の項目についても目標から大きく外れている(図3)。 <h2>太陽光を宇宙に反射させて地球を冷却する研究</h2> 報告書に記載される18 の変化の兆し(Signal of change1~18)のうち、7番目に興味深い研究動向が示されている。(Signal of change 7:Deployment of Solar Radiation Modification,日射調整装置の導入) 具体的には、太陽放射修正:Solar Radiation Modification (SRM)と呼ばれる分野の研究が進んでおり、太陽光を宇宙に反射させて地球を冷却する(温暖化を抑える)ことを目指している。但し、本研究については環境や生物、社会経済への影響などの議論もあることが記されている(図4)。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/09/zu4.jpg" alt="" width="776" height="571" class="size-full wp-image-82757" /> 図4.<br />Signal of change 7:Deployment of Solar Radiation Modification(報告書より) 参考文献 1)気象庁(2024)歴代全国ランキング,https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/rankall.php(2024年8月18日確認) 2)United Nations Environment Programme International Science Council(2024)Navigating New Horizons: A global foresight report on planetary health and human wellbeing、https://wedocs.unep.org/handle/20.500.11822/45890(2024年8月18日確認)
    (公開)2024年09月04日
    今回のレポートはヨネックスレデイスゴルフトーナメント2024に出場した林心恩(リン・シンエン)選手を通してヨネックスのジュニア活動について報告します。 林選手は8歳で父親からゴルフを習い始めて18歳の現在まで父と活動を共にし、ヨネックスレディスへは2023年8月に開催されたヨネックスジュニアチャンピオンシップで、2日間トータル8アンダーで優勝してヨネックスレディス本戦への出場権を獲得しました。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/2408nagase2.jpg" alt="" width="718" height="569" class="size-full wp-image-82445" /> 林心恩選手のアイアンショット スイングはまだまだ粗削りですが、日本のジュニアにはあまり見られない下に向けたダウンスイングと左ひじを巧みに使うスイングです。ターフをきっちりと取ってくるスイングで、きれいなスピンの効いたボールを打ってきます。ショットメーカータイプで将来が期待できる選手です。 ヨネックス出場のジュニア選手といえば、2016年大会で11歳288日で本戦出場したアレクサ・パノ選手が思い出されます。プロ転向後には欧州で1勝、米国で1勝と、この舞台を出発点として世界に羽ばたき成功した選手です。林選手もぜひ世界で活躍してほしいと思います。 ヨネックスレディスでは昨年新設されたヨネックスジュニアチャンピオンシップの優勝者が本戦出場を果たせることで、予選会とは別のルートで本戦出場という目標ができ、多くのジュニアゴルファーの励みとなっています。 今後は別の大会でもこのような仕組みが増えればジュニアゴルファーの大きな励みになると考えます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/202408nagase2.jpg" alt="" width="900" height="809" class="size-full wp-image-82447" /> ヨネックスジュニアレッスン会に参加したプロ ヨネックスでは全国で51か所(関東中心に東海、近畿、九州)でジュニアゴルフスクールを展開し、多くのジュニアゴルファーからプロを輩出しています。 また、今回のトーナメントでもジュニアゴルファーのレッスン会も開催され、多くのトーナメント出場選手がジュニアにレッスンを行い(若林プロ・池ヶ谷プロ・青木プロ・蛭田プロ・安田プロ、吉本プロ・笠プロ・泉田プロ)、参加したジュニアからは喜びの声があふれて、ゴルフを真剣にやりたいという声が多く聞こえました。 このような仕組みが増えれば日本もゴルフ強国へ向かうと考えられます。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年08月15日
    ヨネックスは9月下旬、本来は廃棄されるはずの茶殻を配合したグリップ『茶殻配合グリップ』を発売する。 同グリップは伊藤園の「茶殻」を有効活用する独自のアップサイクルの取組み「茶殻リサイクルシステム」とコラボしたもので、素材に茶殻リサイクル材を使用。消臭・抗菌機能を実現している。エンドキャップ先端にはお茶を連想させるディープグリーンを採用する。 実際に手に取るとほんのりお茶の良い香りがし、清潔感がある。またグリップすると手への吸着力も感じられる不思議な握り心地だ。 近年SDGsが叫ばれているが、ゴルフ業界、特にゴルフ用品メーカーは対応が遅れている。そんな中、今作のようなエコ素材を活用したグリップを同社が発売することは、用品メーカーのSDGsの具体例として価値がある。同グリップはカスタムや単品販売にも対応予定。販売現場においても、性能だけでなく開発の背景を伝えることでゴルファーの所有感も高まりそうだ。 ■製品概要 素材:エラストマー(合成樹脂)、茶殻リサイクル材 原産地:日本 スペック:口径60、重量50g 価格:1650円 発売日:9月下旬
    (公開)2024年08月13日
    「ゴルフ界はウェルビーイングな社会の実現に貢献する!」 これは、日本ゴルフ場経営者協会(NGK)が掲げる中長期ビジョンです。去る5月30日、都内でNGKがウェルビーイングに関する講演会を主催し、私も聴講しました。講師はウェルビーイングの第一人者、慶応義塾大学の前野隆司教授です。 「ウェルビーイングをビジョンに掲げる以上、我々はウェルビーイングとは何かを学んでおく必要がある」 と、NGKの大石順一専務理事が講演会を主催した意図を語ってくれました。今回はウェルビーイングについて学んでみましょう。 2021年、私はウェルビーイングに関するセミナーを聴講。そこでは次のように説明していました。 「健康(ウェルビーイング)とは、単に病気や虚弱でないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態である」 これは世界保健機構(WHO)憲章の前文を、日本WHO協会が訳したものです。主語は「健康」ですが、これは身体が健康(Health)という狭義な意味ではなく、広義な意味での健康「Well(良好な)-being(状態)」と解釈しています。 またウェルビーイングに似た言葉に「ウェルネス」があります。これは豊かな人生、輝く人生のための基盤とし、身体的にも精神的にも健康であると定義されています。かつては身体的(Physical)に健康であることが良いとされてきましたが、近年は精神的(Mental)にも健康であり、幸福感が得られている状態がウェルネスで、これを目指す考え方に変化しました。更にこれからは職場環境や地域、福祉なども含め、社会的(Social)にも健康(健全)であるべきだという考え方に発展し、これがウェルビーイングであると私は理解しています。(図1) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/komori2408.jpg" alt="" width="900" height="675" class="size-full wp-image-82351" /> 図1 ウェルビーイングとは 歴史に見る人の価値観の変化 日本では、国民の価値観が大きく変わる、歴史上の転換期がありました。その一つが1853年の黒船来航にはじまる開国です。大名や武士が絶対的な存在でしたが、その価値観が明治維新によって崩壊。欧米諸国から近代文化を学び、文化と産業を発展させる「文明開化」と、1873年にはじまる徴兵制度で「富国強兵」の時代に突入。欧米列強の植民地政策に抗すべく、明治政府が軍事力の増強を進めた時代です。当時の価値観は「産業の発展と軍事力の増強で国を豊かにする」で、それが1945年の敗戦で閉幕。 次に日本人の価値観は「経済至上主義」へと移りました。経済的な豊かさが価値観の中心となり、高度経済成長期を経てバブル経済に発展。1991年のバブル崩壊から「空白の30年」といわれる低迷期を経て、今それが終わろうとしています。 このように、日本人の価値観は「文化」「軍備」、そして「経済」と時代と共に変化し、今は「ウェルビーイング」という価値観に移る過度期というわけです。 そのことを認識する出来事の一つが、2011年の東日本大震災ではないでしょうか。震災をきっかけに「絆」という言葉が多く語られるようになり、家族の絆、地域の絆が重要視されるようになりました。 学生の多くは給料よりも、やり甲斐や好きなことで社会貢献できる企業を選ぶ傾向だとか。結婚の条件もかつては三高(高収入・高学歴・高身長)でしたが、三平(平均的な収入・平均的な容姿・平穏な性格)に変わり、今は三低(低姿勢・低依存・低リスク)や三合(性格・価値観・好みが合う)だそうです。心の豊かさや幸福感が価値観の中心になりつつあるのでしょう。 <h2>ゴルフに学ぶ幸福の4因子</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/komori240802.jpg" alt="" width="1000" height="1000" class="size-full wp-image-82350" /> 図2 幸福の4因子(資料提供:日本電信電話株式会社<br />「Sustainable Smart City Partner Program」) NGKの講演会で登壇された前野先生は、幸福学の基礎として、幸せになるには「やってみよう因子」「ありがとう因子」「なんとかなる因子」そして「ありのままに因子」の4因子(図2)が大切だと述べていますが、私はこの4因子はゴルフそのものだと感じました。 「やってみよう」は、ゴルフに必要な主体性やチャレンジ精神、上達意欲そのものであり、マズローの欲求5段階説の最上位「自己実現欲求」を満たす原動力です。「ありがとう」も、ゴルフの基本的な考え方である他人ファースト(利他主義)であり、感謝思考とイコールです。「なんとかなる」という楽観主義やプラス発想もゴルフでは大切です。「ありのままに」も、球はあるがままにプレーするというゴルフの基本ルールそのものですし、現状を受け入れることの大切さや、自分軸を持ち、自分らしさを大事にすることもゴルフを通じて学べます。 となると、学校の総合教育や社員研修でも、ゴルフを通じてウェルビーイングが学べるでしょう。ゴルフを通じて子どもの人格形成を行う「ファースト・ティ」の大人版です。 更に前野先生は、幸福度と仕事との関係を次のように述べています。「幸福度が高い社員の創造性は3倍、生産性は31%高くなる。一方欠勤率は41%、離職率は59%、業務上の事故は70%減少する」と。また幸せと感じている人は、そうではない人と比べ寿命が7・5~10年長い。つまり幸せは予防医学とイコールだと説明されています。(図3) <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/08/komori240804.jpg" alt="" width="1000" height="563" class="size-full wp-image-82353" /> 図3 NGK主催の講演会でウェルビーイングについて語る<br />前野教授 GEW(2023年10月号)の本連載で、ゴルフは健康経営®ツールとして最適だとお伝えしたように、健康経営を切り口にゴルフ施設の利用促進を図ることも可能になると思います。学校の総合教育や社員研修、健康経営をゴルフ事業者のみで提供するのが難しい場合は、コンサルティング会社や健康経営サービスを提供する企業と協業しても良いでしょう。ウェルビーイングでゴルフの可能性はまだまだ広がると思います。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年08月04日
    アパレルのODM・OEM事業を展開するオールド・ワークスは、自社ブランドの「Tシャツ型」ファン付きウエアを展開する。ファン付きウエアはワークウエアとして広がったが、近年は猛暑の影響もあり、ゴルフやアウトドアでも活用されている。同社はその流れに注目。昨年より、普段着として着用できるファン付きウエアの開発に着手し、ついに今夏「Tシャツ型」を発売する。 Tシャツと言っても、単にTシャツにファンを付けているだけではない。裏地は風が衣服内を循環するように適度な厚みを持たせている。さらに裾を二重構造にすることで、内側をドローストリングで絞って風を逃さない仕様にしつつ、外側は通常のTシャツのシルエットを保てるように意匠を凝らす。また、ファンを脇の下に配置することで、手を下げた時に隠れる構造にして、一見普通のTシャツに見えるように工夫。さらにファンを装着する穴の周りは強度を持たせ、ファンの重みでTシャツのシルエットを崩さないようにしている。 バッテリーは、ポケットの中に配置されたバッテリー専用ポケットに入れられるようになっているため、シルエットが崩れにくく、ポケットの上から電源のオンオフや風量調整ができる仕様になっている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/202407ord.jpg" alt="" width="1000" height="1000" class="aligncenter size-full wp-image-82120" /> 全てにおいてファン付きウエアの機能性とTシャツとしてのシルエット、カジュアル感を徹底的に追求するあたり、長年アパレル業界に携わってきた同社の拘りが垣間見える。 カラーはホワイト、ブラック、カーキの3色展開を予定。オリジナルブランドのロゴをつけたタイプに加え、あえて無地のタイプも展開し、各社のロゴやブランドのプリントや刺しゅうにも対応する構えだ。例えば少人数の練習場やゴルフショップ、工房のスタッフ用、クラブメーカーの期間限定イベントや試打会時用などにも合いそうだ。ファンとバッテリーは別売りだが、同社でも販売可能だという。 今夏の暑さ対策に! 興味あるゴルフ関係者は問い合わせてみてはどうか? Tシャツ型 ファン付きウエア オールド・ワークス TEL052-265-5336
    (公開)2024年07月16日
    チノーから、ゴルフ場の温湿度管理に活用できそうな製品『リアルタイム無線ロガーMZシリーズ』が発売中だ。同製品は、温度を計測する無線データロガー、さまざまなインターフェイス通信・GPSを搭載した受信器、アプリケーションソフトで構成されている。 データロガー本体には視認性の良い大きめの液晶がついており、記録として重要な時刻も確認が可能。IP54の防滴構造を採用しており、雨に濡れても安心の設計だ。また名刺サイズより小さく、設置だけでなく携帯しても邪魔にならないコンパクトサイズを実現している。 さらに無線通信システムを内蔵しており、無線データロガーを分散配置することで、各所の温度・湿度データを測定・無線送信し、受信器を介してパソコンに一括データ収録することができる。 また、受信器には、タブレットやスマートフォンからアクセスし、データを確認することもできる。 例えば、ゴルフ場のカートに1台ずつ無線データロガーを設置し、各カートの温湿度を計測。そのデータをコース各所に配置された受信器を通してクラブハウスのパソコンやモニターに集約し、各カートに乗るゴルファーの熱中症の危険度を把握するといった活用法などもできるかもしれない。また、ゴルファー自身もカートに設置されたデータロガーの本体で温度や湿度をリアルタイムで知ることができるため、水分補給の目安にもできそう。 お問い合わせ チノー  tel0120‐41‐2070
    (公開)2024年07月15日
    東急スポーツシステムが4月にオープンした東急ゴルフスクール新綱島は、7月15日に「インドアゴルフ夏祭り」を開催する。 当日は施設を会員以外にも一般開放。ゲームチケット500円で、シミュレーターを活用したドラコン、パターゴルフ、ゴルフボールすくい、ボーリング、ストラックアウト、わなげ、ぬりえ缶バッジなどが1回ずつ楽しめる。また、賞品(お菓子予定)も用意するなど、家族で楽しめるイベントだ。入場料は無料。開催時間は12時~17時。 同施設は2017年に閉場した練習場「綱島ピーチゴルフセンター」の跡地に建てられたこともあり、地元のゴルファーからも支持されている。和モダンがコンセプトの落ち着いた内装が特徴で、全打席にゴルフゾンの最新ゴルフシミュレーターを設置。スクールとレンジ利用を融合した24時間営業のインドア施設となっている。 同社は東急ゴルフスクール新綱島のほかにも、武蔵小杉にインドアを1店舗、屋外練習場の「スイング碑文谷」「東急あざみ野ゴルフガーデン」、ショートコース「東急ゴルフパークたまがわ」も運営している。 なお同施設では8月まで、会員向けに系列のゴルフ施設を優待利用できるキャンペーンを実施中だ。
    (公開)2024年07月10日
    「月刊GEW」は7月4日、都内で「酷暑対策」をテーマにしたビジネス交流会を開催した。ゴルフ場、練習場、夏対策用品メーカーなど33社41人が参加して、酷暑下でも安全にゴルフを楽しめるよう、様々な情報交換を行った。日本ゴルフ場経営者協会の手塚寛会長は、冒頭にこう挨拶した。 「地球温暖化の影響で、年々暑さが厳しくなっています。すでにプレーを中止する動きも出ており、業界としては熱中症対策に力を入れる必要がある。啓蒙ポスターもつくったので広く周知して頂きたい」 また、全日本ゴルフ練習場連盟の横山雅也会長も、 「実は今日、神奈川でゴルフをしたんですが、酷暑でプレーが中止になった。今年は去年にも増して暑くなるという予報なので、市況も厳しくなるでしょう。とにかく、事故なくプレーを楽しめるよう、業界全体が連携して環境を整える必要があります」 会場には、業界団体が作成したばかりの熱中症予防ポスターが貼られた。ゴルフ関連15団体が連名したもので、手塚会長は、 「数日前、このポスターのURLを各団体経由でゴルフ場や練習場、ショップへ配信したばかり。プリントアウトして、それぞれの現場に貼ってほしい」 印刷したポスターを配布するのではなく、データを拡散して現場でプリントアウトする手法は、コロナ禍における感染予防ポスターで行った手法。印刷費や配送費を削減できるだけではなく、迅速な対応が図れる。各所で必要な枚数も把握できるため、全カートに貼って注意喚起したゴルフ場も多かった。今回の熱中症予防ポスターもコロナ対策に倣ったもの。 下記のURLからダウンロードできるので、関係企業は各施設に掲示。また、一般ゴルファーはゴルフの前に改めて確認、コンペの主催者は参加者に配布して注意喚起を呼び掛けてほしい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/2024_6netsuchiusyo_POS_FIX_A2.jpg" alt="" width="1000" height="1414" class="aligncenter size-full wp-image-82020" /> ⚫️《A2サイズ(420mm×594mm)》  PDFダウンロードは<a href="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/2024_6netsuchiusyo_POS_FIX_A2-1.pdf" rel="noopener noreferrer" target="_blank">こちら</a>  JPEGダウンロードは<a href="https://drive.google.com/file/d/16hEHq0_1RGRyC-6UXREsx9xaV57DlR6W/view?usp=sharing" rel="noopener noreferrer" target="_blank">こちら</a> ⚫️《A3サイズ(297mm×420mm)》  PDFダウンロードは<a href="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/07/2024_6netsuchiusyo_POS_FIX_A2-1.pdf" rel="noopener noreferrer" target="_blank">こちら</a>  JPEGダウンロードは<a href="https://drive.google.com/file/d/1_teLC2ZrN7OMaLYOPXDHL7hBpXxLhAeC/view?usp=sharing" rel="noopener noreferrer" target="_blank">こちら</a> 熱中症対策の啓発にご活用ください。
    (公開)2024年07月06日
    松下幸之助は「企業は社会の公器」という言葉を残した。過去2回の連載では新たなゴルフ場の価値を「公益」の視点で考えて、地域社会との共生やフットゴルフの導入など、実際の活動を中心に紹介してきた。3回目の今回は、なぜ自分がそのような考えに至ったのかをいくつかの視点でお伝えしたい。 Sustainable Development Goals(SDGs=持続可能な開発目標)の達成が近年、叫ばれている。だが、本来は企業の存在目的や、活動そのものが、次代を担うに相応しいものでなければならない。私利私欲のみを追求する企業は、社会から退場を迫られる。松下幸之助の言葉は、SDGsと通底するところが多い。そして、ゴルフ業界もその可能性に溢れている。ぼくが創業家の三代目として栃木県のゴルフ場を継ぐ決心をしたのも、新たなゴルフ場の在り方を提言できると確信したからだ。 小学生から始めたラグビー一色の人生の転機は、東日本大震災であった。高校3年生の当時、テレビで目の当たりにした光景に居ても立っても居られず、一人被災地にボランティアに向かった。そこで痛感したのは、自分の無力さだった。。一人が足掻いても出来ることは限られている。有事の時はラグビーのようにチームで、社会全体で立ち向かわなければいけないということを実感した。 大学に進学してからは、アメリカ・ワシントンD.C.に留学して「国際環境と開発」を履修した。2015年に国連がSDGsを発表する前だったこともあり、大学周囲の様々な国際機関や企業を訪れ、ヒアリングを通じ「自分なりのSDGsを考える」ことを期末課題とした。当時を振り返ると、全く本質を理解できていなかったと感じるが、社会の目指す先が変わり始めていることを、一流専門家から聞けたことは自分の経営理念に大きく影響している。 SDGsとは、国連で採択された「未来の形」だ。健康と福祉、産業と技術革新、海の豊かさを守るなど経済・社会・環境にまたがる17の目標と169のターゲットがあり、2030年までの実現を目指している(※1)。4つのP(人間People、地球Planet、豊かさProsperity、平和Peace)を目標として、これを5番目のP(国際社会のパートナーシップPartnership)で実現することが定められ、中でも重要な理念として「誰一人取り残されない(No one will be left behind)」を掲げていることが特徴だ。儲けることを第一義に置き、得た利益で社会的責任を果たすというCSRの考えとは、この理念において大きく異なっている。 持続可能な社会を目指す上で、誰かが蔑ろにされたり、負債を未来に先送りしたり、ましてや誰かの犠牲の上に成り立つ社会ではなく、在り方から根本的に変えるもの。自分はSDGsをそのようなメッセージだと受け止めている。 ゴルフ場には広大な敷地があり、あらゆる可能性がある。これを有効活用して自分の流儀で「誰一人取り残されない」社会を作り出そうと考えている。 とはいえ、一朝一夕でSDGsは達成できない。まずは全社一丸となって進むためのビジョンが必要となり、スタッフ全員と1on1で話をすることから改革を始めた。 社内で会社のビジョンを考えるためのワークショップを開いていくと、ゴルフのお客様へ最高の経験を届けることは勿論だが、ゴルフをしない方にもコースを見てもらいたい! という言葉や、「笑顔で働きたい」という願いを多く聞くことができた。 話は変わるが、ゴルフ産業を含むサービス業ではお客様を第一に掲げ、自らを犠牲にしながら働く姿を見ることもあるが、ぼくはこれに反対だ。サービスの由来はそもそもラテン語の形容詞セルブス(servus=奴隷の)や、それが名詞化したスレイブ(slave=奴隷)、サーバント(servant=召し使い)で、言葉の背景にはローマ時代に築かれた「上下関係、主従関係」があると言われる(※2)。 この言葉からも、サービスは時として一方的な奉仕の意味合いが含まれていると感じるのだ。しかし「誰一人取り残されない」社会を目指すためには奉仕する・される関係ではない関係を作る必要があると考えた。すると当社の企業理念は、働く人、ゴルフをしない人も含めた「みんな」が笑顔になれる環境づくりを目指す会社、となる。こういった背景から「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」というセブンハンドレッドのビジョンが生まれるに至った。 <h2>人と人の「つながり」が新たな経営資本になる</h2> ここまでの話だと、慈善事業に注力するだけの印象かもしれないが、そうではない。ぼくは、SDGsを体現することが企業活動を爆発的に前進させる、イノベーション創出の最大の機会だと考えている。イノベーションは、シュンペーターが「経済発展の理論」の中で用いた「新結合」と訳されることが多いが、その原義は「生産をするということは、われわれの利用しうる色々な物や力を結合することである。生産物および生産方法の変更とは、これらの物や力の結合をすること(※3)」である。つまり既存の知と既存の知の結合(かけ合わせ)から、企業が進化を遂げるために必要な源泉が生まれる、ということだ。 ゴルフ場はノンゴルファーを受け入れることが少ないが、それはゴルフ場業界がイノベーションとは程遠いメンタリティにあることを示している。ゴルフ業界は良くも悪くも排他性が強いと感じる。ゴルフ場を開かれた場所にし、ゴルフ場でチャレンジしてみたい願いや想いを集めて実行していけば、この場所を核とした「結合」が次々と生まれる。前号までに紹介したフットゴルフや地域のマラソン大会をセブンハンドレッドで開催したら、これに連なる案件が続々と寄せられるようになってもいる。 現在、社名にかこつけて「セブンハンドレッド トライアル」を実施している。これは、10年間で700個の新しいトライ(取組み)を生み出そうというチャレンジだ。700個のトライをすれば、必ずヒットが出る! という想いの下、スタッフ全員で新しいことにチャレンジしているのだ。 一見、無謀かもしれないが、だからこそ「新結合」が重要になる。社内の発想だけでは限りがあるため、顧客や会員、地域住民、または広大な敷地を使って「楽しみたい」と思う人からアイデアをもらい、一緒に実行していくのだ。今まで出来なかったことが、出来る! となると、様々な意見が集まってくるし、事実セブンハンドレッドでは様々な取組みが生まれ始めている。お金がイノベーションに変わるわけではない。人と人との繋がりである「人的資本」が新しい資本を生む原資となる時代だからこそ、ゴルフ場にはイノベーションを生む無限の可能性があると信じている。 ※1 蟹江憲史「SDGs(持続可能な開発目標)」、中公新書、2020年。 一部筆者が加筆 ※2 阿部佳「わたしはコンシュルジュ」、講談社、2010年。 ※3 ヨーゼフ・シュンペーター、(1997)「経済発展の理論」(塩野谷祐一 他訳)岩波書店。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年04月16日
    2022年7月31日、昭和の森ゴルフコース(東京都)でNPO法人東京こどもホスピスプロジェクト主催のチャリティゴルフコンペが開催された。居場所のない、重い病気を抱える子どもたちをサポートする活動に賛同した若手ツアープロの塩見好輝、中西直人、片岡尚之、平田憲聖が参加して、イベントを大いに盛り上げた。練習グリーンでは、難病と闘う子どもたちとプロゴルファーが交流するパットゲームが行われ、根本和奏ちゃん(9歳)は「入らなかったけどパターがボールに当たって楽しかった。お兄さんがとてもわかりやすく教えてくれた。またゴルフで遊んでみたい」と目を輝かせた。 運営・協力のHonest feeling株式会社、土屋健社長に話を聞いた。 「1ヵ月前に、共通の知り合いから相談を受けました。ちょうど男子ツアーのスケジュールが空いていて、翌週の試合会場への移動も無理がなくいいタイミングでした。チャリティオークションを盛り上げるために集客が必要でしたが、準備期間が短かったので苦労しましたね。今回開催してみて、ドネーション活動に興味のある方が多くいることがわかったので、第2回は早めに告知をして運営に活かしたいです」 参加者は4組12名で、ハーフラウンドコンペでは4名のプロゴルファーが1ホールずつ合計4ホールを帯同。プレー終了後は練習場で直接ワンポイントレッスンを受けられる豪華な内容に全員が大満足。プレー後のチャリティオークションでは、ネーム入りのキャディバッグや実際に使用したパターなどファンにはたまらない豪華な賞品が集まった。 昭和の森ゴルフコースはアクセスがよく、400ヤード240打席を有する広大な練習場があり、イベントの開催場所としては最適。 実施に至った経緯を佐野健作支配人に聞いた。 「主催者のNPO法人が、当社系列の宿泊施設を普段から利用されており、今回のイベントに協力しました。年間を通じて、貸し切りのチャリティコンペや、近隣に住む子どもたちのスナッグゴルフ大会などの貢献活動を積極的に行っています。残念ながら、来年の夏以降に閉場が決まっており、それまでなら喜んで協力をしたいですね」 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-76243" /> ゲストプロの塩見好輝は、 「いつも多くの方々に応援をしてもらい、ゴルフしかしてこなかった自分が世の中のために何ができるかを考えるきっかけになりました。自分にも2歳になる子どもがいます。難病の子とパターゲームで交流して、楽しそうな笑顔を見てとても嬉しくなりました。プロゴルファーだからこそもっとできることがあると思うし、周りの後輩を巻き込んで、社会貢献を続けていきたい」 と、語った。 2020年にNPG法人東京こどもホスピスを設立した、佐藤良枝代表理事は、5年前に病気で息子を亡くし、闘病中どこにも行く場所がなく孤立した経験をもとに、日々ホスピスの普及活動を行っている。 「東京都には大変な毎日を過ごす子どもと家族が笑顔でいられる場所がありません。開設場所は決まっていますが、コロナ禍でチャリティなどのプロジェクト活動が中止になり、事業計画が2年遅れになってしまいました。ゴルフ場は初めてですが、健康的にみんなが明るく楽しく過ごせる場所だと感じました。わたしも真剣に始めてみようと思います」 海外では誰もが気軽に参加するチャリティイベントだが、日本ではまだ文化が根付いていない。興味はあるが実際にどのように支援すればいいか戸惑っている人に向けて、ゴルフを通じて楽しみながら気づけば社会に役立つようなスキームを継続的に提案していきたい。 <h2>様々な交流が生まれたチャリティイベントの参加者にインタビュー。</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/3.jpg" alt="" width="788" height="550" class="aligncenter size-full wp-image-76244" /> <strong>根本友美さん(参加者保護者)</strong> 今回は、9歳と2歳の子供を連れて、プロゴルファーとの交流イベントに参加しました。ここ、昭和の森ゴルフコースまではクルマで15分ほどの場所に住んでおり、よく近くを通りますが、コースの中に入ったのは初めてです。普段の生活ではゴルフにまったく関わることがないですし、この子がいなかったら一生このような機会は無かったと思います。色々な方にお会いできて貴重な経験につながりました。初めてのゴルフ場は、暑いですが緑が多くて、風を感じることができて気持ちのいい場所だと思いました。 <strong>林知宏さん(参加者)</strong> 参加した片岡尚之プロと自社で展開するライフスタイルブランド「TFW49」の契約をしていることもあり、イベントを知って参加しました。実は、子供の頃は小児がんだったので、病気の子の気持ちがよくわかりますし、居場所となるホスピスを充実させることは大切。正直に言うとこのようなチャリティに参加するのは初めてでしたが、とても素晴らしい試みなので、今後は積極的に参加をしたいと思います。ツアープロとこんなに近い距離で接することはあまり無い機会なので、貴重な経験ができるし、男子プロも魅力をアピールできて、盛り上げるきっかけになると思います。もっと発信をして多くの方に知ってもらい、イベントの規模が拡大してホスピスプロジェクトの支援の輪が広がるといいですね。 <strong>徳永絹江さん(参加者)</strong> 塩見好輝プロのSNS投稿でイベントを知り、新潟県から参加しました。男子プロが試合の合間に一生懸命チャリティ活動をしているのは知っており、興味はありましたが参加するのは初めて。ゴルフが大好きで、普段はメンバーコースの月例競技に参加したり、男子ツアーの観戦をしたりして楽しんでいます。 地元新潟の「サトウ食品」がサポートしていることもあり、契約をしている塩見プロ、中西プロ、片岡プロを推しています。男子ゴルフを盛り上げようとするサービス精神とホスピタリティがあって、気軽に接してくれて、ますます大ファンになりました。参加者は貴重な体験ができて、しかもチャリティになるのはとっても嬉しい。暑い中、汗をかきながら一生懸命子どもたちや参加者と交流する姿を見て元気になりました。また機会があればぜひ参加をしたいと思います。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年03月03日
    GEW読者の皆様なら「ドライブ・チップ&パット」というジュニア競技をご存じの方も多いと思う。その名の通り、ドライバーの飛距離とチップとパットの正確性を点数化して競うゲームである。 7歳から15歳を対象とし、5万人以上の子どもたちがアメリカ全州の予選大会に参加。厳しい予選を勝ち抜いた男女各40名が決勝大会に進出し、決勝会場はあのオーガスタ・ナショナルGCで、マスターズ開幕直前の日曜日に開催される。 「ドライブ・チップ&パット」はマスターズ委員会、USGA(全米ゴルフ協会)、PGA・オブ・アメリカによって2015年に第1回が開催されて以来、新しいエキサイティングなジュニアゴルフ競技として年々参加者が増えているという。 参加者の取りまとめは、全米でジュニアゴルフ育成プログラムを管理運営するFirst Tee(ファースト・ティ)が行っている。 参加する子どもたちの全員がプロゴルファーを目指すわけではない。予選会では、自分のゴルフクラブを持っていない子どもたちでもレンタルして参加できる。人間形成を学ぶことを趣旨とするファースト・ティに沿うよう門戸は広い。 「ドライブ・チップ&パット」と名称は異なるが、その日本版として「DAP(ドライブ・アプローチ・パット)チャレンジ2022 U‐15」が2022年に初めて開催された。競技方式は「ドライブ・チップ&パット」と基本的には同じで、性別と年齢別にカテゴリーを分け、ドライブはティーイングエリアから40ヤード幅での飛距離、アプローチではピンから10~15ヤード地点からの残距離、パットはグリーン上の1・8m、4・5m、9mの3カ所から残距離をそれぞれ点数化し、その合計得点をカテゴリー内で競う。 <h2>ZOZOの会場で決勝開催</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/image0-3.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-75905" /> 「DAP チャレンジ2022 U-15」は、ファースト・ティ・プログラムを日本で管理運営するNPO法人ファースト・ティ・ジャパンが主催となって企画がはじまった。 予選会は普段からファースト・ティ教室を開催している有馬カンツリー倶楽部(兵庫県)、真駒内カントリークラブ(北海道)、北谷津ゴルフガーデン(千葉県)、大相模カントリークラブ(神奈川県)の4会場で実施することが決められた。 以前より「日本版DAPがやりたい!」とファースト・ティ本部事務局とは話してきたが、具体的な開催概要を記した企画書をいただいたのは2022年7月のこと。このとき、米国の決勝大会同様に、日本で唯一のPGAツアーであるZOZOチャンピオンシップ直前の10月9日(日)に、同大会会場のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブで決勝大会が行われることが記されており、夢のある大会になるかもしれないと思えることができた。 4つの地区予選会で各カテゴリー1位の選手は習志野CCでの決勝大会への出場資格を得ることも記されていた。 すでに時間的猶予はないが、子どもたちのことを考えると予選会は夏休み中にやるべきと考え、有馬CCでの予選会は2022年8月21日(日)と決めた。 日本ではまったく初めての競技であり、ジュニアに限定されていることもあって競技に対する認知度は低い。約1か月と時間も限られているので参加者募集が大変困難だった。 結果として、有馬CCでの予選会には13名の子供たちが参加。普段行っているファースト・ティ教室からは9名、大会を聞きつけた一般の参加者は4名だった。 しかし、この4名はみんな強者で、世界大会で優勝している選手など日本を代表するジュニアゴルフの選手が参加してくれた。 競技時間は2時間程度。最初は戸惑いからか、感情を表情に出す子は少なかったが、それでも時間が進むにつれてミスショットを悔しがったり、パットでのカップインには小さくガッツポースがでたりという姿が見られるようになった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/IMG_0721.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-75908" /> そして10月9日の決勝大会では、各地区から総勢30名の選手が年齢カテゴリーごとの日本一を目指して競いあった。 決勝大会の最中、ZOZOチャンピオンシップに出場するC.T.パン選手(台湾)が練習の手を止めて大会に駆けつけ、子どもたちにサインや記念撮影などの交流をしてくれるという思いがけないプレゼントがあった。PGAツアーで1勝しているパン選手については、2021年東京オリンピックで7人のプレーオフを勝ち抜いて銅メダルを獲得したことを覚えている人は多いだろう。 第1回目となるDAPチャレンジは様々な問題を残しつつ、何とか無事に終了することができた。次回開催までに問題解消に向けてしっかり検討し、有馬CCで行う予選会も含め、本部にはしっかりとした大会基盤をつくっていただきたいと願う。 新しいゴルフ大会のひとつとして、本格的にゴルフを始めていない子どもたちにも積極的に門戸を広げていきたい。そうすることで、ゴルフと子どもたちの架け橋になるような大会に成長させていきたいと考えている。 そして将来、日本のDAP決勝で優勝した子どもたちを米国の「ドライブ・チップ&パット」へ参加させ、さらにはオーガスタ・ナショナルGCでの決勝大会へ送り出すことを夢みている。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年02月15日
    <strong>Q1  ゴルフ人口「75歳の壁」は、本当なのか?</strong> コロナ禍で、特に若い世代のゴルフ人口が増えていると様々な人から聞きますが、信憑性がよくわかりません。そんな中、先日一季出版はスポーツ庁が毎年発表している「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(スポーツ庁世論調査)のローデータを1歳刻みで分析した結果「ゴルファー2025年問題、75歳の壁がデータに出現」と発表しました。具体的には「70~74歳の層で山脈形成、75歳から半減以下の断崖に」というものです。大石さんはどのように考えますか? <strong>A1</strong> ご質問ありがとうございます。この記事は、スポーツ庁が毎年11月に「楽天インサイト」パネルの約220万人を対象に、18歳~79歳の男女に対して、人口構成比に準拠した割付で有効回収数2万件になるまでWEBアンケート調査(目標回収数に達するまで回答をWEB受付)したローデータに基づくものですが、まず、ゴルフに関係する内容を見てみましょう。 これによるとゴルフ実施率は、2019年7・1%、2020年6・6%、2021年6・2%と年々減少しています。また、2021年に「ゴルフを新たにあるいは再開した人」は、男性では50歳代4・4%、60歳代6・0%、70歳代4・7%、女性では20歳代1・4%、30歳代1・3%となっています。以上のように「スポーツ庁世論調査」によるゴルフ参加率の減少は、2021年度の延べゴルフ場利用者数が前年度比10%増の8980万人になったこととはやや反するものとなり、多くのゴルフ場関係者が肌感覚として感じている「若年層ゴルファーの増加」とは異なる結果です。 これとは別に、ゴルフ人口については調査対象数や方法が異なる次の三つの数値があります。「レジャー白書2021」520万人、「スポーツ庁世論調査」からの推計数585万人、総務省が5年に一度発表する「社会生活基本調査2016」895万人です。これらのどれを信じるかは、読み手の判断に委ねざるを得ないのが実情です。 ご質問の1歳ごとのゴルフ人口を推計するためには、1歳ごとの人口構成に準拠したサンプル数が必要ですが、スポーツ庁の調査は10歳ごとの人口構成に準拠したものとなっているため、1歳ごとの参加者数を推計するものではありません。私見ですが、「75歳の壁がデータで出現」は、ややミスリード的な表現ではないでしょうか。 ゴルフ業界では「団塊の世代」が全て75歳以上の後期高齢者になる2025年を想定した対応を考えるべきとの意見があります。これは、2005年頃に2015年に「団塊の世代」が満65歳を迎えてゴルフ人口が大幅に減少するとした「2015年問題」の焼き直し的な考え方で、やや「オオカミ少年」的になっているとも思えます。 近年、健康寿命は延伸しており、加えてスウェーデンのカロリンスカ研究所の発表では「ゴルフ実施者の寿命は未実施者よりも5年長寿」とされています。さらに、就労年齢も70歳まで引き上げられるなど、現役年齢が上昇しています。 市場の今後を推測するうえで調査数値はある程度参考になるかもしれませんが、調査内容は様々であり、超高齢社会の到来によりシニアの生活環境も変わっています。そのため筆者は、ゴルフ場利用者の増加原因は、コロナ禍で人々の価値観が「家族や仲間との時間の大切さ」「競争より、助け合って暮らす」等の身近な事象や安全欲求にシフトして「ウェルビーイングな生活」を目指したためと考えます。各種データに一喜一憂することなく、世情を冷静に見つめることが重要でしょう。 急激な人口減少局面を迎え、過度な経済成長を目指すよりも、世界の人々が心身ともに豊かに暮らしていける社会的基盤を作るとする「SDGs」への取り組みこそが最重要課題ですと主張しているのはそのためです。 <h2>誰でも出来る「フードロス」への取り組みにトライしよう!</h2> 「SDGs」への取り組みは保健・教育・人権・ジェンダー・環境等、多岐にわたりますが、ゴルフ場として取り組み易い目標の一つが「フードロス削減」ではないでしょうか。 超高齢社会の中で少子化による人口減少が進む日本ですが、国連は、2019年に約77億人だった世界人口が2030年に85億人、2050年には97億人に達すると、急激な増加に警鐘を鳴らしています。また、気候変動による干ばつや洪水などによって、現状でも世界で8億人以上もの人が食料不足により慢性的な栄養不足に苦しんでいます。国連世界食料計画が全世界で行っている食料支援量は年間420万トンになります。ロシアによるウクライナ侵攻によって小麦の輸出が滞り、日本国内で様々な食品が値上げされていますが、小麦粉を主食とする国や地域では食糧危機による政情不安が危惧されています。 ところが、消費者庁の発表によれば、2019年の日本の「食品ロス量」は年間570万トン(一人当たり45㎏)で、この内訳は事業系が309万トン、家庭系が261万トンとのこと。実に、国連食料支援量の1・4倍にあたる「まだ食べられる食品」を日本は廃棄しています。 食品ロス削減のために、2019年10月に施行されたのが「食品ロス削減推進法」で、毎年10月に「食品ロス削減月間」として運動が行われています。「フードロス削減」への個人として取り組み例は、食品ロス問題を意識して削減を心がけること、すぐ使う予定の食材は賞味期限までの長さに拘らず購入すること、外食時には食べきれない量をオーダーしない等が求められています。 また、レストラン等の事業者の責務として「お客様に食べきって頂くこと」が一番大切であるとして、小盛を作る等の選択メニューを準備する等が求められています。食品ロスを解消することで食品を無駄なく使うことは、経費を削減できるだけでなく地方自治体や国が廃棄にかける費用の削減にも貢献できます。 近年、学校教育においても、エシカルな消費(倫理的消費)としての食品ロス削減について授業が行われています。「企業は社会の公器」との考え方が、重要になっています。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年01月20日
    イマジンジャパンは冬のゴルフに最適なアイデア商品、『グリップ・ウォーマー』(2500円)を自社ECなどで発売中だ。 冬は手先が冷たくなるだけでなく、グリップも硬化するため、フィーリングを感じにくい。同商品はそういった冬ゴルフの難点を解消するかもしれないアイテムだ。特徴は細長いネットの中が4部屋に分かれており、そこに使い捨てカイロを入れられるようになっている。 ネットの先端には長さ調整可能なベルトとフックがついおり、キャディバッグのOリングなどに引っかけてバッグの底まで垂らせる構造だ。実際に家を出る前に挿入し、ゴルフ場に着く頃にはグリップが温かくなっているという。グリップだけでなくシャフトも温めることができるので、キャディが脇にクラブを挟む際にも温かいとか。 カイロは高熱タイプのものを推奨しており、4個250円ほどで購入できるという。また同商品は洗濯ネットと同じ素材を使用しているため、4部屋の中にそれぞれグローブを入れて洗うなどの活用もできるとか。 特筆すべきは商品と共にSDGsも考えられている点。 使い捨てカイロをゴルフ場に設置された専用のBOXで回収。カイロはGoGreenグループ社によって中身がキューブ状に加工され、再利用される。 カイロの中に含まれる鉄はヘドロに反応して無害化し悪臭を抑制して水質を改善する性質を持っており、これを川や池に使用することで濁った水を透明に変えることができるという。既に東京海洋大学との共同実験で水質改善を実証しており、キューブはゴルフ場の池、釣り堀、城の堀、濁った池や川など様々な場所に活用されているという。ゴルフ場の池はボールが入ることで汚れる傾向にあるが、このキューブを使うことで透明になれば景観が美しいだけでなく、ロストボールも見つけやすいなど副次的な効果も期待できそうだ。 同社は回収BOXの設置に賛同するゴルフ場を募集しているという。ゴルフ場で回収されたカイロが再びゴルフ場の池を綺麗にする。『グリップ・ウォーマー』はSDGsに寄与する商品と言えそうだ。 グリップ・ウォーマー お問い合わせ イマジンジャパン 03-6300-9386
    (公開)2023年01月09日
    有馬カンツリー倶楽部では、子どもを対象とした〝ファースト・ティ〟ゴルフ教室や大学のゴルフ授業〝Gちゃれ〟などの活動を積極的に実施している。 この活動に参加してくれる子どもや学生のほとんどがゴルフの初心者である。これら初心者が多いゴルフ教室の活動に『スナッグゴルフ(SNAG GOLF)』が欠かせないモノとなっている。 スナッグゴルフは、テリー・アントンとウォーリー・アームストロングという2人の米国プロゴルファーによって2001年に開発されたスポーツである。スナッグ(SNAG)とは、"Starting New At Golf"(〝ゴルフを始めるために〟の意)の頭文字を取った造語である。 さらに、SNAGとは「くっつく」という意味がある。スナッグゴルフで使用するターゲット類はすべてボールがマジックテープでくっつくようにデザインされている。この二つの理由から「SNAG」と命名された。 スナッグゴルフはゴルフの基本を学ぶために開発されたため、ゴルフの基礎的要素を全て持ち合わせている。ティーショットを打ち、アプローチをして、パットをしてホールアウトするという流れは「ゴルフ」そのもの。子どもや初心者でもボールを容易に打つことができ、場所を選ばず安全にプレーできる〝簡易版ゴルフ〟といえるスポーツである。 ルールもわかりやすく、広さの限られた場所でも充分に楽しめるスポーツとなっていて、ゴルフ場やゴルフ練習場だけでなく、校庭や野球場、陸上競技場、体育館などある程度の広さがあれば場所を選ばずにプレーできる。 スナッグゴルフの道具は、安全性と簡易性を満たすために開発され、ショット用の「ランチャー」、パター用の「ローラー」という2種類のクラブを用いる。いずれも大きなヘッド(ゴルフのアイアンの約3倍の大きさ)は硬質プラスチック素材、シャフトにはグラスファイバー素材を採用し、本物のゴルフ感覚を体感することができるようになっている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/DSC_0101.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-74538" /> スナッグボールは、テニスボールを一回り小さくしたサイズで柔らかく、安全性に優れている。ボールの重さはゴルフボールとほぼ同じなので、ゴルフと同じような打感を得ることができる。ゴルフのホール(穴)にあたるものは「スナッグフラッグ」と呼ばれ、黄色い土台に砂や水を入れて設置。土台のマジックテープの部分にボールがくっつけばホールアウトとなる。 ティーアップには「ランチパッド」というマットを用いる。ランチャーでボールを打つ際に使用し、芝生・床・コンクリート・土などあらゆる地面に対応し、地面を傷つける心配がないため、学校の運動場・体育館でも実施できるように工夫されている。このランチパッドには黄色い大きな矢印が付いており、目標に向けてセットアップすることで常に正しいアドレスが可能となっている。 現在、日本スナッグゴルフ協会をはじめ各地にスナッグゴルフ協会があり、スナッグゴルフの普及に努められている。小学生対象の競技なども積極的に行われている。兵庫県三木市でも三木市ゴルフ協会主催で市内小学生対象の競技大会が定期的に開催されている。 これら多くの競技会で見られるように、一般的には「スナッグゴルフは子ども用の簡易ゴルフ」と思われる節があるが、スナッグゴルフを子ども用と限定するにはあまりにももったいない。 スナッグゴルフのクラブサイズにはS・M・Lの3種類が存在する。Lサイズは身長150cm以上が対象となっており、大人が使えるサイズである。 大人がゴルフを始めるための導入ツールとしても十分価値がある。それを実証するために大学ゴルフ授業〝Gちゃれ〟でも積極的に使用し、その有効性を目の当たりに見てきた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/IMG_0836-.jpg" alt="" width="788" height="545" class="aligncenter size-full wp-image-74540" /> さらに2022年7月には兵庫県の次世代経営者が集うレクリエーションイベントとしてスナッグゴルフ大会が有馬カンツリー倶楽部で開催された。参加者37名のうちゴルフ経験者は10名程度、あとは全く経験がない方々である。 15分ほど練習したのち、ドライビングレンジに作った9ホールを2周、チーム戦のスクランブルゲームで競い合った。わずか2時間のイベントだったが、初心者も経験者も全員が楽しんでくれてとても盛り上がった。 スナッグゴルフは大人が使っても十分楽しめるスポーツであることに間違いはない。しかし、ゴルフ場を経営する我々にとっては、スナッグゴルフそのものを普及させることが目的ではない。スナッグゴルフはあくまでゴルフを始めるための導入ツールであり、ゴルフクラブを握ってゴルフボールを打つための第1歩であるべきと考えている。 最初にスナッグゴルフで〝模擬ゴルフ〟を体感し楽しむ。そうすることでゴルフへの興味が沸き「本物のゴルフをやってみたい!」という想いを抱かせる。そして実際にゴルフを始める。そうした流れを夢見ながら、日々取り組んでいる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/IMG_1542.jpg" alt="" width="788" height="525" class="aligncenter size-full wp-image-74541" /> <h2>★スナッグゴルフの一般的なルール</h2> 1)1打目以降もランチャーでボールを打つ時は常にランチパッドを使用する。 2)グリーン内では必ずローラーを使用する。ローラーは、グリーンエリア外で使用することはできない。 3)グリーンエリア内に入ったボールに関しては、ボールの位置を動かすことはできない。 4)ボールがコースから出た場合は、その出た地点に最も近い場所から、ルール①に従ってプレーを続ける。その際、ペナルティポイントが1打加算される。 5)ボールを紛失した場合、ペナルティ1打が課せられ、紛失したと思われる場所に最も近い場所から、ルール①に従ってプレーを続ける。 6)グリーンエリア内において、プレーヤーのボールが、他のプレーヤーのショットの妨げとなっている場合は、スナッグフラッグに近いプレーヤーが、ボールのある場所にコイン又はその他の小さく、平らな物を代わりに置き、その場所を「マーク」する。 マークしたらボールを一旦拾い上げ、他のプレーヤーがプレーを続行できるようにし、他のプレーヤーがショットした後、ボールをマークした場所に戻してプレーする。 7)ホールアウト(ホール終了)したとみなされるためには、ボールは必ず、スナッグフラッグにくっついた状態にならなければならない。ボールがはね返ってしまった場合はホールアウトとみなされない。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月24日
    Q1 聞き慣れない「ウェルビーイング」の意味とは? 大石さんは前回、2030年を目標としたゴルフ界の中長期ビジョンとして「ゴルフ界はウェルビーイングな社会の実現に貢献する」と提案しましたが、初めて「ウェルビーイング」という言葉を聞きました。「WELL-BEING」を直訳すると「幸福」「健康」という意味だそうですが、よくわかりません。「ウェルビーイング」という概念や、これに基づく社会の動きなどがあれば教えてください。 <h2>A1 ありがとうございます。わたし自身の考えを、なるべく平易にお伝えしたいと思います。</h2> まず、世界保健機関(WHO)は、「そもそも人間が幸福であり、健康であり、福祉(幸福)を享受することができること、そのことを大切にする考え方がウェルビーイングである」としています。 我が国では、2021年3月に発表された「成長戦略実行計画」の一つとして「国民がウェルビーイングを実感できる社会の実現」が掲げられました。具体的には、 「成長戦略による成長と分配の好循環の拡大などを通して、格差是正を図りつつ、一人一人の国民が結果的にウェルビーイングを実感できる社会の実現を目指す」 というものです。これを受け、自民党内に設置された特命委員会では「ウェルビーイングの向上を実現していくことこそが、政治や行政の目指すべき目標」として、将来を担う世代のために国づくりを検討するとしています。 産業革命以降、世界は豊かさを求めて国内総生産(GDP)を伸ばすべく経済活動を拡大してきましたが、その結果として、大量の廃棄物や過剰開発による地球温暖化現象、生態系の変化を生み、人類は大きな危機に直面しています。 2年を経過したコロナ禍により、非対面・非接触という「人と人との分断」が起こり、今までの生活が一変しました。孤独や孤立といった問題が顕在化するとともに、多くの国民が「人と人とのつながり」といったお金では買えない価値観を痛感し、「ウェルビーイング」という概念が注目されつつあるのです。 我々はこれまで、国や国民の豊かさを測る指標として「GDP」を重視してきましたが、GDPでは捉えきれない精神的な充足感「全ての人と社会が幸福を実感する」新たな指標として「国内総充実(GDW)」が提唱されてもいます。 ほかにも有名な指標があります。 世界一幸福度が高いといわれるブータンでは、国王が「GDPよりGNHが大事だ」と述べていますが、これは「国民総幸福量」の略称です。GNHは単なる観念論などではなく「精神的な幸せ」「健康」「時間の使い方」「文化の多様性」「ガバナンスの質」「地域コミュニティの活力」「環境の多様性」「生活水準」の9分野から構成され、国家運営の基礎とされています。 さて、国連の「持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)」は、毎年3月20日の「国際幸福デー」に合わせてランキングを発表しています。名付けて「幸福度ランキング」です。 これによると2021年度の日本は、前年よりやや上昇して149か国中56位でした。1位は3年連続でフィンランド。アジアの最上位は24位の台湾です。 日本は、1人当たりのGDPや社会保障制度の確立、世界第2位の長寿国、治安が良く暮らしやすい等、素晴らしいはずなのに、なぜか順位が低いのです。なぜでしょう? <h2>ちょっと気になる日本人気質!</h2> 順位が低い理由のひとつとして、日本は「人生の自由度」と「他者への寛容さ」が低く、そのことが原因で幸福度が低いとの見方があるようです。「人生の自由度」に悪影響を与えるのが「働きすぎ」で、「休暇が取りづらい」「職場の中で自分に合った働き方を自由に選べない」などが指摘されます。 他者への「不寛容」については、積極的に寄付やボランティア活動に参加する習慣がないことも、影響しているとみられます。 日本は、数値化された客観的なデータからは、間違いなく「幸せな国」と言えます。今後は、容易に数値化できない「自由度」や「寛容さ」に加えて、多種多様な人が互いの考え方の違いや個性を受入れながら、ともに成長する社会の実現を意識して生活すれば、幸福感に満ちた国になれると思います。 別の視点で「日本人気質」を考えてみましょう。「世界幸福度ランキング」が低順位な一因に、私は「中庸を重んじる」(言い方を変えるとハッキリしない)日本人気質があるように思います。 このランキング調査は「自分の生活の満足度が、いまどこか」を主観的に回答する方法で行われるので、「中間的」なところを選ぶ回答が多いのではないかと考えられます。 中庸を重んじる日本人気質は、気候変動に関する別の調査結果にも表れています。 2021年、世界の人々の問題意識や意見の傾向を調べる米国のシンクタンク「ピュー・リサーチ・センター」が、先進17か国の1万8000人を対象に「気候変動や地球温暖化対策についての意識調査」を行ないました。ほとんどの国で、「非常に懸念している」という回答が、2015年調査に比べて増えましたが、日本は減少しているのです。 各国の「懸念増加率と割合」は、ドイツ19ポイントアップの37%、英国18Pアップの37%、豪州16Pアップの34%、韓国13Pアップの45%となっています。日本は8P減少の26%です。日本は他国と比べても「気候変動」に対する意識が高かったはずなのに、一体どうしたというのでしょう。 この調査はさらに、気候変動に対して「個人の生活をどれくらい変化させたいと思うか」と質問しています。日本人の回答は「少ししか変えない36%」「ある程度変える48%」で8割以上を占め、積極性の低さが目立ちます。先述した「懸念の度合い」についても、「非常に懸念している26%」「ある程度懸念している48%」と7割を超えましたが、この「ある程度」に、私は「中庸」を好む日本人の気質が表れているように感じます。 数値化が難しい「ウェルビーイング」の在り方を考えるとき、一人ひとりが個々の価値観をどのように確立していくのか。同時に、「中庸」が「積極派」に一変するのも日本人の特徴。我々ゴルフ業界も、その流れをつくる努力が必要です。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月02日