有馬カンツリー倶楽部では、子どもを対象とした〝ファースト・ティ〟ゴルフ教室や大学のゴルフ授業〝Gちゃれ〟などの活動を積極的に実施している。
この活動に参加してくれる子どもや学生のほとんどがゴルフの初心者である。これら初心者が多いゴルフ教室の活動に『スナッグゴルフ(SNAG GOLF)』が欠かせないモノとなっている。
スナッグゴルフは、テリー・アントンとウォーリー・アームストロングという2人の米国プロゴルファーによって2001年に開発されたスポーツである。スナッグ(SNAG)とは、"Starting New At Golf"(〝ゴルフを始めるために〟の意)の頭文字を取った造語である。
さらに、SNAGとは「くっつく」という意味がある。スナッグゴルフで使用するターゲット類はすべてボールがマジックテープでくっつくようにデザインされている。この二つの理由から「SNAG」と命名された。
スナッグゴルフはゴルフの基本を学ぶために開発されたため、ゴルフの基礎的要素を全て持ち合わせている。ティーショットを打ち、アプローチをして、パットをしてホールアウトするという流れは「ゴルフ」そのもの。子どもや初心者でもボールを容易に打つことができ、場所を選ばず安全にプレーできる〝簡易版ゴルフ〟といえるスポーツである。
ルールもわかりやすく、広さの限られた場所でも充分に楽しめるスポーツとなっていて、ゴルフ場やゴルフ練習場だけでなく、校庭や野球場、陸上競技場、体育館などある程度の広さがあれば場所を選ばずにプレーできる。
スナッグゴルフの道具は、安全性と簡易性を満たすために開発され、ショット用の「ランチャー」、パター用の「ローラー」という2種類のクラブを用いる。いずれも大きなヘッド(ゴルフのアイアンの約3倍の大きさ)は硬質プラスチック素材、シャフトにはグラスファイバー素材を採用し、本物のゴルフ感覚を体感することができるようになっている。
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スナッグボールは、テニスボールを一回り小さくしたサイズで柔らかく、安全性に優れている。ボールの重さはゴルフボールとほぼ同じなので、ゴルフと同じような打感を得ることができる。ゴルフのホール(穴)にあたるものは「スナッグフラッグ」と呼ばれ、黄色い土台に砂や水を入れて設置。土台のマジックテープの部分にボールがくっつけばホールアウトとなる。
ティーアップには「ランチパッド」というマットを用いる。ランチャーでボールを打つ際に使用し、芝生・床・コンクリート・土などあらゆる地面に対応し、地面を傷つける心配がないため、学校の運動場・体育館でも実施できるように工夫されている。このランチパッドには黄色い大きな矢印が付いており、目標に向けてセットアップすることで常に正しいアドレスが可能となっている。
現在、日本スナッグゴルフ協会をはじめ各地にスナッグゴルフ協会があり、スナッグゴルフの普及に努められている。小学生対象の競技なども積極的に行われている。兵庫県三木市でも三木市ゴルフ協会主催で市内小学生対象の競技大会が定期的に開催されている。
これら多くの競技会で見られるように、一般的には「スナッグゴルフは子ども用の簡易ゴルフ」と思われる節があるが、スナッグゴルフを子ども用と限定するにはあまりにももったいない。
スナッグゴルフのクラブサイズにはS・M・Lの3種類が存在する。Lサイズは身長150cm以上が対象となっており、大人が使えるサイズである。
大人がゴルフを始めるための導入ツールとしても十分価値がある。それを実証するために大学ゴルフ授業〝Gちゃれ〟でも積極的に使用し、その有効性を目の当たりに見てきた。
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さらに2022年7月には兵庫県の次世代経営者が集うレクリエーションイベントとしてスナッグゴルフ大会が有馬カンツリー倶楽部で開催された。参加者37名のうちゴルフ経験者は10名程度、あとは全く経験がない方々である。
15分ほど練習したのち、ドライビングレンジに作った9ホールを2周、チーム戦のスクランブルゲームで競い合った。わずか2時間のイベントだったが、初心者も経験者も全員が楽しんでくれてとても盛り上がった。
スナッグゴルフは大人が使っても十分楽しめるスポーツであることに間違いはない。しかし、ゴルフ場を経営する我々にとっては、スナッグゴルフそのものを普及させることが目的ではない。スナッグゴルフはあくまでゴルフを始めるための導入ツールであり、ゴルフクラブを握ってゴルフボールを打つための第1歩であるべきと考えている。
最初にスナッグゴルフで〝模擬ゴルフ〟を体感し楽しむ。そうすることでゴルフへの興味が沸き「本物のゴルフをやってみたい!」という想いを抱かせる。そして実際にゴルフを始める。そうした流れを夢見ながら、日々取り組んでいる。
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<h2>★スナッグゴルフの一般的なルール</h2>
1)1打目以降もランチャーでボールを打つ時は常にランチパッドを使用する。
2)グリーン内では必ずローラーを使用する。ローラーは、グリーンエリア外で使用することはできない。
3)グリーンエリア内に入ったボールに関しては、ボールの位置を動かすことはできない。
4)ボールがコースから出た場合は、その出た地点に最も近い場所から、ルール①に従ってプレーを続ける。その際、ペナルティポイントが1打加算される。
5)ボールを紛失した場合、ペナルティ1打が課せられ、紛失したと思われる場所に最も近い場所から、ルール①に従ってプレーを続ける。
6)グリーンエリア内において、プレーヤーのボールが、他のプレーヤーのショットの妨げとなっている場合は、スナッグフラッグに近いプレーヤーが、ボールのある場所にコイン又はその他の小さく、平らな物を代わりに置き、その場所を「マーク」する。
マークしたらボールを一旦拾い上げ、他のプレーヤーがプレーを続行できるようにし、他のプレーヤーがショットした後、ボールをマークした場所に戻してプレーする。
7)ホールアウト(ホール終了)したとみなされるためには、ボールは必ず、スナッグフラッグにくっついた状態にならなければならない。ボールがはね返ってしまった場合はホールアウトとみなされない。
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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