ヒット商品の生まれ方

ヒット商品の生まれ方
月刊ゴルフ用品界2018年7月号掲載  vivi golf 田中禎晃(たなかよしてる)「さわやか仮面が紐解く 裏腹な女性ゴルファー心理」 なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
「そんなもの売れるわけがない」セブンイレブンが販売している冷凍食品「牛カルビ焼き」。当初セブンイレブン社内でも反対意見が多かったそうだが、発売後の売れ行きは予想を覆し上々。好調の要因を分析すると「1人で焼き肉店には入りづらい」「ご飯は不要」など、女性の支持率が高いことがわかったそうだ。 商品企画や開発に携わるプロの経験則やマーケティング調査を経て商品化されているものが多い、そんなデータを駆使した開発競争の中で、予想もしていなかったニーズを発見できた例であろう。

女性ゴルファーにこそ必要だったアイテム水のいらない

ドライシャンプーをご存じだろうか。水やお湯を使わずに髪や頭皮を清潔にすることができる商品。泡、スプレー、パウダー、シートタイプと様々あるが、毎日お風呂に入り洗髪する習慣がある日本人には馴染みのないアイテムだ。しかし海外では様子が違う。日本のように毎日シャンプーをしない、ドレッドヘアなど個性的なヘアスタイルはシャンプーが難しい、など日常的に使われていて商品の種類も豊富だ。 ドライシャンプーが日本で注目されたのは震災の時だった。長期の断水期間や避難先などでとても役立ったと言われている。そんな防災グッズ色の強いドライシャンプーがここ最近、日本のメーカーから若い女性をターゲットにして商品化されている。 あるメーカーの開発担当者は「女子中高生が運動後や下校時に使って欲しい」「ヨガやフィットネスジムで汗をかいた後に最適」「最近の若い女性は毎日洗髪しないようだ」こんな顧客事情を語っていたが、当初予想もしなかったところでニーズが沸き起こっている。 「これめっちゃ髪がフワッとなる」 「お風呂に入る時間ないから助かります」「ハーフ休憩のときに使ってます」「いつも帰りの車や電車の中で頭の臭いが気になっていたんです」。ある女性限定コンペで多くのゴルファー達がドライシャンプーを愛用していたのだ。女子プロゴルファーにも沢山の愛用者がいる。特に試合の最終日は帰りの飛行機の時間があるのでお風呂に入れない、夏のゴルフには絶対これがないとダメ、そんなニーズがあることは、メーカー担当者には知る由もなかっただろう。

顧客価値の高い女性ゴルファーを狙え!

大手化粧品ブランドの宣伝担当者から電話が入った。「うちのスキンケア商品を女性ゴルファーにPRしたいが良いアイデアはありませんか?」春先から特に意識する日焼け対策、UVアイテムは女性ならずともゴルファーには必須。担当者は女性ゴルファーにターゲットを絞って顧客作りのきっかけにしたいようだった。 早速、女性限定のコンペ企画を準備して募集を開始したところ、2日でキャンセル待ちが出るほどの盛況ぶりだ。参加者がこのブランドの顧客になるかどうかは分からないが、時間とお金に余裕のある女性ゴルファーを顧客にすることができれば大成功だろう。 これまでは30代の女性に、スポーツをする女性に、など幅広いターゲットで宣伝してきたメーカーもピンポイントで女性ゴルファーを狙い撃ちしてきている。にわかに注目されてきた女性ゴルファーだが、過去の経験則からは浮かび上がってこない顧客事情を掴むことができれば大ヒットするかもしれない。