• TOPページ
  • 工房ナビ
  • 月刊GEWについて
  • ライター一覧
  • GEW 購読申し込み
  • GEW 見本誌申し込み
  • 広告掲載について
  • 運営会社
  • 事業内容
  • 存在意義
  • 編集長メッセージ
  • 会社沿革
  • プライバシーポリシー
  • サイトポリシー
  • お問い合わせ
  • ゴルフ業界求人
  • PGA会員専用求人
  • 月刊GEW 見本誌のお申し込みはこちら

    ライター個別情報

    記事一覧

    日本政府が掲げる「新しい資本主義の実現」の名の下に、人的資本経営への注目が集まっている。 人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方※1である。高校時代にラグビー部で育った私としては、強い個人の集積が強いチームであるが、真に強いチームは個を強く育てられるチームである、という信念がある。 ゴルフ場経営を承継した際、「個を強く育てられる」環境がないゴルフ場が多いことに驚いた。ゴルフ場運営において必要なホスピタリティや、コース管理などの教育環境はあったとしても、広義では「新しい機会」が少なく、結果的に情報や繋がりが更新されていないと感じた。 その結果、「お客様を待つ」ことはできても「自ら出ていく」ことに対して不得手になる悪い循環となっているのではないか。ゴルフ界に吹いたコロナバブルが明け、地力が求められる今こそ、「待つ」のではなく「出ていく」姿勢が求められる。そのためには「強い個人」が必要であり人的資本への投資が必要だ。 セブンハンドレッドではこれまで様々なイベントや取り組みを通じ、ゴルフ業界内外の方と弊社のスタッフが交わる機会を創出してきた。言わば、地力が付く実地研修。その力をさらに促進するために、積極的に外に出る姿勢を持ち、多様な機会と出会いを通じて成長を促す『ゴルフをつなげる30人』プログラムに参加してもらった。 「つなげる30人」とは、地域内の行政、企業、NPOなど異なるセクターのキーマン30人を毎年集め、まるで「街の同級生」のようなフラットなつながりを作り、互いのリソースを持ち寄りながら地域が良くなるためのアイデアや企画を約半年かけて形にしていく取組みである※2。「ゴルフ」に特化した「ゴルフをつなげる30人」では上記に加え、①ゴルフマーケットの成長・発展、②フラットなコミュニティ創造、③ゴルフ産業にイノベーションを、④社会的インパクトの実現、を目指す取り組みだ。その学びの様子を、参加した当クラブ・総務部企画開発部門の加藤里奈さん(入社1年目)から提出された参加レポートを一部抜粋する形で追ってみたい。 ゴルフをつなげる30人に参加して 著名なプロゴルファーに会えるかもという期待(笑)を胸に、東京への電車旅を決心しました。当初は「遠いな」と思い、「自分より偉い人が来るかもしれない」という不安もありましたが、非常に楽しい時間を過ごすことができました。 情報発信やゴルフ場のイベントを企画する役割を担う中で、認知度が高まらない悩みを共有した際に、私たちが行っている地域のイベントやフットゴルフについても、高い意識を持つ集団内でさえ認知されていないことを知りました。また、ゴルフ場の予約方法や、時間に縛られるシステムなど、古い慣習に対して疑問をぶつけられることで色々と考えることも多かったです。 一方で他の参加者から「遊びのツールとしてもっと身近になってほしいが、それでいて格式は保ってもらいたい」という意見もあり、議論が様々な角度でされることがとても新鮮でした。全体として、企業の代表というより、同級生のように気軽に話せる雰囲気があり、友達感覚でゴルフについて深く語り合えたのが非常に良かったです。それぞれの団体がどのような活動をしているのかを理解する良い機会となりました。   このような感想を聞き、ゴルフ場の「のびしろ」を感じたのは私だけだろうか。自社の具体的な活動について話し、フィードバックを得て活動を見直す機会になったことは勿論だが、企業の枠組みを超えて気兼ねなく話し合いを出来るつながりをゴルフ場のスタッフが持てたことで広がる事業性は大きい。 僕の考える強い個人は「優秀」なことよりも、自社内では考えつかない創造的な解決策を探求できる「友達」を持っていることだと思う。そのためには「待つ」ではなく、「出ていく」こと。新しい情報や繋がりを持つことを応援する必要がある。人材投資を積極的に行うことが、今後のゴルフ場の「のびしろ」だ! 注釈 1 経済産業省(2024).「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す」経済産業省. https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html,2024年4月19日 2 加生健太郎(2024).「つなげる30人とは」一般社団法人つなげる30人. https://www.project30.or.jp/,2024年4月19日 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年08月11日
    インバウンド対策への危機感 長いコロナ禍のトンネルを抜け、国内外の旅行が回復の兆しだ。日本においても海外からの旅行客・通称〝インバウンド〟の需要が増えていると肌で感じられる。 僕は、栃木県のセブンハンドレッドクラブを経営しているが、ここで地域振興・観光需要喚起の取り組みが認められ、2022年より(公社)栃木県観光物産協会において「とちぎ観光地づくり委員」として職務を頂いた。地域観光では「今だけ・ここだけ・あなただけ」が求められ、地域の特色を活かした個性的な取り組みが求められる上、「インバウンド」への対策・需要掘り起こしが当然の施策となる。 一方、日本のゴルフ業界はどうだろうか。海外のゴルファーを積極的に受け入れる、英語対応のための社員教育を行う事業者はまだまだ少ないように感じる。日本のゴルフ人口が減少していると叫ばれるにも関わらず、ゴルフ業界が日本人に重きを置いてビジネスを考えていることに危機感があった。そこで、2023年2月に宮崎県で行われた「アジアゴルフツーリズムコンベンション2023(AGTC2023)」に参加をしてきた。 ゴルフツーリズム最前線 遅すぎた。ただ、まだ間に合う。そんな感覚を得たのが、商談会に臨んでの率直な気持ちだった。海外のバイヤー(旅行代理店等のゴルフツアーを組む人々)からすれば、英語で対応してもらえない、メンバーシップ中心で閉鎖的なコースも多く、日本のゴルフ場は未開拓な市場との認識が強くある。 だからこそ新規参入の余地はあるとホッとする一方、ゴルフ業界の端くれに居る者として「コレで良いのか?」という強い違和感を覚えた。 前述したように、日本の旅行業界では観光以上に「文化体験」や地元の食材を使った「グルメ体験」などカスタマイズされた様々な体験・付加価値を提供している。その中にゴルフは入っていない……。 何とも言えない気持ちを持ち帰り、社内のメンバーと共有すると、さらに衝撃の言葉が相次いだ。「英語が喋れない」「どうサービスしたらいいか分からない」という意見や「海外の方はマナーが悪い」「タトゥーをしているのではないか」などの偏見も相まって「インバウンドを受け入れたくない」というスタッフが大半だったのだ。 期せずして訪れた転機 このままではセブンハンドレッドクラブは取り残されてしまう、という危機感の中、当コースでフットゴルフの国際大会が開催された。海外からの選手たちは、気難しくストレスを感じさせる外国人というスタッフの想像を見事に裏切り、みんなフレンドリーで、一気にスタッフの考えが変わってしまった。 「意外と良い人たちでした!」「私、ハローって言っちゃいました!」―。スタッフから笑顔の報告を受けるたびに「あぁ、今まで機会がなかっただけなんだな」と思うに加え、異文化への耐性づくりが足りなかったと反省した。 日本人でも「ゴルフをしない人」は、ゴルフ場スタッフにしてみればある種の「インバウンド」と言えるだろう。更に海外からのお客様となれば未知の世界。こういった心理的な壁を打破しなければ、日本のゴルフインバウンドの夜明けはないと、自社での取り組みを通じて今更ながら反省している。 インバウンドゴルフ挑戦の加速 ゴルフ場でのフットゴルフ大会を含めて「世界一何でもできるゴルフ場」を目指し、挑戦を続ける我々に立ち止まる時間はない。 2023年度は日本政府観光局(JNTO)からオファーを頂き、海外バイヤーのセブンハンドレッドクラブ視察ツアーを得た。正直、インバウンド対策も英語対応もしていない中で不安だらけだったが、ツアーの感想は「エクセレント!」。英語が出来なくても、受け入れようとするホスピタリティやおもてなし、何よりコースの中の「松林」の風景が素晴らしいと評価された。 我々にとっては「いつもの・おなじみの」風景が、海外からの来訪者には「ここだけ・あなただけ」になることが驚きだった。「何事もやってみなきゃわかんないよ」と、シタリ顔で社員に言っていた自分が恥ずかしい。僕を含めて、インバウンドはとにかく実践あるのみ。2024年度は栃木でインバウンドゴルフ新興の中心となるべく、精進したい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年06月16日
    セブンハンドレッドクラブ(栃木県)では、国内の先駆けとしてフットゴルフの新興に取り組んできた。僕自身が2019年に代表に就任した際に「ゴルフ場が地域に馴染みのある存在になる」ことを目標に掲げ、サッカーという競技人口の多いスポーツこそがその鍵になると考えていたからだ。 代表就任直後、2020年にフットゴルフのワールドカップ招致がセブンハンドレッドクラブに決まり、栃木県内やゴルフ業界で俄かに認知度が向上したことは経営面で大きな追い風となった。しかし、コロナにより中止となり、追い風を活かすことができず、また、目標も道半ばで消滅したので、個人的には消化不良で終わっていた。とりわけ海外の選手が地元・栃木県さくら市を目指してやってくる光景を楽しみにしていた地域の方々に、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 (C)メジャーフットゴルフ大会実行委員会 そのコロナが明け、2023年から国際ツアーが再開したタイミングで、再度、悲願の国際大会開催にアジアの開催地として真っ先に手を上げた。招致のコンペでも勝つことができ、「FIFG WORLD TOUR JAPAN FOOTGOLF INTERNATIONAL OPEN 2023」(以下、メジャー大会)を2023年11月3日~5日の期間、賞金総額250万円で開催決定。それからにわかに準備が始まった。 地域を巻き込んだ取り組み 日本で開催された同規模の国際大会は、2017年の軽井沢大会まで遡る。フットゴルフは新興スポーツであり、まだまだ大会の型が定まっていないからこそ、僕たちは「日本らしい」おもてなしと、地域の協力を得た国際大会を目指した。 当社はゴルフ場である。ただし、単にゴルフ場を提供するだけではなく、「地域に存在する意味を創る」ことを目標にホテル経営や農業など事業を少しずつ拡げてきた。そこで本大会も「地域大会」として意味を持たせるべく、思い切って地域企業にダメもとで「ゴルフ場で行うゴルフではない大会」に協賛・協力をお願いした。するとなんと!短い期間にもかかわらず、多くの企業から協賛・協力を頂くことができた。 (C)メジャーフットゴルフ大会実行委員会 中には「セブンがやることを応援するよ」と、即決して下さった企業の方も多い。協賛でどんなメリットを得られるかではなく、応援の気持ちで総額174万円の予算をつけてくれたことは本当にありがたかった。だからこそ、地域に意味のある大会にしようと強く心に誓った。 本メジャー大会にはフランスやイギリス、アルゼンチン、マレーシア等9か国から総勢112名の選手が訪れた。またとない地域交流のチャンス!ということで、地元の南小学校の6年生90名が、国際交流の一環として選手からフットゴルフを教えてもらう授業をセブンハンドレッドクラブで実施した。 また、地域文化の喜連川公方の和太鼓、お茶の体験などを通じた市民交流、さらには地域一体となってインバウンド旅行を受け入れられるかの実証実験も行った。小学生には良い機会になったようで、地域への貢献を強く実感できた。 (C)メジャーフットゴルフ大会実行委員会 これからのゴルフ場の姿 このような大会以外の取組みが功を奏してか、大会期間中には延べ400名以上の来場があり、栃木県スポーツコミッションから大会開催の助成も得ることができた。大会は最終ホールまで優勝が誰になるか分からない混戦で大いに盛り上がり、日本のゴルフ場を見せる上でも大成功だったと思う。 この大会を通じて、多くの人がゴルフ場に集い、交流することの可能性や美しさ、そして人としての優雅さを強く実感した。 悠久の心地よい時間を味わえるのは、他の場所ではできない、ゴルフ場という「広大な場」だからこそ。そのような場を経営しているからこそ、今回の機会を作れたのだと思うと、感慨深いものがあるのだが、僕はこれを、たったひとつのゴルフ場の特異な事例に収めたくない。 地域企業やさくら市、栃木県が、スポーツコミッションを通して本大会を応援して下さった意義は、目指す頂へ近づく上で非常に大きな力となって証明された。 「ゴルフ場で地域も交えて、こんなことも起きている」ということを、栃木県内はもちろん、全国へと発信していきたい。「これからのゴルフ場」の在り方を示すことができた、と実感できたことは大きな収穫。そんなフットゴルフ国際大会だった。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年02月26日
    僕が経営するセブンハンドレッドクラブ(栃木県)のビジョンは「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」だ。このビジョンを実現すべく「みんな」を拡げ、「ゴルフをしない人にも親しんでもらえる」ゴルフ場創りに邁進してきた。ゴルフ場が地域の公共財のような、馴染みのある存在になるべく、地元・さくら市役所とフットゴルフの市民大会や、街コンの場にゴルフ場を提供するなど多くの連携を行ってきた。 あまりにも「ゴルフ以外」の取り組みに注力した結果、「ゴルフに力を入れていない」と思われがちだが、国内2000余コース分の1でしかない単独経営の当社が普通の経営をしていたら、その他大勢に埋没する。だからこそ、「ゴルフ場のゴルフ以外の活用可能性」を武器として、ゴルフ場を市民に開放し、社会的な価値を高めることで存在価値を追求してきた。本音を言えば、悩みながら走っている。ゴルフ以外のことに本気で取り組む一方で、ゴルフにも真剣に取り組むというスタンスを、わかりやすく世間に伝えることは難しい。26歳だった僕が、父から事業承継して5年目。自分の真価が問われてきた。 ご縁が繋がることのチカラ そんな折、知人の紹介で、「プロを招いての新しいゴルフ大会の会場として、セブンハンドレッドの名前があがっている」 との話を聞いた。「え!?」と喜びが溢れた。主旨はこうだ。人材・雇用に関わる業務全般を主業務とする(株)エイジェックの古後昌彦社長は、栃木ゴールデンブレーブスを運営するなど栃木とゆかりが深い。その同社と「女性が輝く社会の構築を応援していくための女子プロゴルフミドルトーナメント」をコンセプトとするLADYGOの共催で、栃木でゴルフ大会を開きたい。その関係者から、 「栃木で開催するなら会場はセブンハンドレッドが良いのではないか」と候補に上がった。僕たちにすれば、こんなに嬉しいことはない!僕は高校時代、ラグビーで「花園」に出場したことがある。そのラグビーには「楕円のご縁」という言葉がある。楕円球が想像できない弾み方をする面白さのように、想定外のご縁が生まれ、何かコトが動き出す。今回はまさにそんな感じ。ゴルフ以外の活動に取り組んできて、その楕円の転がりが本業のゴルフに跳ね返ってきた。「露出しておいてよかった」と心から思えた瞬間だ。 トーナメントを開催する大変さ 「エイジェックLADYGOカップinとちぎ」(2023年8月19日開催)の会場は当クラブとなった。栃木では女子プロゴルフの大会が少ないコトも相まって、地域の皆さんから応援の声を沢山頂いた。とは言え、当社での大掛かりなゴルフ大会の開催経験はゼロ。前職でゴルフ大会運営を経験した社員が先頭に立ってくれ心強かったが、検討課題は山積みだった。 コース管理から、プロアマ含めた当日のおもてなし、市役所との連携や、町の商工会への協賛依頼、BS放送のための放送環境の整備等々。 プロのメジャー大会と比べれば規模は小さいが、本稿で書ききれない程の準備やドラマがあった。笑い、泣き、対立、共感・・・・。僕たちが当たり前に見ているゴルフトーナメントの舞台裏には、多くの人の努力や支援がある。そのことを知り、改めて感謝の念が湧きあがった。 ゴルフトーナメントを開くことで、ゴルフ場としても、働く社員・組織としても、グッと成長するんだと実感できた。組織にも「成長痛」があると言われるが、その痛みと、超えた時の成長を実感できた。 想定外の未来を創り続けるために 2019年に事業承継した際「いつかプロがプレーをする大会を招致したい」と、会長である父と話していたことを思い出す。当時は繋がりもなく、無名のゴルフ場だった中では想像出来ないことだった。大会会場に選んでくれた共催の2社に心から感謝申し上げるとともに、改めてご縁の大切さを実感した。今後も縁を頂く、挑戦を続け、その挑戦から弊社に興味を持ってもらえるように心がけたい。 当日のギャラリーは606人。大会を通じて、地域の方々に「セブンハンドレッドはゴルフでも仕掛けた」と思ってもらえたことは、今後のゴルフ場経営において有用だったと感じる。ゴルフ場が地域にあって良かったと思ってもらえるよう、ゴルフ以外のことを本気で、但しゴルフは真剣に取り組んでいきたい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年01月14日
    地域における文化的な余白づくり ゴルフの源流をたどると、スコットランドの羊飼いの遊びから生まれたスポーツ=娯楽だと聞く。ゴルフ場を経営する我々は時として「設備産業」と見られがちだが、提供している本当の価値は「遊び文化」そのものである。遊びには余白が必要で、その余白や生活から新しい文化が生まれる。ゴルフはまさに、その循環の中で生まれた文化的な娯楽の一つだと思う。 ゴルフ場を通じた街づくりを目指す自分のキーワードは「文化創り」だ。日本や世界を旅する中で「文化創りが盛んな街」を時々見るが、一番強烈な原体験は、僕が大学生時に留学したアメリカ・ワシントンD.C.だった。かの地は首都であり、政治や国際経済の中核都市でありながら、車で30分圏内に沢山のゴルフ場があり、ゴルフが市民にとって非常に身近な存在であることに驚愕した。加えて著名なスミソニアン博物館や美術館の他、街中の至る所にアートや石碑・銅像が点在し、歴史的な出来事の現場には案内が掲げられ、街全体で文化醸成を行っている気概さえ感じられた。 そんな経験から、ゴルフ場を経営する我々は何が出来るだろうか、との問いに立ち返る。ゴルフを身近な存在にし「遊び文化」をより多くの方に提供するための企業努力はもちろん、「街の文化醸成」にまで踏み込むべきではないかと考えた。 日本のゴルフ場の多くは開場して数十年の歴史を持ち、その地域の歴史や文化の一部の証人であると位置づけられる。だからこそ街の未来を想像しながら、産業やWell-being、文化を支える存在になることが求められるのではないか。そこで、セブンハンドレッド(栃木県)のグループ会社として「お丸山ホテル」を運営していることを強みと捉え、新たな文化の創造主となるべく、アーティストを呼び、宿泊型のプログラムである「アーティスト・イン・レジデンス」を開始した。 アーティスト・イン・レジデンスの可能性 アーティスト・イン・レジデンスとは、「アーティストが一定期間ある土地に滞在し、常時とは異なる文化環境で作品制作やリサーチ活動を行うこと※1」であり、まずは知り合いのアーティストに協力を得ることから始めた。2023年4月にはオランダ・アムステルダムから写真家のVincent Schipperさん、同7月にはアメリカ・NYから彫刻家の清宮大輔さんを招き、1週間滞在してもらい、セブンハンドレッドとお丸山ホテルに滞在しながら、作品制作をして頂いた。 Vincentさんは、セブンハンドレッドのある栃木県さくら市のスローガン「ちょうどいいさくら市」にちなんだ「Super Normal」という作品を。清宮さんはお丸山ホテルのあるお丸山公園からの原風景から「Wind(風)」という作品を制作。二人とも制作中に地域の飲み会やお祭りなどへの参加を通して、創作活動に刺激を受け、地域の特色が反映された作品になった、と語っていた。清宮さんの作品は市に寄贈(寄付)され、お丸山公園に接してもらったことで新聞にも取り上げられ、市民から多くの賛同の声が届いた。 国策としてのアート文化醸成 このようなアートへの取組みは、単なる道楽ではない。2023年7月4日、経済産業省は「アートと経済社会について考える研究会報告書」をまとめ、その中のレポートにアートと地域・公共のプレイヤー相関図(※2)が記載された。 アートはビジネス、そして地域振興の要にもなる。そこにはこの図にあるように、「空間・土地」が必須である。僕は、ゴルフ場こそ、その可能性がある広大な空間・土地だと信じている。まずは足掛かりとして、引き続き地域に溶け込むアートづくりを通じ、地域の文化醸成に携わっていく。 市民の目に触れる機会が多いアート作品に「セブンハンドレッドが関わった」と伝播されることで、我々の企業姿勢を市民に示していく。最終的には、地域の文化醸成に資するアートで溢れるゴルフ場を目指していきたい。 ■出典 ※1 中島水緒. “アーティスト・イン・レジデンス”. 美術手帳. https://bijutsutecho.com/artwiki/17, (参照 2023-8-2) ※2 経済産業省 商務・サービスグループ クールジャパン政策課.”「アートと経済社会について考える研究会 報告書」”. 経済産業. https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/art_economic/pdf/20230704_1.pdf, (参照 2023-8-2) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年10月22日
    起:日本で開催されるはずだったフットゴルフW杯 本連載では、セブンハンドレッドクラブ(栃木県)が地域に開かれたゴルフ場の在り方を模索し、ゴルフ以外でどのようなことを仕掛けているかについて紹介してきた。お陰様で地域内外からも「色々とやっているゴルフ場」であることが認知され始めてきた。 3代目として継業した時から想いは変わらず、ゴルフ場の潜在的可能性を開放するためには、ゴルファーは勿論、ノンゴルファーにもゴルフ場の魅力を感じてもらうことが必要だと信じてやってきた。その際たる事例がフットゴルフだ。 本来であれば、2020年に40か国・1000人が集まるフットゴルフワールドカップがセブンハンドレッドで行われ、歴史に残る年になるはずだったが、コロナ禍のため残念ながら中止になった。ただ、僕たちはワールドカップ招致・開催の夢を諦めていない。国際フットゴルフ連盟では、フットゴルフの振興を促進するために2年ごとにワールドカップを開催しており、日本に誘致すべく今でも僕たちは水面下で取り組みを進めている。今回はその様子をお届けしたい。 承:フロリダで行われたワールドカップ 2023年5月27日から6月6日にかけて、フットゴルフワールドカップが米フロリダ州のOrlandoにて行われた。開催コースはなんと、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内にある、Walt Disney World Golf Courses。アメリカを象徴するエンターテインメント・リゾートの最高峰の場所で、39か国・1300人のフットゴルファーが集結した大会となった。 まず驚いたのは、その大きさ。ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートは世界最大の広さのリゾートで、その面積は実に山手線内側の約1・5倍もある約12万2000km2。広大な敷地の中には、複数のラグジュアリーホテル・ビラ、巨大なスーパーからレストランまである最高の環境での開催。加えて、大会中はアプリで見られる生放送の映像も入れ、複数のスポンサーが付くなど2028年ロサンゼルスオリンピックでの種目化を目指した用意をしていた。 主催のアメリカフットゴルフ協会の会長は、このワールドカップを成功させるために、家族でフロリダに移住して用意を重ねていたそうだ。2025年は日本に招致を!とロビー活動のため勇んで乗り込んだものの、見事にその規模・本気度の違いを見せつけられた気分だった。 転:日本のゴルフ場の可能性は周辺地域の活用にある ワールドカップを通じてフットゴルフは勿論、ゴルフというスポーツが如何に身近であるか、日米の差を感じられたのは収穫だった。 Walt Disney World Golf CoursesはPGAツアーが行われるようなコースでもありながら、常設でフットゴルフが楽しめ、リゾートのパッケージとしても販売されていた。Magic Kingdom Theme Park(日本のいわゆる「ディズニーランド」)の真横にゴルフコースがあり、家族でレジャーに来て、ゴルフ組とテーマパーク組に分かれて楽しめる設計だ。 ゴルフが主目的でなく、レジャーや地域に遊びに来た人が、気軽にゴルフを楽しめる。これこそ、日本に必要なゴルフの文化だと確信した。アメリカ式のテーマパークは作れなくても、日本ならではの地域の魅力を磨き込み、活性化を通じて観光地に押上げ、そこにゴルフ場が存在するという姿。そんなセブンハンドレッドの未来を創りたいと、改めて強く心に決めた。 結:今後のセブンハンドレッドとフットゴルフ 規模の差を見せつけられ、諦めるなんて生半可な気持ちで取り組んでいる僕たちではない。2023年11月には日本で3回目となる、大規模な国際フットゴルフ大会の開催をセブンハンドレッドでは控えており、世界各国から約150名のフットゴルファーが集まる見込みだ。 既にイギリスやオランダ、マレーシア、アルゼンチン等からの問い合わせがあり、フロリダでもしっかりと彼らとコミュニケーションを取りながら「日本に行きたい!」という声をしっかり獲得できた。世界随一のリゾートでなくても、地域資源をフル活用しながら、独自のワールドカップ開催を目指して。 2025年に日本でフットゴルフワールドカップの招致が出来るよう、世界各国の選手と密にコミュニケーションを取りながら「日本への期待」を集めるべく、これからも頑張っていきたい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年09月03日
    栃木における農業の可能性 ぼくは栃木県さくら市にあるセブンハンドレッドクラブの3代目社長だ。幼い頃、セブンハンドレッドでプレーをした後、地元の水田にある農家の直売所に行くことが大好きだった。今思い返せば、その直売所での買い物もゴルフ体験の一つだったように感じる。そして、そこでは忘れられない美味しい「お米」との出会いがあった。自画自賛をするようだが、我がさくら市のお米は、日本随一の美味しさだと思っている。 その美味しさはお米だけに限らない。東京に生まれ育ったぼくにとって、栃木の農産物は宝物のように感じられる美味しさを持っている。高品質なのに、低単価。栃木の県民性も相まって、どこか保守的・控え目で、売り出していこうという気持ちよりも、「良いものを作る」という気概が感じられる。 この魅力的な栃木の農産物をゴルフ場レストランやグループ会社のお丸山ホテルで地産地消にて紹介するだけでなく、もっと県外に広めていきたい!とずっと思っていた。 農産物直売所の指定管理を受託 セブンハンドレッドで行う新たなトライとして、さくら市が運営する農産物直売所「菜っ葉館」の指定管理者になるべく手を挙げた。 菜っ葉館(さくら市氏家地区農産物直売所)は、女性起業等の新たなアグリビジネスの展開による農業・農村の振興を目的として、組合が主体となり2007年にオープンした施設である。毎朝農家が、自ら育てた野菜を持ってきて棚に並べ、それを消費者が買っていくという直売所らしい光景が毎日見られる。 建物面積は約300m2弱と大きくはないが、栃木を南北に貫く国道4号に面した場所にあり、上手く活用できればさくら市の農産物PR拠点となり得る場所である。その一方、採算が取れていない・持続的な運営のためには民間の力を必要とするなどの事情で、市が指定管理者を募集したという経緯である。 自治体における指定管理者制度とは、公共施設や公共事業などを行政が行うのではなく、民間企業や団体などの「指定管理者」に運営を委託する制度である。㈱セブンハンドレッドには公の施設を運営した経験ははないが、プレゼンに加え今までの地域連携の様子や経営力を評価され、当該施設の指定管理を受託することが出来た。いよいよ、2023年4月1日からセブンハンドレッドとしての経営・運営が始まる。 菜っ葉館と今後の構想について 宇都宮や県内外からも〝ちょうどいい〟距離のさくら市にある菜っ葉館を、農業・観光振興の両軸から重要拠点と位置づけ、さくら市の農業を代表する場所にしていきたい。 経営をするにあたっては現在の従業員や農業組合・農家との関係性維持を最重要視しながら、現場主導のボトムアップ型の改善を実現する。対話を通じて重要度と緊急度の高い改善を行いながら、事業を改善するにあたっての真因分析を行うことで、段階的に良くなる経営(年輪経営)が可能だと信じている。 また、地域の農産物直売所としての存在価値を向上させるだけではなく、組合員農家とのネットワークを活かした六次産品の創出も行うことで、さくら市の農業を盛り上げるためのキッカケづくりが出来る場所運営を目指していきたい。 グループ会社(お丸山ホテル・住地ゴルフ)との連携を通じて、ゴルフ場やホテルでの食材を仕入れて地産地消を明確に打ち出すことや、農産物直売の出張販売などを行っていく。当然、首都圏を中心とした方々へのEC等での販路開拓や、ロイヤルカスタマーへの贈答品としての新たな付加価値も創り上げていく。 明るい展望は見えているものの、市に出した事業計画でも初年度は赤字の経営計画。併せて社内には公的施設の運営経験がある人物はいないので、大きなトライである。 原風景と地域の自然を守るために菜っ葉館の運営に加え、昨年度より始めた我々の新規事業である「いちご栽培・販売」も含めると、我々はゴルフ場運営会社なのか?と疑問すら湧いてくる弊社ではある。 しかしながら、弊社のビジョンは「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」であり、「あらゆる人々・環境に喜びを提供し、健康で持続可能な社会づくりを目指し、地域の活力を共に生み出す場所として、進化と変革を続けるゴルフ場」である。 美しい原風景である水田・畑が、太陽光パネルになってしまう様子を地域住民は残念がりながらも「仕方がない」という気持ちで諦めてしまっている。農業を維持・推進することは、単にビジネスではなく、景色を守り、地域を守ること。すなわち「あらゆる人々・環境に喜びを提供し」「地域の活力」を生み出すことだと思っている。 全国でも珍しいであろう、ゴルフ場経営会社による地元自治体の農産物直売所の指定管理・運営の取組みを、是非あたたかく見守り応援していただきたい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年06月25日
    ゴルフ場を活用してもらい新たな種を生む ぼくが経営するセブンハンドレッドクラブ(栃木県)のミッションは「世界一なんでもできるゴルフ場」だ。この標語はゴルフ場の常識にとらわれず、社員が様々なトライをすると同時に、「外部」のアイデアや情熱を当社に持ち込んでもらう狙いがある。 外部というのは、地域の商店街や学校、行政や社会福祉法人などで、街の関係者の困りごとを「セブンハンドレッドだったら解決できるのでは?」と持ち込んでもらい、一緒に取り組み、イノベーションの種を生んでいくことに尽きる。 その結果、地域に新しいコトが生まれ、街が存続し、「この地域にゴルフ場があってよかったね」と言われる存在になること。実は、すでに具体的な取り組みが生まれている。今回はそれを紹介しよう。 民業圧迫? さくら市が無料のフットゴルフ場を開設 セブンハンドレッドは2019年9月、コース内にフットゴルフの環境を整えた。フットゴルフはサッカーボールを蹴って、直径21インチ(約53センチ)の穴に入れるもので、詳細は以前、この連載にも書いた。その取り組みが地元さくら市の職員にも飛び火して、2020年7月に官民連携の「フットゴルフタウン推進委員会」を設立。ぼくは副会長に推挙された。 以来、子どもから大人まで楽しめる市主催のフットゴルフ大会が通年で開催され、セブンハンドレッドのトライから始まった取り組みが、皆の取り組みとして広がっている。 撒いた種は啓蒙普及のイベントにとどまらず、思わぬ方向に枝葉を伸ばした。なんと、さくら市フットゴルフ協会は、市営公園の「ゆうゆうパーク」に市運営のフットゴルフ場をオープンしたのだ。しかも、プレー料金はタダである。 実は、この公園はセブンハンドレッドから車で15分圏内のところにある。しかも当コースのフットゴルフ場は大人1人2750円(9Hプランの場合)〜と有料だから、同一商圏にライバルが登場したことになる。それを自治体が主導するとなれば民業圧迫であり、なおややこしいことに、圧迫している自治体側の副会長をほかならぬ僕が務めているのだ(笑)。 自社の収支だけを考えれば事前に阻止すべきことである。だけど僕らの存在意義からすれば、この出来事こそ大事だと思っている。僕らの「やりたい!」意志が市民の「やりたい!」という種に変わり、それが結実した事例なのだから。 宇都宮大学の授業でゴルフ場の存在意義を考える さくら市との官民連携を通じ、別の活動もはじまった。市役所からの紹介で宇都宮大学との関係ができ、2021年度より宇都宮大学・地域デザイン科学部のメイン授業「地域プロジェクト演習」に、地域パートナーとして参加している。 この演習は、地域デザイン科学部に所属する全3年生が混成で5~7人のグループに分かれ、地域が抱える課題を調査・整理。我々が1年間伴走しながら、解決策を提案するPBL(問題解決型)授業である。ほかの地域パートナーは栃木県内の行政やNPO・社団法人が選ばれているが、弊社は唯一、市の推薦で株式会社の地域パートナーとして参加している。我々の公益・社会性が認められたもので、心底嬉しい。 演習のお題は「地域とゴルフ場・ホテルの関係性デザイン~セブンハンドレッドクラブとお丸山ホテルが地域集会場となるためには~」というもので、お丸山ホテルは弊社のグループ企業である。 学生は、ゴルフ場ができる地域貢献の価値を真剣に考えてくれ、その結果、セブンハンドレッドで開催する市主催さくら市民体育祭で「e-sportsイベント」を実施。子ども達を市民体育祭・ゴルフ場に呼び込む企画を提案・実施してくれた。 子どもにゴルフ場に来てもらうために、という観点から生まれた発想だが、ゴルフ場なのに屋外でなく、屋内でe-sportsゲームを行う逆転の発想。ぼく自身、考えたこともなかった。近隣の市の体育祭においても「e-sports」の事例はなく、栃木初の試みではないだろうか。この成果に市民も強い興味を持ち、来年度以降も市の体育祭で「e-sports」開催の検討が始まっている。 セブンハンドレッドの存在意義 我々だけでは想像できなかった取り組みが、少しずつセブンハンドレッドで芽生えている。その根底にあるのは他人事ではなく、自分事として「やりたい!」という意志の種を当コースに植え付け、社会に生み落としていく。「地域にゴルフ場があって良かった」と思ってもらえる未来を創るためだ。 これからもセブンハンドレッドは「僕たちのトライ」だけではなく、「皆のトライ」を応援しながら、一緒に実現するための取り組みを進めていきたい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年06月18日
    ぼくが経営しているセブンハンドレッドクラブ(栃木県)は「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」をビジョンとして掲げている。そのため過去の連載では、ゴルフ場としてのクラブライフに触れることは少なかった。当コースには個人会員がおらず、法人無記名会員だけで運営してきたため理事会などの組織がない。だからこそ、他の会員制クラブに比べて自由な企画が発想でき、ゴルフ場を地域に貸し出す等の意思決定も即座にできる強みがある。 そのため、個人会員の影響力が強い他のゴルフ場経営層から、 「セブンハンドレッドだからいろいろできるんだよね」 と言われることが多く、そのたびに複雑な思いを禁じえなかった。なぜなら、ゴルフ場は資金面で運営を支える「会員」のための倶楽部である。その会員がいないゴルフ場でいろいろな挑戦をしたところで、「参考事例」としての評価しか得られず、社会的な意義もない。 そこで一念発起! 会員制クラブの「存在意義」を変えるため、個人会員の新規募集を決断した。 会員と共創するために 昨今、起業家の想いや商品・活動に共感した人から資金を募るクラウドファンディングが普及している。ぼくは、この「想い」を重視する社会的気運の高まりは確実に広まると信じている。そこで、我々が掲げる「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」という想いを理解いただき、新しいゴルフ場創りを一緒に行うパートナーとして会員を集めたいと考えた。ポスターのメインビジュアルに「我々はこんなゴルフ場にしていきたいんだ!」という将来のイメージを込めて「公園のようなゴルフ場の様子」をデザインしてみた。 募集開始は2022年10月1日、募集人数は30口。入会金の76万円には税金と預託金の10万円も含まれている。年会費は税込みで5万2800円。すでに約10名の新会員が誕生しており、 「ゴルフ場を地域コミュニティに開放するというビジョンにワクワクしています」 という、嬉しい言葉も頂いた。 これからは「数の時代」ではなく「質の時代」だとぼくは思う。一人ひとりとの関係性を大切にしながらビジョンに向けた共創の実現を、新会員と一緒に実現したい。 ゴルフ場のDX化に向けて 新会員の誕生に関わり、もうひとつ用意した仕掛けがメンバー関連業務のDX化だ。自分は会員権売買を主業務とする住地ゴルフの代表も務めているが、この仕事を通じ、メンバーの管理業務が紙でやり取りしている部分が多いことを知った。 お客様は紙に記入したり、書類をなくしたり、郵送したりと煩わしい部分が沢山あり、一方のゴルフ場側もお客様から届いた書類を入力したり、書類を集めたりと双方で多くの作業が発生している。自分がセブンハンドレッドに入った2016年当時に驚いたのは、 「こんなに紙を使うのか」 ということであり、あの衝撃は今でも忘れられない。SDGsの観点からも、貴重な資源である紙を極力使わない入会フローは、今後のゴルフ場業界において必須だと考える。 そこで、お客様の要望に応じて、情報共有や会員契約の書類についても全てオンラインで完結する入会フローを作成した。入会前の面接もオンライン会議で行えば、入会希望者がどこにいても面接できる。 現在、入会希望者の約3割が完全オンラインでの入会を希望され、特に東京都内など遠距離の在住者からは評判がよい。もちろん、クラブの雰囲気やコース状況は実際に来場して体感頂く必要があるが、入会希望者の大半はすでに細かい様子をご存知のはずなので、顧客視点に立つ上でもオンラインの会員入会フローは求められるのではないかと思う。 これまで法人無記名会員で運営してきたセブンハンドレッドクラブにおいて、「個人記名会員」を募集することは大きな転換点になってくる。ゴルファーにもっと愛されるべく、競技会や倶楽部ライフの充実を図りながら、ノンゴルファーの皆さんにも開かれたゴルフ場創りを爆速で進めていきたい。新年も、よろしくお願いいたします! <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年06月11日
    去年の8月1日、コロナに罹患してしまった。重度の症状で、この間「生きることの意味」を朦朧とした意識の中で考え続けた。そんなわけで本連載はほぼ1年休載したが、今は元気に日常生活に復帰している。本号から再開する連載では、病床から得た教訓を含めて皆さんにゴルフ場の挑戦を隔月で伝えたい。よろしくお願い申し上げます。 起 ゴルフ場を核とした地域づくりを目指して 「地域にゴルフ場が存在する意味を創る」。栃木県のセブンハンドレッドクラブを3代目として事業承継したときに思った想いは今も変わらず、挑戦を続ける原動力になっている。経営ビジョンを「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」と改め、ノンゴルファーにとって馴染みのないゴルフ場を、どうやって身近に感じてもらえるか? という問いと日々向き合い続けている。 1つの解決策として、2021年9月に導入したフットゴルフがある。近隣市町村やスポーツ好きの間で少しずつ浸透していき、毎月300名程の来場がある。ゴルフの来場人数と比較すれば微々たるものだが、「ゴルフ場に初めて入った!」という新経験を、毎週100名に提供できていると思うと、本当に喜ばしい。実は、2020年の「フットゴルフワールドカップ日本大会」は当セブンハンドレッドが会場だったが、コロナで流れてしまった。しかし、その関りから生まれた地元自治体・さくら市との連携は当コースを大きく成長させてくれた。 承 お丸山ホテルを通した地域活性 さくら市商工観光課からの紹介で、コロナ禍で廃業した地元・喜連川のお丸山公園内にあるホテルを購入し、「お丸山ホテル」とリブランド。このチャレンジは、お客様に好評を頂くホテルとなってきた。日本三大美肌の湯・喜連川温泉に、地元食材を使った料理、そしてスタッフの心がこもったサービスがお客様から高い満足度を得ている。オープン当初はコロナ禍もあり、非常に苦しい闘いが続いた。 2022年2月の第6波では、経営的に最も厳しく、全社員を集めて会社の銀行残高を説明したくらいだ。しかしながら、スタッフの獅子奮迅の努力もあり、今ではホテルを目指して来るお客様も増えてきた。 お丸山ホテルのビジョンは「さいこうを目指す」というもので、「最高」のホテルサービスに加え、地域を「再興」するためにイベントを「催行」し、「さぁ、行こう!」と言ってもらえるようなホテルを目指している。このビジョン策定中に、光栄なことにさくら市主催の「お丸山会議」のワーキンググループの司会役を仰せつかることが出来た。 日夜、商工や観光振興関係に携わる市民の方々と、どのような喜連川・お丸山公園を目指していくかを議論している。今年度のワーキンググループ終了時には、本誌にもぜひ結果をお知らせしたい。 転 コロナで死の淵を見たことで覚悟が出来た フットゴルフも始め、コロナ禍も乗り切れそうと思っていた矢先、2021年8月1日にコロナに感染した。 容体がとても悪く、朦朧とした中で生まれたのが「本質的な問いと向き合い、人の底力を信じ共に育ち学び合い、新たな価値作りを通じて、真の豊かさと美しさを創る」覚悟だった。正直、コロナで死んでもおかしくなかったため、生きているだけで幸せだが、生かされたからには、その生を全うしたいと強く思うようになった。 企業の本質は組織であり、人である。事業承継してゴルフ業界に関わるようになり感じた業界の課題は、「人財育成」に対する向き合い方だと感じていた。 オーナーのためのゴルフ場ではなく、スタッフ・お客様・地域のためのゴルフ場となるべく、これからの時代は「指示型組織」ではなく「自律分散型組織だ!」と言い続け、社内の組織開発を率先して行うことで個々人の主体性を磨いてきた。 「人の底力を信じ共に育ち学び合い」を自分の使命に掲げたからには、今まで以上にやり切ろう!と、対話の質を上げてきた。その結果生まれたのが、想像もしていなかった「農業」事業だった。 結 いちごを通じて地域おこしを目指す ゴルフ場の相ケ瀬圭司支配人と対話をしている時「僕、実は農業をやりたいんです」との申し出があった。「やりたいことが出来る組織になる」ことを目指しているため、自分は即答で「やりましょう」と答えた。ついにゴルフ場から責任者がいなくなってしまった(笑)。なんて喜ばしいことなんだろうと思えた瞬間だった。 栃木と言えば「いちご」。このイメージは定着しているが、本気で急拡大を狙っている企業は少ない。僕らはこのギャップに挑戦すべく、今年度からいちご畑1・5町歩(1万5000m2)の栽培を開始した。 勿論、課題だらけ! いちごの栽培方法を勉強するところから始め、圧倒的な人手不足の中、夏の異常気象でいちごの苗が全滅し、ちゃんと育ち出荷できるのかという不安を常に抱えているが、立ち止まることなく、出荷が出来る状態になる今年の冬まで猛烈なスピードで突き進んでいきたいと思う。 そんな中、更なる飛躍の機会を頂いた。セブンハンドレッドを通じた様々な取り組みや地域連携、お丸山ホテルの経営と商工観光に対する意気込み等が評価されたのか、光栄なことに、今年度より栃木県のとちぎ観光地づくり委員会(DMO)の委員の役目を仰せつかった。栃木のみならず日本を代表する商工観光に携わる方々と意見交換をすることで、「街づくり」や「地域振興」に対する視座が高まり、自社の特異性についても理解が深まっている。 委員会の中で気づいたことは、ゴルフ場経営は、誰よりも自然や土地と向き合う仕事であること。この自社アイデンティティを新しい強みと捉えなおし、これから一層「農業・いちご」の栽培に力を入れていく。目指すはゴルフ場と融合した観光農園と宿泊(農泊)体験の提供で、栃木を代表する企業になること。 セブンハンドレッドから始まる地域づくり。勿論、ゴルファー向けの取り組みも強化すべく、今年の秋には初めての会員募集を用意している。これからもゴルファー向けの取組はもちろん、ノンゴルファー向けの取組みでも日本のゴルフ場業界をリードできる存在になるべく突き進んでいきたい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年05月21日
    セブンハンドレッドクラブ(栃木県さくら市)は「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」をビジョンに掲げ、ゴルフ場の魅力を高めるための挑戦や地域連携を行っている。地域が一体となる起爆剤として、フットゴルフのワールドカップ招致に成功したが、コロナで今年10月の開催が中止になったのは残念だ。 その一方で、別のチャレンジも行ってきた。さくら市から依頼されたホテル経営への挑戦である。長らく地元で愛されてきた築35年、19部屋の温泉ホテルが、コロナ禍により閉館となった。場所は当ゴルフ場から近いお丸山公園(栃木県さくら市喜連川)に隣接しており、その再建を期待されてのことだった。 打診を受けたのが嬉しかった。意気にも感じた。自分は東京の人間だが、ゴルフ場は地元に根差さないと生き残れない。その地元からの依頼を無碍には断れない。 買収は昨年12月で、リニューアルオープンは今年の4月。「お丸山ホテル」と名称を変えて、日本三大美肌の湯・喜連川温泉を再興すべく立ち上がった。ホテル業は未経験だから様々な困難に直面している。今回はその一部始終をお届けしたい。 僕は、町の振興・活性化には滞在できる場所が不可欠と考えている。人が集まると賑わいが生まれ、その賑わいの中核になるホテル。そんなことをイメージしつつ、実現方法がわからないから知人の建築家・デザイナーに相談した。それがホテル運営のスタートだった。 「スポーツとヘルスケア」を軸にしながら、すべてを一新するのではなく、古くても良いものはきちんと残す。その際、経済産業省・特許庁が近年推進している「デザイン経営」という、デザインの力をブランド構築やイノベーション創出に活かす経営手法を取り入れた。 デザインを用いて商品開発するときの失敗パターンとして、会社の一部のメンバーとデザイナーが勝手に決めてしまい、気づいたら変わっていたというのがある。これでは社内に一体感は生まれない。そこで今回は社員とデザイナーを含め、対話形式で積み上げる方式をとった。 ムードボード(各々が自社をイメージする写真を持ち寄り会話する手法)を用いた対話や、改修前のホテルを見学し、改善点を写真に撮って共有するワークショップ、未来はどんな会社になっているかについて絵本を作ってもらうなどを通じ、徐々に自分たちが創り上げていく意識が醸成されたと思う。その結果、僕らが大切にしている様々なキーワードや姿が浮かび上がった。「丸」もそのひとつである。 上記の活動で印象的だったのは、「丸形」に近い写真を持参する社員が何名もいたことだ。円陣や観覧車などそれぞれ違うが、丸のイメージをもつ社員が多かった。その気持ちを大切にして、名称を「お丸山ホテル」に決め、ロゴも丸形を基調として、お丸山の場所一体に再び賑わいを取り戻そう、という目標をデザインにも表している。 開業以来の実績、世間の評価 反省と失敗 エントランスや壁がどんより暗かった建物内は、照明等で照らし、サイン(表示物)もアートワークで空間全体を明るくした。温泉はホテルのウリなので、手を加えて露天風呂とサウナを新設した。地域住民にとっては昔から思い入れのあるホテルだから、過去のものをなくすと「自分たちの場所」ではなくなってしまう。そこで大事なのが新旧の絶妙なバランスだが、これをデザインできたと思っている。多くの人が「キレイになった」「最高だ」と褒めてくれ、その一言一言が何よりも嬉しかった。昨年12月のスタートからわずか4か月でリニューアルオープンにたどり着き、一定の成果を出しつつあることに誇らしさも感じている。 その一方で、ホテル業は素人同然なため、悩まない日はないほど現場では様々なことが起きる。まず、コロナ禍で滞在者・宿泊者をどう伸ばすかだが、開業から2か月間で宿泊者を含む滞在者は累計約6000名。これは当初想定の5割ほどで、コロナ禍の中のスタートとしては上出来だと思っている。 当社の強みであるセブンハンドレッドとの連携については、宿泊ゴルフパックなどの企画をPRしているが、これによる来場者は全体の3割ほど。 また、アッと驚き、感動してもらえる食事をどのように提供するかについては、地域特産品の「ヤシオマス」を使ったメニュー等の開発をしているが、これに伴う収支の確保など、難題は枚挙にいとまがない。 従業員は24名だが、その3割がゴルフ場からの異動、もしくは兼務する部分もある。いわゆる素人集団であり、日々のオペレーションをどうやって確立するかさえ難しい。19部屋の最大収容人数は108名だが、宿泊客を迎えながら、日帰り温泉やレストラン利用客も受け入れ、これに会食やイベント、お客様から突発的な申し出があると、パンク寸前になってしまう。僕も現場に出て布団上げやレストランホールの仕事などをこなしているが、本稿を書きながら頭が痛くなるほど課題が多い(苦笑)。 開業前には、事前の訓練にプレオープンと銘打ち5日間のテストオープンをおこなったが、結果は散々なものだった。オペレーションやサービスの根幹等の課題を話し合ってきた。オープンして2か月が経ち、ようやく業務に慣れてきた空気が現場にでき始めた。今後はさらに良いサービスができる確信がある。奮闘中のスタッフには改めて感謝したい。 ゴルフ場がホテルを経営すると、「ゴルファー向けだね」と言われてしまう。ゴルフ場に付帯する施設としてのホテル、という見られ方だ。もちろん、ゴルファーも大切な顧客だが、それに限定するつもりはサラサラない。お丸山の「再興」も兼ねており、地域の物を使い、ラグジュアリーでも質素でもない、誰もが馴染める大きな「器」としてのホテルを目指すつもりだ。 セブンハンドレッドもお丸山ホテルも「誰一人取り残さない」というSDGsの精神を大事にしながら、持続可能な発展ができる場所として存在意義を発揮したい。 ■出典 デザイン経営 出典:https://loftwork.com/jp/news/2020/03/05_design-driven-management_report <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年04月30日
    松下幸之助は「企業は社会の公器」という言葉を残した。過去2回の連載では新たなゴルフ場の価値を「公益」の視点で考えて、地域社会との共生やフットゴルフの導入など、実際の活動を中心に紹介してきた。3回目の今回は、なぜ自分がそのような考えに至ったのかをいくつかの視点でお伝えしたい。 Sustainable Development Goals(SDGs=持続可能な開発目標)の達成が近年、叫ばれている。だが、本来は企業の存在目的や、活動そのものが、次代を担うに相応しいものでなければならない。私利私欲のみを追求する企業は、社会から退場を迫られる。松下幸之助の言葉は、SDGsと通底するところが多い。そして、ゴルフ業界もその可能性に溢れている。ぼくが創業家の三代目として栃木県のゴルフ場を継ぐ決心をしたのも、新たなゴルフ場の在り方を提言できると確信したからだ。 小学生から始めたラグビー一色の人生の転機は、東日本大震災であった。高校3年生の当時、テレビで目の当たりにした光景に居ても立っても居られず、一人被災地にボランティアに向かった。そこで痛感したのは、自分の無力さだった。。一人が足掻いても出来ることは限られている。有事の時はラグビーのようにチームで、社会全体で立ち向かわなければいけないということを実感した。 大学に進学してからは、アメリカ・ワシントンD.C.に留学して「国際環境と開発」を履修した。2015年に国連がSDGsを発表する前だったこともあり、大学周囲の様々な国際機関や企業を訪れ、ヒアリングを通じ「自分なりのSDGsを考える」ことを期末課題とした。当時を振り返ると、全く本質を理解できていなかったと感じるが、社会の目指す先が変わり始めていることを、一流専門家から聞けたことは自分の経営理念に大きく影響している。 SDGsとは、国連で採択された「未来の形」だ。健康と福祉、産業と技術革新、海の豊かさを守るなど経済・社会・環境にまたがる17の目標と169のターゲットがあり、2030年までの実現を目指している(※1)。4つのP(人間People、地球Planet、豊かさProsperity、平和Peace)を目標として、これを5番目のP(国際社会のパートナーシップPartnership)で実現することが定められ、中でも重要な理念として「誰一人取り残されない(No one will be left behind)」を掲げていることが特徴だ。儲けることを第一義に置き、得た利益で社会的責任を果たすというCSRの考えとは、この理念において大きく異なっている。 持続可能な社会を目指す上で、誰かが蔑ろにされたり、負債を未来に先送りしたり、ましてや誰かの犠牲の上に成り立つ社会ではなく、在り方から根本的に変えるもの。自分はSDGsをそのようなメッセージだと受け止めている。 ゴルフ場には広大な敷地があり、あらゆる可能性がある。これを有効活用して自分の流儀で「誰一人取り残されない」社会を作り出そうと考えている。 とはいえ、一朝一夕でSDGsは達成できない。まずは全社一丸となって進むためのビジョンが必要となり、スタッフ全員と1on1で話をすることから改革を始めた。 社内で会社のビジョンを考えるためのワークショップを開いていくと、ゴルフのお客様へ最高の経験を届けることは勿論だが、ゴルフをしない方にもコースを見てもらいたい! という言葉や、「笑顔で働きたい」という願いを多く聞くことができた。 話は変わるが、ゴルフ産業を含むサービス業ではお客様を第一に掲げ、自らを犠牲にしながら働く姿を見ることもあるが、ぼくはこれに反対だ。サービスの由来はそもそもラテン語の形容詞セルブス(servus=奴隷の)や、それが名詞化したスレイブ(slave=奴隷)、サーバント(servant=召し使い)で、言葉の背景にはローマ時代に築かれた「上下関係、主従関係」があると言われる(※2)。 この言葉からも、サービスは時として一方的な奉仕の意味合いが含まれていると感じるのだ。しかし「誰一人取り残されない」社会を目指すためには奉仕する・される関係ではない関係を作る必要があると考えた。すると当社の企業理念は、働く人、ゴルフをしない人も含めた「みんな」が笑顔になれる環境づくりを目指す会社、となる。こういった背景から「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」というセブンハンドレッドのビジョンが生まれるに至った。 人と人の「つながり」が新たな経営資本になる ここまでの話だと、慈善事業に注力するだけの印象かもしれないが、そうではない。ぼくは、SDGsを体現することが企業活動を爆発的に前進させる、イノベーション創出の最大の機会だと考えている。イノベーションは、シュンペーターが「経済発展の理論」の中で用いた「新結合」と訳されることが多いが、その原義は「生産をするということは、われわれの利用しうる色々な物や力を結合することである。生産物および生産方法の変更とは、これらの物や力の結合をすること(※3)」である。つまり既存の知と既存の知の結合(かけ合わせ)から、企業が進化を遂げるために必要な源泉が生まれる、ということだ。 ゴルフ場はノンゴルファーを受け入れることが少ないが、それはゴルフ場業界がイノベーションとは程遠いメンタリティにあることを示している。ゴルフ業界は良くも悪くも排他性が強いと感じる。ゴルフ場を開かれた場所にし、ゴルフ場でチャレンジしてみたい願いや想いを集めて実行していけば、この場所を核とした「結合」が次々と生まれる。前号までに紹介したフットゴルフや地域のマラソン大会をセブンハンドレッドで開催したら、これに連なる案件が続々と寄せられるようになってもいる。 現在、社名にかこつけて「セブンハンドレッド トライアル」を実施している。これは、10年間で700個の新しいトライ(取組み)を生み出そうというチャレンジだ。700個のトライをすれば、必ずヒットが出る! という想いの下、スタッフ全員で新しいことにチャレンジしているのだ。 一見、無謀かもしれないが、だからこそ「新結合」が重要になる。社内の発想だけでは限りがあるため、顧客や会員、地域住民、または広大な敷地を使って「楽しみたい」と思う人からアイデアをもらい、一緒に実行していくのだ。今まで出来なかったことが、出来る! となると、様々な意見が集まってくるし、事実セブンハンドレッドでは様々な取組みが生まれ始めている。お金がイノベーションに変わるわけではない。人と人との繋がりである「人的資本」が新しい資本を生む原資となる時代だからこそ、ゴルフ場にはイノベーションを生む無限の可能性があると信じている。 ※1 蟹江憲史「SDGs(持続可能な開発目標)」、中公新書、2020年。 一部筆者が加筆 ※2 阿部佳「わたしはコンシュルジュ」、講談社、2010年。 ※3 ヨーゼフ・シュンペーター、(1997)「経済発展の理論」(塩野谷祐一 他訳)岩波書店。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年04月16日
    ぼくは栃木県さくら市のゴルフ場、セブンハンドレッドクラブの三代目オーナーだが、一昨年、事業承継を決める前に「自分の役割」について悩んでいた。多くのゴルフ場は地元との関りが薄く、東京から来て山を買い、ゴルフ場にして「入山料」を取るビジネス。そんな在り方に強い疑問を感じていたからだ。 ある日、地元・さくら市の教育委員会から「子ども達が走る場所がない」と聞いて衝撃を受けた。広大な敷地をもつゴルフ場が、なぜ地域の子ども達に遊ぶ場所を開放しないのか。「ゴルフ場をもっと開かれた場所にしよう」という新たな使命に気づいた瞬間だった。 地域住民やゴルフ未経験者に話を聞くと、ゴルフ場は「富裕層のゴルフ好きのための場所」と思われており、最大の敵は「社会に蔓延するゴルフ場への心理的障壁」にあると確信したが、具体的に何をどうすればいいのだろう‥‥。新たな悩みに直面した。 そんな折、フットゴルフという新しい競技を知る機会があった。これは足とサッカーボールを使って18ホールをプレーする「ゴルフ」のこと。ボールがあれば誰でもできるサッカーは、ゴルフ場の「心理的障壁」を取り除くにはピッタリだ。代表就任後初の大掛かりな仕事としてフットゴルフを導入しようと、日本フットゴルフ協会(JFGA)に連絡を取った。一昨年6月のことである。 フットゴルフは特別な用具を購入する必要がなく、女性や子供など誰でも気軽に参加できる。ルールはゴルフとほぼ同じで、少ない蹴り数で、フットゴルフ用のカップ(直径約53㎝でサッカーボール5号球約2個分)に入れる競技である。ゴルフ場への配慮もされており、サッカースパイクは禁止、グリーン上でのプレーも原則禁止、服装はゴルフウェアを推奨。プレー時間も3時間ほどで全18ホールを終了する。 当コースの場合、カップは主にコースのラフにあけている。ティーイングエリアはゴルフと同じか、ラフに特設エリアを設け、パープレーのスコアは合計72で、最長のホールは271ヤード(パー5)。JFGAの関係者によれば、現在フットゴルフ協会公認のゴルフ場が17コースで、その多くはゴルファーがプレーを終える14時頃からスタート。 ゴルファーがいない時間帯を有効活用でき、フットゴルフを通じて初めてゴルフ場も体験できる。社会に根強く残る「ゴルフ場への心理的障壁」を打破するためにも、フットゴルフを通じたゴルフ場体験の普及は効果的。まさに一石三鳥の取り組みだと思っている。 しかし、JFGAによれば「ゴルフ場の理解が少ない」「現場社員からの抵抗が強い」などが普及の妨げになっているとか。ゴルフ場は本来、ゴルファーのためだけの場所にあらず、ノンゴルファーや地域住民のための場所でもあるべきだ。そこでJFGAの関係者と会ったその場で導入を決意し、セブンハンドレッドのスタッフへ説得に回った。 とはいえ、当時は代表に就任してわずか3か月の新米社長。現場からの信頼も低い中でいきなり「ゴルフ場でサッカーをやろう!」では、面食らうスタッフも多く、理解が得られなかった。当然だろう。ゴルフ場でサッカーをするイメージは、あまりにも現実とかけ離れている。特にコースメンテナンスに心血を注ぐ管理部門にすれば「とんでもない」という話になる。それでも前述の意義を説明し、徐々に理解が深まって、説明開始から1か月後には合意を得られた。驚いたのは、フットゴルフ普及のため弊社に転職した者がいたことである。どの世界にも「熱い男」はいるものだ。 初めてフットゴルフを受け入れたのは一昨年の9月、80名ほどの若者が場違いな雰囲気に戸惑いながら、それでも嬉々として来場した。ところが‥‥。 現場スタッフの対応は並大抵ではなかったと思う。クラブハウス内や駐車場でボールを蹴ったり、ゴルファーからは「フットゴルフのカップが邪魔」「追い抜かれた」「危ない」などクレームの嵐。スタッフからも「予約時間に来ない」など、多くの顰蹙を買ってしまった。 町興しにもつながった ただ、フットゴルファーに悪気はなく、最大の問題はマナーを「知らない」ことなのだ。当初は「ゴルファーがボールを打つ時に大声を出す」「前をプレーするゴルファーとの間隔の取り方ができていない」「前のゴルファーを追い抜いてしまった」など、フットゴルフに対する悪印象や偏見があった。 話は少し横道に逸れるが、昨今では外部との協業により新しい価値を生み出す「オープンイノベーション」が盛んになっている。異なる背景をもつ企業同士が協業すれば、新たな視点で従来にない価値を生み出せる。ぼくは、フットゴルフに対するクレームを聞いて、まさにこれは立場が違う者同士が協業するときに見られる「対立構造」と同じだと実感した。大切なのはそれぞれの立場に立って説明し、理解を促進することだ。 初めてゴルフ場に来るフットゴルファーには、プレー前にルール、コースの回り方、ゴルフに準じたマナーやエチケットの説明を徹底した。また、「予約時間に来ない」ことについても、「少なくとも予約時間の30分~1時間前には来場する」というマナーを徹底。「予約時間=来場時間」という認識を改めてもらうために、予約時間と来場時間をそれぞれ事前に通知した。ゴルファーとフットゴルファーの双方が、同じフィールドで楽しく安全にプレーするための準備は、スタッフにとってひと手間かかる作業だが、弊社のビジョン「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」を体現する上で不可欠な取り組みだと感じている。 スタッフの細かな配慮が功を奏し、セブンハンドレッドの来場者は現在、当たり前のようにフットゴルフを受け入れている。これまで累計3000名ほどのフットゴルファーが来場しており、ちなみにプレー料金は約5000円だ。 このフットゴルフ、実はセブンハンドレッド内だけに留まらず、市内の町興しにもつながり始めている。「フットゴルフのワールドカップを開催しよう!」との合言葉を機に、地元さくら市役所内で「フットゴルフタウン推進委員会」が立ち上がり、さくら市が「フットゴルフの聖地」となるよう地域の活性化を図る動きが始まっているのだ。 残念ながら、今年10月に当コースでの開催が決まっていたワールドカップはコロナ禍で中止となってしまった。それでも小学生向け社会体験学習の一環でフットゴルフの体験教室を行ったり、市役所員が中心となり「街コン」としてフットゴルフイベントを開催。小学校の体育の授業にも導入されるなど、フットゴルフ推進の動きは加速している。 これにより、ゴルフ場への社会的関心の低さを打破するだけではなく、ゴルフ場から新しいトレンドを発信、地元が活気づく様子を見ると本当に嬉しい。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年04月02日
    わたしは2019年4月、三代目としてセブンハンドレッドクラブ(栃木県さくら市)の社長に就任した。現在28歳。就任当時は、世界一若いゴルフ場経営者ではなかったか。そのこと自体に価値はないが、当時はそれぐらいしかウリがなかった。 高校時代、ラグビーで「花園」に出場した。脳震盪は日常茶飯事で、「ワン・フォー・オール」「オール・フォー・ワン」は今も自分の生きる指針だ。そんなわけで今後10年間、700本のトライ(挑戦)をセブンハンドレッドを通じて達成したいと考えている。 大きなトライが、思いのほか早く実現しそうだ。地元・さくら市の温泉ホテルの再建である。 2020年4月末日、地元の数少ない観光資源のひとつ「喜連川温泉」を有する温泉ホテル(旧称:喜連川温泉ホテルニューさくら)が閉館した。ホテルの所在地は「お丸山公園」の中心地。昔から地元民憩いの丘陵公園で、休日には百を数える模擬店が連なる賑やかな場所だったが、東日本大震災を境に過疎化と少子化により徐々に衰退した場所である。 さくら市は旧氏家町と旧喜連川町が合併して2005年に誕生した。いわゆる平成の大合併による。それ以前、1981年に当時の喜連川町長が町興しのために温泉開発を行った。ボーリングをして湯が湧き出し、今では「日本三大美肌の湯」として数少ない地元の観光資源。当時では珍しい「自治体がつくる観光資源」で、その一環として温泉ホテルが誘致された。それが閉館――。 地元民の誇りと思い出が詰まったホテルだけに落胆は大きく、また、当ゴルフ場も宿泊連携を交わしていたので驚いた。が、閉館は新型コロナの緊急事態宣言が出された只中であり、社長2年目の自分もゴルフ場経営の立て直しで精一杯。「このコロナ禍では仕方ない、潔い判断だな」という程度の気持ちで眺めていた。 地元からの一本の電話 閉館の報に接してから、2か月後だったと思う。さくら市役所の商工観光課から一本の電話が入った。要件を聞いて驚いた。 「ホテル経営に興味はないか?」 というのである。 ただ、驚きはしたが、意外な感じはなかった。セブンハンドレッドは、さくら市健康増進課との連携協定や教育委員会と「授業連携」を交わしており、ゴルフ場を市民に開放してきたからだ。夏祭りやランニング大会、高齢者の体操教室など、ゴルフ場を地域の「公共財」として提供してきた。そんなわけで、温泉ホテルの一件も、お鉢が回ってきたのだろう。もっと本質的に地元に貢献したいと思っていた矢先だけに、打診を受けて嬉しかった。 自分は東京生まれの東京育ちだから、栃木弁はしゃべれない。それでも、さくら市は第二の故郷だと勝手に思っている。さくら市民にとっての自分は「よそ者、若者、バカ者」である。別に卑下するわけではない。実はこの3拍子は、町興しに必要な「3つの者」と言われているのだ。 「よそ者=良くも悪くも地域のしがらみに囚われない」「若者=最年少のゴルフ場経営者&最年少の商工会メンバー」「バカ者=既存の枠組みにとらわれない発想が好き」――。自分自身、3拍子が揃っていると感じている。生来のお調子者でもある。 だから、大切な観光資源と市民の誇り(シビック・プライド)であるホテルの再生を託してもらえたこと、市役所の会議で自分の名前があがったことが、ひたすら嬉しく、意気に感じた。 「前向きに検討します」と応じたものの、すぐに社員の反応が気になった。セブンハンドレッドはホテル業が未経験。コロナ禍でゴルフ場経営は厳しく、また、ホテル業界全体が苦しんでいる中で、社員の反応はどうなのか? 正直に言えばドキドキだった。 「やりましょうよ!」 自分が2019年に代表となってから、「ゴルフ場の文化を変える」ための取り組みに注力してきた。合言葉は「やってみよう」であり、まずはトライして、そこから判断しよう、と言い続けた。冒頭に触れたが、セブンハンドレッドの社名にちなんでスタッフや取引企業、地元関係者と連携して「10年で700本のトライ」を生むための「セブンハンドレッド・トライアル」を実行中。ゴルフ場スタッフの働き方改革、ベンチャー企業との協業、トップダウンではなくボトムアップ型の組織形態へ変更するなど、現場には戸惑いもあるはずだが、旧来のゴルフ場がやってこなかった改革を、小さく進めてきた。 ホテル買収の件について、全スタッフ34名にアンケート調査を行った。その結果、約9割が賛成だった。常に高望みする自分の性格を知っているせいか、はたまた深く考えていないのか(笑)、みんなの前向きが嬉しかった。備考欄には「これまでホテルがないのはもったいないと思っていた」「また挑戦できますね」と、ポジティブな反応が大半だった。コロナ禍で経営が「守り」に入り、スタッフが消極的になることが怖かったが、杞憂だった。自分も挑戦しなければ! と、ホテル経営を引き受けた次第。 ホテルは敷地約3000坪に、3階建ての19部屋、築35年である。買収完了は昨年12月だが、そこに至る手続きは、①前オーナーとの交渉、②市長ら地元有力者への相談、③外部有識パートナーとのディスカッション、④デザインを取り入れたリノベーションの構想などの経緯を踏んだ。名前は地域名を冠して「お丸山ホテル」。今年4月下旬の開業を目指し、新たに20名のスタッフを採用し、大掃除や運営のための議論を行っている。 今後の構想を描くのが楽しい。ゴルフ場をもつ強みから「スポーツ&美肌の湯」を活かした「ヘルスケア」を軸に展開したい。さらに「採光」と「再興」をかけ合わせて「さいこうの場所」を体現したい。採光は「美しく彩(いろど)られた光」であり、地域の美しくユニークな魅力を感じられることを意図。「再興」は、お丸山公園一帯の再興を目指す。 「さ、行こう」と、人々が気軽に立ち寄り、人の温かみと息吹を灯せる場所にしたい。 ただし、「ゴルフ場に付随するホテル」と見られては意味がないだろう。あくまで主はホテルであり、従がゴルフ場という関係が望ましく、「ゴルフ場もあるホテル」「ホテルに付随するゴルフ場」と思われるくらい、ホテル経営に磨きをかける。そうすれば、ゴルフ場経営や地域価値の創出にもつながるはず。「ゴルフ場が地域に存在する意味を創る」こともできるだろう。次回は、上記に関わる具体的な事象に踏み込んでいく。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年03月05日