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    ちょうど1年前、ゴルフ市場に大きな衝撃波を与えた『ステルス』ドライバーが登場した。その画期的と言われたカーボンウッドを、さらに「飛距離性能と寛容性を更なる次元へ」と進化させたのが『ステルス2』 だ。 飛距離を伸ばすために従来は「反発性能」を追求してきたが、今はインパクト・エネルギーの「伝達効率」を多方面から追求している。 カーボンウッドの可能性を見出し、そこに独り突き進むテーラーメイドゴルフの真意はどこにあるのだろうか? アジアプロダクトリーダーの高橋伸忠氏に聞いてみた。 まずは動画で 去年デビューした『ステルス』は、「カーボン時代の幕開け」を宣言して注目を集めました。今回の『ステルス2』は前作と比べて、何が変わって何が変わらなかったのか? まずはこの点から教えてください。 「ありがとうございます。まず、変わらなかった点を申し上げると、前作の特徴だった60層のフェースの積層枚数は変わりません。あとはフェースにプリントされた赤色の模様、それから3タイプのヘッドの名前とヘッドサイズも変わっていません。変わった点はそれ以外、つまりほとんどの部分が大きく変わったと思ってください」 そのあたりを具体的に聞きたいですね。どこが変わり、変わったことでどんな機能が得られたのか? 「わかりました。最大の変化はヘッドに占めるカーボン素材の分布量です。前作は、ヘッドに占めるカーボン素材の割合はチタンより少なかったのですが、今回はテーラーメイド史上初めてカーボンがチタン素材より増えることになりました。チタンやアルミよりも軽いカーボン素材を多く使うことで、これまで以上に大胆な重量の再配分が可能になりました。 第一に、再配分できる重量が大幅に増えたことによって、3種類の異なるヘッドの機能をより明確にできたことです。昨年の『ステルス』は3モデルの機能の幅が少し狭かったと言えますが、『ステルス2』は違いが個々に明確になって、さらに理想に近くなりました。キャッチコピーは『FARGIVENESS どこまでも遠くへどこまでもやさしく』というもので、試打すれば数値に表れ、体感でもきちんとわかるはずです」 寛容性は慣性モーメントの値で表せますが、どれくらい向上したわけですか? 「ヘッドの慣性モーメント値は、3つのモデルとも前昨比8〜10%ほど大きくなっています。各モデルの進化という面では、『ステルス2HD』は高弾道のドローバイアスのボールがより打ちやすくなった。『ステルス2PLUS』は、安定性と操作性が高まっています」 STEALTH、STEALTH2 フェ―ス裏側新旧比較 なるほど。で、前作の特徴を一言でいえば、「カーボンフェースドライバー」という印象が強かったわけですが、『ステルス2』はフェースで進化した部分はありますか? 「そこは大いにあるんですよッ! カーボンシートを60枚重ねて成形したこと自体は同じだけど、積層の方法やシートの種類、重さを変えることで衝突のエネルギー効率を高めている。フェースの裏側を前作と見比べてみてください。中央部分が楕円形に盛り上がっていますよね。 前作はこの部分が目に見えるかどうかの微妙な盛り上がりでしたけど、今回はフェース周辺を薄く、中央部分を厚くするシートの編み込みに工夫を凝らしているんです。この部分をホットゾーンと呼んでいますが、これによりインパクトのエネルギー伝達が向上した。具体的な数字は控えますが、かなり上がっているんです」 そのほかに隠し味は? 「あります(笑)。ゴルファーの打点を考え、楕円形の盛り上がりはフェースセンターを中心に同じ割合で分布するのではなく、少しトウ寄りを広げたところが隠し味です。前作よりフェースの広い範囲で速いボールスピードが期待できますし、寛容性が高まった理由が見えてきますよね? あとは、重さも前作より2g軽くなりました。『たった2g?』って思うかもしれませんが、昨年はチタンフェースの43gをカーボンにすることで26gへも軽量化した。その上で、さらに24gへ。たとえるなら、ボクサーが計量のためにシェイプアップしてギリギリまで絞り込む。その上で、最後の最後にさらに5%落とした。貴重な汗の結晶だと思いませんか?」 そうですねぇ(笑)。 ヘッドの反発から推進力を高める時代に 別の観点で質問します。一般的には、チタン合金フェースの方が反発を表すCT値が高くなり、飛ぶとされますね。この点に限ればチタンはカーボンより優れているかもしれない。このメリットを捨てて御社がカーボンフェースに突き進んだ理由は? 「そこは2つあって、ひとつはフェースの軽量化です。先ほどチタン素材に比べて約20g以上軽量化したと言いましたが、軽くできるメリットは開発者にとって最高のプレゼントなんですよ。 だって、重心位置や慣性モーメントの設計自由度が高まるじゃないですか。たしかに反発性能の面では、今のチタン合金フェースの技術を使えば規制値をはるかに超えられます。だけどご存知のように上限がある。ゴルフ規則で反発性能は規制されているので、反発を求める開発はほとんど限界にきてるわけですよ。でしょ?」 そうですね。 「そのような条件下でボールが飛ぶ要素に注目すれば、答えは自ずと明らかになります。ヘッドが持つエネルギーを、どれだけ効率良くボールに伝えられるのか、その方法論が極めて重要になってきます」 つまり「反発性能」から「伝達効率」へのシフトだと? 「おっしゃるとおりです。テーラーメイドは20年以上かけてカーボン素材の可能性を求めてきたし、カーボンフェースを使った最もエネルギー効率の良いヘッド開発に注力してきました。そういった歴史が『ステルス2』の背景にあるわけです」 インパクトの伝達効率を高めるには、そのメカニズムを知らなきゃならない。この点どうでしょう。 「はい。まずはチタン合金ヘッドの場合、エネルギー伝達はボールとの衝突でフェースがたわむだけではなく、ヘッドのたわみから生じる剛性を生かして、ボールの『変形と復元』に合わせて伝えるわけです」 ヘッドの反発性能が高くても、粘土状の物質を打つとベタッと貼り付いて前に飛ばない。つまりヘッドとボールには双方最適な相性があって、それが「変形と復元」の話ですね。 「ところが、カーボンはチタンフェースのように変形しないんですよ。だからカーボンフェースを使ってボディ全体で衝撃を受け止め、さらに軽量化で得た重量をヘッドの後方に設置して、ヘッド全体の慣性力を高める。その推進力によって、ヘッド全体でボールを弾き飛ばす。これが『ステルス』の開発手法になるわけです」 推進力を高めるために余剰重量が必要だった。軽量のカーボンを選んだ理由ですね。 「そうです。実は、カーボン素材はCT値を正確に測ることができないんです。コンピューターのシミュレーションではそれなりの数値を計算できますが、やはり金属フェースじゃないから難しい。ただ、ボールの初速を調べれば、エネルギー効率が狙った結果に近いことがわかります」 5つのパーツを接着してヘッドを作る 理屈はよくわかりましたが、インパクトの衝撃を受け止める効率の良いボディはどんな構造なんですか? 「構造面で大事なことは、フェース部分で受けた強い衝撃をしっかり受け止める堅牢なボディなんです。見てください。チタンフレームはフェースを取り囲むようになってますよね。『ステルス2』は、使っているチタンはフェース周辺のフレームだけです。 ヘッド全体の歪みを抑えるための梁(ヘッド後方のリングフレーム)もカーボン素材を使ってます」 ヘッドのパーツはいくつで構成されるんですか? 「カーボンフェース、チタンフレーム、カーボンソール、カーボンクラウン、それにカーボンコンポジットリングの5つです。これらのパーツはすべて、接着剤のみでヘッドを成形していますが、これも隠れた高い技術だと思います」 接着というのが凄いですね。御社のクラブ開発は、旧来のゴルフクラブのそれではなく、カーボン素材を使いこなす技術者や接着技術、樹脂技術の専門家も不可欠でしょう。いわば総合力になりますが、御社の開発チームにはどのような人達がいるんですか? 「そうですねぇ。開発はワンチームで活動していますが、それぞれ専門家がいて、専門部分の研究開発を行なっているんですよ。開発チームの人数は非公表ですが、数人という感じではありませんし、必要と思われる人材はその都度招聘しています。航空機関係の経験者や化学者、物理学に長けたエンジニアも加わって、ゴルフクラブの進化を日々、研究しています。 これだけの人材が集まっているわけだから、当然、開発の方向性はひとつではなく、常に各分野の先端技術を取り入れています。じゃないと、毎年新しいクラブを発表できませんよ。今はカーボン素材を活かしたクラブ開発に大きな可能性がありますから、その方向に集中していますが、開発の方向は多面的なので、カーボン素材に特化したものではありません」 カーボンフェースにも欠点はあるでしょう。炭素繊維を樹脂で固めたものだけに、バックスピンのかかり具合が金属フェースより良くないとか? 「おっしゃるとおりです。そのために出来上がったフェースの表面に特殊な樹脂をコーティングして、ボールとの接触による摩擦を高めています。さらに、目では見えない微細な溝を施すことで、安定したスピン量が得られる仕組みなんですね。 スピン量の話でいえば、『ステルス2』のソールにもスピードポケットと名付けた溝を配しています。スイートエリアより下に当たったショットは通常、過剰なギア効果によってスピン量が増え過ぎるとともに打ち出し角とボールスピードの低下を招きます。しかしスピードポケットを搭載すると緩衝機能を発揮して無駄なスピン量を減らしつつ、打出角は高く、ボールスピードの補填もしてうまく空中に打ち出せる。これも大事なポイントです」 こうして話を聞いてみると、『ステルス2』は『ステルス』の改良版ではなく、カーボンウッドの次世代モデルという感じですね。 「そうなんですよ。『2』は2番目という意味ではなく、セカンドジェネレーションの『2』なんだと。そんなふうにご理解いただければ嬉しいです。『ステルス』という新しいDNAを受け継いだ、次の世代という意味です。とにかく打って、違いを実感してください。必ずご満足いただけます」 松尾俊介の目 筆者がキャロウェイで働いていた頃、開発の責任者だったDickさんがこんな話をしてくれた。 「開発の進歩は右肩上がりに登っていくものではなく、S字のようなものなんだよ。曲がる時は垂直に近い角度で上がり、上がり切ると穏やかなカーブになる。その繰り返しで、進歩という歩みは進んでいくんだ」―。 正直、初代『ステルス』はカーボンウッドと呼んで良いものかどうか迷っていた。しかし、この1年間の開発の進歩は、まさにS字を曲がり切って次の段階に進んだところであり、『ステルス2』は今までの研究開発が一つの方向にまとまって、大きなベクトルになった結果だと感じた。 飛行機が初めて音速を超えた時のように、大きな空気抵抗を打ち破った時に衝撃波(ソニックブーム)を伴って、飛行機は次世代の領域に入った。カーボンフェースはCT値を正確に測ることはできない。ということは、エネルギー伝達の方法でドライバーの開発はまだまだ大きな可能性を持って進むことができると思う。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2023年03月31日
    1979年、パーシモンウッド全盛の中、初めてステンレス製のウッドを世に送り出したテーラーメイドゴルフ。その同社は2022年「メタルウッドからカーボンウッドへ」の切り口で、ウッドクラブに再び革新を持ち込んだ。満を持して発売したカーボンウッドの名は『STEALTH』(ステルス)である。 2000年からカーボン素材の可能性を追求し、秘かに開発を進めてきたカーボンフェイス。最新技術の意図を徹底的に深掘り取材。クラブ責任者の高橋伸忠ディレクターに迫ってみた。 フェーステクノロジーが俄かに注目されたのは、ヘッドサイズが300cm3を超えた時代あたりで、それ以前はヘッド構造と重心位置が飛びの性能を決めていました。大型化でヘッドの肉厚が薄くなると、フェースの反発性能がボールの飛びに影響を与える。そのことがわかり、各社ともフェースの素材、形、大きさや厚さなどを真剣に研究した。 「おっしゃるとおりだと思います」 ところが、ゴルフルールの規制が強まって、金属フェースの性能アップは限界に近いと思うんですね。そのタイミングで、メタルウッドを生んだテーラーメイドがカーボン素材に着目して脱・メタルを宣言した。それが今回の『ステルス』です。開発はいつ頃からですか? 「22年前からだと聞いてます。私がテーラーメイドに入って4年になりますが、社内でも極秘の開発だったので『ステルス』の存在を知ったのは2年ほど前なんです。ですから、このプロジェクトがどのように進められてきたのかは、正直、わからないんですね。私が初めて見たときは完成間近になっていて、第一印象はとにかくビックリです。フェースがカーボンでしたから・・・・」 でも、今まで販売してきたチタンウッドの『SIM』ドライバーも、クラウンやボディにカーボンを使っていた。それでもカーボンウッドとは呼ばなかったのに、なぜ今回の『ステルス』だけ殊更にカーボンウッドと呼ぶんですか? 「それは、フェースにカーボンを使用したからですよ。今までのカーボンの使用目的とは全く異なるもので、ドライバーのエンジンとも言える、クラブでもっとも重要なフェース部分を金属からカーボンに転換した。そこで『ステルス』はカーボンウッドだ!と、改めて強調しているわけです」 なるほど。 「ご承知のように、カーボンの最大の特徴は、軽比重のチタン合金に比べても圧倒的に軽いことです。従来のチタン合金で『ステルス』のフェースを作ると重さが43gのところ、今回のカーボンフェースは24gと、44%も軽量化できました。そのメリットは、ボディの設計自由度が飛躍的に大きくなることです。 しかも、フェース面積も20%拡大したので、スウィートエリアを広げられ、カーボンシートの積層具合によっては強度や耐久性も金属に負けないものを作れます。従来の金属ヘッドではできなかった新たなクラブの可能性を、テーラーメイドがイニシアティブをとって次の時代に進めていく。ウッドはカーボンの時代に突入しました」 言い切りましたね(笑) 「はい。後戻りできません」 60層にした根拠とは? 『ステルス』に装着されたカーボンフェースには、おそらく独自の手法が取られていると思います。カーボン繊維を縦に束ねて樹脂(レジン)シートに貼り付け、シート状にしたものを使いますが、このシートの方向を組み合わせることで色々な特徴が引き出せます。その組み合わせの設計がカーボンの可能性になるわけですが、今回のフェースはどのような組み合わせですか? 「おっしゃる通り、カーボンシートの組み合わせ方で使用目的に合ったものを成形できます。今回『ステルス』に採用したカーボンフェースは60層のカーボンシートを重ね合わせて、狙った反発性能、強度、耐久性を実現しました。 ご指摘のように、単純にカーボンシートを60枚重ね合わせたものではなく、角度を変えたものや、カーボン繊維を織りもの状にしたシートを複雑に組み合わせているのです」 で、どのように? 「ごめんなさい。ここは企業秘密になりますので、公表はできません。重ね合わせ方は当社の特許になっています。あのぉ、カーボンフェースをよく見てください。フェース裏側の中央部分に、少し厚みを持たせてあるのがわかりますよね。 これはチタンフェースでも同じような構造になっていますが、中央部分に厚みを持たせることでスウィートエリアが増大することがわかっています。それをカーボンフェースにも応用して、中央部分には特殊なカーボン繊維を編み込んだシートを採用しているんです」 今回は60層のカーボンシートを組み合わせていますが、なぜ60層なのか、どのような開発プロセスがあったんですか? 「実は、2012年にジャパンモデルの『グローレ・リザーブ』でカーボンフェースを採用しています。それで当時は70層だったんですが、バルジやロールはあまり無く、ツイストフェースも搭載していませんでした。結果的に打球音が評価されず、もう一度研究をやり直そうとなったんですね。この時点でもカーボンフェースとしてはかなり完成形に近づいたけど、実際に製品に搭載したらどのような結果が得られるのか? 正直に言えば、マーケティングトライアルが必要でした」 わかります。研究室や実験だけでは生データが不足する。 「そこで、製品として市場に出すことで、より多くの生の評価を調査する必要もありました。幸い『グローレ』は日本専用モデルなため、販売数量も限定されたものなのでテストマーケティングには最適でした。そこから得られたデータをもとに、さらに開発が進められました。 その結果、打球音も研究開発の主要テーマとなって、積層方法や積層数、ヘッドの内部構造まで研究の幅が広がり、最終的に60層という今回の形に落ち着きました」 レジン量で変わる音質 インパクト音の設計って、もの凄く微妙じゃないですか。 「おっしゃる通りです」 カーボンシートのレジンの量によって、カーボン成形物が金属的になったり樹脂的(プラスティック)になったりする。金属的に近いものであれば当然打球音は高くなり、目指す音域に近づきます。 で、レジンの量は、カーボン繊維の形を円形でなく多角的にすることで減らせますが、今回のカーボン繊維はどんな形で、レジンの量はどのくらいでしょうか? 「いやあ~、ここまで突っ込んだ質問は初めてですよ。おっしゃる通りレジンの量によって硬さに変化が出て、音にも変化が出ます。 ですが、どんなシートを使っているかは企業秘密ですので、ご容赦ください」 わかりました。今回のフェースの形状を見ると、金型に60ものカーボンシートを重ね、熱を加えながら高圧で成形する。最後のシートは赤くカラーリングし、スコアラインなどプリントしているのでしょうか? 「まさに、そうです。『ステルス』に搭載されているカーボンフェースは、チタンフェースと同じような打球音を目指して開発を進めました。当然ながら耐久性、強度も考えた上ですが、2019年にプロトタイプが出来上がり、テスト結果も良かったので、製品化へのステップに進みました。ご指摘の製法につきましても、2020年の終わり頃に量産化できる見通しが立って、ようやくGOサインが出たのです」 カーボンフェースは金属フェースに比べて、スピン量が少ない傾向がありますね。『ステルス』のフェース表面にウレタン樹脂をコーティングしていますが、これはスピン対策ですか? 「そうなんです。金属フェースではないため、スピン量がちょっと少ない傾向にあるんですね。特に雨天でのプレーで水分がフェース面に付着すると、ボールが滑ってさらにスピンが減少します。適正スピン量が得られないと球がドロップするなどの弊害が出るので、それを防ぐためにウレタン樹脂をコーティングしています。実はコーティング後、ナノレベルの表面処理をして、スピン量の安定化を図ってるんですよ。ナノレベルの処理なので目視は難しいですが、光の当て方で確認できます」 であれば、ウレタンカバーボールとの相性がいいでしょう。 「そうなんですよ。クラブ開発で実打テストをするときは、全部自社のウレタンカバーボール『TP5』を使っています。当然、『TP5』のボールで最大の効果が出るように、フェースデザインやクラブ開発をしています(笑)」 3種類のヘッドの意味カーボンフェースはドライバーだけで、FWやUTは金属フェースです。なぜですか? 「理由はふたつあります。ひとつは耐久性で、FWは地面から直接打つことを想定して設計するじゃないですか。ドライバーはボールだけに接触しますが、FWはバンカー、ベアグラウンド、ラフなどあらゆる状況で使用するため、フェース部分に加わる衝撃はかなり大きい。フェースが欠けたり、傷ついたりすることがある。その点金属フェースは強いからです。 もうひとつはスピン量です。先ほどの話、カーボンフェースは金属フェースよりもスピン量がちょっと少ないでしょ。FWはグリーンを狙って止める機能が必要なので、金属フェースを採用しました。でも、クラウン部分のカーボンは6層で、ヘッドのトゥ側にまでカーボンエリアを拡大したことで、より低い重心位置を確保しています。フェースには採用してませんが、カーボンテクノロジーを追求して、FWとして必要な弾道とスピン性能を引き出している。このことは強調したいですね」 ところで、今回の『ステルス』は高反発対応をどうしてますか? 「はい。2019年発売の『M5』から、スピードインジェクションと名付けた小さな穴をトウの先端部分に設け、そこからジェル状の樹脂を小さな部屋に入れることで、個体差が生じる反発係数を基準内に抑えました。チタン合金フェースの場合、製造上、反発係数がルールを超えるものと、超えないものが放物線状に分布します。全てを規制値内で作るとなると、わずかですが、その差に幅が生じてしまい、飛ぶものとそうじゃないものが混じってしまう。 であれば、全てのフェースは規制値を超えるもので製造し、ヘッド成形後、ひとつずつ計測しながらジェルを注入し、規制値内に調整しようとなったのです」 あれは製造技術だけではなく、発想としても画期的でした。 「ありがとうございます。で、今回のカーボンフェースもそれが必要という認識で、フェース裏側のボディ部分に小部屋を設けていたのですが、その必要がないくらい設計通りのものができた。この点は製造精度の高さを示しています」 最後の質問です。『ステルス』は3種類のヘッドを出しましたが、その狙いを教えてください。 「基本的にはオールゴルファーが対象ですが、ヘッドサイズはいずれも460㎤です。弾道とドローバイアスのかかり具合によって、使用対象者が分かれると思います。 『ステルス HD』は3機種中最も高弾道で、ハイドローを求めるタイプのゴルファー向け。次に『ステルスPlus』は中弾道でストレートボールを求めるゴルファー向け。『ステルス』はその中間に位置します。その中で『Plus』については、限定したショップでの販売になります。このモデルはかなり競技志向タイプなので、しっかりとフィッティングをして、最適なスペックを選んで頂きたい。売場に人材と設備が揃ってないと対応が難しいので、専門店を限定しています」 販売構成比は? 「HDタイプが50%、Plusタイプが20%、その他という感じで考えています」 松尾俊介の目 テーラーメイドは演出が上手い。そのため今回の『ステルス』は、真紅のカーボンフェースに視線が集まるはずだ。が、フェースにカーボンを使った理由のひとつは、軽量化による大きなフリーウェイトで、余剰となった重量をどの部分に使うかが大きな開発テーマであった。 大きくなったフェースを支えるボディ部分は、見方を変えるとキャビティバックデザインといえる。この構造ならばボールの直進性は高く、高弾道になる。 そういった視点で見ると『Plus』は、プロや上級者には強い武器だ。反面、一般ゴルファーには『HD』が最適だろう。重心位置を後方の低い位置に移動させ、一般的なヘッドスピードでもスクエアにインパクトをしやすくしている。 前述のように、重量に余裕があるからできることで、『HD』(High Draw)タイプの生産が多いのも理解できる。ロフト選定を間違えないようにすれば、ゴルファーの強い味方になるはずだ。 今回の取材では、過去22年間にわたる開発プロセスを知りたかった。開発のスタートは2000年。その頃は、キャロウェイゴルフが開発したカーボンウッド『C4』が、デビュー直前の時期だった。各社ともカーボン素材への関心は高く、また、テーラーメイドの元CEOであったマーク・キング氏は、当時キャロウェイの副社長として、同社の開発の方向性を熟知していた。 『C4』の発売は2001年。このモデルは高反発のフルチタンモデルとして脚光を浴びた『ERCⅡ』と比較され、飛び、打球音では精彩を欠いた。『C4』と並行して、キャロウェイはもうひとつのカーボンウッドを開発していた。 『フュージョン』である。チタン合金のカップフェースにカーボンのフルボディタイプだった。アイデアとしては面白い組み合わせだったが、ヘッドサイズは360cm3と小ぶりで、市場は400cm3を超えるデカヘッドを期待していただけに、これもヒットしなかった。 一連の経験を積んだキング氏はその後、テーラーメイドのCEOに就任してからも、カーボン素材の開発を基礎研究から手掛け、なんとかモノにしたいと考えたはずだ。少なくとも筆者はそう思う。 どのようなものが将来のウッドクラブとしてふさわしいのか。ルール規制が厳しくなり、COR値、ヘッド体積、ヘッド慣性モーメント、クラブの長さなど、開発に制約が加えられる傾向にあって、チタン合金での開発競争は限界に差しかかっている。おそらくあらゆる素材の研究開発は行ってきたはずだ。最終的にカーボンが選択された。 カーボン素材でフェース材を作る発想は、カーボンを熟知している人間でないとイメージが難しい。テーラーメイドの開発チームに、航空宇宙産業の人間が入っていることは容易に想像できる。フェースとボディの接着技術や、カーボン繊維の組み合わせで剛性や耐久性能を引き上げる技術は、そこから来ているからだ。 高橋さんは「これからのテーラーメイドのウッドはカーボンウッドです」と言い切った。ということは、今回の『ステルス』は最初の一歩であり、次世代モデルは、さらにカーボンの特性を活かしたコンポジットウッドが完成間近なのだろう。そんなことを予感させる。
    (公開)2022年03月21日
    弾道測定器やデジタル機器類は確実に進歩していて、ゴルファーにはとても有益だけに、今回のPGAショーでは会場をカテゴリー別に分けて展示した方がよかったと思う。 ボールの弾道測定器はトラックマンが市場をリードしている感があるが、ガーミンやフライトスコープがハンディタイプの小型測定器を出展して、ゴルファー向けに新たな市場を作りつつある。 これはPGAショーが従来のB to BからB to Cに変化している典型的な動きといえる。 GPSを利用した距離測定器もレーザータイプとは別の発展を示していて、距離測定器はウェアラブルが標準的なものになりつつある。 もうひとつ、これから注目を集めるものがパッティングの練習器具で、フランス製のウェルパット社が開発した<BigTilt>はグリーン面がリモート操作で1〜5%の角度で変化。あらゆるパッティングのシチュエーションを練習できるものだ。 この製品が注目される理由は、今までにはない機器だからで、2年前に発表されたものからプロジェクターによるマッピングへと大きな進歩が見られた。ボールのスピードコントロールを主体としたトレーニングからパッティングゲームまで機能が広がり、ゴルフ練習場だけでなく、あらゆるところで色々な使用方法ができるものとして普及が進むと期待される。 シミュレーションも単なるショットシュミレーションからゲーム、トレーニングなど、設置場所や目的に沿ったものをカスタマイズできるものが主流になっている。 こちらもビジネスユースから個人使用へとその広がりがデジタル機器の可能性を広げている。
    (公開)2022年01月31日
    会場の中央に大きなスペースを取っているのが乗用カートブースです。ヤマハとClub Carがその中心でニューモデルを展示しているのですが、こちらも時代を象徴するようにリチュウム電池を搭載したEV Carです。 そのバッテリーもパワーと走行可能時間をアピールしていて、なかにはそのまま街でのれるようなものも出展されていました。 ボディは2人乗りを中心にスタイリッシュにデザインされたものが多く、単なる乗用カートよりか一歩進んでマイカート的な、乗ってみたくなるようなものが多く展示されていました。 米国のカートと日本カートとの大きく異なるのは電磁誘導タイプは一つもなく、全て自走式である点が特徴的です。 新しいゴルファーが増えつつある時代にゴルファーを管理する、事故などが起こりにくいように制限を加えている日本のカートとは大きな違いがあり、日本のゴルフのプレイスタイルが固定化している理由がカートにも見ることができます。ゴルフを楽しんでもらうにもカートは重要な役割なのでこのあたりも再考すべき点だと思います。 もう一つ手引きカート類もモーターで駆動するものがあり、歩くゴルフを推奨することもゴルフの楽しさを理解させるものでGPSが付いていて距離を測定したりすることもできるものや、リモートタイプやゴルファーの後を付いていくタイプ、電動アシスト自転車タイプなど未来のゴルフスタイルをよかんさせるものが注目されていた点は興味深いところで日本でもこれらのタイプの普及を望むところです。
    (公開)2022年01月30日
    第69回となるPGA Showがフロリダ州オーランド・コンベンションセンターで開催されました。 前日のDEMO Dayはわずか50社の参加という寂しいものでしたが、Showの方も20数回見てきた中では最も寂しいShowの開幕となりました。 「主役のいないPGA Show」というのが今回のテーマにはふさわしいところです。 メディアセンターには主催者から展示社はXXX社、初日の入場者はXXXX名と発表があるのですがそれもない状態です。 カートの会社と新規出展者が目立つ感じで、以前から出展してしている所でもブースの大きさを半分にしたりかなりコストセーブを測っていることがわかり、会場の空席も大きく目立つものです。 ただ、ゴルフ市場は非常に堅調に伸びており、出展しなくても売り上げが伸びている状況では今後のShowのあり方が大きく変わるものになるのではないかと思います。 B to BからB to CへとShowへの転換が求められるのは明白です。
    (公開)2022年01月28日
    名前は『PONY』 山口県宇部市のゴルフ場、アイランドゴルフガーデン宇部に『PONY』(ポニー)と名付けられた1人乗り用の電動乗用カートがテスト導入されています。 ゴルフ場の親会社であるロックフィールドゴルフリゾート株式会社の大島均社長が、ゴルフをもっと手軽にカジュアルに楽しめる方法のひとつとして「1人乗りカート」の有効性に着目し、正式導入前のテスト用として12台導入したものです。 現在、コースでの実施テスト段階ですが、改善すべき点がいくつか出てきたことを踏まえ、新たにマレーシアのメーカーに依頼して「自社オリジナル製品」として開発を進めています。 1人乗りカートの良さを体感してもらうために、導入直後はメンバーに無料で、ゲストには低料金で試乗を促し、その使用感を聞き取り調査したところ、想像以上の高い評価があり、本格的に導入、ゴルフ場の特徴のひとつとしてアピールすることになったのです。 コースフロントに『PONY』を1台展示して、その脇に設置したTVモニターで使い方や機能を動画で流すだけではなく、コースのホームページにも同じ動画を掲載して『PONY』を使う楽しさ、快適さをPRしているのですが、やはりゴルフ場で実際に使っている姿を見るとつい乗って体感してみたくなるものです。 潜在的な需要は想像以上にある 「導入前は、どのようなゴルファーがこのカートを利用するのだろうか、どうしたら『PONY』を受け入れてくれるのだろうか、と色々考えましたが、一度乗ってプレイしていただくと確実にリピーターとなって予約が入るようになりました。 シニアから若いゴルファーまで、想像以上に幅広く利用されています」 と、中西大輔支配人は答えてくれました。 新型コロナウィルス感染症の拡大により、世の中の仕組みが大きく変わり始めました。その中でゴルフ場は3つの密を避けるという点から来場者が増え始めているのですが、唯一問題があるとすれば、乗用カートにマスクなしで複数のプレイヤーが同乗することによる感染リスクです。 その点、1人乗りカートは密からは完全にセパレートされるので、感染防止対策としては最も有効な手段となります。感染防止という予想外の出来事が『PONY』にとってフォローウィンドになったことは確かです。 しかし、1人乗り用カートの潜在需要は、単に「コロナ対策」に限ったものではありません。実は、ゴルフ市場には様々な問題点がありますが、そのいくつかを『PONY』が一気に解決してくれるかもしれない。そんな期待感を抱かせるのです。 その意味で「ポニー」は、ゴルフ界の改革を実現する奔馬になりえるのです。 すべての仕組みが「ゴルフ場目線」 今、世界中でゴルフ人口の減少に危機感を持つ業界関係者は多いのですが、問題は、なぜゴルファーの減少は続くのかという点です。 現代人にとってはプレイ時間が長すぎる、ゲームを楽しめる腕前になるまで時間もお金もかかる、道具にもプレイ料金にもお金がかかる、マナーやエチケットなどの縛りが堅苦しい、などなど理由はいくつもあります。 どれも当てはまる理由ですが、端的に言えばゴルフをやめる人の方が始める人より多いという明確な事実があります。 日本では若年層を対象とした統計で、ゴルフを始めた人のうち約半数が「3年以内」に止めてしまうというデータもあります。 その主な理由は、<楽しめない、なかなか上手にならないから>というもので、ゴルフ界は無策のまま、敷居が高いとかお金がかかるなどのハードルを乗り越えてきてくれた人たちを放置して、半数も失っている。その原因を早急に取り除かなければなりません。 ゴルフが楽しいものであれば、やめる人はもう少し減らせるはずです。 実際、「1人乗りカート」がなぜ人気が出たかを考えると、理由は簡単。「楽しい!」ということに尽きるでしょう。ゴルフ場という広大な空間を自由にプレイするという開放感を感じられること、そこが一番のポイントではないかと考えます。 日本独自の「5人乗りカート」はキャディシステムの4バッグの延長上にあるもので、効率の良さを考えて組み入れられたものですが、それはあくまでゴルフ場の視点に立ったシステムの延長上にあります。 また、5人乗りのカートは「2人乗りカート」2台分より安いだけでなく、メンテナンス費用も1台分なので安く、またフェアウェイを走行できないのでコース管理がしやすい、しかも進行状況を把握しやすいというメリットがあります。 むろんこれらのメリットは、あくまでゴルフ場にとってです。 一方、「1人乗りカート」は自分の打ったボールのところにプレイヤーが直接行けるため、正しいクラブ選択が容易にできるというゴルフ本来のプレイスタイルを取り戻せます。違う番手で打ちたくても、カートが遠くにあるため「まあいいか」でミスショット。それがなくなることは大きな利点です。 『PONY』という専属キャディと一緒にゴルフをしているような感覚は、開放感、快適さに繋がるものなのです。 楽しさを実感できれば、さらに楽しさを求めて練習場に行き、コースに出かけることにつながります。プレイ回数が多くなれば上達のペースも早まり、良い循環が回り始めるのです。 タクシーに乗るのに、見知らぬ他人と相乗りするのはごくごく稀です。なぜでしょうか? 相乗りすれば安くなるのにそれをしないのは、他人と一緒にいる煩わしさがあるからです。人には自分の空間を一定のスペースで確保したいという自然の欲求があるのです。 それを、ゴルフ場の都合で同伴プレイヤーを1台の車に相乗りさせることは、かなり乱暴な(ゴルフ場からすれば良いシステムと思っているかもしれませんが)やり方でしょう。 その意味で筆者は、5人乗り乗用カート、電磁誘導式カートは「1人乗りカート」の出現により徐々に過去の時代の遺物となって行くと見ています。 アイランドゴルフガーデン宇部では1台の使用料として1650円を設定していますが、それでも使用したい人が多いのは、少なくとも「1650円以上の価値」をゴルファーが認めているからです。 『PONY』開発の5つの狙い 『PONY』は次の5つの基本コンセプトを盛り込んで開発中とか。前提にあるのは「開放感」「楽しさ」「快適さ」です。 1、電気駆動車でありCO2を排出せず環境にやさしいこと。 2、200Vの電源で充電でき現状モデルでは1回の充電で36Hの運行距離があること。   <テスト用は電池の性能が十分でないために高性能のリチュウム電池を装着予定> 3、USBの受け口が2箇所ありスマートフォンの充電やPCとの接続もできるためにGPSを利用したコースナビも可能であること。 4、タイヤもフェアウェイ走行を考えて芝生を傷めることがない特殊なものを装着すること。 5、カート重量(テスト用は220kg、5人乗りの平均的カートの重量550kg)は可能な限り軽量化し、走行距離を伸ばし、安全を重視し操作性を高めること。 以上が基本コンセプトですが、この『PONY』が広く普及すれば、ゴルフ場の集客コンテンツとして力を発揮することは間違いない。筆者はそう見ています。 なぜなら、今までの一般的なゴルフ場は社交を中心にプレイスタイルをシステム化してきました。どちらかといえばプレイを「させてあげる」的な空気感があり、ゴルフの持つ楽しさに行き着く前に、そのゴルフ場のやり方に合わせなければいけない堅苦しさを感じさせてしまうのです。 ゴルフ場に「させてあげる」の意識がなくても、結果的には自分たちのやり方を前面に出し、強要していることが「当たり前」になっている。そのことに気づかないのです。 1人乗りのカートをゴルファーの選択肢のひとつとして提供するだけでも、旧来のシステムに対するアンチテーゼとしての「開放感」、そして、自分で運転してプレイできる「快適性」や、ゴルフ場の雰囲気や同伴プレイヤーとのコミュニケーションを自分の距離感で行える「安心感」が醸成され、需要を高められると思います。 ゴルフ場以外の可能性 もうひとつ可能性があるのは、ゴルフ以外の発展性で、1人乗りの短距離移動カートとして存在感を発揮することも考えられます。 病院や大学のキャンパス、大きな工場などでの移動手段、観光施設や人の多く集まる街の中心地域の交通環境や空気環境などを考慮した「小さな交通手段」として、2輪の自転車やバイクなどよりも安全に移動できるだけでなく、物も運べます。 電気駆動なので環境にも優しく、家庭用電力で充電できるなら使い勝手も手軽になるでしょう。環境意識が高い欧州では、目標年度を決めてガソリン車やハイブリッドカーの新車を生産しない方針が決まっています。 そのような動きに照らしても、筆者は可能性を確信します。 また、加速する超高齢者社会や障害者の移動手段としても有効で、生活の中に普通に存在する乗り物としての可能性もあります。 先述のように『PONY』は開発段階で、改良点はまだまだあるかと思いますが、最初はスポーツなどで手軽に利用をしてもらうことで認知を広め、そこからいろいろな形の要望が出てきて、仕様を少しアレンジするだけで使用範囲が広がるという期待感があります。 山口県宇部市のゴルフ場から始まった1人乗りカート、これからどんな可能性を見せてくれるのか楽しみです。
    (公開)2020年11月30日
    新型コロナウィルス感染症(Covid-19)は世界的に猛威をふるい、ゴルフ界も大きな影響を受け続けています。政府は6月19日、全国の移動制限(自粛)を解除して、経済活動の再開を促しましたが、以後、感染者の数が増えるなど予断を許さない状況が続いています。 振り返れば4月7日に緊急事態宣言が出され、行動の自粛が求められました。ゴルフ練習場やゴルフ場は休業要請の対象施設から外れたとはいえ、通常の営業はできず、顧客と従業員の健康に細心の注意を払いながら営業しました。 施設内で感染者がでると即営業停止となり、しばらくは営業ができない状態が続くため、細心の注意が払われたのです。 そのため全日本ゴルフ練習場連盟や日本ゴルフ場経営者協会などは、独自の営業や運営に関するガイドラインを策定し、会員及び非会員の事業者に対しても順守を依頼しました。 プロのトーナメントは女子の「アース・モンダモミンカップ」で「開幕」したものの、その後の試合は中止続きで、多くの試合が中止や延期となっています。 リーダーの条件とは このような未曾有の危機に際した時、現状をつぶさに視察し、情報を集め行動指針(ガイドライン)を示して進むべき方向とゴールを設定し、なぜそれを行うかの説明をした上で実行に移すことがリーダーの役目だと信じます。 リーダーは、平時の時は静かに状況を見ながら予定通りコトが進んでいるかをチェックするだけで、目立たない存在ですが、危機の時は先頭に立ち、混乱状況で右往左往している状況からいち早く抜け出し、正しいと思われる方向へと舵を切る役目を担っています。 真のリーダーは自分の役割、立場が分かっている人で、それだけに仲間たちから尊敬されリーダーに推挙されるのです。 ゴルフ界においてはゴルフ関連の16団体が集まって組織されたゴルフサミット会議というものがあり、ここが率先してメンバーを招集し、ゴルファーにはメッセージを、ゴルフ施設やゴルフ用品販売関連、そしてプロのトーナメントやアマチュアの大会などについてのガイドラインを作成して各団体に呼びかけ、統一した指針の中で行動できることがベストなのかもしれません。 しかし、残念ながら、日本ではサミット会議からはほぼ発信がされませんでした。加盟団体の一部が率先してガイドラインを出したのとは対照的です。 海外では各国のゴルフ業界の中心となる団体が率先して状況を把握し、そこから得られた情報を開示ながら行動のガイドラインを作成し、Covid-19の感染の拡大や収縮状況に応じた規制レベルを複数提示して行動していた点は、業界としてまとまっている、組織として機能している感を日本のゴルフ関係者は強く受けたと思います。 なぜ、日本はできなかったのか 私はゴルフ関連団体が16もあるにもかかわらず、それを統括する部門がないことが最大の要因と思います。そして、各団体は個々独立した形で存在するので、横(他の団体)との情報共有や連携がないので、全体が一つの組織として機能できないからです。 あたかも日本の役所と同じように縦割り的な形になっているからでもあります。 Covid-19の感染拡大という緊急の事態に対して、各団体は会員のための指針や行動という内向きの対処を迫られる状況の中で、どこかが率先して全体を見てリーダーシップを発揮することはできないのです。 ゴルフサミット会議はせっかく全てのゴルフ関連団体のトップが集まって行う会議ですが、ゴルフ業界を取りまとめて活動していこうという基本的な考えがないためリーダーが不在となり、日本のゴルフ界がカオス(混沌とした)となっているのです。 海外のゴルフ関係者からは「日本のゴルフはどこに話しを持って行ったらことが足りるのかが明確になっていない」という指摘を受けます。16ものドアがあればどれをノックしていいのか迷いますよね。日本のゴルフ界の玄関口がわからないので中に入りにくい状況なのです。 各団体とも、歴史や組織、人材などから日本ゴルフ協会(JGA)がやるべきでは、と思っているのか、それとも何か気兼ねしているのか、わかりませんが、サミット会議が中途半端な状態のままであることは不安です。 このままでは日本のゴルフ界は、各団体の組織がそれぞれの思惑の中で活動を行うので、日本のゴルフ界がどこに向かうのか、どのように発展していくのかが見えないのです。 このような状況で一番不利益を被るのは日本のゴルファーなのです。 JGAは競技団体なのか、それとも… JGAの基本はゴルフ競技団体、アマチュアの由緒ある日本を代表するゴルフの協会です。この点では誰も異論はないと思います。 ただし、組織の母体がJGA加盟コースというゴルフ場なのです。競技者という個人ではないのです。JGAは日本を8つのブロックに分けた地域のJGA加盟コースで構成される組織の上に、それを統括する形で存在しているものです。 JGAの個人会員は地域の加盟コースのメンバーであることが基本的な条件となっています。競技団体ですが、選手が主体となっているものではなく、加盟しているゴルフ場が正会員である点が特異な点です。 JGAの存在意義、目的はなんでしょうか? JGAの約款、第3条は協会としての目的ですが、このように記されています。 この法人は我が国におけるゴルフ界を統一し代表するとともに、我が国のゴルフ規則制定などの最高機関として、ゴルフの健全な発展と普及を図り、もって国民体力の向上、社会、文化の発展並びに国際親善に寄与することを目的とする。 第4条は事業で、10項目を挙げています。1〜9項目までは競技に関することですが、10番目として、その他目的を達成するために必要な事業と記してあります。 JGAは、約款からすれば競技団体であることは間違いないのですが、目的の最初には日本におけるゴルフ界を統一し、代表するとあり、事業も目的を達成するために行う、となっています。 日本のゴルフ界の将来を考えると統一した組織は必要 感染症という一つのウィルスがもたらした影響は世界を激震させています。 私たちはCovid-19の被害者という認識ではなく、これからはこのようなことが常に起こりうるものという認識を持って、新しいやり方をこの貴重な経験から学ぶ時が来たと思います。 そのためには、いつどのような形で感染症や自然災害など大きな出来事が起こっても対処できる柔軟かつ多様性があり、持続可能な組織や体制を作る必要に迫られています。 同時にCovid-19の影響で経済的な問題でゴルフができなくなる人が相当増えると予想されます。現状の中でもゴルフを積極的にしている人は多いのですが、経済的な影響が広く出てくるのはもう少し後になってからです。 それに2025年には団塊の世代が75歳を越える年齢に達し、今のペース以上にゴルフ人口が減少します。若年層や女性は思ったようにゴルフに興味を示していない現状もあり、今、抜本的な対策を取らなければ間に合わない、躊躇している時間などないのです。 新・日本ゴルフ協会構想 JGAがその目的に日本のゴルフ界を統一し代表とするのであれば、率先してその形をより明確にして行動に移す時期に来ていると思っています。16団体をあるべき形に統合するものです。 そのためにはたたき台的なものが必要ですが、自分としては(全くの私見ですが)このように考えてみました。 新しい統一された組織の一つの例(案)としては8つの部門にわかれます。 1、 競技部門(プロ、アマの競技全般の企画及び開催) 2、 施設部門(ゴルフ場、練習場などの施設) 3、 普及・育成部門(ゴルフアカデミーの構築、この中にプロ認定、インストラクター資格認定、ゴルフマネージメント業務の認定、ゴルフの普及活動) 4、 マーケティング部門(協会としての活動戦略、ブランドの構築と管理) 5、 国際部門(海外のゴルフ協会との交流) 6、 用品用具部門(製造部門、小売部門) 7、 財務部門(財務に関するすべて) 8、 渉外部門(ゴルフ業界以外の団体や組織、企業との関係構築) 各部門の業務内容は次回書かせていただきます。 新しい組織がなぜ必要なのか なぜ、そう思うのか、先走りすぎないか?今の日本では無理、まとめて引っ張って行く人がいないから、という声も聞かれます。 しかし、それぞれの組織の中にはこのような改革をしなければ、と考えている人たちも少なからずいます。その人たちが明日の日本のゴルフ界を牽引していく基礎を作る人たちです。 考えるだけではダメです。できることから行動に移さなければ、何も変わらないからです。 よく考えてみてください。 日本のゴルフ用品市場は世界のゴルフ市場の中でアメリカの44%に次いで世界で第2位の24%という規模を持つ(2018年データーテック調べ)もので、ゴルフ場数、ゴルフ用品市場も単一国家の規模としてもその雇用数も最大規模なのです。 しかし、その内情は厳しく、従来のやり方では発展どころか縮小現象を食い止めることができない状況下にあることが明白となっているのです。 バラバラに機能している組織の集まりではダメなのです。早急に全く新しい組織を構築し、人心を一新して新しい時代にふさわしい活動をしていくしか方法はないのです。 新しい組織は米国やヨーロッパ、そしてアジアを始めとする国々にも影響を与える要素を持つだけでなく、優れた品質、開発能力を持つ日本の各種産業とも連携をとれば、世界でビジネスチャンスを広げる可能性を持てるからです。 業界全体を網羅し、あらゆる事態にも対処できる柔軟で多様性に富み、継続可能な組織を構築する、今がその時なのです。 いみじくもCovid-19が「新しい日常」を示唆したのなら、これを絶好のチャンスと捉え前進しようではありませんか。日本のこれからのゴルフの正しい発展と普及のために。
    (公開)2020年06月26日
    筆者は2018年にゴルフトライアスロンという競技を立ち上げ、2019年10月に初めて大会を開催しました。これはゴルフ、ラン、自転車の3種混合競技で、初開催の段階からその将来性に確かな手応えを感じました。多くのゴルファーが開催を待ちわびていたからです。 そこには何が存在していたのでしょうか? 最初に息子とやってみて「これは面白い」と思ったのは、知的ゲームのゴルフに体を激しく使うスポーツが組み合わされ、それがプレイ後の達成感や爽やかさに繋がったからだと感じました。 そして、この感覚を求めている人はそれなりにいるのではと考えました。 ところが、今年4月に運営団体を一般社団法人とし、4大会を立ち上げようとした矢先、新型コロナウイルスですべてが水泡に帰してしまいました。筆者及び関係者の落胆は筆舌に尽くしがたいものがあります。 しかし、前を向いていきましょう! ということで、今回はゴルフトライアスロンを立ち上げた経緯を振り返りつつ、コロナ禍に負けないポジティブシンキングについて書いてみたいと思います。 日本のゴルフ場の高い壁 ゴルフトライアスロンの開催には、高い壁が存在していました。ゴルフ場で担ぎのゴルフやバイク走行、そしてランニングをやらせてくれる場所が少ないからで、場所の選定はとても高いハードルになりました。 実は、構想から最初の大会を実現するまでに5年の歳月を費やしました。日本のゴルフ場経営は画一化(どこもほぼ同じシステム)が目立ち、多様性が求められる現代社会の中でも遅れている部分です。日本社会の閉鎖性、他と同じにする同調性が強くあり、「自由なゴルフ」を阻害する原因となっていました。 筆者が以前勤めていたキャロウェイゴルフの本社幹部は「週末に子供の声、女性の姿がほとんど見えない日本のゴルフの将来が心配だ」と話していましたが、その言葉も強く心に残っています。多様化を進めて選択肢を広げないと、日本のゴルフはガラパゴス化して衰退の一途を辿るでしょう。 このような状況を見るにつけ、筆者はゴルフの多様な在り方を訴求するひとつの起爆剤としてゴルフトライアスロンの普及に本腰を入れました。ゴルフ場はゴルフをするだけの場所から、持てる施設の有効利用をすることで、新たなビジネスが創造出来るのではないか、と。 山は動く 昨年、津CC(三重県)で大会を開催し、それをメディアが取り上げてくれたことでゴルフトライアスロンの認知度は広がり、ゴルフ場関係者にも理解が進んだことは幸いでした。 その後、ほかのゴルフ場を訪問し、次回以降の協力を呼び掛けました。初開催以前は「お話はわかります。とても面白い競技であることも。しかし、うちでは無理です」といって断られることがほとんどでしたが、岡山県で訪問した4つのコースが前向きの返事をくれました。これにより筆者は、大きな手応えを感じました。 開催に際し、ゴルフ場には以下の点を求めました。 <ul> <li>ゴルフ場としてゴルフトライアスロンを理解して開催を希望するところ</li> <li>ゴルフ場内のカート道やコースの作業用道路などを利用してバイク(MTB)レースが開催できる</li> <li>大会のためにコースを平日だけでなく日曜または祝日に貸切りを提供できる</li> <li>競技の普及のためにゴルフ場内でバイクやランニングができる機会を積極的に提供できる</li> <li>競技普及のためにゴルフトライアスロンの講習会を定期的に開催できる</li> <li>ゴルフトライアスロンに支援してくれるスポーツバイクショップが近くにある</li> <li>地区でのトライアスロン協会、サイクリング協会、ランニング協会と良好な関係を構築できる(大会開催に他の協会との協力が必要です)</li> <li>自治体の観光課や観光協会との良好な関係がある/できる</li> <li>地元のメディアとの良好な関係がある/できる</li> <li>大会に際してギャラリーを受け入れることができる(指定された場所で)</li> </ul> かなり思い切った提案でしたが、皆さん受け入れてくれました。大きな前進です。 一つの提案が競技を、ゴルフ場を面白くする もう一つ大きな進展がありました。当初、競技の順番はRUN→GOLF→BIKEでしたが、TV局のスポーツ番組担当者からこんなアドバイスをもらったのです。 もし番組を作るとしたらGOLFを最初にして、そのスコア順にBIKE→RUNにすることで順位がわかるだけではなく、選手も観客も視聴者もワクワク、ドキドキするのではないか? 確かにその通りです。GOLFを最初に行うことは、競技の運営上18Hすべてのホールからショットガン式スタートをする必要が出ます。この方式であれば参加者数を大きく伸ばすことができ、ゴルフ場に大きなメリットが発生することが分かったからです。 具体的にはこうです。18Hに2組(4人一組)とした場合、144名が同時にプレイできます。日が長い夏至近くであれば「鉄人の部」と「チャレンジの部」を午前と午後に振り分けることで最大288名の集客が可能となり、ゴルフ場にも大きなメリットが生じます。 選手はレストランを利用するし、ギャラリーが増えれば施設関連の収益も少なからず見込めますので、このあたりもビジネスチャンスでしょう。 今までは開催に漕ぎ着けるため一人で悩み考えてましたが、実際に開催すると多くの人から様々な知見が寄せられ、新しいやり方が見えてくる。これが最大の収穫でした。 同時に開催県のトライアスロン協会に働きかけた結果、日本トライアスロン連合からの推奨もあり、競技として安全管理部門や選手募集、競技の説明など、多岐にわたる協力を得られたことも大きな進展といえるでしょう。 身にしみた法人格の必要性 その一方で、より現実的な課題としては「資金集め」がありました。参加者からの参加費だけではまかなうことが難しく、資金面で安定した活動ができるようにするためにはスポンサーが不可欠です。 筆者は企画書をもち、様々な企業に足を運びましたが、その際に必ずこう聞かれました。 「ご支援させていただく場合、その対象は個人ですか、任意団体ですか、法人格を持った競技団体としての組織ですか?」。特に上場会社はこの点に厳しく、「個人」では相手にしてくれません。そこで、法人化を早急に進める決心をしたのです。 いろいろ調べた結果、「一般社団法人」が良いとのことで、仲間の会社でお世話になっている司法書士に手続きを進めてもらいました。大変なのは法人化をするにあたっての内容、規約をどのようにするかで、何回も打ち合わせをした結果、シンプルな形でまとめてもらいました。 競技を開催するだけではダメで、継続して大会の開催を行い、普及を進めていくのであれば法人格を持つことは必須でした。これも経験、勉強となったものです。並行して「ゴルフトライアスロン」の商標を特許庁に申請、昨年11月に登録しました。 仲間たちはそれぞれ仕事を持っている中で、スケジュールを調整しながら上記の仕事を分担してくれました。ゴルフ場への説明、スポンサー予定企業への説明など、昨年の第1回大会終了後から目の回る日々を過ごし、3つの地域大会と決勝大会、合計4つの大会開催が決まりました。 これらをホームページで告知し、3月には参加者の募集を始めたわけですが、そこに新型コロナウイルスのパンデミックが重なってしまったのです。 新型コロナウイルス感染症の影響 最初は希望的な観測で、夏までには収束するのではないか、そうであれば大会の延期や中止は免れるかもしれないと見ていたのですが、感染がヨーロッパに、そして米国にもすごい勢いで拡大するにつれて、延期の方向に舵を切ることにしました。 東京オリンピックの延期が決まる前のことです。すぐに開催コースと話し合いました。今後の状況によって延期、中止もあり得ること、その場合の対処方法も話し合い、4月の末には発表する予定で準備していたのですが、政府の緊急非常事態宣言が4月7日に発令され、8日から施行するというニュースを受けた形で、<2020 ゴルフトライアスロン in Japan>の来年への延期を正式に発表したのです。 遅すぎる、という声もいただきましたが、参加予定者や関係者には概ね理解を得られたとものと感謝しています。ここに至るまでのプロセスは一言では語り尽くせないものがあっただけに、苦渋の選択という表現で理解していただきました。 ゴルフトライアスロンだけでなくオリンピック・パラリンピック関係者はもちろん、多くのスポーツイベントの主催者は同じ思いだったと察します。 被害者で良いのだろうか、前向きな考え方はできないものか しかし、我々は新型コロナウイルスの「被害者」として、不幸や不利益を嘆き悲しんでも仕方ないと思います。むしろ、人類が自然に対する「加害者」となっていることに対する自然界からの強烈なメッセージ、「人類の行き過ぎた行為に対する強い警告」と理解すべきではないでしょうか。 そう思うと人間の考え方、行動に大きな変化が生じてきて、世界が少しずつ正しい方向に変化をする、ターニングポイントとなる可能性が出てきたと考えられます。現実は生活が一変するほどの大変なピンチですが、立ち止まって考え方を、見方を変えることで、これから先をよくするチャンスにできるかもしれません。 事実は一つですが、どう見るかで変わるからです。積極的な思考(ポジティブシンキング)か否定的思考(ネガティブシンキング)なのか、この2つです。どんなに苦しい、厳しい中においても、遠くに出口の明かりが見えると人は元気が出るものです。 私事ですが、キャロウェイゴルフの創始者であるイリー・キャロウェイさんから晩年、よくこの言葉を聞きました。 ”Enjoy Your Game” ゴルフメーカーのトップの言葉なので、多くの方は「あなたのゴルフを楽しんでください」と解釈すると思いますが、筆者はもっと深い意味があると気づいたのです。それは、Gameを人生に置き換えることです。 事業を成功してきた人は、そこにたどり着くまでそれこそ何回も、何回も失敗をして、それでもめげずにやり通したからこそ成功したのです。 ある冒険家が深い山中で遭難し、怪我をして動きがままならない状況の中で、絶対生きて帰ってみせるという強い信念のもと生還した事例もあります。あの岩場まではえずって行こう、そうしたら救援隊が見つけてくれるかもしれない。でもダメだったら次の目的地まで、と一つ一つの行動を、あたかもGameをするようにこなしていったのだと言います。 負けず嫌いの人はGameに負けると、もう一回、あと一回だけと言いながら勝つまでやり切ります。人間だから、ネガティブな不安もふと浮かぶでしょう。それでも目的を達成するまで、できると信じて粘り強く続けること。 人間の体(脳)は、積極的な思考をしていると、体にそのようにする反応を起こさせる酵素が出て神経を刺激し、筋肉に命令を発するそうです。 どのような悲観的な現実が自分に降りかかっても、闘争か逃走かでは全く違う反応が体の中に起こるのです。そして、闘う、と決めた以上、少しでも勝つ可能性を探し知恵をめぐらして行動します。キャロウェイさんは身をもってそれを経験してきたことを”Enjoy Your Game”という言葉で表現したのです。 ゴルフトライアスロンは一つの競技にすぎませんが、それがもたらすものは日本のゴルフ場のあり方、プレイヤーのゴルフスタイルに大きな変化を与えるものだと確信しています。 “Hit Till Happy”<成功するまで何度でもやりなさい>これもキャロウェイさんの言葉です。 あきらめず成功するまで何度でもやり抜きましょう!
    (公開)2020年04月13日
    1月29日、プロゴルファー三觜喜一プロが2019年度日本ゴルフジャーナリスト協会大賞を受賞し、その授与式が開催されました。 三觜プロはジュニア育成をはじめユーチューブを駆使してのレッスン動画は20万人超の契約視聴者を獲得、歯に衣着せぬ直言居士という点も大賞受賞の理由でした。彼が発信する提案は、混迷するゴルフ界、特にジュニアやプロゴルフの世界に警鐘を鳴らすものです。 プロゴルファーとは 一般的に日本では、プロゴルファーとはPGA(日本プロゴルフ協会)、LPGA(日本女子プロゴルフ協会)、JGTO(日本ゴルフツアー機構)が主管するプロテストまたはツアー出場テストをクリアして、協会のメンバーになった人を「プロ」として認定するもので、テストの内容によってツアーに出場するタイプとレッスンの資格を得るタイプに分けられています。 トーナメントに出て賞金を得るか、レッスンを行って生計を立てて行くものです。 しかし、現状では日本のPGA、LPGAの会員でなくてもプロゴルファーとして立派にツアーで活躍し、レッスンにおいても良い仕事をして評価されている人は多くいます。三觜プロの問いかけは、会員外の彼らは「正式なプロゴルファーではないのでしょうか?」というものです。 これはPGA、LPGAにとっては重要な問題です。PGAでは現在5600名強の会員があり、年会費4万5000円を徴収して協会の財源の柱にしています。 毎年100名前後が必要な講義を受講し実技テストを経て資格を取得、プロ(会員)になるわけですが、資格を取得したからといってPGAは仕事を斡旋することはなく、練習施設を運営する会社などに社員として就職するか自分自身でスクールを開講して個人事業主として仕事をするかとなります。 彼らからすれば、PGAのライセンスを持っていない人は「白タク」と同じ無資格者で、何とかしたいと思っています。しかし、PGAのライセンスがなくても他のゴルフ団体が発行するライセンスでプロとしてレッスン業務を行い、あるいは海外で学んだり、国内でも独自に学んでレッスンを行っている人も多いのです。 プロ協会が抱える問題点 現状、問題は3つあると筆者は考えます。 一つは資格認定で使用する教材が現代の最新科学に基づいたものになっていない点です。クラブの知識やレッスンの内容が古く、レッスンの現場では使いづらいものになっているからです。 2つ目は、資格認定を受けるのにはおよそ1年近くかかる講習会の参加が必須で、その費用が100万円近く掛かる点です。 これらを解決する方法としてはPGAが資格認定で使用する教材や受講内容そして認定を行うシステムは世界共通のものがあるべきだと思っています。 これは受講する側もレッスンを受けるゴルファーから見ても最新のものがベストだからです。世界どこでも同じ質のレッスンを提供できるからでゴルフレッスンの国際免許証みたいなものです。 3つ目は、協会が組織として柔軟性に欠け、新しいことに対して機能できない状況にあることです。 新しい革新的な考えを持った人や、積極的に改革を遂行しようという意志を持った人が理事に立候補しにくい環境があると思われます。そこには既得権益があり、改革されると困る人がいるから遅々として進まないという指摘もあります。 ゴルフレッスンは、ツアープロを目指す人たちにツアーで戦える技術を教えるいわゆる「ツアープロコーチ」から、一般ゴルファーにゴルフの楽しさを伝え、その人の目的に沿ったプログラムを作成し実践できる通常の「レッスンプロ」がいます。 また、ゴルフを教育の一環として捉えるならば、ゴルフの枠を超えた幅広い知識やそれを伝える技術を必要とします。これができる人も優れたゴルファーでプロと呼べます。 プロとはプロフェッショナル・専門家であり、持てる知識・技術を必要とする人たちに正しく提供できる人や、それらを学問として追求している人のことを指すものです。しかし、どんなに知識や技術があっても伝え方が悪く、それを必要とする人たちが価値を見出せなければお金を払うこともなく、職業として成り立ちません。 つまりライセンスを取得したからといって教える技術が伴わなければプロとは言えないのです。 それは資格を取得した人にとっても不幸なことです。ライセンスの有無でゴルファーもプロも混乱している状況があるなら、そろそろ資格認定のやり方を変えるべき時期に来ているのではないでしょうか。 資格認定の講習を受講して実技テストを受験することよりも、各分野でゴルフの普及に役立てる仕事をしている人をPGAがプロとして認定し、PGA会員になってもらうほうがPGAの発展に大いに役立つのではないかと見ます。 そのための新しい組織作り、システムの開発が急務です。 ジュニアゴルファー育成について 三觜プロは20年前からジュニア育成を行っています。しかも無料で。この活動の原資となるのは、大人向けのレッスン等で得た収益を投じています。 ジュニアを育成するにあたり、自分からゴルフをしたい、といってスクールに入ってくる子供は伸びるそうです。しかし、親が「やれ」と言ってジュニアスクールに入ってくる子は途中でやめたり、ゴルフそのものを楽しめないので最初からお断りをするそうです。 最初は親と面談をして、本当に子供の意志でゴルフをやりたいのかを確認するそうです。そうすれば子供はのびのびと自分の意思で考え、練習を工夫したりするので楽しんで練習するそうです。当然、上手くなります。そうすることでモンスターペアレントは存在しないと明言していました。 このようなプロセスを経ないでジュニアを受け入れると、練習中でも後ろから、ああしろ、こうしろと直接子供に指導を始めたり、持論を押し付けてくるそうで、子供の主体性を奪い取っている保護者がかなり存在するそうです。 そのような親は自分の子供が良い成績や結果を出し始めると、成績が少しでも低い子供達や保護者に対して「上から目線」の言動をあからさまに出してくるそうで、ジュニアを教える前に保護者を教育しなければならないくらい現状はかなり厳しいようです。 三觜プロのジュニアスクールの基本的考えは、教育的な観点からゴルフを教えるものでFirst Tee プログラムが参考になっています。 しかし、自主的にゴルフを始めた子供は自分で練習を工夫し、練習も率先してやるために上手になり、ジュニアの試合で結果が出てくるとツアープロを目指したい子供が必ず出てくるそうです。 プロになれる確率は1%と言われていますが、成績が上がり、多くのジュニア大会に出はじめると年間550万円もの支出を覚悟しなければなりません。つまり、資質があっても親に財力がなければ続けられないという問題も深刻化しています。 また、目的がツアープロであるとQTなどに失敗を続けているうちに挫折して、ゴルフをやめてしまう子が多いことも現状なのです。 このような現状はゴルフ界にとっては不幸なことです。能力がある子供達をお金の問題や挫折した時に救済できるシステムがPGAには必要ではないでしょうか? 子供は将来の財産となる逸材だからです。 友達と上手く付き合えない プロを目指す子供達の中には通信課程の高校に入り、学校にはほとんど行かず、ほぼ毎日ゴルフ場で過ごしツアープロを目指すジュニアが増えている点にも警笛を鳴らしています。 ジュニア時代からゴルフしか知らない子供たちと過ごすことで、コミュニケーション能力が著しく偏ったり、幼少期に学んで欲しい様々な事柄から遠ざけられた環境が「普通の友達付き合い」ができない子供を育ててしまう弊害も無視できません。 三觜プロは、ただゴルフが上手ければ良いということではなく、ゴルフを通じて“生きる力“を習得できるジュニア育成が大事であると実感しているそうです。 成果主義を優先する大人の社会、結果や成績がすべてに優先した現在の社会のあり方がジュニアの世界にまで入り込んでいることが問題点だ、と指摘しています。同感です。 最近、LPGAはツアーに有望なジュニアを積極的に参加させ、成果を出しています。 昨年LPGAツアーで予選を2試合以上通過したジュニアが38名もいるそうです。半分のプロが予選をクリアできない中で2試合も予選を通過できる実力は、すでにツアープロとしてやっていけるだけの実力を身につけていると考えられます。 しかし、LPGAのプロテストは毎年20名しか会員になれず、これはおかしいと三觜プロは指摘します。しかもマンデートーナメントはLPGAの会員でなければ参加できないという条件があり、この点にも矛盾を感じているそうです。 ここでも「プロとは?」という疑問が出てきます。 「学校法人」としてのPGA 三觜プロの話を聞いて強く思うことは、業界関係者の鈍感さです。早急な組織改革が必要だと訴える声は少数派で、大半は現状維持を望んでいるようです。 この状況はPGAだけではなく、ゴルフ場やゴルフ練習場、ゴルフ業界全体に内在する問題であり、ゴルフ人口の急減が始まるとされる2025年までに対処しないと大変な事態に陥るでしょう。 PGAやLPGAは毎年資格認定者を生み出していますが、良い職にありつける人は限定され、低賃金や長時間労働に喘ぎ、仕事の質も低下する恐れは十分あります。 プロフェッショナルは職業として尊敬されるものであり、憧れのポジションでなければなりません。ゴルフはスポーツとしての位置付けから社交まで幅広いのが特徴です。しかも、プレイする人はジュニアからシニアまで幅広く、大人であればその職種も多岐に渡ります。 幅広い層の人達を教えるには、「教師」としての資質がなければ真のプロフェッショナルにはなれないのではないでしょうか? 少なくとも大学の教職課程の単位を取り、教えるということの意義を理解して勉強している人がプロと認定されるべきだと思います。 PGAは将来、ゴルフを指導するプロフェッショナル集団として、学校法人の認可を取って大学や各教育団体と連携した新たな教育機関として、新しい組織に変革するよう強く望みます。 プロフェッショナルとは何か、もう一度関係者が熟考し、新たな定義とそれに合わせた資格を発行すべき時期に来ているのではないでしょうか。
    (公開)2020年02月14日
    新年を迎え多くの人が新たな気持ちで仕事や生活を始めていきます。「あけましておめでとうございます」といって新しい年を迎える日本の新年の日常的な光景です。 この「あけましておめでとうございます」という言葉ですが、よく見てみるとなぜ年が開けるとおめでたいのか、という素朴な疑問に突き当たります。月が変わっても、いや今日から明日に変わっても「おめでとう」とは言わないですよね。 ある意味日本は年に1回だけ新しい年がくると全てをスクラッチにして新たな気持ちで進み始める。もしかすると大きな災害が来たり、突然の不幸が降って湧いてくるようなことが起こるかもしれないのに「おめでとう」と言って新たな年を迎えるのです。気持ちの切り替えが大切であり、何かよくないことがあっても、どこかでその影響を断ち切って新たな気持ちで再出発する、というメンタリティだとすると、これは凄い習慣なのかもしれません。 もう少し冷静に考えると言霊の世界が現在でも日本人の心に中に深く入っている証でもあるのです。ポジティブな言葉だけが採用され、ネガティブな言葉は「縁起が悪い」といって採用されることがないからです。 そのような視点で見ると何があっても、よくても悪くても一度ゼロに戻して再出発できるやり方は日本人の強さ、良さの一つだと感じています。 やり方を変える時期に来ているゴルフ界 それだけの資質がありながらどうしてゴルフ界はスクラッチできないのでしょうか? 少子化とそれに伴う人口の減少化、そして高齢化という2つの大きな波が市場に押し寄せているのに一度スクラッチにして時代に合わせた変革をしようとしないのは、大きな判断ミスを起こす可能性をより高くしていると思えるからです。 人口が減少する、ということは消費活動が縮小することであり、その中でビジネスを継続的にしていくには減収増益体質に変化させていかなければ持たないからです。人口が増加しているときは増収増益体質、つまり「効率と便利さ」を優先させるやり方が正解であるのに対し、人口が減少する経済活動は減収増益であり、それは一人ひとりの顧客に丁寧に向き合い「嬉しさを創造する」ことでモノやコトにお金を喜んで支払ってもらうやり方が人口減少傾向という時代のやり方なのではないでしょうか。 既製品を大量に生産し、量販やネットで大量に販売できる時代はもう過去のもので、このやり方をまだ続けているとモノが市場に溢れ出し価格が維持できなくなって小売業は行き詰まり、モノ自体も付加価値がなくブランドも失墜するのです。 では具体的にどのようなことをすれば良いかと言えば、今まで無視をしていたニッチな市場まで目を向けることや販売方法のドラスティックな見直しです。 効率と便利さから嬉しさの創造へ 例えば左用のクラブの販売とカスタムクラブの発売時期が良い例です。 日本では左利きの人の人口に占める割合は約11%と言われていて世界の約10%とから比べてもわずかに高いのです。しかし、左用のクラブは右用に比べても選択肢が限られ、女性用、ジュニア用といったアイテムは選択肢がない状況です。 なぜでしょうか? 効率が悪いからです。小売サイドからすれば在庫負担が大きく発注対象から外れるからです。 日本のゴルフ人口が仮に800万人とすれば約80万人が潜在消費者と見るべきで、この数字は競技ゴルファーの数字より大きなものです。 逆にこの市場にもう少し光を当てて、在庫負担を強いらずに売り上げを増加させていくには選択できるアイテムを右と同じように増やすことと、試打用のクラブを充実させ、カスタム(特別注文)で受注を受けることが「嬉しさを創造する」行動になるのです。 開発部分で言えば現在はコンピューターで設計をするために、右と左は数値を逆に入れ替えるだけで設計はできるのです。金型を起こしてミニマム数量を製造してカスタム受注体制をとれば済むことではないでしょうか? 米国メーカーは基本的には左はほぼ右と同じだけのヘッドを用意して受注できるようにしています。 左利きの男性ゴルファーはもちろん女性やジュニアも無理して右に転向しなくても良いからで、むしろ選択肢がある分だけそのメーカーの信頼度は増してロイヤルカスタマーになる可能性は高いのです。 カスタム製品の受注体制も新製品が発売されてから2週間後からの受注では本末転倒です。新製品をカスタムで購入しようとする顧客は最高の顧客なのにどうして最低のサービスを提供し続けるのでしょうか? 彼らこそ最高のインフルエンサーになってくれるだけでなく、カスタム(特注)という付加価値の高い、販売価格も高いものをリスクをとって真っ先に購入してくれる人たちです。 製造に2週間かかるのなら、どんなに早く発売日にカスタムオーダーをしても新製品を手にすることができるのは発売後1ヶ月後となります。どう見ても変だと思いませんか? カスタム品の発注状況を見れば新製品がどのような人たちがどのようなスペックを希望しているかもわかり、今後の販売戦略も立てやすくなるはずです。 組み立てに必要な日にちを考慮して発売3週間位前からフィッティングの受付をして注文してもらい、正式発売日に合わせて納品したらどうでしょう。 プロには発売前のかなり早い段階で新製品を渡して新製品の良さをアピールする材料に使うことをするなら、お金を支払ってくれ、しかも真っ先に価格も高いカスタム品を注文してくれる顧客をロイヤルカスタマーとして対処すべきことです。 1993年からゴルフ市場は収縮現象が続き現在はピークの半分近くまで落ち込んでいる状況なのです。それなのに未だ当時と同じ手法でビジネス展開をしている姿は異常です。変化が顕著になった時期からすぐにでもやり方を変えて対処しなければならないのに、問題を先送りして相変わらず予算は昨年対比105%とか110%などあり得ない数字を提示してセールス活動を続けている姿は日本郵便の年賀状販売に重なって見えませんか? 改善と改革 やり方を変える方法として変革と改善という言葉があります。 現在の状況におおむね満足しているなら改善であり、現在のやり方では減少傾向が続いているのなら改革と言われています。もう一つ経営のやり方として成長期にある経営戦略と縮小期にある経営戦略は全く異なるものです。逆の見方をすると経営者は上り調子に適した経営者と縮小傾向に適した経営者がいて、状況によって使い分ける必要があります。 人口が減少し生産年齢人口も減少していく日本経済は、景気が良くなるということはドラスティックな政策変更をしなければあり得ないことです。 それはメーカーやゴルフ場が率先して行うことで減収増益体制を早急に敷かなければ働く人たちに無理がたたり、会社はもちろん社会全体までもが不健康になってしまいます。地方自治体や国の財政にも大きな負担が生じるのです。 ゴルフ場利用者数から見えるもの ゴルフ場も同じことが言えます。先ごろ日本ゴルフ場経営者協会が発表したゴルフ利用税から見るゴルフ場の利用状況は、日本の将来のゴルフ市場を暗示していると読めるのです。ジャーナリストの喜田任紀氏の分析によると、2018年度のゴルフ利用者数は8487万4869人で、前年度と比較すると66万2739人少なくなり、減少率は0.77%で微減です。 少子化と高齢化が同時進行で進み、ゴルフマーケットにもマイナスの影響が出ると懸念されていましたが、減少数はわずかで、率にすると5%未満の落ち込みであり、減少した翌年にはぶり返しもありプラスに転じる年もあります。 数パーセントの幅で増減が繰り返されているような感覚になりがちですが、10年前と比較すると591万1000人の減少で、減少率は6.5%です。 市場規模の縮小が起きているわけですが、市場原理も働いており、ゴルフ場数は10年間で194コースが市場から撤退し、ゴルフ場数は7.9%少なくなっています。 減少率の差は1コース当たりの入場者数の改善という結果を生んでいますが、入場者数の減少が続く限りゴルフ場数の減少という市場圧力が働き、一見、1ゴルフ場で考えると経営環境が改善されているような錯覚に陥りますが、負のスパイラルに陥ったマーケットは、減少を繰り返すだけです。 この動きを止めるのは、需要の創造しかありません。需要創造はマーケティングの実践しか対策はありません。今ある需要層のニーズに応えるだけでは市場規模の拡大はできません、と述べています。その通りだと思います。 もう一つ注目すべき点があります。ゴルフ人口が減少しているのに入場者数は微減ということは、一人あたりのプレイ回数が多いことになります。誰でしょうか? 定年退職した60歳以上の人たち、その中でも非課税対象者の70歳以上の人たちです。神奈川県を例にとると県でのゴルフ場数は52コース、年間の総入場者数は約257万人です。1コースあたりの平均入場者数は約4万9400人でそのうち70歳以上の入場者数は約30%の1万4820人となります。 年齢別ゴルフ人口を見ると今後5年後はこの半数の7410人がゴルフをやめてしまうというデータがあります。毎月に換算すると618人です。平均単価を1万円とすると600万円以上の減収となってしまうことになります。当然、ゴルフ用品市場にも大きな影響が出ることは明確です。 ゴルフ場も、いやゴルフ場こそ率先して改革の行動に出る時期に来ています。 ゴルフ場のやり方を押し付けるのではなく、市場調査を行い、市場のニーズに応えていくことがいまやるべきことです。つまりゴルファーの選択肢を増やすことが「嬉しさの創造」につながるからです。自分たちのやり方を前面に出したいならプライベートコースとしてより閉鎖的にすべきで、誰でもいつでも予約が取れることは止めるべきであり、メンバーからの収入で回していけるようにすべきものです。 それができないのなら、思い切ってパブリックコースに転換するか、それに近い内容を前面的にアピールしてメンバーにもそれを了解してもらうくらいの強力なやり方が必要です。あと5年以内に大きな入場者の減少が始まる前にです。 「今でしょう!」行動は 危機はかなり前から叫ばれていても、「自分のところは大丈夫」という心理に陥って何もしないまま現在に来ていることは、嵐の前の静けさだと気づくべきです。ゴルファーにとっては今、安くプレイでき、どこでも予約ができる最高の環境かもしれませんが、ゴルフ場があっての話で、近い将来はそれができなくなるか、ゴルフ場がなくなってしまう可能性があるからです。 そうなれば、ゴルファーにとっても大変なことが起こることになります。 令和の時代になったから、新年を迎えたから「おめでとうございます」などと流暢なことを言っている場合ではなく、改革の行動を起こす時が来ています。 急な改革は大きなエネルギーと忍耐が必要ですが、少なくとも「嬉しさを創造する」ことをコンセプトに変革していけば、減収増益方向にシフトすることになり、市場から遊離することなく確実に変革の方向に進んでいくと信じます。 改革の第1歩は進むべき目標を設定し、それに向かって確実に行動を起こし、その結果を検証しながらさらに先に一歩ずつ進んでいくことからだと思います。 来年こそ「あけましておめでとうございます」と真に言えるように。
    (公開)2020年01月08日
    2019年10月14日、津カントリー倶楽部(三重県津市)で日本発の記念すべき新競技「ゴルフトライアスロン」を開催できたのは、昨年のトライアルレースから始まって、掲げた3つの目的に賛同してくれた仲間が開催に向けて渾身の力を発揮してくれたことと、資金的、物質的にも支援を申し出ていただいたスポンサー企業があったからです。 ゴルフトライアスロンはラン、バイク、ゴルフの3種目を一日で行うもので、全国25都道府県から募集人員の150名を超える申し込みがあり、キャンセル待ちが36名にもなりました。正直この数字は我々の予想をはるかに上回るものでした。 運営会社に企画を持ち込んだ当初「新しい競技でしかもハードな内容で、開催場所も三重ですよね。最初は30人ぐらいがせいぜいだと思います。最初から期待しない方がリスクもなく、ステップを踏んで1大会100名を超えるものにして行く方が得策です」と、ある意味やんわりと断られたものでした。 潜在的なゴルフトライアスラー しかし、どのような人が申し込みをするのかという見えない部分の不安はありましたが、ゴルフトライアスロンという競技を上手に説明でき、多くの人がこの新競技を知ることができれば100名を超える参加者を集めることはできると思っていました。それは実際、自分や息子がやってみて単純に面白い、と思ったからです。 1日で3つの競技をやりきることは未知のもので、その達成感は単純に3倍ではなくプラスαがあったからです。 クライマーがより高い山や未踏峰の山に登るように、マラソン経験者がウルトラマラソンに挑戦したり、世界中で開催される過酷なグレートレースに参加する意欲はどこから湧いてくるのかを考えれば、スポーツとしてのゴルフをきわめつつ、その中での体力、気力、持久力を目的にハードな種目があってもそのようなものに参加したいと思う人はいるという確信があったからです。 それを数字で見ればゴルフ人口が800万人とした場合、競技ゴルファーが5%で40万人、このうちの1%でも4000人になります。一方、トライアスロンを競技として選手登録している人は37万人を超え、平均年齢が42.7歳で競技に使用する費用も年間平均で47万円とゴルフに近いもので、この内10%の人がゴルフもやる人であれば3万7000人が潜在的なプレイヤーとしてみることができたからです。 しかもゴルフ場は考えてみれば緑の広大なフィールドです。そのようなところで自転車に乗ったり、ランニングをしたりしたことのある人はゼロに近いのです。ランニングや自転車の練習で信号待ちを余儀なくされたり、車との併走に恐怖感を感じながら走ることは相当のストレスがあります。 自転車の愛好家にゴルフ場を試走してもらった時、彼らは皆「こんな素晴らしい場所があるなんて、めちゃくちゃ楽しい」と歓喜の声を上げながら走っていたのです。ゴルフ関係者もゴルフ場を自転車が走る光景は未知の体験でした。 ゴルフ場でランニングをすることは一部の実業団や大学の長距離選手が利用することは聞いていましたが、実際に一般のランナーが走ることもない光景です。 ゴルフ場のカート道は18ホールを回ると9kmくらいになります。自転車も36ホールや平坦であれば54ホールを走ることが競技としても面白く、魅力あるものになると見ていました。あとは、ゴルフを担ぎでプレイしてもらえるかどうかでした。 トライアスロンをやっている人から見ればカートに乗るゴルフではなく、手引きカートで自らバッグを引いたり担いだりする方がゴルフ本来の楽しさを理解してもらえると判断しました。 少し長くなりましたが、結論から言えばゴルフトライアスロンの潜在的プレイヤーは相当数いると言うことです。 今年ラクビーのW杯が日本で開催され、日本チームの活躍もあり、にわかフアンがものすごい数を占めたことは記憶に新しいところでもあります。普及活動をして競技人口を増やすには、そのやり方が参考になります。 潜在的には競技ゴルファーの10%、トライアスロン競技者の10%、マラソン完走者の10%、自転車レースの参加者の10%、これらを合計すると13.5万人にもなります。少し競技の内容に変化を持たせ参加のハードルを低くすればかなりの人がゴルフトライアスロンの愛好家になってくれる可能性は高いものと思われます。 ゴルフ場が普及最大のハードル ゴルフトライアスロンの発展を考える中でもう一つの課題は、開催可能なゴルフ場がどれだけ日本に存在するかです。津カントリー倶楽部のように全面的に協力してくれるゴルフ場を開拓する必要があります。 現在日本では約2200のゴルフ場がありますが、そのうちの80%以上がメンバーシップ制をとっており、メンバー主体の運営方針からゴルフ以外にゴルフ場を使用することがメンバーの了解を得る必要があり難しい面があります。 しかし、ゴルフ場の経営という面から見れば、一部のゴルフ場を除きその経営は厳しい環境にあります。持続して経営を行うにはゴルフ以外の新たな収益が見込める施策がゴルフ場に今必要なのです。 例えば、最終組がホールアウトしたあと、ゴルフ場でクロスカントリーのレースを開催した場合、500名を集めた大会を開き、参加費を2000円とすると100万円にもなります。2時間もあればレースは開催できます。そのあとレストランを利用していただき、一人1000の利用があれば50万円の売り上げになります。月に1回開催しても、大きな収益源になります。 ゴルフトライアスロンはその点でもゴルフ場の新たなビジネスモデルを構築する良い機会と捉えていただけると普及の可能性は大きく広がります。 最初は自治体が所有しているコースや第三セクターに経営を委ねているところが、①施設の有効利用、②健康に投資をする、このような観点で名乗りを上げていただきたいのです。開催することで得られた結果を検証して、収益にどのくらい効果があったのか、地域の参加者の健康状態や健康保険を使用した結果など、自治体として率先して統計を取ってみることはゴルフ業界にとっても知りたい情報です。 世界での普及 最後に、このゴルフトライアスロンという競技は日本発の競技ですが、競技の特性からしても世界で普及する可能性は高い、むしろ日本よりも早く普及する可能性が高いとみます。それはゴルフの環境が日本と比べると圧倒的に良いからです。 パブリックコースが多い米国のコースであれば開催の条件は低く、競技を上手くPRし、最初に開催する時にメディアとの連携やSNSを使った発信をすれば、より多くの人たちにこの競技の面白さを訴えることができれば、米国での普及は進むと見ています。 州単位で毎年1回行うだけで50回も開催でき、各上位入賞者を集めて全米選手権を開催することができます。 すべての競技人口が多い米国であれば、その潜在的なプレイヤーは日本の10倍くらいはあるのではないでしょうか。自転車とランニングが進んでいるヨーロッパも可能性はあります。 プロゴルファーこそ潜在競技者の最先端 ゴルフトライアスロンの普及はスーパーアスリートゴルファーの出現となり、プロゴルフ界もさらにレベルが上がると考えます。そのような観点から見ると、この競技は日本のプロゴルファーにも是非参加してもらいたいと切に思っています。ゴルフをスポーツとして、しかも職業にしているのであればアスリートでなければダメだと思うからです。日本の男子プロはその点真のアスリートがどれだけいるでしょうか? 日本のゴルフはプロもアマも女性が非常に活躍しています。 特に20歳前後が多いのはなぜでしょうか? 彼女達にとってプロスポーツとして最も脚光を浴び収入も多いのがゴルフだからです。スポーツとしての資質の高い子供達がゴルフに入ってくるからです。 男子の場合は野球、サッカーなどプロスポーツが盛んなところに資質の高い子供達の多くが流れてしまうため、世界で活躍できる選手を輩出するのが難しいのです。 プロゴルファーが体力の維持や向上を目的にトレーニングの一環としてランニングやバイクを本格的に取り入れ、ゴルフトライアスロンでも常に上位にプロゴルファーが占めることになれば、日本人でワールドランキングの50位以内にいる人は10人くらい輩出できるのではないかと思います。 ゴルフトライアスロンの可能性は最初に掲げた3つの目的を遵守することで、そのメリットを感じる強力なスポンサーが出現して、ともに成長できれば日本のゴルフは俄然面白くなるし、それが私の究極のゴールなのです。 日本のゴルフ界の今を嘆いていても何も変わりません。新たな動きを起こし、うねりを引き出すことが日本のゴルフ界に必要なことなのです。ゴルフトライアスロンはその一つの施策ですが、期待できるものです。変えていきましょう、日本のゴルフを!
    (公開)2019年11月12日
    東京オリンピックまであと1年ちょっと。しかしどうでしょう? 他の競技が出場権をかけた熾烈な争いをする中で、「ゴルフ」はその戦いを遠巻きに眺め、盛り上がりに欠けた印象を強く受けます。 オリンピックは開催国の選手に有利な点が色々ありますが、最も有利なのは「地元開催枠」というものです。開催国の選手には出場機会が多く与えられ、場合によっては予選すら免除されることもあります。 とはいえ、他のスポーツの代表権争いは大きく報道され、特に最近は男子陸上の短距離がTVのスポーツニュースなどで報道されていますが、これに対してゴルフはなぜか冷めたまま。ゴルフは、スポーツとして魅力がないのでしょうか?  もし、ゴルフの日本代表選手が金メダルを取ったらどうなるでしょう。スーパースターの誕生はゴルフ界に大きなインパクトを与え、経済効果も期待できます。ゴルフが再び脚光を浴びて、ゴルフに興味を示す人が増え、減少傾向のプレイ人口が増える可能性もあるのです。こんなに喜ばしいことはありません。 それにも関わらず、ゴルフメディアがそのような視点でオリンピックの前景気を煽る報道姿勢は見られません。筆者は、ここに大きな問題意識を感じています。 ゴルフの代表はどう決まる? ゴルフ競技の選手選考基準は、傍目には複雑なシステムに映ります。まず、「オリンピックポイント」を採用しており、これは2018年7月1日〜2020年6月20日まで、計104週での成績がポイント計上されるのがベースになります。 その上で、上位60名がオリンピック出場の資格を持つという選考基準ができます。選考基準は下記のとおり。 ①男子は2020年6月23日時点、女子は2020年6月30日時点のオリンピックゴルフランキング上位15位までの選手で、各国最大4名まで。 ②16位以下については、1カ国2名(15位以内の有資格者も含む)を上限とする。 ③5大陸(アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニア)ごとに、一人も出場資格を有するアスリートがいない場合は、男女ともに最低1つの出場枠が保証される。 ④大会開催国から一人も出場資格を有するアスリートがいない場合は、男女とも1つの出場枠が保証される。 ※ただし、上記③、④の出場枠が適用されても、男女各出場人数の60名は変わらない。 現在、日本では男女8名ずつが候補(強化)選手に選ばれ、様々なサポートを受けていますが、この「16名」の名前をどれだけの人が知っているでしょうか? 具体的には、男子が松山英樹、小平智、今平周吾、稲盛佑貴、時松隆光、秋吉翔太、宮里優作、星野陸也。女子が畑岡奈紗、鈴木愛、比嘉真美子、成田美寿々、小祝さくら、上田桃子、菊地絵里香、松田鈴英。以上が現在の顔触れとなります。 筆者がメディアに求めることは、候補選手の現状を読者に伝え、オリンピックの前景気を盛り上げることにほかなりません。男女各8名の選手が現時点で何ポイントを獲得して、それはオリンピックポイントでは何位に位置するかなど、毎週トーナメントが終了した時点で発表すべきです。 そして、候補選手がそれに向けて努力している姿や想いを報道することです。次のトーナメントが始まる前に、現時点のポイントや優勝からトップテンに入るとどうなるか、どのトーナメントのポイントが高いのか、これに向けての調整法など、選考レースを毎週取り上げなければ誰も興味を示さないし、何も変わらないと思います。 本来ならば、対象ポイントの起点となる2018年7月1日から報道すべきでした。しかし、少なくとも筆者が知る限り、そのようなメディアは見当たりません。特に「ゴルフメディア」の責任は大きいと思います。 日本の選手は、オリンピックに出場することに対して興味がないと見ているのでしょうか? それとも、どのメディアも無関心なのは何かの意図があるのでしょうか? ゴルフメディアの怠慢を問う もし、メディアの怠慢が原因で報道しないのであれば、筆者はその姿勢を厳しく問いたいと思います。同時に、選手強化の中心的な存在である日本ゴルフ協会(JGA)や日本オリンピック委員会(JOC)が、候補選手の現状をその都度、発表すべきです。 選手強化に公的資金が使われていることを考えれば、選手の情報を逐一発信することは国民に対する義務だと思います。スポーツ選手の活躍は人々を元気にし、勇気や感動を与え、生きる活力を提供する。換言すれば「公的」な役割があり、スポーツが強い国は国力が豊かな証明にもなると思います。 むろん、その意識が高じると旧東欧諸国に代表されるドーピング問題の発生や、アスリートの不幸な末路にもつながりますが、このあたりはメディアが厳しく監視するという役割も一方にあるでしょう。 いずれにせよ、スポーツ記者はオリンピックに賭ける選手の日常を丁寧に取材・報道する。ゴルフ記者も個々の選手の努力や歩みをSTORYとして書き上げる。これによりスポーツ文化やゴルフ文化が醸成されると確信します。 努力の成果である成績を、単に数字に置き換えて並べるのではなく、記者の目で見た選手の戦い方や戦略、努力、気力などに焦点を当て、それを見抜き、凝縮された文章で記事にしていくこと。それが記者の仕事であり、記者自身の「戦い」でもあるはずです。 ゴルフメディアやスポーツ新聞の低迷は、そのような報道姿勢の欠如が原因ではないでしょうか。自国開催のオリンピックを機に、基本に立ち帰る必要があると筆者は考えます。
    (公開)2019年07月08日
    ゴルフは社交か? それともスポーツ? レジャーなのか? という問いに対して、どう答えたら良いのでしょうか。立場によってその答えは異なります。なぜなら、全てを内包しているのがゴルフだからです。 そして、この問いには現在、日本のゴルフ界が抱えている大きな問題も存在しているのです。特にゴルフ場が、です。 ゴルフ場はこの部分を曖昧にしている、いや、改革したくてもできないことから混乱が起こり始め、プレイ人口が減少し始めているのです。少なくとも筆者にはそう思えます。 日本のゴルフ界がより発展していくには、ゴルフ場が大きく変わっていくことが必要で、今まさにその分岐点に差し掛かっているのです。 「社交場」として発展した日本のゴルフ 社会人になってゴルフを始めた人が「もっと早くからゴルフを始めていればよかった」という言葉をよく発します。仕事の中で付き合いの一環としてゴルフを始めた人は、ゴルフの持つ様々なメリットに気がつくからです。 1日6時間近くも一緒にプレイをして、その95%くらいは話をしたり、相手のショットや態度を見ることができます。その人の性格や考え方のかなり深いところまで知ることができるため、ビジネス上、親睦を深めるには最高のコミュケーションツールがゴルフだからです。 この利点に気がついた人が「もっと早くからゴルフをやっておけばよかった」という言葉を発します。ゴルフを社交として見ると、現在のゴルフ場のシステムは社交としてのゴルフにマッチしていることがよくわかります。ジャケット着用やドレスコードの励行などは社交場のマナーのひとつだからです。 ここではゴルフの腕前は上手に越したことはありませんが、常に90台のスコアでプレイできる実力があれば、ショットに余裕ができ、会話を楽しむ時間も増え、プレイする相手に自分自身を理解してもらうには十分でしょう。 英国スタイルを導入して始まった日本のゴルフは、社交場としてのゴルフコースを作り、社交としてのゴルフを発展させてきたのです。歴史ある日本のゴルフコースは、そのような目的で作られたと言っても過言ではありません。 ゴルフは他の球技と違って相手の弱点を攻めて勝負を決める、というゲームではなく、自然の中でゴルフ場というフィールドを使ってゲームをするものです。だから海岸と陸地の間(双方をリンクしている場所)にある、農耕地には不向きな場所をゴルフコースにして会話とゲームを楽しむことにし、そのような場所にあるゴルフコースをリンクスと称したのです。 プレイも大事ですが、もっと大事なことは親睦なので、気のあった仲間同士が倶楽部を作りそこに集まってワイワイガヤガヤと話をし、時にはビールやスコッチを飲みながら時を過ごしたのです。倶楽部ハウスはそのような場所で、社交場として重用されました。 ビジネスで大切な人をゴルフ場に連れ出すことは、仲間に紹介したい人物であること、もっと親しくなりたいという願望の表れでもあります。 このような世界に「自分も仲間として入りたい」と考えると、どのような振る舞いをゴルフですべきものなのか、会話の内容はどのようなことが求められるのか、教養と品位も必要になってきます。これらはゴルフを通じて身につけるものではなく、小さい時から学びや生活の中で様々な経験を積みながら身につけていくものです。 そのような人たちが行うゴルフは小さな仕草や会話、そして相手を敬う気持ちが自然にプレイに反映されているのです。グッドゴルファーとはそのような人を指すのだと思います。 「同じ場所」だから混乱を招く 一方、スポーツとしてのゴルフもとても魅力があります。競技としてみればゴルフクラブという道具を使いこなし、ボールをコントロールしながらグリーンに乗せ、ボールを転がしカップインして一つのユニットが終了となります。 通常はこれを18回行ってゴルフというゲームが成立しますが、プロの試合や日本選手権レベルの試合では4日間72ホールも掛けて決着をつける、純然たるスポーツなのです。人としての技量、精神力、さらに4日間には好天も悪天候も混在するため、それを生き抜いた者が覇者となります。他のスポーツは数十秒、数分、数時間で活着がつくのですが、ゴルフはスポーツの中でも全く異なる競技なのです。 競技者はアスリートであり、他のスポーツと同じように心身を鍛え、技術を身につけた者が競い合います。知的な会話や品性はあるに越したことはありませんが、スポーツである以上良いスコアを出した者が最終的には優れたゴルファーなのです。 スポーツとしてのゴルフも先述の「社交場」と同じフィールドを使用します。筆者は、実はこのことが「社交かスポーツか?」の議論が生じる一因ではないかと見ています。 競技者がボールパークに競技をしに行く時、どのような出で立ちで行くのでしょうか? 競技用のウェアを身につけて、時にはユニフォームを着用して、もしかしたらリラックスしたカジュアルな格好で競技場に入り、競技用ウェアに着替えるはずです。 スパイクやシューズを競技用のものに履き替えることが必要であれば、フィールド内で履き替えれば事足ります。 スポーツとしてのゴルフ場には着替える場所(ロッカー)とトイレ、洗面所があれば十分で、ロッカーがなければ施設内にテントを張っておくだけでもことは足ります。時間が来たらゲーム開始です。 つまり、スポーツフィールドとしてのゴルフ場には倶楽部ハウスは必要ないのです。競技中に食事をとることはありえないし、18ホールスルーでプレイするのがスポーツとしてのゴルフだから、ここではジャケットは不要であり、ドレスコードも意味のないことです。 もう、筆者が何を言いたいかお分かりでしょう。日本のゴルフ場は社交としてのゴルフをスポーツやレジャーで訪れる人に強要している。さらに深刻なのは、そのことが数々の軋轢を生じさせていることに気がついていない。それが問題だと言いたいのです。 ゆえにスポーツとして取り組みたいと考える人や、レジャーで気楽にプレイしたいと考える人たちにとって大きなバリアとなっているのです。むしろ、目的別にゴルフ場の入り口や使える施設を明確にすることで、利用者の利便性がはかれるのではないでしょうか。 北海道のあるゴルフ場が、クラブハウスを利用しない場合3500円ほどのプレイ費で採算がとれる実績を出したことがありました。逆の見方をすると、倶楽部ハウスの維持管理にかなりの固定経費がかかり、それらがゴルフ場経営の大きな負担になっていることがわかります。 これも日本のゴルフ場の大きな特徴ですが、約2300あるゴルフ場のなんと80%近くがメンバーシップ制(プライベートコース)なのです。つまり社交としてのゴルフ場なのです。 ところが、そのほとんどが形だけのプライベートコースであり、メンバーでなくても、あるいはメンバーの紹介がなくても予約してプレイできるところが大半。つまり、実態はパブリックコースとなんら変わりがないのです。 それにも関わらず、あくまで社交場として倶楽部ハウスの利用を促し、9H終了したら食事をして、さらにジャケットの着用やドレスコードの強要を迫る。これは明らかに変ではないでしょうか。 むろん経営者にしても、本当はパブリックにしたい、いやプライベートコースとして存続させたいと思っていますが、そうさせてくれない事情がゴルフ場にはあるのです。以下、その問題点を箇条書きにします。 日本のゴルフ場が抱える問題点 ①多くのゴルフ場がバブル期に造成されたものが多く、プライベートコースとして会員を募集するも、投機的な目的で作られたものも多く、会員を集めやすくするために入会条件として預託金システムで会員を募った点 ②ゴルフ場を造成するのに大きな資金が必要でそのためには数千人規模の会員を募集した点。メンバー数が多いためメンバーフィでのプレイ料金から運営収益を上げることが難しい。 ③投機目的で販売したところは、バブルがはじけた瞬間に投機資金を回収しようとするゴルファー(投資家)が退会を希望し預託金を返還する動きが加速し、経営が行き詰まり民事再生法の適用を受けているところが大半である点。その結果、外資系ファンドにかなりのゴルフ場が安い金額で買い取られてしまった。 ④メンバーでありながら年会費だけを払い続けている幽霊会員がメンバーの約1/3位も存在するところもあり、仮に年会費が\40,000、幽霊会員数が1,000人とすれば\40,000,000の年会費所得がゴルフ場の大きな収入源となっている点。これがないと即倒産ということにつながってしまうところも多い。 ⑤メンバーで構成される理事会がゴルフ場経営の自由さを奪っている点。器産業としてのゴルフ場は入場者数に限りがあるので安定して利益を出し続けるにはメンバーフィを上げるか、他のビジネスを併用して収益を伸ばし行くか。会員の年会費を毎年上げていく必要があるが、いずれも拒否されている点。 ⑥倶楽部ハウスの老朽化がはじまり、リニューアルするか建て替えるかという課題に対して数億円と言われるその資金をどのようにして集めるかという点 ⑦経営的に優秀な人材、スタッフとして若くて有望な人材が必要不可欠であるが、将来の展望が見えないことからなかなか確保できないだけでなく、現在働いている人もやめてしまう人もいる点 ⑧メンバーの家族が相続で引き続いて会員になってくれない点 ⑨日本ではゴルフ場にかかる固定資産税が大きく経営を圧迫していることに加え、競合他社(近隣のゴルフ場)との顧客争奪のためにプレイ料金の価格競争が激しくなっている点 まだまだあると思いますが、いずれにせよこれらの問題はゴルフ場にとって深刻であり、これらをどのように解決していくかが大きな課題なのです。 しかし、未来のゴルフ界を鑑みた時、ゴルフ場の大胆な改革が日本のゴルフを発展させるためには避けては通れない難題なのです。 しかし、このような状況をゴルファー視線で見れば、いつでもどのようなコースでも予約が簡単にとれ、しかも安い料金でプレイできることはとても良いことに写っているはずで、ゴルフ市場の活性化は再び予約が難しくなり、プレイ料金も高騰してゴルフがやりにくくなるので賛成しかねる、と感じているのも事実です。 未来の姿をみんなで考えよう しかし、だからと言って何もせず、手をこまねいていては加速するゴルフ人口の減少に太刀打ちできず、経営的に破綻するコースがここ5年以内に400コース近くあると試算されています。ゴルフがプレイできる場所が少なくなるほど、ゴルファーの減少傾向は勢いを増します。その先にあるのは、想像するだけでも恐ろしい世界です。 顧客(ゴルファー)のプレイ目的が明白に分かれている以上、それに合わせたゴルフ場があってもよく、20%の本物のプライベートコースと80%のパブリックコースの構成が自然な形であり、ゴルフの普及にも大きく役立つと筆者は考えています。 スポーツとしてのゴルフ場はパブリックコースで行うべきであり、レジャーゴルフも然りです。パブリックコースでもコースの選手権を開催したり、月例会を開いたり、プライベートコースの競技部門と同じことは簡単にできます。 しかも、理事会が存在しないので、ゴルフ場は広大な土地と施設を最大限に利用した新しいビジネスを展開する自由を得られ、発展が見込めます。 そうなれば、新しい優秀な人材も自然と集まってくるのではないでしょうか? この文脈で考えれば、地方自治体もゴルフ場を持つべきだと思います。それは災害時の集団避難場所としても使用でき、市民、町民のための公園としても利用できるため、ランニング、ウォーキング、サイクリング、サッカーやフットサルなど、スポーツ施設としても芝生のフィールドは利用範囲が広いからです。 これらを維持管理するために通常はゴルフ場として利用者から料金を取り、同時にゴルフ場利用税をこのような形で還元できれば、維持管理費はただ公園を維持管理する費用に比べれば大きな差が出ると見ます。市民の健康維持にも大きく役立ちます。週末には一般にスポーツ施設として有料で開放すれば良いことです。 現状、ゴルフ場の将来は、ゴルフ場自身が握っている部分があまりにも大きい。だからこそ、ゴルフ関係者やこれからの利用を考える人たちの間で大いに議論を尽くさねばなりません。日本のゴルフをもっと面白くするためにです。いや、日本の社会を明るくするためにです。
    (公開)2019年05月28日
    最近、ティーイングエリアをかなり前方に設定するゴルフ場が出てきたことはとても良いことだと思います。誰でもゴルフを楽しめる、という前提に立てば、ティーイングエリアをどこに設定してプレイするかはとても大事。その際、ゴルファー自身が自由に選択できることが基本です。 上手だからバックティ、下手だから前、女性だから前、シニアだから前という画一化された考え方では、ゴルファー視線に立った施策とはいえません。筆者は、ゴルフの楽しみ方はプレイヤー個人によってそれぞれ違い、どのティを使用するかの選択権はゴルフ場が関知すべきことではないと考えます。 ゴルフを始めた人の半分が3年以内に止めてしまう理由、70歳を過ぎるとゴルフをやめてしまう人が急激に増える理由、女性のゴルフ参加率が男性に比べて極端に低い理由、これらをゴルフ場関係者は、真剣に考えて対策を打ってきたでしょうか? 答えは残念ながらNO、と言わざるを得ません。 さる統計によると、初めてゴルフをプレイする人の平均スコアは139であり、彼らの半分が3年以内に止めてしまう理由は、「その平均スコアが3年たっても115を切れないから」という見方があります。つまり、ゲームの楽しさを感じることができないのです。 女性の参加率が低いのも同じような理由で、パーオンすることがなかなかできず、ゴルフの持つ本当の面白さを感じとれないことが大きな理由だと思います。 総計5000ヤードを切ることが必要 そもそもゴルフは、パーを取ることを目的としたゲームであり、パーが取れる可能性が高くなるほどゲームの面白さを体感できます。さらにバーディでも取ることになれば、ゴルフの虜になるのです。しかし、ゴルフは他のスポーツに比べ、ゲームを楽しめる技量を得るまでに時間がかかるのが課題。この課題を解決する施策が、ゴルフの面白さを理解してもらえることに直結すると筆写は考えます。 また、ゴルフは自然の中で行うフィールドゲームの一つで、ボールをコントロールして目的地まで運ぶターゲットゲームです。そのためボールの置かれる状況は様々で、これらは現場で経験することで適した打ち方や、距離感などが身につきます。これらは練習場では学べません。 子供が大人より比較的上達が早いのは、レッスン書を読んだり、レッスンを受けたりしなくても、道具をどのように使ったらボールを狙い通り運べるかを本能的に感じ取り、ゲームの楽しさを感じられるからです。 ティーイングエリアの位置をグリーンに近いところに設置して、子供でもパーオンしやすい距離からゲームを始められる配慮がされています。一つでもパーが取れたり、バーディが取れると子供はもう夢中になり「ゴルフ面白い!もっとやりたい!」となりますが、これは大人も女性も同じだと思います。 このような文脈に照らして考えると、ジュニアから初心者、女性には、パーオンできる位置にティーイングエリアを設ける必要があるでしょう。ひとつの目安として、18ホールでのヤーデージの総計が5,000ヤードを切る長さを設定することも重要です。 18ホールで540万円の投資 多くのゴルフ場経営者は、コースレートや難易度が高いコース、距離が平均よりも長いコースが「グレードが上」と考えているように見受けられます。競技層の割合は全ゴルファーの7%ほどと言われており、この層の歓心を買うことが重要視されてきましたが、その一方で90%を超える「ゲームとしてのゴルフ」を楽しみたいプレイヤーの気持ちを汲み取り、意識改革を起こす時が来ています。 その際、筆者はまず「ティーイングエリアの位置とその呼称」を変える必要が急務と考えます。ティーイングエリアの数は、できれば7ヶ所は欲しいところです。トータルヤーデージからすれば、18ホールで最短3600ヤードから最長7200ヤードの幅の中、つまり差し引き3600ヤードの中に各ティーイングエリアを設置します。 単に一直線上に単調なティーイングエリアを設けるのではなく、戦略的にも各レベルのゴルファーが楽しめる位置に配置する配慮が必要であり、コース設計家の腕の見せ所でもあります。 基本的な考え方は、一緒にプレイする人が同じ番手のクラブでグリーンを捉えられる位置がよく、ハンディキャップよりもこの方がより公平でゲームが面白くなります。ゴルフはパーを取ることを基本としたゲームであり、だとすれば各自のレベルに関係なく、その人がパーを取れる可能性を持った位置からティーショットすべきものだからです。 ゴルフ場にもよりますが、ティーイングエリアを一つ作るのに30万円ほど掛かるといわれます。だとすれば18ホールで540万円くらいの投資となります。ゴルフ場にとってはかなりの負担だと思いますが、最近は優れた人工芝もあり、メンテナンスを考えるともう少し安くできるかもしれません。 その資金はどこから持ってくるのか? という声も聞こえてきますが、これにより顧客が増えるか、顧客単価が上がれば可能ではないでしょうか。もし、女性や初心者の間で「他のコースよりもより楽しむことができる」と評判が立てば、そのコースへの来場数やリピート率も高まるはずです。 実際、筆者の友人である70歳の女性からこんな声が聞かれました。「ゴルフ場が新しいティーイングエリアを前に作ってくれて、初めて39で回れました。ゴルフをやめようと思っていた矢先にパーオンすることが多くなって、ゴルフが本当に楽しくなった!」。電話口の彼女の声は弾んでいました。これがゴルファーの声なのです。 「番号制」でホールごとに選択 もう一つの課題は、ティーイングエリアの呼称です。現在、どのコースもティマークに色をつけて黒がチャンピオンティ、青がバック、白がレギュラー、赤がレディス、金色がシニアなどと区分けをしていますが、これも一種の競技ゴルファー目線ではないでしょうか。 下手な人、飛ばない人は後ろから打つべからず、という空気が漂うため、改める必要があると考えます。同時に「初心者は前から打つ」という暗黙の決め事にメスを入れる必要もあります。ティーイングエリアを前にすべき、と言いながらこれは矛盾しているのではと反論されそうですが、それは少し違います。 どのティーイングエリアを使うかはゴルファーの選択権であり、ゴルフ場が許可制にして制限すべきことではないと思うからです。問題は「プレイ時間」ではないでしょうか。 筆者は「レディスティ」等の呼称はある種の「決めつけ」であり、これを改めて1~5番ティなどの「番号制」にすべきと考えます。このようにすることでプレイの自由度が高まるからです。 たとえば、当日のプレイは「2番ティ」の使用を基本としても、平坦で距離が短いパー5では「1番ティ」を使用し、池越えの難しいパー3ではやさしいセッティングの「5番ティ」にするなどです。スコアカードの使用ティ欄に丸をすれば、当日プレイした総距離も計算できます。 ホールによって使用ティの番号を変えられれば、初心者でも戦略的にティを選ぶなど、俄然ゲームの質が高まるのです。どのようなレベルのプレイヤーでも選択権を自由にすれば、ゴルフをより楽しむことができるのです。 これまでは単にハンディキャップの違いで技量差を埋める考え方でした。しかし、プレイヤー同士がどのティを使うかを話し合い、パーを取れる確率が同じようになるティーイングエリアを選べれば、ゴルファーの早期リタイヤを防止でき、女性の参加率向上につながると信じます。 この意見に賛同したゴルフ場が実施し、結果をレポートしてみてはどうでしょうか。明らかに良い結果が得られるとすれば、どのゴルフ場も取り入れることを望みます。ゴルファーが喜ぶだけでなく入場者も増え、収益も確実に改善されるでしょう。
    (公開)2019年05月07日
    日本だけでゴルフをしていると、日本のゴルフスタイルは特に問題がないように思える。しかし、海外でプレイしてみると、様々なスタイルがあることに気づかされる。欧米ではプレイヤー自身の選択肢が広いからだ。 その際、「カート事情」を見るとよく理解できる。 カートはバッグを運ぶものだが、自分自身で運ぶ手引きタイプ、車にバッグを乗せて運ぶタイプで2人乗りや5人乗り、自走式や電磁誘導タイプがある。 日本のゴルフ場は5人乗りの電磁誘導タイプがほとんどだが、ここで疑問。なぜ、日本はこのタイプが普及したのだろうか? 筆者は、最大の理由はプレイの進行を最も管理しやすいからだと考えている。つまり、ゴルフ場サイドの都合である。電磁誘導であれば運転操作のミスで事故が起こることは稀であり、GPSを装着していればどのカートがどこにいるか一目瞭然。ゴルフ場にとっては非常に使い勝手が良いのである。 その反面、プレイヤーサイドから見れば不満が残る。ゴルフ本来の楽しみ方を追求すれば、自分専用のキャディを連れてプレイするか、自分のバッグは自分で担ぐ、手引きカートで引っ張る方がはるかに良いと思えるからだ。 ゴルフの楽しみ方は人それぞれで、プレイヤー自身が決めるべきものだが、残念ながら日本では選択肢の幅が極端に狭い。 スケボーのカート 今年1月、筆者は米フロリダ州で開催されたPGA Showを取材したが、今回は特にカートに注目してみた。個人用カートは電動タイプが多くなっており、スケートボードにハンドルを付けたようなもの、セグウェイそのものやリモコンでプレイヤーの後をついくるタイプ、あるいはバイク型のカートや、大型でありながらコンパクトに収納できるもの、電動の手引きカートなど実に多種多様だった。 カジュアルにプレイしたい、健康を考えて歩行でのプレイを中心にしたいなど、ゴルファーには様々な志向があり、ゴルフ場もそれを受け入れている。 これらを日本のゴルフ場に持ち込んだらどうなるだろうか? 多分、どれも却下されると思われる。なぜなら、ゴルフ場がプレイヤーを管理できないからだ。 ここでよく考えてもらいたい。共産主義国家ではあるまいし、なぜひとつのシステムしか認めないのだろう。自由主義国家でのゴルフならば、顧客の選択の自由に任せるのが自然ではないだろうか? プレイの進行面について、「5人乗りカートだから速い」という根拠は薄弱だ。もし事故が起こったら、それは「自己責任」という一筆をスタート前にとっておけば良いのではないか。筆者は、電磁誘導カートを強引に使用することは「ゴルフが曖昧で雑なものになってしまうことを強要しているに等しい」と感じている。 電磁誘導カートをやめて欲しい、と言っているのではない。それを好む人は使えばよく、そうではない人には選択肢を与えるべきだと主張したい。 デンマークのゴルフは「歩け!」 筆者は以前、デンマークで行われたジュニアゴルフの国際会議に参加し、当地で2回ほどプレイした。驚いたのは、そこでは手引きカートが普通で、2人乗りカートはあるものの、これを利用するには「医者の許可書」が必須であり、しかもカートの使用料金はプレイ代と同額だったことだ。 その理由を現地の関係者に質問したところ「ゴルフは健康にとても良いことがわかっています。特に4〜5時間も歩くからで、健康であれば健康保険の利用頻度や金額をかなりセーブできる」という答えだった。 足に少し不安がある人は電池で駆動するモーター付きのカートを自分で持ち込み、カートに引っ張ってもらいながら歩いてプレイする。健康面でもゴルフをうまく利用している国だと実感した。ゴルフショップのメイン商品はクラブではなく、カートだったことにも驚いた。 これらは社会保障が行き届いた北欧のゴルフ事情の一端だが、国民に健康でいてもらいたいのは日本も同様。カートをやめればシニア層がゴルフをやめてしまう?と危惧するゴルフ場は多いと思うが、やめる必要はなく、選択肢を増やすことで新たな集客に結びつける努力をした方がゴルフ場の特徴も発揮できると筆者は考える。 業界は、「ゴルフは健康寿命の延伸に効果的」と呼びかけているが、その効果は積極的に歩いてこそ期待できる。自由に手引きカートや担ぎでプレイできるゴルフ場が増えれば、日本のゴルフはもっと多様化し、活性化につながるはずだ。 どこかやるゴルフ場ないでしょうか? やりましょうよ、ゴルファーのために。
    (公開)2019年04月08日
    2018年8月、アメリカで新しいパターを作っているという人物がヘッドサンプルを持って日本にやってきた。インゴットから削り出したT型のヘッドはトウとヒール部分にタングステンを125gも埋め込んだもので、ヘッド重量は一般的な重さだが、パター全体のバランスポイントをソールから5インチ以内に設定する新しいコンセプトのパターを開発中だという。 そして、幾つかの特許も取得できたので2019年のPGA Showで発表。 このパターを開発している人物の名前を聞いて驚いた。彼の名はリッチ・パレンテ。キャロウェイゴルフの前身、ヒッコリースティックUSAの創業者の一人である。ヒッコリーシャフトの芯をくり抜いてチタンシャフトを挿入し、そのシャフトにインゴットから削り出したヘッドを装着したパターを作り出した人物だ。 このほど彼は、温めていたアイデアをパターで商品化、再び脚光をあびる可能性が高い。開発を行っている場所はサンディエゴ、そこにロボットや実験設備があるという。筆者は、PGA Showでの発表前に特別に取材をさせてもらった。 新会社の名前はSackS Parente Golf Companyというもので、二人の投資家が新しいパターメーカーを全面的にサポートして立ち上がった。 S・サックスという人物 今回発表したモデルは3種類、シリーズ39、シリーズ54そしてシリーズ18である。メインは『39』と『54』だ。この数字の意味はちょっと面白い。それはデザインした人の生まれた年から付けられているからだ。 39をデザインしたのはリッチ・パレンテ、彼は1939年生まれで今年80歳である。経歴は前述したとおり。一方、シリーズ54をデザインしたのがスティーブ・サックスで、彼は1954年生まれの65歳。プロフィールにはこのように記載されている。 スティーブ・サックスは1974年以来ゴルフ業界に携わり、過去40年以上の間、ゴルフのマーケティングと製造のパイオニアとして活動。彼はゴルフクラブ製造のための新しい素材の開発やゴルフクラブ設計において広範な研究を行ってきた。 Goldwin Golfを共同設立し、Carbite Golfのセールスおよびマーケティングディレクターを務める。ゴルフ市場、トレンド、クラブデザイン、製造の歴史に関する深い知識を持っているため、いくつかのゴルフメーカーや国内組織へのコンサルタントとして活動してきた。 今回の取材の目的は、新しい会社が発表するパターはどのようなものなのか、どのようなコンセプトを持って市場に投入するのか、実際に完成したものを打ってみてどうなのか、を誰よりも早く自分なりに確認したかった。 まず出来上がった新しいパターとはどんなものなのか? パレンテ氏の自信作<シリーズ39>から始めよう。 この写真が製品特徴を端的に表している。パターのバランスポイントがソールから5インチ以内にセットされているからだ。 ヘッド重量は360gで、ほぼ標準の重さである。するとシャフトとグリップが極端に軽いものが使われていることが容易に理解できる。 彼らはこの新しいコンセプトを「極低バランスポイント」(Ultra Low Balance Point 略してULBP)のパターとして特許を取得している。 右がシリーズ39をデザインしたRパレンテ、左がシリーズ54をデザインしたSサックス 筆者は次のように質問した。なぜ、このようなバランスポイントのパターを作ろうと思ったのですか? 答えはこうだ。 「パッティングでは、振り子のように一定のテンポとリズムでストロークできることで安定したボールの転がりを得ることができます。そのためには重りの役目をするヘッドが、重いものが良いのです。 しかし、重すぎるとヘッドコントロールが難しく、距離コントロールはもちろん方向性にも影響が出てきます。そこでヘッドの重さを360〜365gに抑えて、重さを感じながらも操作性を考慮するには、シャフトとグリップの重さを極力軽くすべきとの結論に達したのです」 タングステンウェイトとフェースインサートを手に説明するパレンテ どのようにシャフトとグリップの軽量化を図ったのですか? 「まず、シャフトからいきましょう。軽量化を進めるにはグラファイトシャフトが良いことはすぐに理解できますね。しかし、パター用で我々が意図する軽量のものはまだなかったのです。スチールでも軽量化を図ると肉厚が薄くなるためしなりが出て、方向性やボールスピードが安定しないという問題が出てきます。 しなりを抑えようとするとシャフトの径が太くなり、タッチが出にくいことにつながります。そこで太さを変えずに軽量化が図れ、かつ硬さも出すことができるものは、ということからグラファイトシャフトの特性を生かしたパター専用のシャフトを開発することになりました。 色々実験した中で40gを切るものが良いことが分かり1インチ1gというコンセプトで、幾つかのシャフトメーカーに試作をお願いしました。 日本の幾つかのメーカーに試作を依頼しましたが、その中でもオリンピック製のものは我々の狙い通りのものでした。シャフトの硬さも振動数で言えば360cpm以上を目指し、この硬さはスチールを超えるもので重いヘッドにも十分対応できるものに仕上がったのです」 1インチ1gを具現化したオリンピック製の超軽量オリジナルパターシャフト グリップも同じように軽量化を狙ったものを試作したのですか? 「その通りです。やはり40gを切るものが必要でした。それにグリップの太さと形はそのパターを操作する上で、重要な部分でラウンドタイプ、ピストルタイプ、フラットタイプと3種類が必要と考えグリップメーカーに試作を頼みましたが、握った時の感触まで考慮すると完成までには相当時間もかかりました」 3種類の専用の超軽量パターグリップ(ピストル型、ラウンド型、フラット型、35gという重さに注目) 筆者は実験を見学したが、ロボットテストを繰り返しながら、最も良いスペックを探し続けたことが容易に理解できた。また、市場で評価されているパターをテストし、転がり、安定性、方向性を少しでも上回るものができなければ開発する意味がない、ということで徹底して細かな部分まで微調整を繰り返し、ほぼ完成のレベルに達していた。 シリーズ39の最大の特徴は、T型のヘッドデザインを採用した点である。ネオマレットやクランクネックのブレードタイプが主流の中、パターとして最も基本的なデザインT字型の中で、トウとヒール部分に125gものタングステンを装着して最大級のMOI(慣性モーメント)を狙った点とヘッドの重心位置がシャフト軸線上にある点である。 このようにすることでヘッドの回転する力はなくなり、まさに振り子と同じように動く。実際にプロトタイプを打たせてもらったが、バランスが相当重く操作性が悪いとの事前の想定は簡単に覆され、自然にストロークできるだけでなく、操作性も確かなものであったことは正直驚いた。 フェースインサートも軽量アルミ合金のAL24を採用し、タングステンウェイトの効果をより引き出す役割の他、スコアリングもボールディンプルに効果的にかみ合うようデザインされている点もよく考えられている。 一方、サックスがデザインしたシリーズ54もユニークな点がいくつも見ることができる。 一つはマレット型にしてゼブラ模様のアライメントラインを入れた点。このデザインはパターの後ろから低く始まり、光学的にミスアライメントを排除するためにフェースの高さいっぱいまで傾斜する完全に平らなクラウンを備えている。 さらにアライメントの補助、つまり視覚的にターゲットを正確に捉える目的で、黒のボディにいくつもの白いストライプを入れたものと、黒いボディに2本のブルーのサイドラインと赤いセンターラインを入れたバーニアアキュリティクラウンと名付けたものをデザインしている。 2つ目はヘッド重量の65%をフェース面から1インチ以内に集約させた点。ネック形状にアジャスタブル機能を持たせ長さの異なるクランクネックや、スラントネックを用意して入れ替えることができるようにした発想はとてもユニークである。 ストレートネックのホーゼルの長さもいくつか用意している。これらは重心角を微妙に変化させることができ、ヘッドローテーションの具合によって最適なものを選べるメリットがある。 シリーズ54のプロトタイプの数々 シリーズ54はとてもユニークだ。複数のアライメントラインは視覚的な位置合わせを容易にする効果があり、目が意図したターゲットに向かって傾斜した形状をたどり、一貫してヘッドをスクエアにセットできるようにデザインされている。 同色だけのラインではおぼつかないゴルファーのために設計されたバーニアアキュリティは2本の線の間のずれを見る能力として定義されていて、ターゲットラインに集中し狙いを定めることでより正しいストローク引き出すことを狙ったものという。 ロボットマシーンでシリーズ54の機能をテストするサックス氏 一見、特殊なデザインには見えないが、開発のバックグランドを聞くと様々な工夫の跡が見られる。やはり今までの経験から来たもので、再び手にとってじっくりと眺めてみるとユニークさが引き立って見えるのは不思議である。 発表は4月1日だが、日本ではジャパンゴルフフェアでお披露目した。 プロトタイプのヘッドでパターの特徴を説明するパレンテ氏 開発途中のシリーズ54を手にするサックス氏
    (公開)2019年04月03日
    クラブ開発はルールという規制の枠が決められていて、画期的なものはできないのでは? と見られている。しかし、スコアの40%程度を占めるパッティングに使われるパターは、まだまだ開発の自由度が大きく、開発の余地は十分残されている。 パターのトップブランド『オデッセイ』はこれまで、『O-WORKS, STROKE LAB, WHITE HOT Pro, EXO, RED BALL, TOULON』などのシリーズを展開してきたが、今年は全て新しいコンセプトを持った『STROKE LAB』に統一する。 従来は様々なタイプのゴルファーに広い選択肢を与え、最適パターを選んでもらうという姿勢だったが、大きな方針転換といえる。なぜなのか? その真意が知りたくて、オデッセイパターの開発責任者オースティ・ローリンソン氏にメールを送り、取材の要請をした。彼とは旧知の仲であり、快く依頼を受け入れてくれた。2019年1月18日、5年ぶりにキャロウェイゴルフ本社を訪ね、ローリンソ氏に取材。以下がその取材のやりとりである。 松尾:オデッセイは今まで色々なタイプを用意してゴルフアーの選択肢を広げたのに、今回『STROKE LAB』一本に絞って展開することにしたのはなぜですか? オースティ・ローリンソン:とても良い質問ですね。あなたのためにプレゼン資料を作成しました。まず、 開発のバックグランドから説明しましょう。グラフを見てください。1975年からパターヘッドの重量は少しずつ重く変化しています。 1975年:295g、1999年:325g、2012年:360g、2018年:360g この理由は、グリーンが年々速くなってきたからで、速いグリーンになると距離感が大切な要素となるために、ストロークのテンポを少しゆっくりしたいのです。 そのような状況でも安定したストロークにするにはヘッド重量を重くして、ストローク中のブレを少なくしたかった。ヘッドを重くすると当然クラブ重量も重く変化します。次の表を見ていただければ一目瞭然です。 1975年:473g、1999年:508g、2012年:535g、2018年:527g 松尾:2015年から軽くなったのはなぜですか? オースティ・ローリンソン:数年前から採用したスーパーストロークのパターグリップの影響です。グリ ップが軽量化された分、パター重量は軽くなりました。 松尾:当然、パターの操作性の目安となるスウィングウェイトにも変化がでますね。 オースティ・ローリンソン:そうです。スウィングウェイトもこのように変化してきました。 1975年:C-6、1999年:D-8、2012年:E-5、2018年:F-2 軽いグリップに重いヘッド、そして大きなスウィングウェイト、Fのレベルに なるとパターをコントロールするには重すぎる数値でした。 それに重くなることでシャフト硬度も柔らかく変化してきました。シャフトが柔らかいとヘッドの挙動に影響を与えます。できるだけしならない硬いシャフトがパターには必要なのです。 松尾:シャフト硬度の変化はどのような具合になっていたのですか? オースティ・ローリンソン:これも表を見ていただければわかるでしょう。 1975年:385cpm、1999年:335cpm、2018年:320cpm シャフトはヘッド重量に反比例して柔らかく変化しています。そこで『TANK』と命名したヘッド重量も重くシャフトも硬いパターを開発してみました。 このパターのスペックは、ヘッドの重量:375g、シャフト重量:135g、グリップ重量:113g、総重量:645g、シャフトの硬さ:380cpm、SW:F-3になります。許容範囲の広いO-WORKSパターと比較してもらうとその特異性は一目で分かります。 O-WORKSのスペックは、ヘッド:355g、シャフト重量:117g、グリップ重量:77g、総重量:549g、シャフトの硬さ:325cpm、SW:E-5です。 『TANKパター』は全ての人に合うパターではありませんが、長尺パターのメリットを具現化したものです。そのためにロングパットの距離コントロールが難しい部分がありました。開発においての次の目標は、O-WORKSの重さでシャフトの硬さはTANKというものでした。 松尾:この課題を解決するものとして初代の『STROKE LAB』を作ったのですね。 オースティ・ローリンソン:そうです。シャフトをより軽量化することでヘッドとグリップに重量を配分することを狙ったものです。スペックは、ヘッド重量:365g、シャフト重量:84g、グリップ重量:85g、総重量:534g、シャフトの硬さ:320cpm ただ、ヘッドの重量とグリップ重量は重くすることができたのですが、シャフトを軽くすることでシャフト強度を出すために、シャフトのバット系が太くなり、その分シャフトの手元が硬くなる反面、先端の方が柔らかくなる課題は残りました。また、クラブ全体の重さは大きな変化がないため、もう少し重くする必要もありました。 松尾:これらの課題をクリアするためにどのような技術を取り入れて改善したのですか? オースティ・ローリンソン:シャフトをより軽く、そして硬さもより硬くするためにTru-Temperの『Bi-Matrix』シャフトの技術(スチールシャフトとカーボンのハイブリッド)をパター用シャフトに応用したのです。 シャフト重量:130g→87g、シャフト硬さ:330cpm→360cpm シャフトを約40g軽量化できたので、それをヘッドとグリップに配分し、最適なスウィングウェイトを得るために、シャフトのバット部分にインナーウェイトを装着してパター全体の重さ、狙ったシャフトの硬さを得ることができました。 それに、今回はマレットタイプとブレードタイプでヘッドの重さを変えて、その分、インナーウェイトも重さを変え最適なバランスを確保しています。 ヘッド重量 - マレット:365g、ブレード:360g グリップ重量 - マレット:75g+インナーウェイト30g、 ブレード:65g+インナーウェイト40g スウィングウェイト - マレット:E-5、ブレード:D-9 シャフトをハイブリッドにすることで、シャフトの硬さを軽くて硬くすることができ、その結果、インパクト時のボール初速がアップするのと同時にシャフトの不要な動きを抑えることができました。 また、ヘッドの重さを10g重くしてもインナーウェイトを装着することで、パターのバランスポイントがグリップ寄りにシフトし、パターコントロールがよりしやすく、ストロークの再現性が高まったのです。 松尾:今回、モデルを10種類に絞った意図はどこにあるのですか? オースティ・ローリンソン:新しい『STROKE LAB』はマレットタイプが6種類、ブレードタイプが4種類ですが、マレットタイプには2ベンドシャフト、ショートスラントネック、ストレートシャフトを用意し、ブレードタイプにはクランクネック、ショートスラントを用意しているので、選択肢はかなり広がっています。その中からローテーションの大小やストロークに合わせたものを選べます。 松尾:グリップも太いものとそうでないもの2タイプを用意していますが、その狙いはどこにあるのですか? オースティ・ローリンソン:太いグリップはヘッドローテーションをあまりしないゴルファー、またはさせたくないゴルファー向けであるのに対して、少し細いタイプはローテーションをしているゴルファーに向けてデザインしてあります。 松尾:『STROKE LAB』に統一した理由がわかりました。それで『TOULON』『EXO』『RED BALL』にもBI-MATRIXシャフトを採用して『STROKE LAB』コンセプトを取り入れて統一化したことも理解できました。先頃発表したオデッセイ独自のパターフィッティングシステムについて教えてください。 オースティ・ローリンソン:計測器の上にボールを乗せて打つものですが、これで分かることはインパクト時のヘッドの動きやストロークの傾向などです。比較的短時間でパターフィッティングができ、ゴルフアーに適したパターを選べるというものです。 松尾:こうして開発のバックグランドを聞いてみると、パターに関してはまだまだ開発の余地があるように感じました。その辺はどう見ていますか? オースティ・ローリンソン:パターに関してはドライバーと違って開発のスペースはかなりあります。ヘッド素材一つを取ってもまだまだトライしたいものが数多くあります。ヘッドデザインもそうですね。そういった視点で見るとパター開発は無限と言ってもいいかもしれません。 「緊張感」はロボットで再現できない ミケルソン用に作られた練習用グリーン2度、3度、4度の傾斜が付けられている この後、ERCパフォーマンスセンターに行って実験場所を見学したが、パターフィールドも大きく改造されていた。 一つは実際のコースのグリーンと同じようにアンジュレーションをつけたもの、もう一つはセントアンドリュースのグリーンを再現していた。 より実践に近い状況でパターのあり方を見られるようにという工夫で、圧巻はフィル・ミケルソンのリクエストによって作られた約3平米の人工芝のグリーンだった。 これらは2度、3度、4度と角度をつけて設置してあり、それぞれのグリーンの中央と四隅には通常のカップより小さなカップが切られていて、いかなる傾斜でも練習できるものまで用意されていた。 パター開発はロボットテストを行わないというが、その理由はキャロウェイゴルフには様々なゴルファーがいて、その人たちにテストをしてもらうことでかなりのことができること、パターには上級者用、アベレージゴルファー用などレベルによって区分けをする必要がない点も面白い。 『STROKE LAB』パターを再度見ると2つの気づきがあった。一つはヘッドのコスメの部分で全てが銀色と黒で統一されている点。 以前のモデルで『VERSA』というシリーズがあり、ヘッドをより目標に正確にセットアップできるために白と黒のラインを強調させて作られていたが、これをよりシンプルにデザインすることで、落ち着いた感じに仕上げられている。この点は進化を感じた部分だった。 パッティング、特にショートパットほど精神的な緊張感が高まるものであり、ロボットでは表現できない。そのような緊張下においても冷静にセットアップでき、自然な形でストロークできるような配慮がデザインや色使いにもなされている。 もう一つはマレットタイプの一つに『TUTTLE』という名前を復活させたこと。この名前はキャロウェイゴルフの名前でパターを作っていた当時のもので、時代は1994年ビッグ・バーサヘヴェンウッドを発売した時のことだ。 ニューヨークでプロショップを経営していたTUTTLE氏がイリー・キャロウェイに「このショートウッドのヘッドと同じ形でパターを作ってみたらどうだ」とリクエストをした。 キャロウェイゴルフのクラブを積極的に販売してくれたショップオーナーの言葉だが、彼は癌に侵されて余命はあまりないと聞かされていた。 そこでイリー・キャロウェイはオースティに命じてヘヴェンウッドと同じ形のパターを作るように命じ、彼の名前をその功績とともに残すことを意図した。 その後、S2H2コンセプトの洗練されたマレット型が発表され、その名前はTUTTLEとソールに刻印されていた。そのパターを使用してジョニー・ミラーがペプルビーチ・プロアマで復活優勝を遂げたことはちょっとしたSTORYである。 その名前の復活には、明確な意図があったに違いないと想像するが、この部分を聞きそびれたことは記者として不覚だったと反省している。 キャロウェイゴルフがオデッセイを買収した1997年、キャロウェイゴルフのパターデザインの中心人物であったオースティはオデッセイに出向を命じられた。 彼とすれば、キャロウェイゴルフのブランドで良いパターを開発したかったに違いなかったろう。 新しいマレットタイプのヘッドに『TUTTLE』と入れたオースティの気持ちを想像するだけで、楽しくなる。 STROKE LABの開発のバックグランドを説明するオースティ・ローリンソン
    (公開)2019年03月07日
    今年も1月22日から米国フロリダ州オーランドでPGAショーが開催され、3月にはジャパンゴルフフェアが横浜で開催される。PGAショーは今年66回目を数えるが、筆者が初めて取材で訪れたのは1989年のこと。あれから30年の月日が経ったことになる。 記者として9回、その後キャロウェイに転職したため、メーカーの人間として16回参加したことになるのだが、そのPGAショーは今、大きな転換期を迎えているように見える。 一つは出展企業数と来場者数がピーク時から比べて大きく減少している点である。ショーを主催するリードエキシビジョン(リード社)は、次の数字を発表している。ゴルフ関係者の入場は4万人、全米50州と世界89カ国、1000以上の参加企業と200以上の新規参加企業に加え、7500名にものぼるPGAメンバー、という内容だ。 お気づきだろうか。どれも抽象的で、リアルな数字は一切発表されていない。しかも、この数字は過去数年ほとんど変わっておらず、ショーの苦しい台所事情が垣間見える。 筆者の実感としては、入場者数は確実に減少傾向で、ゴルフクラブメーカーの展示スペースは以前に比べ大きく縮小している。それをカバーするための施策として試打会場の設置などで埋めてはいるが、それでも空間が目立つほどである。 1990年代前半は、PGAショーへの参加希望企業が多く、広大なコンベンションセンターでも収まりがつかず、近隣のホテルなどで臨時のブースを設置するほどであった。特に旧ピーボディホテルやローゼンホテルの宴会場は、新規メーカーや抽選に漏れた企業が争って予約、特設の展示受注会が行われた。 当然、夜のレストランは予約を取るのが困難で、ホテルのエントランスはタクシーや人ごみで溢れ返っていた。 PGAショーには最先端の情報が集まり、新製品を直接手にとって見ることができる。世界中のゴルフ関係者が、遠くオーランドまで時間と経費をかけて足を運んでいた。 この状況に変化が起こってきたのは1990年代後半からである。2000年代に入るとショーの運営はPGAから民間のリード社に移り、これが縮小に弾みをつけた印象が強い。 ただ、一連の変化は過去30年というスパンで見てわかるため、近年の様子しか知らない来場者は、日本のゴルフフェアと比べて規模感に圧倒されるかもしれない。 なぜ縮小を来たしたのか? それは、PGAショーの存在が問われているからにほかならない。 PGAショーの成り立ちを見る そもそもなぜ、PGAショーは1月後半にフロリダのオーランドで開催されるのか。それは次の理由による。まず、米国の半分近くは冬季ゴルフができない地域であること。そして、オーランドはディズニーワールドやユニバーサルスタジオ、シーワールドなどレジャー施設が充実しているだけでなく、ゴルフ場も数多い。 そのためPGA会員である来場者は家族同伴でこの地を訪れ、一緒に休暇を楽しめる。むろん、シーズンに先駆けて年間のビジネスプランを立てるにも最適な時期だった。 その一方、1年を通じてゴルフができるグリーンベルト地域(カリフォルニア、アリゾナ、テキサス、ニューメキシコ、フロリダなど)では、冬季の来場者が増えることから繁忙期となり、オーランドには忙しくて参加できないという事情から、サンディエゴで夏のPGAショーを別途開催していたことがある。現在、夏のショーはラスベガスに会場を移して年2回、ゴルフアパレルを中心に展開している。 PGAショーか衰退した4つの理由 この30年間で特筆すべき大きな変化は、2000年を境に強化されはじめた用品用具のルール規制だろう。これにより画期的な製品が出にくくなり、資本力がある大手しかクラブ開発に資金を投入できなくなった。メーカーのサバイバルが急速に進み、クラブメーカーの数も激減した。 日本のメーカーは80年代、バブル景気へと向かう熱気をテコに北米進出を目論んでいた。PGAショーにも意欲的に出展したが、期待したほどの成果は残せなかった。その理由は明快である。日本のメーカーは良いパターとウェッジを作れないからだ。 この2つのクラブはスコアメイクに大きな影響力を持ち、ゴルフのゲーム性をよく理解していないと良いものができない。価格もドライバーに比べて半分以下。ビジネス的に魅力がないと考えた日本のメーカーは、クラブ作りの大切な部分を省略してきた。 良いウェッジを作ることができれば、アイアンの開発はその延長上にあればよく、良いアイアンができれば、その延長上にウッドが来る。日本のメーカーはその逆を歩んできたため、セットとしての流れが見えない。一方のタイトリスト、キャロウェイ、ピン、テーラーメイドなどは優れたパターとウェッジを作り続けている。この差は大きいのだ。 話を元に戻そう。強力な新製品をなかなか出せなくなると、クラブメーカーは販売のアドバンテージを得るために新製品の発売時期を前倒しする。第1四半期からスタートダッシュをかけて、他社の機先を制する戦略が主流になる。となると1月末の発表、受注では遅いのだ。つまり1月末に開催されるPGAショーは、展示受注会という本来の目的を喪失した。 これに拍車を掛けたのがインターネットの普及である。今ではスマホのカメラを利用して、個人がメディアとして情報を瞬時に発信できる。そうなると誰よりも早く新製品情報が欲しい、新製品を購入したい、というゴルファーの欲求が強くなる。 そこでメーカーは、この「欲求」を利用しようと戦略を変えてきた。発売前に情報を意図的にリークしたり、トーナメントで選手に新製品をいち早く使用させる。 これによって新製品情報は、PGAショーの開催前に広く知れわたることになった。ワクワク感がなくなり、PGAショーを訪れる価値が薄れるのも当然だろう。 こうなると、メーカーの出展意欲も萎えてくる。以前はショーの開催前に全米からセールス担当者をフロリダに集め、真剣な会議が行われた。 各種バイヤーとの関係を強化できる場でもあるため、資金を投じる意味があった。同時に、会期中の営業活動を通じて年間の売り上げ予測を立てられるメリットもあった。 しかし、今はどうだろうか。先述の理由から、社員を何十人もオーランドに派遣するメリット・デメリットを考えると、出展に二の足を踏むのは当然だろう。 実は今回、PGAショーの主役であり続けたテーラーメイドが出展を取りやめている。同社は毎年3億円ともいわれる経費をPGAショーに投じてきたが、大きな決断を下したことになる。 変化するものが生き残る このままで良いのだろうか? 確かにゴルフ人口は世界的に見れば減少傾向にあるのだが、ゴルフがもたらす経済効果は他のスポーツ産業の比ではないほど大きなものがある。 ならば、毎年同じような展開を続けるのではなく、やり方、開催時期などを根本から見直し、世界最大のゴルフビジネスショーとして再構築する時期に来ていると強く思う。 同じことはジャパンゴルフフェアにも言える。このイベントは2年前、開催時期を2月から3月に、また、会場も東京ビッグサイトからパシフィコ横浜へ移転している。 新製品は発売済みだから、この会場で発表するものは何もない。何を見たら良いのだろうか?何を見せたら良いのだろうか? それは、誰のために行うものなのか? 今こそ、ゴルフショーの開催意義を関係者が知恵を出し合い見出す必要がある。 基本は「誰のためのショーなのか」「何のために開催するのか」である。対象や目的が明確になれば、開催時期や会場の選定、ショーの内容が明確になるからだ。 SNSやインターネットの威力は凄く、誰もがメディアとして活動できる時代。情報の価値が大きく変化しており、流通にも一大変化が起こり始めている。小売業の価値が問われる中、顧客が唯一求めるものは興味ある商品だけなのだ。 PGAショーもジャパンゴルフフェアも、顧客がワクワクして興味を持つものを提供できなければ存在価値は小さくなる。 今、まさにそれが始まっていると思うのだ。 変化に対応できるものに変えていかなければ、最初は参加企業が徐々に撤退を始め、それに伴って来場者も減るという悪循環が待ち受けている。 次の5年先、10年先、そして30年先を見据えた時、時代にふさわしいショーのあり方を様々な視点で再検討すべきだろう。数年先まで会場を押さえているから変更は難しい、などと言っていると、5年先には存在すら難しくなっているかもしれない。今回、PGAショーの30年を改めて振り返ってみて、変化の大きさに愕然とした。時代の変化のスピードは、想像以上に速いのである。 “最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのでもない。 唯一生き残ることができるものは、変化できるものである“ チャールス・ダーウィン
    (公開)2019年02月22日
    ゴルフのハンディキャップ・システムは、上級者とそうではない人が一緒にゲームを楽しむために考えられた。長い歴史もあり、このシステムをもとに倶楽部競技などが行われ、最近では世界共通で使える「スロープシステム」が一部で注目されている。 熟考されたシステムであり、随所に工夫のあとも伺える。だが、ゴルフの普及という観点に立った場合、ハンディキャップは有効に作用するだろうか。これが使われている現場を見ると、様々な問題点が見えてくる。 「ハンディは本当に必要なのか?」――。今回はこの点を読者の皆さんと一緒に考えてみたい。 まず、ハンディキャップの使用に際して重要なことは、これが公平に査定・算出されたものか否かだろう。ここに疑問を覚えるのは算定システムの問題ではなく、ゴルファーの資質によるところが大きいからだ。ハンディキャップは本来、すべてのラウンドのスコアを提出して初めて公平に機能するが、プレイヤーによっては、調子が悪い時のスコアを提出しないことがあり、公平性において不信感を招く。 ゴルファー心理からすると、少しでも良いハンディキャップを取得したいという気持ちや、一度得たハンディキャップを維持したいため、悪いスコアを提出せず、良いスコアだけを提出することが散見される。 その反対もある。コンペなどで上位になりたい、いい賞品をゲットしたいと思うがゆえに悪いスコアを中心に提出して、ハンディを多くしたい人もいる。 「誠実さ」がゴルフの前提とすれば、誠実ではない人が混在し、算出されたハンディキャップは、公平性が担保されているとは言い難い。そのため「ペリア」という簡易測定方式を多くのコンペが採用するのも頷ける。 ゴルフ倶楽部では、ハンディキャップの上位者をAクラス、下位者をBクラスに分けて競技会を行っているが、BクラスからAクラスに昇格することは名誉であり、反対にAからBに落ちることは不名誉という感覚も根付いている。実は、この感覚こそ「諸悪の根源」と思えるフシもある。この感覚を可視化することで、問題の根を紐解いてみよう。 そもそも、他の競技にハンディ・システムはなく、将棋で言えば「飛車角落ち」が非公式にあるぐらい。ゴルフはなぜ、そうなっているのだろう。 ハンディボードは学校の成績表 筆者が感じるゴルフの特異性は、上手ければ偉いという「階級社会」的な意識にあると思う。そのため、上級者があらゆる場面で発言力を発揮して、ゴルフ倶楽部の運営や競技会等における実権を握っていると想像される。上級者の「見えない力」が蔓延し、それが醸成する「威圧的な空気」が漂っているのだ。 そのような空気が障害となって、ゴルフの普及を阻害している。「ゴルフが上手いだけのことで、なぜ上から目線で人を見るのか?」 一般的に、上級者は保守的だ。競技の在り方、ハンディキャップの在り方、倶楽部ライフの在り方など、伝統的に受け継がれてきたものを「良し」として、変革を望まない人が多い。そして彼らは「ゴルフとはこういうもの」「こう在るべき」という考えを高圧的に押し付けるから、ビギナーやアベレージ層は不快に感じる。 そして、ハンディキャップがひとつでも上位であることが、目に見えない「階級制度」を助長させる。 これらは一体、どこからきているのだろう? 筆者の見立てはこうだ。そもそもゴルファーにはエリート意識があり、これと日本独自の「隠れた身分制度」が絡み合ったものではないか。日本のゴルフの黎明期から、ゴルフは上流階級の社交として導入され、スポーツという意識が希薄になっている。換言すれば、強い者、地位が高い者がすべてを決める、という考え方だ。 してみると、ゴルフ場のハンディキャップボードは学校の成績表を公に張り出しているようなものだろう。上位の人は優越感があり、下位の人は劣等感にさいなまれる。 世界のゴルフの潮流として、「スロープシステム」の普及がある。簡単に言えば、各コースの難易度とスコアを独自の計算式に当てはめ、世界中のどのコースでプレーしても「その日の順位」が正当に出せるというものだ。が、普及の足は速くはない。 その理由は、少なくともゴルフの普及を考えたとき、上級者が初心者に対してハンディを与える、それでゴルフを楽しんでもらうという考えがあり、筆者はこれを上級者の「奢り」だと思っている。「君は下手だからハンディをあげる」では、上から目線でビギナーを突き放しているようなものだ。 ゴルファーが楽しみ方を考える スターティングホールで交わす挨拶の常套句に「今日は皆さんにご迷惑を掛けますが、どうぞよろしくお願いします」というのがある。このようなことを言わせてしまうところに、ゴルフの見えない壁がある。それが筆者の持論である。 この際、私は提言したい。ゴルフをスポーツとして捉えるならば、ハンディキャップ・システムは不要であると。そもそも、上級者に負荷を掛けなければ、如何に相手にハンディを付与しても、上級者のほうが心理的にも技術的にも圧倒的に有利なのだ。では、どうすればいいか? 上級者が下位のゴルファーにハンディキャップを与えるのではなく、下位の者が上級者と対等にゲームを楽しむために、ティーグラウンドの選択肢を増やし、スクラッチまたはマッチプレイでゲームをすべきだと思う。主体はあくまでアベレージ層で、むしろ上級者に負荷を掛ける状況設定が公平だと考える。 仮にストロークプレイで競技をするなら、幾つかのカテゴリーを作り、すべてスクラッチでプレイした方がよほど公平だし、ゲームとしても面白くなるだろう。そして、負ければ悔しいから上達のために練習をする。このような姿がスポーツの原点だと思う。 競技団体は、ゴルフの普及にはすべてのゴルファーがハンディキャップを取得する必要があると懸命に唱えているが、そもそも「競技層」が1割程度の現状で、ハンディの取得が本当に有効なのか。一度立ち止まって、冷静に考える必要があろう。 ゴルフというゲームの楽しみ方、新しいプレイスタイルの在り方は、競技団体が決めるのではなく、ゴルファー自身が発案すべきだと思う。そのための話し合いを活発化するために、ゴルフ全体の普及を考える新たな団体の創設が急務であろう。
    (公開)2019年02月08日
    このゴルフクラブは誰のために作られているのだろうか? ふと、そのようなことを考える。誰が、どんなところで、どのような想いを持って、誰のために作ろうとしているのか、それが知りたくてゴルフライターになった。 今から30年以上も前のことだ。 時代は大きく変化し、ゴルフクラブもコンピューターで設計し、精度が高く性能が良いものを大量に作れるようになった。ゴルファーにとっては良いクラブが数多く出回り、選択肢も増えてゴルフが楽しめる時代がやって来た、はずである。 しかし、アベレージゴルファーのハンディキャップはほとんど変化がないという。 最近のクラブは明らかにミスショットに寛容でやさしくなり、振りやすく、しかもシャフトはより軽くヘッドスピードがアップするため、飛距離も格段に伸びているというのに…。 なぜ? アベレージ層のスコアはよくならないのか。 その反面、もうひとつ興味深い事例がある。ここ数年のプロテストの合格ライン、ジュニアゴルフ大会、そしてトップアマの大会の上位者のスコアは格段に伸びているという事実だ。この大きなギャップは何を意味しているのか? ひとつ確実に言えること、それは「道具の進化は上級者ほどその恩恵を強く受けている」という点である。 慣性モーメントの落とし穴 ここでもう一度立ち止まって考えてみたいと思う。 ボールを正確にまっすぐ、より遠くへ飛ばすには、目標に対して常にスクエアにヘッドを戻すことが絶対条件だ。スィートエリアが大きくやさしいと謳われているクラブは、ヘッドの慣性モーメントが大きい。すなわち大型ヘッドがこれに相当する。 慣性モーメントが大きなクラブはヘッドがスクエアの状態でインパクトを迎えると、多少芯を外れて大きなミスになりにくい。ただし、大型で慣性モーメントの大きなクラブがスクエアにインパクトできなかったらどうなるかである。開いた状態で当たればプッシュアウトかスライスとなり、被ってインパクトを迎えると引っ掛けるかダッグフックとなる。 両者とも完全なミスショットである。カタログでは「芯を外れても慣性モーメントが大きくやさしいクラブです」と謳っていても、スクエアに戻すことができなければ恩恵を受けるどころか厳しいしっぺ返しを味わうことになる。 アベレージゴルファーがなかなかクラブの恩恵を受けることができない理由の一つがここにある。上級者ほどスクエアにインパクトできる確率が高いので、多少芯を外れたショットを打っても大きなミスにならず、結果としてスコアメイクの点で大きなメリットが出てくるわけだ。 スクエアに戻す確率が低いゴルファーは、大きなトラブルに見舞われる。当然スコアは良くならない。時々良いショットは出るものの「最新のクラブを買っても腕が悪いからミスショットはしょうがない」と諦めているのが現状である。しかし、ゴルファーの腕のせいにだけして本当に良いのだろうか? うまく当たらない大きな理由がもう一つある。スクエアにインパクトするには自分のテンポやリズムでスクエアに戻せるタイミングを持ったシャフトを装着しているかどうか。これによって結果は全く違う。どんなに良い性能を持ったヘッドでも、シャフトが合わなければ宝の持ち腐れだ。 プロや上級者はスウィングが安定しているので、自分に合ったシャフトを選ぶことが容易にできる。一方、スウィングが安定していないアベレージゴルファーはどうすれば良いのだろうか? 筆者は、ここに大きな問題が潜んでいるのではないかと思っている。 デメリットも示すべき なぜ、安定しないのか? プロや上級者のスウィングはリズミカルで澱みがない。反対にアベレージゴルファーはそうではない人が多いのだが、それは使っているクラブに起因しているからなのか? メーカーのカタログや宣伝では、どのようなタイプのゴルファーがどのようなヘッドを選択すれば良いかのおおよそガイドは示しているが、それに装着するシャフトの種類と特製を合わせて表示しているところは皆無といえる。また、メーカーが発売するニューモデルには、メーカーオリジナルのシャフトとカスタム仕様のシャフトが用意されている。メーカーオリジナルの場合、ヘッドの特製から考えて対象ゴルファーが最大公約数となる機能を考えて設計・装着されているはずなのだが、現状はどうだろうか。 実のところ、個々のゴルファーに対して最適なヘッドとシャフトの組み合わせ、つまりスウィングタイプ別にスクエアに戻しやすい組み合わせにについて公表しているメーカーは、筆者の知る範囲ではないのだ。 「かつてない飛距離」「驚異の強弾道」「前作を凌ぐ高い安定性」など、扇情的に強調しているのがほとんどである。クラブが道具である以上、デメリット表示も合わせて告知すべきだろう。 市場には、沢山のクラブが氾濫している。そのためアベレージゴルファーにとって、最適仕様を自ら見つけることは不可能に近い。工房では、オリジナルシャフトが合わない人向けにカスタムシャフトを勧めるが、カスタム対応シャフトは市場で人気のあるシャフトを中心に、狭い範囲で限定される。 また、シャフトメーカーは毎年新製品を発売し、従来品が廃盤となるケースが多く、これも不親切といえるだろう。 シャフトメーカーが製品を豊富にラインアップする理由は、様々なスウィングタイプに合わせて幅広い対応をするためである。フィッティングの現場では日々、ゴルファーにマッチするシャフトとヘッドの組み合わせを模索しているが、現場で一番悩むことは、フィッティングの結果、最適なシャフトがそのヘッドに対応できない時である。 この場合、フィッターは2つの選択肢を強いられる。一つは、使いたいモデルを一旦購入してもらい、そのシャフトを抜いて推奨シャフトを装着すること。しかし、これではすでに装着されているシャフトが無駄になるだけでなく、価格もその分高くなることが問題だ。 もう一つの選択肢は、最適な組み合わせに最も近いシャフトを装着できるメーカーのモデルを薦めること。が、顧客からすれば使いたいモデルが購入できない不満が当然湧き上がり、フィッターとして非常に苦しい選択を迫られる。しかも、もし価格がベストなものより高くなればなおさらだ。 クラブメーカーはなぜ、プロも使用できるレベルの全てのシャフトをカスタムラインに入れないのだろうか? できない理由として、「当社の安全基準や品質管理の基準をクリアできなかったから」とか「システム上種類が増えると対応が複雑で対処できない」という理由がほとんどである。本音は「年に何本出るかわからないものをカスタム対象にすることは効率が悪い、手間暇かけて無駄な作業を増やすだけだ」となる。 どこを向いているのだろうか、自社中心的な考えが支配していないだろうか? 少し高くなっても構わない、時間も通常よりかかっても仕方がない、欲しいものが手に入るなら、と顧客はそう思っているのに。 「一人の為に」がキーワード プロサービスはどうだろうか。プロに使ってもらえるなら、良い成績がそれで出せるなら、彼らのリクエストにはなんでも対応しているのが現状ではないのか? クラブメーカーは契約プロのために無償でクラブを提供するが、理由はPR等のためである。プロには十分な対応をして、今よりもっと良くなりたいと切望する顧客には不十分な対応。どちらのユーザーが大切なのか、メーカーはそのスタンスが問われていると筆者は考える。 今、メーカーに求められるのは自社製品を正しく説明でき、最適なシャフトとヘッドの組み合わせを提案できるフィッティング・スペシャリストの育成と、正しい情報を的確にゴルファーに届けるPR方法やそのための人材育成である。 クラブメーカーは既製品を効率良く大量に販売するのではなく、フィッティングを強力に啓蒙し普及させる努力が必要だ、と強く思う。自社の製品を正しく使いこなし、ゴルフをより楽しんでもらえれば、アベレージゴルファーのハンディキャップ向上に寄与するからだ。 これからの時代は一人ひとりがメディアであり、あらゆる情報が一瞬で拡散する。「自分にとって最も必要な情報・もの・コトとはなんだろう」と探している時代である。そのような中で従来同様、同じものを大量に供給し、広告や宣伝を駆使して量販システムで販売する「便利さ、豊かさを求める効率主義」を続ければ消費者は違和感を覚えるだろう。自分に向き合ってくれるメーカーや販売店や人を探しているからだ。 大手量販店もフィッティングの重要性を理解し、個々のゴルフアーに最適なクラブを提案するフィッティングスタジオを開設し始めている。市場の変化を感じ取ったからである。 今、一人ひとりのゴルファーに正面から向き合って、彼らが最も必要とする道具としてのクラブを提案し創り出していく時代がきている。キーワードは、個々のゴルファーに「嬉しさの創造」をしていくこと。これはクラブメーカーだけでなく、ゴルフコースも練習場もゴルフショップも皆そうである。 ゴルフ界はもう一度目標を見据え、ビジネスにおいても「スクエア・インパクトを目指す」ことが時代の要請だと思う。
    (公開)2018年12月26日